黄泉の世界へ   作:叶夢望

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今回も後味悪いバットエンドになります。今回は性転換ものですが、ソフトな描写なので気にしないでください。けど、一応R15指定しました。


美少女になりたい彼

ここは黄泉の世界。

ありとあらゆる生物が死した時、その魂がこの世界へとたどり着き、天国か地獄か、はたまた異世界行きか生まれ変わりかを決める世界である。あの異世界転生事件から数十年経ったある日ーーというか時間の概念はないが、とにかく神様と呼ばれるであろうイザナミの体感でその年月が過ぎていた。そんなイザナミの元へ、とある魂が彼女に話しかけてきた。

 

『あのぉ、生まれ変わりたいんですけど・・・』

 

魂の方から直接話しかける必要はないが、イザナミには彼らの気持ちが手に取るように分かる。どの魂がどんな事を要求したいのか、どこに行きたいかというのは、イザナミには長年の経験で分かってしまうのだ。しかし、未練のある魂は別だ。彼らは、事細かに要求してくるのだ。どんな場所に、どんな事を持ち、どんな事を目指し、どんな道筋をたどり、とある結果が欲しいといった具合で、いくらイザナミでも人の願いは盗み見れなかった。

 

「どのように生まれ変わりたいのかな?」

『絶世の美女に生まれ変わりたいんです。ちょうど貴女みたいな美女に』

「あぁ、なるほど・・・って、貴方男じゃあないの?」

『はい。それでも、貴女みたいになりたいのです』

 

男の要求に頭を抱えるイザナミ。稀に女の魂が美女になりたいと願いはあるが、初めて男が美女になりたいと言ってきたのは初めてだ。オカマと呼ばれる身体は男性、心は女性といった者がいるのだが、もともとの魂は女性のモノなので慌てず騒がすといったところで普通に叶えていたのだが、初めての事象に驚かずにはいられなかった。

 

『それと魂、といいますか、意識はちゃんとオレ、という認識がいいんですが・・・』

 

この魂は身体は女性で中身は男性といった物珍しいことを望んでいた。しかし、彼が女という身体に興味があるというのは分からないでもないが、彼は男性に恋するという所謂ゲイと呼ばれる者だろうか?

 

『オレ・・・女の子になりたいだけなんです。他のことなんてどうでもいい。勉強だって、部活だって何だって頑張りますから!お願いします!』

 

彼は男性とした人生と女性とした人生両方を手に入れたいらしい。特に問題ないのだが、彼は少しばかり欲張りすぎではないだろうか?しかし、こうも必死に頼まれると無下には出来ないので、イザナミは彼の頼みを聞くことにした。

 

『あ、それと、もしよろしければ、あなたもオレの姉かもしくは妹として生まれてくれませんか?』

「本当に何から何まで図々しいですねぇ、まぁいいんですけど」

 

たまには、またとある世界に生まれ育つにはいいだろうと彼の望みを全て叶えることにしたイザナミは彼の姉として転生することにした。

 

「では、あなたに二度目の人生に幸せがあらんことを」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

イザナミと彼が生まれ変わった十五年ほどが経った。

彼ーー否、彼女となった彼の名は西園寺美仁香(さいおんじみにか)であり、まさに才色兼備で完璧な女子と言っても過言ではない美女となっていた。

身長は170センチで真っ黒な艶々した長いロングヘアーは腰まで届き、たゆんと揺れる大きなFカップの胸、キュッと細いウエスト、やや大きな張りのあるお尻、甘くて癒やされる声でまさに究極の萌え少女といわんばかりの美少女であった。

対してその姉ーーイザナミは妹と正反対の容姿をしていて、まるで小学生にしか見えないほどちんちくりんの姿だ。背は小さく140センチほどで胸は真っ平らのぺちゃぱいであり、髪はツインテールに結び、本当に子供のような格好していた。それはそれで萌えるというものだが、決して狙ってそのような格好を自らやってはいなかった。

 

「くっくっく。どぉよ?姉さん?この美少女を」

 

西園寺美仁香は姉であるイザナミに身体を見せびらかす。彼女は身内や友達には男口調で話すことから男女問わず好かれる訳なのだ。もちろん、ナンパなど気の知れない者にも男口調で断っていた。

 

「あのぇ、美仁香ちゃん。ワタシに見せびらかせても得にならないよ?」

「いいやっ!得だねっ!姉さんはオレの身体に興味津々で顔をふてぶてしく膨らませる!そして、そんな顔が可愛いからオレは和むんだ!」

「・・・美仁香ちゃんを女の子にするからって力を与えたからこんな姿になった訳だし、別にいいし」

「もぉー!かぁわぁいいなぁー!いちいち可愛いー!」

 

