モビルスーツに乗りたかった喰種捜査官   作:haregreat

2 / 6
投稿前に1度消えてしまい頑張って書き直しました。誤字等は随時訂正していきます。
お気に入り登録して頂いた方ありがとうございました。これからもう少しうまく書けるように頑張りたいと思います。

注意!
・設定としてニュータイプの能力についてだいぶ都合のいいようになってます。
・原作の数年前として設定してますが、原作キャラの年齢等についてこれから食い違いが多々出てくると思います。原作開始時点で、宇井さん25歳。スクール卒で最短20歳から入局と考えると5年足らずで、準特等になってるようです。すごすぎ。。。。



第1話 安室大地に立つ

なにか不思議な夢を見た。

 

アムロさんみたいにニュータイプとなって俺つえーしたいと。そんな願望をよくわからない存在に語っていたと思う。

 

いい加減、中二病は卒業したい。俺は夢を思い出しながら自分に呆れつつ寝起きの意識を覚醒させていく。はて、俺はいつのまに寝ていたのだろうかと思いつつゆっくりと体を起こす。そして周りを見渡すとそこは見慣れたぼろアパートの自室ではなく、そこは全く身に覚えがない部屋だった。更には小学校に入学したかどうかの子供がところ狭しと自分と同じように布団で雑魚寝している姿を見て昔野球部の頃合宿で使用した大部屋を想像してしまった。

 

その光景に動揺しつつ、昨日酔っ払って誰かの世話にでもなったのかと過去のことを思い出すが会社から直帰して明日も仕事であるからすぐにベットで就寝した記憶しかない。

 

まさか、拉致でもされたかと、内心焦りだし体を動かそうとした時、ふと自らの体は、こんなにも小さかったかと疑問に思う。見える体の部位はまるで、周りで寝ている子供達と同じように小さく、幼さが垣間見柄る。

 

そんなまさか。

 

動揺する自分を必死に抑え、常夜灯により僅かばかり照らされた薄暗い部屋を見渡すと部屋の片隅に水道の蛇口と小さな鏡が見え、慣れない体をゆっくり動かし、周りにいる子供達を踏まないように近づいていく。

そうして、鏡まで近づき、意を決して鏡を覗く。

 

えっ?

 

思わず声が出た。

そこには、今まで見慣れた30になろうとする自らの顔ではなく、赤茶けた髪をした幼い顔つきの10代前半の小さい顔が呆けた表情をして、突っ立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自らが、この別世界に転生を果たしてからすでに10年近くが経とうとしていた。

転生した当時はしばらく動揺し、周囲から変に見られることもわずかばかりあったが、周りはそれもしょうがないと納得もしていた。それは何故かというと、自分がいた施設というものが、喰種により被害を受け天涯孤独となった身寄りなき子供達が集められた施設だったからだ。周りには自分以上に時折取り乱し、錯乱する子供やら、目にハイライトをなくした目をした子供ばかりがいたことで、自分が特別、注視されることがなかったからだ。

 

そして、今でたキーワード。喰種というのに皆さんは疑問を持つだろう。なんだそれはと。

当初、俺も疑問に思った。

転生した頃は前世とそう変わらない世界。僅かばかり時代が違うかな程度だと思っていたが自らの境遇を認識していくうちに明らかな相違点があることに気がついたのだ。

この世界には、前世には物語の中にしかいなかったような化け物が身近に潜んでいる。

その名が喰種である。

 

外見は人とそう変わらず、基本的に人間社会に溶け込み人と同じように暮らしているのだ。

これだけ聞けば無害に聞こえるようだが、それは大いに間違っている。

奴等は人しか食べれないのだ。人間が牛や鳥を平気で食べるように奴等は人間を平気で食べる。まともに教育を受けていないグールが多い為、反社会的な奴らばかりで、倫理観も全く持ち合わせていない。

さらに喰種は人より運動能力が優れ、人の数倍の筋力をもち拳銃程度では傷をつけることができない硬度を持つ皮膚を持っている。これだけでも相当やっかいなのだが奴等は極めつけに赫子と呼ばれる捕食器官を持っておりこの存在が喰種を更に数倍厄介にしているのだ。

その他に赫子を体に発現させる時や興奮時に目を赤くする嚇眼も喰種の大きな特徴でもある。

 

明らかに人間より種として優れ人を襲う化け物が身近に潜んでいることに最初は恐怖したが、人間もただ手をこまねいている訳ではなく喰種対策局(CCG)という公的機関を設立し喰種に対抗しているとのことだ。そこに所属するものは喰種捜査官と呼ばれ喰種を元にして作成されるクインケと呼ばれる武器を用いて危険な喰種を日々駆逐しているらしい。

 

 

ここまで詳しい喰種に関する情報を俺はかなり早いうちに知ることができた。それは何故かというと今いる施設がCCGの施設であることが原因であった。

なんでも、自身の家族は喰種被害に会い、唯一生き残った子供が俺らしく、自分はCCGの施設に預けられた訳なのだ。

その施設は善意だけではなく、自分と同じような喰種被害を受けた身寄り無い子供を引き取り、将来の喰種捜査官を育てようとする側面も持っていた。施設側から無理に捜査官へなるよう無理強いはしてはこないものの、喰種に被害を受けた子供達のほとんどが復讐心から、喰種捜査官になることを望むらしい。

 

