そういえばと、なんだかんだで部活動に何も入っていないなと思いだしたオレは全ての部活動の見学をしたのだが、なんだかビビっとくるというものがない。
ただオレが何事にも無関心なだけなのだろうかと心配していたが、心優しい委員長が相談にのってくれた。
「くすくす。入りたい部活動がなければ作ればいいじゃないか」
「それだ!!」
やはり委員長は頼りになる。だからクラスメイトにはもちろん、学校中の生徒たちに慕われている。
「で、何をしたいんだい?」
「オレは・・・友情というものを研究したいんだ!」
委員長は困り果てた顔でオレのことを見つめていた。誰だってそうなるだろうな。
「男同士の友情や女同士の友情は分かる。が、男女間の友情はどうなのかを研究したいんだ」
「なるほどね。でも、最近の研究で、男女間の友情は無いと出てるよ」
「それは知っている。だが!オレは納得出来ない!ただそれだけだ!」
「何を声を張っているんだい・・・ま、気持ちも分からない訳でもないけどね」
「他にもやりたい研究があるんだ。宇宙人がいるのか未来人がいるのか・・・他多数!」
「欲張りだねぇ」
委員長は、やれやれといった表情でオレを冷たい目線で見つめた。
「うーむ、キミがいろんな研究がしたいというのは分かったが、ジャンルが定まらないね」
「そうなんだよ」
「ふむ、では『なんでも研究部』という部活名にしたらどうだろう?そしたら全てのジャンルでも難なく研究出来るだろう」
「っ!!」
委員長の言葉にオレの脳髄に電流が走ったかのように身体が動けない程、驚きを隠せない。ちょっとジーンときたのは内緒だ。
「キミってやつは・・・なんて優秀なんだっ!」
「くすくす。よしてくれよ。照れてしまうじゃないか」
委員長は頬を赤らませて髪をいじっているのだが、どうしたのだろうか?風邪かなにかだろうか?
「な、なんでもないっ!それよりもだっ!」
顔を真っ赤にして顔をずいっと近づけて思わず「うおっ!」と言って仰け反ってしまうオレ。
だが、そんなオレに構わず委員長は話を続けた。
「部活動を作るには最低四人、それと顧問が必要となるらしいっ!」
「マジでか?それと声が大きい」
「うっ・・・」
委員長は落ち着きがないようで、いかにもまだ子供らしさを残していた事にオレは和んでいた。
「顧問はどうにかなるとしても、部員はどうするんだい?」
「うーん、無理なお願いしてもオーケー出すオレの友達を巻き込むとしても一人しかいないなぁ・・・」
思い浮かぶはオレの友人。オレのことを相棒と呼ぶアイツだ。
「思い当たる人物は他にいるんじゃないか?」
「え?でも、他には・・・」
「ほら、目の前にいるじゃないか」
オレの目の前には少し頬に朱を染めている委員長がいた。まさかとは思うが・・・
「くすくす。キミの思い通りだよ、ワタシもその部に入部したい」
「マジすか?!」
「大マジだよ。キミの話は大変興味深いし、なによりも部活動を作るという体験もなかなか無いからね」
委員長はニッコリと笑顔を浮かべ手を差し伸ばす。どうやら、握手を求めているだろうか?
「だから、キミさえよければ入部させてくれ。頼むよ」
オレはその手をガシッと握り締めて微笑んだ。
「ああ、いいぜ。面白い部にしょう!」
「くすくす。これで部員は三人だ。あと一人は・・・どうしようか?」
委員長は非常に困った顔をしていた。オレもそれにつられ困った。どうしたらいいのだろうか?
「うーむ、ワタシの友人は全員部活動に入っているからね。かけもちさせるのも大変だし・・・」
「オレの他の友人も部活動に入っているからなぁ・・・どうしよう」
「そうだ、他に部活動に入っていない生徒に頼んでみようか。何もしないよりはマシだ」
「あぁ、そうだな!」
こうしてオレたちの部員探しの旅が始まったのであったが
「収穫なしか・・・」
生徒の九割以上が部活動に入っていて、かけもちはさすがにキツいという理由であえなく惨敗。部活動に入っていなくても家庭の事情や習い事などの理由でやはり惨敗した。
「うーん。もっと早めに部活動を作るということに気づいていれば可能性があったのに・・・」
愚痴をこぼさずにはいられないオレだが、やはり部活動を作るのは大変なのだ。
「まぁまぁ。でも、もう一人とても戦力になりそうな人物がいるじゃないか」
「な、なに?!だ、誰だ!」
「それは・・・番長だよ」
委員長の言葉に唖然とするオレ。確かに言葉通りに戦力になると思うのだが・・・
「ちょっと待て。番長が誰なのか知っているのか?」
「いや、知らないよ?」
委員長は、あっけらかんと答えるがそんなに堂々としているとかえって潔く見える。
「これも部活動の一環として、調査したらいいじゃないか。もしも番長を特定することが出来ればこの部はかなり有名になるはずだよ」
「なるほど。部員集めにはもってこいの話だな」
「その通り。では、調査を始めようではないか」
こうしてオレたちは番長を探し回ることにした。
ーーーーーーーーー
番長に被害を受けた人物を探すとすぐに見つけた。この学校の生徒の数人が被害を受けたという生徒の話を聞くことにしたが・・・
「どうやら、記憶がないらしいんだ」
「自分もなんだよ」
「ケガもないし、盗られた物もないし不思議なんだよなぁ」
被害者全員が口を揃えて記憶がないと言い張る。それでは番長の仕業だとは言い切れないのではないだろうか?