西園寺美仁香はその大きな胸の脂肪でイザナミの顔をギュッと包み込み、頭を撫で撫でし、イザナミの髪をくしゃくしゃにした。数分間イザナミを好き勝手にした西園寺美仁香は光悦な表情を浮かべ、イザナミをようやく解放し、イザナミはフラフラとした足取りで学校へと向かっていた。西園寺美仁香は高校生なので、ありきたりな女性用の制服を着て、膝上10センチほど上げたスカートを身に纏い、くるりと思い切り回転。すると、イチゴ柄のパンツが見えてしまった。

 

「いやんっ!なんてね!くっくっく、本当に美少女って人生イージーモードだわー!くっくっく、あっーはっはっはっはー!」

 

西園寺美仁香は含み笑いが耐えきれず、大笑いしながら、我が家を出て、高校生へと向かっていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここは某県某高等学校。

全校生徒数が四百人ほどといった高校。

その学校へ行くには学力がある程度必要なエリート校で、その学校の入学テストで全ての教科をほぼ満点を叩き出した学生がいた。その学生の名は西園寺美仁香という生徒で、見た目は美少女、頭脳も完璧、小・中学生と共に運動の単位も好成績を出したことで、まさに完璧天才少女として学校中に知れ渡り、一週間も経たずに誰も彼女のことを知らぬ者はいないだろう。

彼女に告白する者もいれば、彼女にラブレターを送ったりとするが西園寺美仁香は男と付き合う気は毛頭無いのでやんわりと断り、その後彼女の非公認ファンクラブなる組織の構成員たちによってボコられて、彼女にお近づきになろうとするならば、またも彼女非公認ファンクラブによる制裁が下されていた。

女子にも好かれていて、稀ではあるが愛の告白をする者もいる。西園寺美仁香は少し戸惑いながらも、いい友達でいましょう、といった具合で逃げていた。

 

そんなある日の放課後、ありとあらゆる告白を受け断り続けた西園寺美仁香るは我が家へと向かう途中、背後から何者からの視線を感じた。西園寺美仁香は振り返ると数人の生徒や主婦らしき女性がいるが、視線の人物が誰なのかも分からないのだ。それに隠れることができそうな場所が数カ所ある。電柱やどこかの店などなど一人が隠れるにはうってつけだ。

 

「・・・誰だ?やっぱり、ストーカーとか?怖いなぁ」

 

西園寺美仁香は何度か振り返りながらも我が家へと向かっていくのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やはりおかしい、と西園寺美仁香が感づくのは数日後だった。学校へと向う途中や帰る途中で嫌な視線を感じ続けていた。これまでの彼女への視線は興味や関心といったプラスな感じではあったのだが、ストーカーらしき視線は嫌な感じではあった。

西園寺美仁香は両親やイザナミに何度か相談したが、それとなくフォローするといった協力を得たものの家族だからとはいえずっと共に行動ことはないだろうし、彼女だって、自由な時間だって必要なのだから。

 

「やっぱり気のせい・・・じゃないのかな?」

「暗い顔しちゃダメでしょ、美仁香ちゃん。せっかくの美人さんなのに」

「うん、姉さん。オレ、せっかく美少女になったから奥の手で警察でも何でも使うよ」

 

西園寺美仁香は唯一の望みを胸にしまい、もう少ししばらく様子をみることにしたのであった。

数日経ったある日もストーカーらしき視線を感じたので、それとなく警察に相談し、見回りを実施するようにと訴えかけ、警官数人によるパトロールが実施された。すると二~三日でストーカーらしき人物の不審者及び窃盗などの犯罪者を数人逮捕されたらしい。やった、と大喜びする西園寺美仁香は嫌な視線の苦しみから解放されると思った西園寺美仁香のその顔は爽やかで晴れやかな顔をしていた。

 

「むふふふぅ、やっとオレの快進撃が始まるぜぇ!」

「よかったね美仁香ちゃん」

 

ようやく自由になれたと大喜びの西園寺美仁香は今でも空に飛びそうで、背後に純白の翼がバサリと広がったかのような錯覚をもちそうだ。そんな西園寺美仁香はルンルン気分でスキップしながら学校へと向かい、教室の扉を開き大きな声で挨拶し、それに応じるようにクラスメイトたちは笑顔で挨拶を交わしていく。