そして、俺自身も喰種捜査官になることを望んだ。

別に復讐心からではない。残念ながらこの世界の家族のことは思い出すことが出来なかったから、そこまで感情移入することが出来なかった為だ。だが、いくらかの正義心が働き、喰種被害から人を守りたいと思ったのは、理由の1つだろう。

 

しかし、何より心が動かされたのはやはり前世にはいなかった化け物をクインケという武器で倒すというまるで映画や物語染みた職業だからだろう。

おまけに公的機関である訳だから、公務員であり、福利厚生は充実しており、危険手当ても多くつくのでなかなかに高給とりだ。

 

しかし大変危険であり、殉職率は全職業No.1に輝くほど。だが俺はその点は比較的楽観視していた。

なぜなら、俺には前世にはなかったいわゆる第6感と呼ばれるシックスセンス的な能力、そして前世よりも異様に高い運動能力を持っていたからだ。やはり、転生する前にアムロさんみたいなニュータイプな能力を持って俺つえーしたい。というアホな願いを誰かが叶えてくれたのかもしれない。まぁ本当ならMSに乗って。という但し書きが付くのだが、不完全なりにも叶えて頂いたことにより、人よりいくらかのアドバンテージ。そして戦闘にも役立ちそうだと思い、俺は捜査官になることを決断した訳だ。

 

喰種捜査官になると決断した後は流れるようにして、時が過ぎていった。

捜査官になることを推奨していることもあり、CCGのジュニアスクールへ入学を果たし、前世で受験戦士(二浪)だったことあって、座学はそこそこの成績を残した。実技面ではトップの成績を1年目で叩き出して、2年目も頑張るぞと気合をいれていた時にお偉いさんから、君すごいね。飛び級してみない?来年あたりから飛び級制度作ろうかなと思って君を試験的に対象にしたいんだけどどう?

 

なんてお話があり、評価して頂いたからにはやらせていただきます。と即答して、スクールをすっ飛ばしてCCGに正式採用となったわけだ。

ちなみに座学も前世あればもう少しがんばれよと思うかもしれんが、在籍中にクインケ操術や実技面にどっぷりはまりこんでしまった弊害だろう。

前世とは比べ物にならない身体能力により自分の体が思うとおり動いてくれることに快感を覚えてしまい鍛錬にはまりこんでしまったのだ。鍛えれば鍛える程目に見える程の成長をしていく我が身に日々追うごとに魅入ってしまい僅かに自らに恐怖を覚えたが、戸惑う時間すら惜しいとばかりにひたすら鍛錬な日々を過ごした。更には学生同士の実戦形式試合では相手が次にどう動くかがまるで、手に取るようにして分かることから学生同士の試合では無敗を誇っていた為、余計にそんな自分に酔いしれてしまっていた。そんな訳で暇があれば、体作りやクインケ操術の技術を磨き、スクールの教員や時々やってくる現役捜査官からうざがられつつも、しつこく技術を教えてもらっていた。まぁ、その時に上には上がいるということを現役捜査官の一部の方に思い知らされたわけだが。

 

そんな日々を過ごしているとあっという間に時間は過ぎていき、ジュニアスクールを卒業となった。

 

そして、俺は一般のスクールを出ていないことから三等捜査官(スクール出は二等から)として正式にCCGの捜査官に採用され、有馬貴将特等捜査官を上司として、通称零番隊へと配属され、第24区 地下探査 通称もぐらたたきの任務に就くことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

日の当たらない、薄暗い地下の中2つの集団が命を懸けて争っていた。一つは全員が同じ白い上着に中には頑丈そうなボディスーツを着込みそれぞれが手に武器を持つ統率のとれた集団。そしてそれに対峙しているのが、服装はまばらで各々が背中の一部から普通の人間にはない器官、いわゆるカグネを生やした喰種の集団だった。

白い服装の集団を襲うのは喰種であり、白い服装の者達は明かにただの人間にしかみえない。普通であれば喰種に襲われたなら、人間は一溜りもないだろう。だが状況は白い服装の集団が圧倒していた。

そう、白い服装の者達は人間でありながら喰種の天敵であり、グールから白鳩と恐れられている喰種捜査官達であったからだ。

 

 

 

「安室前に出すぎだ!」

 

背後から、自らの指導役をしてくれている宇井先輩の怒声が聞こえてくる。俺が有馬班に配属されてから、何かと面倒を見てくれ、公私共に自分に対して今みたいに激しい怒声を飛ばして面倒を見てくれる素晴らしい先輩である。実力も入局して1年たらずで多くの功績を上げ、一等捜査官になる等、有馬班のホープとして周りには期待されているすごい人なのだ。おかっぱ頭に細身でまるで女性と見間違う顔をしているくせに、その実力は侮れない。

初対面時に女性と勘違いして、殴られたのはいい思い出だ。安室なのにな。俺はジェ〇ドじゃないぞ。

 

過去のことを思いだしつつ、側面から飛んでくる羽赫のカグネを視界に入れることなく、射線から体を反らし、目の前の今まさに飛び掛かってくる喰種の一撃も更にかわして手に持つクインケで攻撃を放ってきた隙だらけの喰種の頭を片手の一振りで切断する。目の前の障害を片付けたことで更に前進し、別の捜査官に負傷させられ、必死に逃げようとしている喰種を見つけたので、その喰種も同様に一撃で斬り殺した。

 