「でも、誰かに声をかけたことは覚えがあるんだよ」
「うん、自分も」
「それで何故か気を失ってそれから先がどうしても・・・」
番長は被害者の全員をかなりの高確率で記憶を操っているのだろうか?もしそうだとしたら、催眠術師の類の者かもしれない。
「ふう、参ったね。相手の記憶を失うというものは面倒だ。ワタシが見つけても記憶をなくしては意味がない」
」本当にどうにかできないのか?」
「ならば、もっと確実に番長の正体が分かるような人物を探そう」
「なに?!そんなやついるのか?」
「あぁ、もしもいるとするのであればの話だがね」
ーーーーーーーーー
委員長がとある男子生徒を引き連れてオレの目の前にニッコリと笑いながらその人物を紹介した。
「彼は被害者ではないが、とある被害者の被害を見ていた人だよ」
「ふむ、証人というやつなのか?では、番長の正体がやっと・・・」
「くすくす。やっとの思いで見つけたよ。さぁ、ワタシたちに話してごらん?」
「ええ、あれはー--」
ーーーーーーーーー
ボクは数人の友人と共に下校している最中でした。
「ぎゃはははっ!マジでぇ?」
「そうなんだって」
友人たちといつものようになんてことのもない雑談をしながら、とある友人の家へと向かっていたんです。
「もうテスト期間とか早くね?俺、全然勉強分かんねぇけど」
「だからアイツの家に向かっているじゃん!勉強会するためにさぁ?」
ボクたちは、そのとある友人宅で勉強会を開くという予定があったのです。
「俺ら真面目だなぁ・・・お?あれは・・・」
その道中、数メートル先のところで屈強の数人の男たちがとある人物に絡んでいたのです。
「な、なにかの事件なのか?」
ボクたちは驚きを隠せないままその場を去ることも出来ず、恐怖で足がすくんでしまったのです。
「完全にやくざかなにかだろ・・・こえーっ」
屈強の男たちは全員坊主でサングラスをしていましたから、もう完全にやくざ関係の人たちだろうと思ったのです。
「絡まれているヤツかわいそうだな」
「でもここからじゃ遠くて分からないし、何よりあの人たちが壁になって見えづらいのもあるし」
ボクたちは絡まれている人物を心配するしかありませんでした。ボクたちは喧嘩なんて出来ませんし・・・何よりも怖かったのもありませんでした。実に不甲斐ないです。
しかし、ボクたちは信じられないものを見てしまいました。
バタリ、と次々に倒れていく男たち。何故か自分の胸を掴みながら苦しそうにです。
「~~~っっ!?」
ボクたちは目を疑いました。でも、きっと返りうちにしてしまったのではないかとは思ったのですが、どうやら違ったんです。
何故、違うと言い切れるのか?ですか?