 

「あれー?今日なんだか超元気だねー?なんかあったのー?美仁香ちゃん」

「うんっ!!すっごーくいいことっ!だぜ?」

「わぁ、もしかして彼氏ー?!キャーッ!」

「ち、違っ、違いますー!そんなこと違いますー!」

「へぇー!そうなんだー!よかったねぇ、美仁香ちゃんに彼氏かぁ。羨ましいなぁ、その彼氏が」

「だーかーらぁ!違うってば!誰が好き好んで野郎なんかを」

 

やいのやいのとお祭り騒ぎ。数人の女子たちとのガールズトークに花を咲かせ、とある女子は西園寺美仁香に抱きついたり、頬をつついたりとなんとも百合百合しい雰囲気を出しつつ、ただただ平凡な日々が過ぎようとしていたーー否、平凡な日々を過ごすべきだった、というべきだったか。

 

ーーーーーーーー

 

西園寺美仁香に不幸が起きずに済まさないまま、また数日が経ったある昼下がりのある日、その日は休日であった。西園寺美仁香は数人の友人を近場のショッピングセンターへと誘い、映画や食事、洋服などを見回り、小休憩として一人でベンチへと座りこむ叶夢望は、少し疲れたのか溜息を一つ吐いた。

 

「ねぇねぇ、キミ一人?俺らと一緒に遊ぼうよ!」

 

少しでも気を抜いたらナンパしてくる男たちに更に溜息を吐いた。何故、野郎共とデートしなければならないといけないかと、嫌な気分になる。

 

「あの、オレはツレがいるので。そっとしておいてください」

「お?オレっ娘?クールだねぇ?そんなの放っておいて遊ぼっ」

「いい加減にしてください。だから、ツレがいるって!」

 

眉間にしわ寄せて怒った表情を浮かべ二人のナンパを睨むーーが、男たちの方が身長高いので、必然的に上目遣いになってしまった。

 

「おぉっ!怒った顔も可愛いなぁ!いいからいいから!」

 

男たちは西園寺美仁香の腕を引っ張り、強制的に歩かせショッピングセンターから出てしまい、十数分したら人気のない場所へと誘われた。

 

「く、くそっ!は、離せ!」

「くぅ~!勇ましいねぇ-!」

「大丈夫!僕たち、優しいから~、なァ?」

 

クスクスと邪悪な笑みを浮かべるナンパ男たちは、力の限り叶夢望の腕を引っ張り、ホテル街へと直行。そして適当な空き地を見つけ、西園寺美仁香を投げ捨てた。

 

「クスクス。ごめんねぇ、俺たちお金がないんだよねぇ~。だ、か、らぁ~お外で少~し恥ずかしい目にあうだけだから、さ?」

「そうそう。キミだって、少しでも安い方がいいだろ~?ん?」

「た、た、たす、け、て」

 

恐怖、恐怖、恐怖。ただ恐怖する西園寺美仁香。恐怖のあまり口がうまく回らない。誰かに助けを求めても助けてはくれないだろう。逆に、彼らの加勢になるかもしれない可能性もある。携帯などで連絡する手段があっても彼らはそう簡単に許してはくれないだろう。

 

「あぁ、大丈夫。きっとーー気持ち良くなるから、ね」

 

彼の言葉を最後に西園寺美仁香は意識とその日に起きた記憶を失ってしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

西園寺美仁香には昨日の記憶がスッパリと消え去ったので、いつから自分の部屋のベッドで寝ていたか忘れていた。姉であるイザナミが何故か悲しそうな目で見つめているのか分からなかった。

何故ーー何故自分が涙を流し続けていたのか分からなかった。

 

「やぁ、美仁香ちゃん。人生イージーモードなのに悲しそうな顔してるんじゃあないよ?」

「・・・ね、姉さん・・・お、オレは・・・」

「キミは望んだはずだよね?美少女になりたい、てさ?」

「でも、不幸なことを望んだ訳じゃないし」

「おいおいおい。人生はそんなに簡単にいくものだって、ワタシ言ったかな?」

「・・・お、オレはこれからどうしたらいい?この不幸から」

「人は幸運や不幸どちらも経験するんだよ。それを受け入れるのも人の使命だ」

 

人の人生なんてそんなものだ。たかだか可愛いからって、たかだか頭がいいからって、たかだかスタイルがいいからって、たかだか人に好かれようが人気者だろうが八方美人だろうがただそれだけにすぎないのだから。

 