近くにいる喰種を一掃し、周囲から殺気を感じないことから一度立ち止まる。クインケについている血を振り落としながら周囲を見渡すと先程俺を狙ってきた羽赫の喰種は宇井先輩に丁度両断されており、更に見渡すと有馬特等がこの喰種集団の親玉であろう喰種を穴だらけにして、止めを刺しているところであった。その周囲には零番隊の一員や平子さんが丁度戦闘を終わらせたようで、周囲を警戒していた。

敵のいくらかはどうやら逃走したようだが、喰種の死体が20近く散乱していることから極僅かだろう。

こちらの被害は死傷者はいないもののいくらか傷をおった者もおり、近くの者が手を貸している。

 

「一時休憩に入る。手の空いてる者は負傷者の後送準備」

 

有馬特等が指示をだす。

皆がそれぞれ、事前に決められた通り休憩する者と周囲を警戒する者で別れていく。

余裕のある者は負傷者達の元に集まり、傷の具合を確認していた。

 

俺も休憩組ではあったが、そこまでの疲労を感じなかった為、負傷者達の治療を手伝おうと、歩きだそうとした時後ろから声がかかる。

 

「待て。お前はまず説教からだ」

 

そう言ってきたのは、戦闘中に怒声を飛ばしてきた宇井先輩だ。

冷静な顔をしているが、これはマジで切れる5秒前というやつだ。経験からわかる。

 

「どうして!指示された動きをしないんだ!いつも言ってるだろ!前に出過ぎるなって!これだからスクールをでていない脳筋はいやなんだ!」

 

そう怒鳴りながら首元を掴んでくる宇井先輩。

俺は宇井先輩が納得してくれそうな言い訳をすぐ様展開する。

 

「いや、羽赫もちがフリーになっていたのでやむを得ず俺が前に出ざるをえなかったんですよ。俺が前にでれば、囮として注意を引き付けれると思いまして」

 

事前に考えていた言い訳でなだめるように、言い訳に聞こえないように言い訳をしてしまった。

 

「そんな言い訳が通じるわけないだろっ!僕たち全員がそんなのわかってたさ!あの場面では君は私と歩調を合わせて、陣形を維持しつつ対処するのが堅実だったろ!」

 

火に油を注ぐというのは、正にこの事を言うのだろうなぁと内心思いながら、正論で返されたことにより、俺は何も言えなくなる。

 

「どうせ、敵主力にちょっかい掛けようとして前に突っ込んだんだろ?ほら、本当のこと言えよ。」

 

これ以上の言い訳は許さないと言わんばかりの視線を向けられ、俺は手を挙げ降参の合図をして、ぶっちゃける。

 

「だって、割と大したことなかったし、あの場で俺が前に出ても迷惑掛からなかったじゃないですか。なら、有馬さん達の援護にいければなぁと。ははは」

 

宇井先輩の体が怒りで震え、あまりの怒りで逆に冷静になったのか。下を向きながら、やっぱり後輩の教育なんて無理だ。等とぶつぶつ呟いている。以外にこの先輩は精神的に弱い部分があるので時々こうなるのだ。

俺は、すかさず、フォローを入れる。

 

「先輩自信持ってくださいよ。俺は先輩が教育係でよかったと思ってますよ。それと俺が悪いのは明白なので自分を責めないでください」

 

「だったら私の言うことを聞けよ!それとお前が悪いのはわかってるよ!」

 

どうやら、自分の言葉で更にヒートアップしたらしく、説教が再開される。これは長くなるなぁと思いながら、自分が悪いので、黙って聞くことにした。

 

だが、あえて更に言い訳をさせて貰おう。

俺は喰種との戦闘が好きで前に出ている訳じゃない。戦闘狂とかじゃあないんだ。

じゃあ、何で危険犯してまで、さらに前にでるのかって?そんなの簡単だ。

 

クインケほしいんだよ!強くてかっこいいの!

 

今、俺がどんなクインケを使っているかというと、斧である。戦闘用であるからトマホークか。

名前もトマホーク(1/3)という安直な名前だ。尾嚇のクインケで扱いやすいだろうということで有馬班に配属させられた時に渡された支給品である。性能面も極平凡でありレートはB、別にギミックなんて物は一切ない。叩き斬るのみ。刀身がヒートしたりなんかしません。

 

見た目?ザクが持ってるあれだよ。

 

そんな訳で非常に不満があるのだ。安室零という名前を今生でもらっておきながら、何故このような、名前と相反する武装をせにゃならんのだ。せめて、刀剣類よこせよ。俺は連邦派なんだよ(まじぎれ)

とまぁ、自らの武器に不満たらたらなのだ。

 

じゃあ、強力でかっこいい、自分の名前に準じたクインケが欲しいとなったら方法は2つだ。クインケの材料となる喰種を自分で狩る。もしくは実績を積み上げて強力なクインケを配備してもらうかだ。

 

後者は当然時間がかかる。それはダメだ。我慢できない。

最近このトマホークに愛着が湧いてきてしまい、これにスパイク付きのシールドがあれば・・・

なんて考えてしまう始末だ。明らかにまずい傾向である。なので精神衛生的に時間を掛けていられないので、やはり前者の選択となるのだ。

 

そして、喰種を倒した者が基本的にそのクインケの材料となる嚇包の所有権を得るわけで、新人の俺は基本後方よりに配置されているので、クインケにしがいのある喰種は有馬さんか他の隊員にさっさと駆られてしまう訳だ。俺が相手にするのは大体が赫子も出せないような奴か小さい赫子を振り回す程度の良くてBレート程度ばかり。