それはボクたちがその男たちに勇気を振り絞って近づいて様子を見てみると・・・
その男たち、その顔に朱を染めつつ満面の笑みで倒れていたのです。
そして、未だに胸を押さえていたので少しだけ掴んでいる手を振りどけると、胸には特に傷らしきものが見受けられませんでした。
そしてそのことより、ボクたちは番長の仕業だと確信してしまったんです。
ボクたちは、先ほどの絡まれた人物が番長なのではないかと探しましたが、もう数十メートル先まで走っていたので、シルエットしか分かりませんでしたが、これだけは言えます。
「・・・女の子?」
そのシルエットはスカートらしき服を着ていたのか、フワリと下半身の服が浮いたからなのです。
ーーーーーー
「ーーーということで、番長は女の子ではないか、と・・・」
目撃者の話はとても参考になったのだが、番長が女だと確定してしまった以上、驚きを隠せないオレと委員長。開いた口が塞がらないとはこのことだ。
「くすくす。なるほど、非常に役になった話だったよ、ありがとう」
「い、いえいえ、なんてこともありませんでした。それでは、ボクはこれで失礼します」
目撃者はそう言ってオレたちの前から立ち去った。
「ふむ、これで番長は女の子だと確定しちゃったが、キミはどう思うかい?」
「う、ううむ、信じられない。だが、今まで以上に番長の正体が掴めにくくなるな」
「ああ、その通りだ。もしも男だったとしたら、より効果的に探しやすいだろう。何故なら・・・分かるだろ?」
「あぁ、やはり強そうな目つきや身体つき、喧嘩強さや全体の見た目像で分かりやすくなるだろ?」
「その通り。しかし、女の子の場合が非常に探しにくい。ワタシは委員長だから一年生女子と悩み相談やその他もろもろで顔を会わせることが多いが、見た目で番長と思わせる女子は絶対いなかった」
「しかし、見た目重視だろ?」
「ああ。あと、おしゃべりもしたが、皆いい子だったよ」
「表ではそうだったりして」
「それはない。自慢ではないが、ワタシは嘘を見破れる自信がある。だから皆は本当にいい子なんだ」
「怒ったりしたら性格とか変わるとかは?」
「それはあると思うが・・・見知らぬ男たちに絡まれたら恐怖で怒るはありえない。ま、恐怖のあまりに性格がころりと変わる可能性はあると思うが、無傷で相手を倒すという話があるから関係がないだろう」
「確かに。豹変したとしても、手を出さないとは限らないし・・・」
「そう、そこが重要なんだよ。そしてそのことより、番長は性格うんぬん関係なく、より確実に手を出さず相手を失神させ、さらに記憶を失わせることが出来る女の子ということが分かるね」
「もはやなんでもありだな・・・」
次々と番長の正体像が判明するが、本当に何者なのだろうか?分かれば分かる程、謎は深まっていくのであった。
「さて、今日はこれくらいにしておこう。ずいぶんと長話してしまったからね。また、明日」
こうしてオレたちの活動は終わったのだが、まだ部活動として認められていないので早く認められるように努力しようと決心するオレなのであった。番長探しから数日経ち、ある日の放課後のこと。
「もしよろしければ外を徘徊しないかい?もちろん、番長探しにね」
委員長の突然の誘いに驚きを隠せないオレなのだが、断る理由もないので了承した。
「くすくす。もしかしたら番長は学校が終わった後すぐに帰るかもしれないからね」
「ああ、そっか。番長は部活動に入っていないかもしれないしな」
「だからといっていつも通りに行動している訳ではないだろう。何せ、番長は女の子だからどこか寄り道なり友達の家に遊びに行ったりする場合もあるだろう」
「それを言ったら永遠に見つけられないのだろ・・・」
「くすくす。それもそうだね」
こうしてオレたちは街へ向かうことにしたのだが、後ろからドタドタと勢いのある足音が聞こえてくる。
「待てぇぇーいっ!」
オレの友人だ。オレの友人が憤怒の形相でオレたちのもとへ走っている。
「その話、俺も混ぜろやぁー!」
何故かやくざ口調で迫ってくる友人。久しぶりの登場でやる気満々なのだろうか?
「いいじゃないか?なぁ委員長」
「う、うむ。人数が多いほどいいからね」
オレたちは気さくに了承した。その言葉を聞いた友人はグッとガッツポーズをして喜びを隠しきれないでいた。
「あ、委員長。ちょっと相棒と話あるから、ほんの少し相棒貸してくれ」
「ああ。いいとも」
誰が誰の相棒なのか、オレは物じゃないぞ、というツッコミを胸に留めつつ、委員長から少し離れたところで話始めることにした。
「おいテメェ、なに委員長と仲良くしてんだコラ?シバくぞ」
友人は完全にやくざになっていた。しかし、オレは落ち着いてこのやくざ友人を落ち着かせることにした。
「別になにもしていないし、しようとも思ってない」
「嘘だっ!今さっき二人きりでお出かけしようとしてたじゃん!」
「はっ!いつの間に!」
「自覚なしなのか!?」
オレはどこか抜けているらしい。
「つまりお前も連れていけばいいだろ?いいよ」
「ダメと言われても力づくでついていくぜ!」
グッと親指を立ててパチリとウインクする友人。それに少しイラつきながらも友人の話は終わったようなので、委員長と共に街へと向かうのであった。
ーーーーーー
「見たまえーっ!これ可愛いだろー?」
オレたちは何故か有名な衣服店に入っていた。本当に何故なのだろうか?
