そして今回からマレー作戦やシンガポール作戦で有名なあの方が登場致します!
黒溝台襲撃の知らせを聞いた満洲方面軍司令部は中堅部隊の先頭に配置したみほが率いる中戦車1個連隊に出撃、防戦命令を出した。
みほ「西さんも河嶋さんもまさか正面突撃を行うなんて・・・」
しかし報告を聞いたみほを始め西住連隊の面々はあまりの酷さに半ば呆れていた。
まほ「隊長、命令には従いますがあの二人には一切の同情なんてありません。」
愛里寿「指揮官としてなってない・・・、隊長、出撃前にこちらから西大隊、河嶋大隊双方に撤退命令を出しましょう。」
まほ「同感だ、敵味方が入り乱れている状況では援護のしようも無いからな。」
まほと愛里寿は同情こそしないがそれでも撤退を支援する策をみほに提案する。
みほ「はい、今回の私達の目的は敵に沙河を渡らせない事、黒溝台を防衛する事にありますので、目的地に到着、西、河嶋両大隊の撤退が済んだのを見計らって攻撃します。
ですが追撃は極力避け、黒溝台前方の防衛陣地より前には進まない様にしてください!」
今回もまた遼陽戦前半の様に防衛戦となるため、みほの意見に部下達は賛成した。
みほ「では行きます!、パンツァーフォー!」
そしてみほの号令と共に奉天進行中止命令を受けた際に現場派遣技術将兵によって改装された四式中戦車改1個連隊(計180輌)が一斉にエンジンを鳴らし前進を開始した。
戦車部隊以外には直属の歩兵1個大隊、砲兵2個中隊、工兵1個中隊などが共に出撃した。
優花里「砲身が伸び、砲弾も少し大きくなったとは言え、まだまだソ連に後れを取っています・・・」
戦車に関しては優花里の言う通り、四式中戦車改言っても装甲の特に薄い部分に外側から追加の防御板を張り付けたり砲身を1割ほど延長、砲弾も75㎜から76.2㎜となり威力と射程、防御力が少しは増加したがそれでも気休め程度にしかならないレベルであった。
観測員「こちら黒溝台後方観測所!、前方の平原にて敵味方の戦車や歩兵が入り乱れ乱戦になっております!」
西住連隊所属の観測員は部隊より一足先に黒溝台後方の観測所に着き、状況を連隊の通信長となった沙織に伝えた。
沙織「それじゃあ撤退命令を無視したって言うの!」
観測員「い、いえ!、これほど混乱してしまうとむしろ撤退する事さえ困難なのでは無いかと思われます!」
沙織「そう・・・、連隊長、どうしますか!」
みほ「黒溝台は敵のいる平原に比べやや高い位置にありますのでそこからまず敵部隊の後方を攻撃、敵の進撃が止んだところで再び撤退命令を出します。」
沙織からの報告を受けたみほは慌てる事無く冷静に戦況を分析、そして味方に指示を送った。
優花里「その後はいかが致しますか!、敵とてそう簡単には諦めないと思われます!」
みほ「わかっています・・・、なので最低限、援軍が到着するまで黒溝台防衛陣地を生かして敵を迎え撃ちます!」
桃「ああ・・・、もう半分もいない・・・、撤退急げ!」
柚子「現在、生き残っている車両は48輌です!、急いでください!」
桃「わかっている!」
援軍の先鋒として西住連隊が到着した頃には河嶋大隊、西大隊共に50%もの戦力を消失していた。
絹代「くっ!、突貫して死するは武士の誉れだが・・・、上官命令は絶対!、総員急いで撤退しろ!」
福田「撤退でありますか!、敵に背を向けるのでありますか!」
玉田「不名誉であります!、突貫して名誉の戦死をさせて欲しいであります!」
絹代「軍において上官の命令は絶対だ!、気持ちはわかるが今は堪え直ちに撤退しろ!」
緑色の草が生い茂っていた平原は僅か1日程度で辺り一面に機械部品の破片や戦死者、血痕が広がっていた。
牟田口「撤退も止む無しか・・・」
その光景を見てようやく司令官牟田口は撤退命令までは行かずとも陣地までの後退命令を出した。
みほ「牟田口中将!、お待たせしました!」
牟田口「西住大佐か!、頼むぞ!」
みほ「了解!、観測員!、位置を知らせてください!」
観測員「第1目標T-26部隊、距離400m!、第2目標T-34/76、距離600m!」
みほ「全車、撃ち方始め!」
それと同時に配置を終えた西住連隊の四式中戦車改が一斉に凄まじい爆音と共に砲身が火を噴き76.2㎜砲弾を飛ばした。
ソ連戦車長「ん?、・・・、ギャアアアーーー!!」
そしてそれが敵軍の頭上から雨の様に降り注ぎ、突撃した味方と激しい戦闘を行っていたT-26軽戦車とその後方にいるT-34/76中戦車に命中、T-26は一撃で戦闘不能になる物もあった。
華「砲手、代わって下さい!」