 

これでは多少無理して前に出てしまうのは、しょうがないだろ。

 

そんな不満をぶちまけたら、間違いなく拳骨が飛び、説教が延長されるので、私今の配置不満です。と延々と説教を垂れている宇井先輩に眼で訴えて見る。

 

そうしていると、伝わったのか分からないが、軽く睨まれた後、溜め息を吐いて掴まれていた胸ぐらを離してくれる。

 

「前で戦いたいんだろ?本当はもう少し後ろで学んでいて欲しがったんだけど、有馬さんの許可があればお前が前衛をこなしても構わないと私は思うけど、有馬さんの許可次第かな」

 

溜息をつきながら、もう好きにしろよみたいな感じで意外な返答が返ってきた。なんと宇井先輩からのお許しがでた。

だが、配属されてから半年近くが立とうとしているのだ。最近は無理やり前にでようとすることが多かったが初期の頃は得意の感知能力で、仲間と敵の動きを把握しそれなりにうまく連携していたのだ。討伐数もそこそこに多いし、そろそろ評価されてもおかしくはないだろう。

 

「じゃあ、有馬さんから許可貰ってきますね!」

 

と、善は急げとばかりに有馬さんに突撃を仕掛ける。その後ろから、あ、待てよっ!私も着いてくから!

と、任されれた私も行かないと教育係の顔が立たないだろと、何度目かの溜め息をまた吐き、うい先輩と有馬さんの元に向かった。

 

 

 

 

 

 

そう、遠くない場所で有馬さんを見つけた。どうやら平子さんからの報告を聞いておりこれからについての話し合いをしているようだ。傍で話しが終わるのを待とうと近づくと。二人は自分達に気がつき、此方に視線を向け話を止めて声をかけてくれた。

 

「宇井と安室か。どうした」

 

尋ねてきた有馬さんに単刀直入に前に出させてくれ。とお願いしようとすると、宇井先輩が手で制して自分が言おうとした言葉を丁寧に有馬さんに尋ねてくれた。

 

「いいんじゃないか」

 

有馬さんは少しも間を置くことなく了承の返事をくれた。

 

「動きは何度か見たが悪くない。後は実戦で磨けば更によくなると思う。丈はどう思う?」

 

傍にいる平子さんに有馬さんは尋ねる。

 

「大丈夫だと思います。周りをよく見てますし、技量も申し分ないです」

 

と相変わらずの無表情で返答した。

二人からばっちりと許可を頂き、そばにいる宇井先輩はなにか納得いかない顔をしながらも特に異論はないのか了承する。

 

「では、安室を前衛主力として対応します。」

 

「ああ。宇井も安室のサポートをしっかりな。」

 

有馬さんが宇井先輩に一言伝えると、宇井先輩は、はにかみながら任せて下さいと嬉しそうに答えた。

 

零番隊の皆さんみんな有馬さん大好きだなー

そんなことを、宇井先輩の笑顔を見て思った。

 

その後にいくらか有馬さん達と言葉を交わし、休憩後目標ポイントへ出発となった。

 

 

 

 

 

 

 

今回の任務は24区の未踏破エリアのマッピング及び調査活動であり、目標地点に近づく事に危険度は増していく。あれから休憩後出発して暫くは襲撃はなかったものの目標ポイントに到達してからは喰種集団の襲撃が増え始めてきた。

 

俺含め、宇井先輩を班長とする班は有馬さんがいる班を中央集団とし、その右翼を固めるようにして配置されていた。左翼には平子さん率いる班が展開しており、1班が4人から5人とし20人近い集団でなかなかの大所帯で警戒しているのだが、喰種達はそんな俺達を平気で襲ってくる。

 

「安室!F13で対応!」

 

俺は宇井先輩の下、最前衛となって喰種に突っ込み、今しがたトマホークの一撃で喰種を地に沈め、更なる獲物を見つけようと立ち止まることなく前進していた。だが背後から宇井先輩の指示が飛ぶ。

 

「了解」

 

指示を聞いた俺は了承する。俺はその時、喰種の集団に全力疾走で突っ込もうとしており正面にいた喰種5、6匹がそれを見て応戦の構えをとるが、指示を聞いて、全力で前にだした右足を思いきり力をこめて、踏ん張り、前進から後退に瞬時に切り替え喰種から距離を置く。

 

 

その直後、背後にいた隊員が、バズーカ状のクインケを方膝をついて、撃ち放つ。放たれた巨大な弾頭は轟音を背後に置き去りにして対峙していた喰種集団の真ん中に直撃し大きな轟音を建てて爆発を起こした。

 

割と近くで起きた爆発により強烈な熱風で肌を僅かに焼かれるが立ち止まってもいれず、後退していた体を再度、敵に突撃させる。

この動きは足に非常に負担がかかるので、あまりしたくないんだけど。と内心思うが、口には出さず前進する。

 

そんなことを考えているとすぐに、宇井先輩が追いつき並走するようにして、右側に着くと、正面で痛みに悶えている喰種達に容赦なく止めを刺していく。抵抗はカグネをがむしゃらに振り回すだけで当然宇井先輩と俺にはかすりもせず、次々と始末していった。後は作業みたいなものかと思い、周りを見ると、一番多くの数を相手していた有馬さん達中央もこちら同様に戦闘というよりも殲滅戦に移行しており、平子さん達も喰種を追い詰めていた。

 