オレと友人は困っていたのだが、委員長は大はしゃぎだ。
「番長だって寄り道するかもしれないだろ?だからその調査なのさ」
という委員長の言い分なのだが、本人はそんなことは忘れているのだろう。
「あっ!これも可愛いなぁーっ!試着するとしよー!」
委員長はまさにキャッキャッウフフという表現に相応しい程、はしゃいでいる。
「なぁ、相棒」
オレたちは完全に蚊帳の外で何もすることもない。するとしたら友人との会話だろう。
「おい相棒!」
「なんだよ。ていうか相棒じゃねぇし」
「もういいじゃないか。それより委員長ってさ、やっぱり可愛いよなぁ」
友人はニヤニヤとした気色の悪い笑顔で委員長を見つめる。
「確かに。あとお前、気持ち悪い」
「普段はクールなのに、洋服屋であんなに、はしゃいでいる姿みるとすごく胸にときめくけど・・・どうしたらいい?」
友人は委員長に完全に虜になっている。目がハートになりそうな勢いで委員長から目を離さないでいた。
「お前が先に番長を見つけたら、少しは前進するだろうな」
「なるほど!それで二人の距離が一気に縮むというわけだな!それじゃ行ってくる!」
友人は全力疾走で店の外へ出てしまった。本当に友人は委員長に惚れているのだなと確認できたオレなのであった。
「おや?キミの友人はどうしたんだい?」
買い物を済ませたのか委員長の手には買い物袋がぶら下がっていて、顔を見ると晴れやかな表情を浮かべていた。
「なにか急用を思い出したとかなんとかで帰ったよ」
「ふーん。ま、今日は少し遅くなったから早く帰るとしよう」
委員長は当初の目的を完全に忘れており、帰ると言う始末。
ここで番長のことを言い出すとどうなるか気になるが、そっとしておいた。
「くすくす。いい買い物をした。またいつか買い物をしたいものだ」
「おう。自由にしてろ」
オレたちは店を出て、委員長と肩を並べて帰ることにした。
「・・・くすくす。初めてだよ。こうして同じ年の男の子と一緒に買い物したり帰ったりすることなんて」
委員長は突然語りだした。委員長はオレなんかとは釣り合わないと思わせるほど美人なのだからそんなはずはないのだ。
「またいつの日かこんなふうに二人で歩き回りたいのだが、また今度誘ってもいいかい?」
委員長のお願いに特に断る理由もなく簡単に了承した。
「くすくす。ありがとう・・・おや?」
委員長は何かに気づいたのか突然つかつかと前の方向へ早歩きしていく。オレもそれについて行き、委員長は突然足を止めて建物の影へ隠れていた。
「見たまえ。数人の男たちが誰かに話かけているようだ」
委員長は小声でオレにそう伝え、オレも隠れてその様子を窺うことにした。
「ふむ。ここからじゃ声が聞き取れないが、ワタシは目がいいから絡まれている人物は女の子だと分かるよ」
どうやら数人の男たちは女の子に絡んで何かを企んでいるらしい。
「さらに特定するとワタシたちと同じ高校の学生だ。制服が目につくよ」
まさかまさかの同じ高校の女子生徒が数人の男たちに絡まれているらしい。
「!!?見たまえ!」
委員長は興奮して指差しながら見てみろというのでオレも見てみることにした。
「・・・!!・・・!」
何かしゃべっている男たちとそれに怯える女子生徒。顔は見えないが、身体がプルプルと震えていた。
「・・・っ」
女子生徒が震えだしたと同時に男たちは自らの胸を押さえつけ、苦しむような仕草をした。
「な、なに?なにをしたんだ?あの子はなにもしていないはずだ」
委員長は驚きを隠せないでいたがオレも驚きを隠せない。なにも暴力のような仕草はなかったはずだ。
「・・っ」
すると男たちは胸を押さえつきながら次々と倒れてしまった。
「!!?ば、番長だ!番長が現れたぞ!い、いくぞ!」
委員長はオレの手首を握って女の子のもとへ猛ダッシュした。
「ちょ、ちょっと!」
オレの言葉が聞こえないほど興奮している委員長の足はさらに加速した。オレは手首を握られていてバランスをとれないでいて委員長の足についていけないがなんとか踏ん張った。
番長らしき女の子は男たちの絡みで恐れたのか背を向けて走っていくが足が遅いので数分もしたら追いついていた。
「はぁっ!はぁっ!見つけたぞっ!」
オレたちはその女の子のもとへ到着し、女の子を捕まえることに成功した。さて、この女の子は番長なのだろうか??