砲手「はい!」
最中、華は自身が乗車する戦車の砲手を代わってもらい自ら射撃を行った。
その初弾はT-34/76を捉えた。
華「・・・、そこっ!」
装填手「如何ですか!」
華「前のよりは良いですが・・・、正面からこの距離では砲弾を弾かれてしまいました・・・」
しかしT-34/76の装甲はT-26より遥かに頑丈で、開いた距離での正面攻撃では砲弾を弾かれてしまうほどであった。
麻子「やはり、堅いな・・・」
優花里「正面しか狙えないこの位置からでの撃破は難しいですね・・・」
麻子「ああ・・・、連隊長、T-34相手では履帯や砲身を狙った方が良いかと、撃破こそ出来ませんが戦闘不能にはできます。」
みほ「そうですね、部隊総員、T-34相手では履帯および砲身を狙ってください!」
戦車に詳しい優花里と一連の攻防を冷静に分析していた麻子は履帯、砲身を破壊し戦闘不能にさせる戦術をみほに進言した。
エリカ「撃破できないのは悔しいけど、仕方ないわね!」
砲手「では履帯、続いて砲身を狙います!」
エリカ「よろしく!」
この攻撃で履帯を破壊されたT-34/76はその場で走行不能となり、どんなに頑強な装甲を持っていようと動けなくなった戦車は良い的であった。
更に砲身を破壊され戦闘能力を削がれ戦車乗組員達はすぐさま戦車から降り歩兵として戦うか逃げるかした。
観測員「河嶋大隊、西大隊、防衛陣地最前列まで後退完了しました!、歩兵の大多数も同様に後退しましたがいずれも防衛陣地にて戦闘続行しております!」
まほ「何だと!」
愛里寿「どういうつもりだ!」
柚子「こちら河嶋大隊副隊長の小山です!、我が司令官の命令は後退こそするがあくまでも黒溝台にて徹底抗戦を行うとの事です!」
みほ「!!、牟田口中将!」
牟田口「黒溝台を奪われる訳にはいかんのだ!」
みほ「それでしたらせめてもう一歩後退を!」
牟田口「ならん!、粉骨砕身の精神にて防戦に当たれ!」
みほ「しかしそれでは防衛線が広すぎて必ず穴が出ますし弾幕が疎らになっています!、戦線を縮小するべきと存じます!」
黒溝台を奪われる訳にはいかないという牟田口の言う事はもっともであるが、大軍に対して小軍で防衛に当たるのであればもっと陣地の内側にて防衛線を縮小し組織的に行うべきとみほは意見した。
しかし牟田口は一切の聞く耳を持たず、西住連隊は絶対不利と言う状況下で援軍が到着するまで現状維持に努めた。
みほ「・・・、我々も可能な限り援護します・・・」
みほは半ば無理やり自身を押し殺し援護に当たった。
しかしこの時、味方の兵士がまた1人、また1人と倒れて行くのをはっきりと目にしていたみほは流石に初めの頃の様な冷静な表情ではいられなくなっていた。
みほ「正確なる射撃に努め一人でも多くの敵を倒してください!、でなければ前線部隊が全滅してしまいます!」
みほがそう言い放ち、自らも死を覚悟しなければならないと思った瞬間、部隊の後方から砲声がなり砲弾が降り注いだ。
観測員「黒溝台左舷後方陣地に味方の砲兵隊!、援軍です!」
天は決して彼らを見捨てなかった。
沙織「連隊長!、援軍の第5師団が間もなく到着します!」
優花里「松井中将が率いるマレー方面軍となる予定だった部隊の1つですね!」
沙織「兵力は歩兵4個連隊、砲兵1個連隊、更に97式中戦車(ハチ)1個旅団も間もなく到着します!」
麻子「何とか防衛線は保てそうだな・・・」
援軍として到着したのは満洲方面軍との合流に手間取っていた山下奉文中将指揮下にある松井太久朗中将が率いる第5師団および97式中戦車1個旅団であった。
みほ「皆さん!、これなら負け戦では無くなりました!、ここが正念場です!」
みほのこの一言で部隊の人員の殆どが士気を取り戻し奮い立った。
また余談ではあるが、この第5師団と中戦車1個旅団を含む山下指揮のマレー方面軍(第25軍)は日米開戦回避成功によって急遽満洲方面軍に組み込まれた。
因みに現在戦闘中の牟田口率いる第18師団もまた山下の指揮下にある第25軍所属部隊の1つで、もう1つ第56師団がいるがこれは第5師団の後方に配置されている。
山下「我が第25軍の総兵力は7万、こちらには防衛陣地もある、ソ連に中国共産党共よ、突破できる物ならしてみるが良い。」
後に奉天の虎と恐れられる山下指揮のこの第25軍の参戦によって絶対不利に立たされていた戦局は段々と味方に傾き始めた。
山下奉文中将は実際にはマレーの虎と恐れられた陸軍の将で、彼が率いる第25軍の第5師団は当時の日本陸軍では数少ない機械化装甲師団だったそうです。