短時間で連戦続きだった為、さすがに体に疲れを感じ、さっさと終わらそうと正面にいる必死に千切れたカグネと腕を再生しようともがいている喰種に止めを刺そうと近づくと、急にゾワリと体に電流を流されたかのような悪寒が走った。

 

「なにか来ます!」

 

いたるところから殺気を感じ俺は大声を上げて周りに周知する。

しかし遅かった。俺が声を上げると同時に壁、天井、床が突如震えだした。

 

 

あらゆる方向の壁や天井の一部として機能していたRc細胞壁が割れるようにして開かれ、いくつかの場所では、床や天井の細胞壁が膨張し、まるで壁になるようにして、有馬さんや平子さん達の班と分断するようにして壁が立ち塞がった。

 

 

 

分断されたーーー

 

 

そう思うと同時にいたるところのRc細胞壁の裂け目から殺気を感じる。

無数の喰種が裂け目から這い出ると同時にこちらを襲い始めたのだ。

 

あらゆる方向から殺気を感じる。

直感と自らの反応スピードにより赫子による攻撃を体をそらすことで回避し、難しいと判断した攻撃はトマホークで弾く。傍にいた宇井先輩もなんとか無事に凌いでいるようで、回避しつつ後方にいたバズーカ状のクインケを持つ生島さんに宇井先輩が指示を出す。

 

「生島!壁を破壊しろ!東は生島の援護!私と安室で二人の周囲をまびくぞ」

 

俺達の援護に回っていた生島さんとその傍にいた東さんも俺達側に分断されたらしく、有馬さん達との間にできた壁を破壊するように宇井先輩が指示をだした。

 

 

指示に対して了解の返事をした生島さんは分断された壁にそのバズーカの砲口を壁に向け、先程と同じ射撃態勢で構えて引き金を引こうとした時、生島さん達の頭上になにかでかいプレッシャーを感じ、俺は生島さん達に大声で叫ぶ。

 

「上だ!避けろ!」

 

 

しかし、俺の声に反応はしたが体を動かすことは間に合わなかった。

壁を吹き飛ばそうとしていた生島さんの頭上から突如、鎌状の巨大な赫子が落ちてきた。振り子の様にして上から放たれた鎌状の赫子はその軌道にいた生島さんの胸部を切り裂きその勢いを減じることなく、その脇にいた東さんの頭も刈り取っていった。二人の顔は驚愕に満ちた顔をして、ばたばたと体を分割され地に倒れ伏す。

 

「なっーーー」

 

 

驚愕の表情で宇井先輩はその光景を見ていた。

そして、いつの間にか出来ていた天井部の穴から、覗かしていた鎌状の赫子とその本体である下手人が地上に飛び降りて来る。

 

そいつの体格は小柄でやせぎすな体をし薄茶色のローブを体に纏い顔にはゴーグルと顔の下半分を覆うバラクラバにより素顔は全く分からない。

そして、その細い体に反比例するように腰から突き出した2本の赫子は異様に巨大だった。太さは成人男性の腰回り程であり、異様に筋肉質。更に特徴的なのが先端が鎌の様に緩い弧を描いており、その内側には鋭利な黒い刃が見えた。

 

遠巻きに他のグールと交戦しながら観察していると奴はこちらを見て、不気味な笑い声で笑い出し俺と目が合うと、狂ったかのように更に大声で笑い始める。

 

ーーー狂ってる。

 

そいつからはまともな思考を全く読み取れない。わかるのはただ従順に本能に従っていることだけだ。

 

突如現れたグールが今までのよりやばい奴だと認識し、そいつを視界に常にいれるように周りにいる雑魚を

処理していく。

しかし、視界の片隅で捉えていたそいつは急に笑うことをやめて、地面に両手をつけ、四つん這いの姿になる。

 

なにかくる。

 

直感で悟り、警戒を強めていると、急に巨大なカグネを背後に思いきりしならせ、勢いをつけてから宇井先輩と俺に向け、まるで草を刈るかのように薙ぎ払ってきた。

 

ーー!

 

宇井先輩と俺はこの状況でそんな大振りをしてきたことに驚愕した。

俺達は別の喰種と交戦中であり、当然近くに味方である筈の喰種がいる。それにも関わらず、味方を巻き込みかねない攻撃を平然と振るってきたのだ。

 

「めちゃくちゃだなっ!」

 

宇井先輩と俺を襲った1本づつの鎌状のカグネはお互いに驚きつつも、姿勢を低くすることで回避に成功し、替わりに近くにいた喰種をまとめて二分割にした。

 

どうやら仲間意識が全くなかったらしい。味方を皆殺しにしたというのに、奴は、後悔どころか、奇声のような笑い声で笑い続けている。

 

そして狙いを俺につけたのか、喰種が俺を見てからクラウチングスタートのような構えをとり、足の筋肉を倍以上に膨張させてからまるで足元を爆発させたかのように俺に飛び掛かってきた。

 

「うっそだろーーー」

 

そのスピードは今まで戦ってきたどの喰種よりも速かった。来ることが分かってにも関わらず、今までのグールより少し速い程度だろ。と甘い考えでいた為、完全に油断し回避が遅れてしまう。

 

最悪の失態だ。と自分を罵り、回避を諦めてやむを得ず敵の攻撃が来るだろうポイントに盾替わりにトマホークを置く。その異常なスピードを纏った喰種の殴りがトマホークに直撃する。

 

あ、やばい。

 