「ーー特別になかったことにしてあげたよ。キミが汚されたことも、あの連中も、これからのナンパされる事象もね」

「だから記憶が消えた?のか?」

「でも、心の傷は消えていないよ。キミは元々魂だけの存在だったのだから、少なからずなんとなくだけど覚えているーーでもやっぱり覚えていなくもないんだ」

「どっちなんだよ姉さん・・・うぅぅっ」

 

西園寺美仁香はイザナミを抱きしめながら泣き続けていた。イザナミは頭を優しく撫で、優しい言葉をかけ、優しく包み込んだ。なんだかんだで西園寺美仁香の姉なのだから、妹を守るのは当然だ。

 

「さて、美仁香ちゃん?今のキミは男に対して疑心暗鬼になったのだろう。だから人生は少々ハードモードになるかもしれない。もしかしたらもっと厳しいかもしれない。それでも、キミはーー」

「何がなんでも抵抗してやる。噛みついてでも大暴れで抵抗してやる!そして返り討ちにしてやる!よくもオレに手を出したな!てな」

「うん、百点満点の答えだよ美仁香ちゃん。だから気に入ったよ」

「オレも姉さんが好きだよ?幼女だけど」

「こらぁ!美仁香ちゃんより一つ年上なのにー!むきゃー!」

 

西園寺美仁香とイザナミは仲良くお互いの頬を引っ張り合ったり、脇腹を擽りあったりと喧嘩していたが、その顔はまるで向日葵のような明るくて綺麗な笑顔だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

西園寺美仁香に不幸が起きずに過ごすこと数ヶ月が経った。

彼女には友達が十数人に増え、いつも彼女の傍には数人の女子に囲まれていた。

 

「美仁香ちゃんって可愛いなぁ」

「シャンプーとか何使ってるのー?」

「良い匂いー!クンカクンカ」

 

少しばかり頭がおかしい変な女子が含まれているが西園寺美仁香は気にしないでおき、それでも自分を好いているのだからそれくらいはいいだろう。彼女が元気でいるだけでこんなに周りが賑やかになるということが彼女にとって幸せであった。

 

「こらぁ!ベタベタするんじゃない!」

「キャッ!怒った~!可愛いー!」

「本当に可愛いなぁ美仁香ちゃ~ん」

 

数人の女子による百合百合しい雰囲気にゴクリと喉を鳴らす思春期の男子たちはただそれを見守るだけだった。彼女は本当に可愛い、麗しい、人懐っこい、癒やされる、常に傍に居させたいーーそんな気持ちでいっぱいいっぱいだった。ただ一人の少女でこの有様であるので姉のイザナミも稀に彼女のクラスに遊びに来た時には本当に大騒ぎで、お祭り騒ぎだった。

 

「わぁ!イザナミちゃん先輩!いらっしゃーい!」

「イザナミにゃん先輩!こっちこっち!」

「イザちゃん先輩今日もプリティー!」

 

彼女は後輩にも子供扱いされるが、やんわりと怒りながらもスキンシップを交わしつつ、少し不機嫌な表情を浮かべるもすぐにはキラキラした笑顔になっていた。

 

「本当にキミたちは先輩をなんだと思っているんだい?ワタシを怒らせたら怖いんだよ?」

「はいはいイザナミちゃん先輩は怖い子ねぇ~」

「本当本当っ!でも、怒った顔のイザナミにゃん先輩も可愛いっ」

「うぅ、美仁香ちゃ~ん、助けて~」

「クスっ。はいはい姉さん」

 

今日も平和に過ごしていた。きっと明日もその次もその次も平和に暮らせるだろうと思っていた。そう思っていたはずだったのが

 

ーーニヤリ

 

西園寺美仁香を気味の悪い笑みを浮かべ教室の扉の隙間から見守った黒い影がまた一つ存在することはまだ知らなかった。

 

「やれやれーー本当に美少女の人生なんてそんな簡単なものだとは思わないのにね。安心するのはまだ早いっていうのに、ね」

 

イザナミはその影をチラリと見て誰も聞こえないように囁く。彼女ーー否、彼はこれからも大変なことになるというのにどこか呑気で、甘くて、鈍感で、ただただ適当で本当にーー

 

「大甘だよ?美仁香ちゃん」

 

イザナミはこの世界の全ての人々に自分に関する記憶を消し、黄泉の世界へと還っていったのであった。

 

 




後味悪いですねぇ、私の作風は基本的にぼのぼの系なのですが、結構こういう話が作れる事が嬉しいと思います。感想お待ちしています。
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