直撃した瞬間、クインケから悲鳴のような音が聞こえ、咄嗟に受けきれないと判断し、衝撃をいくらか殺す意味で後ろに跳んだ。

 

抵抗を諦め、直撃と同時に背後に飛んだ瞬間、ドンッと鈍い音が聞こえ、すぐに衝撃が体に伝い、その勢いで体が後ろに撥ね飛ばされる。

浮遊感を感じながら背後から宇井先輩の声が聞こえた気がした。

一瞬の浮遊感の後、勢いよく体が地面と何度も衝突し、地面に体をぶつける度に警告音を鳴らすかのように体が痛みを訴えかけてくる。

 

痛い‼ちくしょう!と心の中で毒づく。

今まで能力のお陰で任務中被弾したことがなかったことが災いしてしまい、痛みによる混乱で受け身を失敗し無様に地面を転がり続けてしまう。

 

ヤバイ。追撃きたら終わる。

 

地面を転がりながら、態勢を立て直そうと必死になる。

機敏に察知できるはずの殺気が焦りによりうまく感じることができない。敵が今どうしているかがまるで分らず、それが更に余裕をなくした。ただ、がむしゃらに転がり運動エネルギーを殺し続ける。

そしてようやく、勢いを殺しきり体が静止した頃にまともな思考ができるようになる。そこで疑問に思う。

 

追撃の好機だったろうに。なぜ?

 

やっと態勢を持ち直して吹き飛ばされた方向を確認する。

顔を上げ、下手人の状況を確認することで疑問が氷解した。

 

視界を向けると、宇井先輩がクインケ タルヒのギミックを使用し、刃を瞬間的に伸ばしてくれたことで追撃の赫子を弾き飛ばす光景を目撃することができた。

 

宇井先輩は刃を直ぐ様、元の形状に戻し、お返しとばかりに伸ばしてくる鎌状の赫子による攻撃もすらりとかわし、2撃、3撃をクインケで捌いているが、赫子のスピードそして重さが明らかに今までのグールと段違いであり、徐々に圧されつつある状況であった。

 

俺は倒れ伏しながら自らの体に異常がないか確認する。

体中痛いがどれも軽症だ。ボディアーマを着ているとはいえ、自分の体の頑丈さに感謝するばかりである。前世であれば体中の骨を骨折していただろう。まぁこの世界の人間(捜査官)は人辞めてるような連中が多いので、この程度ですむ捜査官は多そうだが。

 

そんなことは置いておいて、先程の失態の借りをかえさねば。

十分にかわせる攻撃を慢心で被弾した上にパニックに陥る等、本家様に申し訳がたたない。本家様ならまず余裕で避けていたし、回避した上で同時に反撃までしていただろう。

 

俺は汚名返上すべく、宇井先輩の支援に動こうとした。どうやら喰種は俺を戦闘不能にしたと思っているのか俺のことを気にもしないで、宇井先輩に攻撃をし続けていた。

その光景を眺めつつ立ち上がろうとしたとき一瞬だが戦闘中の宇井先輩と目が合い、お互いの意思がなんとなく伝わった気がした。お互いの意図が通じたのか、宇井先輩は喰種が俺に対して背を見せるように仕向けつつ、それに気づかれないように器用に立ち回る。

 

すぐにでも助けに行きたいが、宇井先輩がそう簡単にやられるということも想像ができないので、宇井先輩を信じつつ、俺は倒れ伏したまま好機を待った。

そして、俺に遠からず、近からずの絶妙な位置で俺に背を向け、2本のカグネを伸ばし切った瞬間に俺は先程見せつけらた喰種のダッシュに負けじといわんばかりに、倒れ伏した姿勢から真似するようにクラウチングスタートの姿勢に切り替えて、おもいっきりスタートを切った。

 

陸上選手も顔負けではないかというスピードで一気に近づき、さっきのお返しに倍返しだと言わんばかりの一撃を与えるため、トマホークを両手持ちにして走りながら構えた。

 

喰種は直前に目敏く俺の接近に気がついたようだが遅い。

喰種は宇井先輩に伸ばしていたカグネを防御に回そうと動かすが俺は更に加速して喰種の目の前まで接近した。喰種は先程まで宇井先輩に夢中だったこともあり迎撃しようにも宇井先輩へ赫子を伸ばし、上半身を前のめりにしていた為、まともな態勢で迎撃することは困難だった。なんとか上半身だけをこちらに向け俺に苦し紛れに虫を払うかのように手を横に振るってくる。

 

苦し紛れの一撃なんて当たるか馬鹿め。と心の中で罵り、喰種の脇をすり抜けながら、両手に持ったトマホークで腹部を深々と切り裂き、走り抜けた。

その一撃に手応えを感じながらグールから距離をとり、そのまま同じく、喰種から距離を置く為に下がっていた宇井先輩と合流する。

 

「怪我ない!?心配させんなよ!」

 

喰種を警戒しつつ、こちらをチラ見して先程攻撃を受けたことについて心配してくる。

 

「お陰でなんとか、5体満足で無事ですよ」

 

本当にさっきのフォロー助かりました。と感謝の念を込めて伝える。

 

「貸しひとつね。それよりもまだ終わってないよ」

 

貸しにされるのは全然構わないのだがと思いつつ、言葉を聞きながら目の前の光景を見て愕然とする。

立ち上がれる筈がない傷を与えたというのに、グールはゆらりと立ち上がり、こちらを睨んでいた。

 

腹部に与えた一撃は背骨すら断ち切った感触もある会心の一撃だった上、引き抜く際ひねりを入れて臓器にダメージを与える嫌がらせまでしたというのに、どういう訳か奴は苦痛に悶えながらも傷を時が巻き戻るかのように回復させてこちらを睨み付けていた。

 

「鱗嚇の喰種とはいえ、驚異的な治癒力だね。レートはSとして対応するよ。とりあえず安直だけど大鎌の喰種ってとこかな。私達で仕留めるよ。いいね?」

 

宇井先輩がタルヒを構え喰種を睨み付けながらSレートと仮認定する。そして二人だけであの喰種を抑えると伝えてくる。

 

「もちろん。いい加減新しいクインケが欲しかったんですよ」

 

俺はぼろぼろになった自らのクインケを見ながら了承する。

先程から防御に攻撃にと酷使した結果刃には細かく刃こぼれを起こし、柄は僅かながら防御した際に歪んでしまっている。おそらくあと1回かよくて2回全力で振れるかどうかだろう。

やはり高レート相手にはいささか火力、耐久面で不満がある。

それなりに愛着があるもののやっぱり新しいクインケが欲しい。なによりも安室さんには似合いません!

 

「俺、前に出るんで、あれの所有権もらっていいですか?」

 

そう言うと呆れたように、しかし苦笑いしながら宇井先輩が言う。

 

「威勢がいいのは、いいけど無茶するなよ。一人だときつそうだから」

 

そう言って、俺達は喰種に対してクインケを向け、憎々し気に睨む喰種へと対峙した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の若手捜査官が大鎌の喰種に対峙する。

一人は槍の形をしたクインケもう一人は斧のクインケを持つ。喰種はそれを見て表面上では腹の傷を完全に修復させたように見えるが、傷があまりにも深かった為どうやら修復は不完全らしく、喰種は苦痛の声を漏らしながら、言葉とは言えない咆哮を挙げ二人を威嚇した。

その様子からまともな思考を持っているのか非常に疑問で、獣を想像させられる。姿は正に手負いの獣といえる様相であった。

 

熟練の捜査官でも臆するであろう咆哮に対していくらも臆せず捜査官2人は喰種に向かって突撃する。喰種はその姿を見て赫子を弓を絞るようにしてぎりぎりと不快音を奏でながら背後に引き絞る。そうして近づいてくる二人に引き絞った赫子を力を開放するように必殺を期した刺突を繰り出した。

 

言葉となっていない絶叫を上げながら放ったその一撃は、並みの捜査官であればまさしく必殺であっただろう。来ることが分かっていたとしても弾丸と同じようなスピードで放たれた1撃をかわすことはそう簡単なことではない。威力も直撃すれば二人の捜査官は容易く真っ二つになる。しかし当たらなければどうということはないのだ。

 

その攻撃に狙われた二人の捜査官は並みの捜査官ではなかった。

一人は優秀な者が多く集められる有馬班の中で更にその中でも優秀と言われ、周りからは有馬班のホープとして期待される者であり、もう一人は新人でありながらCCGでも随一の反応速度と卓越したクインケ操術を持ち、CCGのジュニアスクールでは他を隔絶した実力を発揮して異例の飛び級を果たした異端者である。

そのような二人には、すでに狙いが丸見えな時点で、攻撃が当たる可能性は皆無であった。

 

宇井捜査官は上体を半身にし大きく上半身を後ろに引くことでかわし、安室は攻撃がくる直前にまるでどこに攻撃が来るか分かっていたかのように僅かばかり体をずらすことで、掠るかどうかの最小の動作でかわしてみせた。

 

その光景に喰種は僅かに驚愕するも、渾身の一撃を易々とかわした二人に更なる怒りがこみ上げ、伸びきった赫子に力を籠めると赫子は蛇のようにうねり出し、そのうねりで二人を鞭で打ち付けるかのように攻撃をする。しかし初撃と違い威力も速さもない攻撃で手数に頼るだけの攻撃では到底二人の捜査官に打ち付けることはできなかった。

二人は手に持つクインケでいなし、そして避けるなどして、二人は突撃を止めることすらなかった。

必要最低限の動きでかわした安室は全くスピードを衰えること無く喰種へと突き進む。宇井捜査官がいくらか避ける際に速度を落としたことにより安室が前に躍り出て喰種との距離をさらに縮める。

 

安室に遅れをとった宇井捜査官が安室の背後で何かを呟くと、喰種との距離が残り僅かという所で、遅れて横に並走していた宇井捜査官は喰種の視界から完全に隠れるように、安室の背後にぴったりとつく。

 

そして、ついに先頭にいる安室の一振りが喰種に届くであろう距離にせまったことで喰種は赫子では迎撃が間に合わないと判断し今だ完全に回復しない腹を押さえながらも迎撃の態勢をとる。それに応じるかのように先頭の安室による一撃が振るわれた。

 

放った一撃はスピード、重さも一流のそれであったが、喰種の優れた視覚をもってなんとかその一撃を反応し、後ろに一歩下がり上半身を背後に反らすことで喰種は回避する。さらにその回避姿勢から後ろにバク転を行いながら追撃してくる安室の顎に向けてムーンサルトを行うように器用にも蹴りを放つが、安室は首を傾げるだけで回避し後ろに下がる喰種を速度を全く落とすことなく追撃した。

 

すぐに喰種に追いついた安室は先程、攻撃を外したことに焦ったのか、攻撃方法を両手での大振りに切り替え、大きく横凪に振るう。しかし流石の喰種も何度も見れば攻撃の速度にもなれ、危なげなくその一撃を避ける。

そしてカウンターとばかりに攻撃を外して隙をみせている安室に一撃を放とうとしたその時、喰種の視界に安室の肩のやや上から、しなる刃が喰種目掛けて襲いかかるのが見えた。

その予想外の一撃に喰種は直ぐ様、回避しようとするが間に合わず、左肩に刃は深く突き刺さる。

 

実は安室の大振りの一撃は囮であり、真の攻撃は安室の背後にいることで喰種からは見えないように放たれた宇井捜査官が放つ一撃であった。その一撃に喰種は苦痛の声を上げ、痛みにより動きが鈍る。

しかしその鈍りは喰種を更に苦境に落とした。

かわしてくることを予測していた安室は宇井捜査官が放った1撃が喰種に突き刺さるのを確認してから更にもう一撃を放っていた。

 

喰種は苦痛の声をあげながら、生存本能によりとっさに前に出した手で安室の一撃を掴み掛かろうとする。しかしその一撃は喰種の手のひらの中指と薬指の真ん中に刃は綺麗に入り込みその一撃は肘まで切り裂いていった。

安室は再度致命を与える為、もう一撃与ようとした所で背後から首もとにひりつく殺気を感じて、横に転がるようにしてその気配から回避する。

 

殺気の正体は伸ばしきっていた赫子であった。その赫子を勢いよく戻したことで背後からの奇襲としたようだがカグネの存在を忘れるわけがなく宇井捜査官と安室はグールを深追いせずに回避に専念する。

すでに喰種は度重なる負傷で、動きを緩慢とさせており、接近戦に懲りたのか捜査官二人を近づけさせまいと残る気力で赫子を振り回した。

喰種の体は既に右肩に穴があき左腕は手のひらから肘までを縦に切り裂かれ既に両手は使い物になるように見えなかった。

再生も追い付いておらず最初の一撃でかなり消耗していたのか出血をなんとか塞ぐのがやっとのように見え、まさに満身創痍の状態である。

 

 

「鱗嚇とはいえさすがにタフだな次でしとめるぞ」

 

「了解」

 

短く言葉をかわすと二人は先程と同じく宇井が戦術パターンを安室につぶやき再度突撃する。

 

喰種は接近してくる捜査官に高速で赫子を振るうが全くあたる気配がなく喰種はその異様さに怖じけずく。このままでは殺される。 ここに至り、ようやく喰種は逃走を決断した。

しかしその判断はあまりに遅すぎた。

捜査官の安室の動きは既に赫子の動きに完全に対応しており、周りからみればぎりぎりでかわしていることから危なっかしくみえるがその実回避による無駄を限りなくなくすためであった。現に安室の突撃に減速はなく、回避行動をとっているにも関わらず、更に加速しているようにも見える。

安室に全く追いつくことができない宇井も背後からその動きを見て、こいつ何者だよ。と呆れていたりもしていた。

 

そうして喰種は再三に渡り接近を許してしまい、ついに安室のトマホークが首へと振られた。

既に多くの深手を負っていた喰種はそれを回避することもできず、その一撃を拒むように悲鳴を上げるばかりで、先程の抵抗が嘘かのように、容易く刃は喰種の首を斬り裂き首が地面に落ちていく。そして更に駄目押しといわんばかりに宇井捜査官の槍が心臓を貫く。

 

二人は瞬時に距離をおき喰種の様子を観察する。しばらく喰種の赫子は周りをのたうち回り体は酷い痙攣を起こしていたが、いくらもたたずに動きを完全に停止した。

 

「やりましたかね」

 

「やったな」

 

二人は完全に動きを止めた喰種を見て安堵し周囲を見回す。その直後轟音と共に壁が破壊され、有馬さんが顔をだす。

 

「無事か?」

 

有馬さんは相変わらずの無傷だ。壁の向こうを見るとそこには無数の喰種が散らばっている。しかしそこには

こちらの人間の死体も混ざっており、こちらと同様激戦だったのを窺えた。

 

「こちらは2名が殉職。生き残りは私と安室3等のみになります。」

 

宇井先輩が生嶋さんと東さんの無残な姿を見てそう報告する。

 

「そうか。こちらも被害がでた。丈の班もほとんど同じ状態だ。すでに損耗率が4割を超えた為、これより撤退を開始する。準備してくれ」

 

有馬さんは撤退を決めたようだ。俺は宇井先輩の指示のもと撤退の準備に取り掛かる。

俺は殉職した捜査官達に一瞬の黙祷を捧げ、敵を討ったことを報告し、思考を切り替えた。

 

 

「さてさて、赫包は無事かな?」

 

俺は、大鎌の喰種に近づきながら赫包の無事を祈った。初のSレートである。

立派なクインケになるに違いないと、喰種の体の傍で手をわきわきとさせ、にんまりと笑顔をむける。

 

そして背後から、さっさとしろよ。と若干引いた感じで宇井先輩から催促が飛んできたことから、慌てて赫包の取り出しを開始した。

 

 

その後、無事に赫包の回収を完了し、宇井先輩と有馬さん達と合流してその場を後にした。

 

 

こうして、配属されてから、何回目かの24区地下探査任務を無事完了させたのである。

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。