「zzz……」
「……はて?この人をどうしたものか」
どうしたものかこの人。
俺に抱きついてぐっすりだよ。
「zzz……」
動こうとするとより強く抱きつかれる。
つまり、動けない。
空はすっかり茜色。もうそんな時間か。
……というか今思ったけど綺麗な人だな。
顔も整ってるし、スタイルも良いし。
「zzz……うーん」
あ、起きた。
なんか寝ぼけてそうだな。
「おはよう」
とりあえず挨拶。
「んー、おはよう~」
眠そうな顔。あらら、頭に草が付いてる。
「草付いてるよ」
ひょいとそれをとってやる。
「あ~り~が~と~」
「どう致しまして。それよりも一旦放してくんない?起き上がれない」
「うん~、わかった~」
ゆっくりと腕を外してくれる
やっと話してもらえた。…………あ。
「そういえば名前は?」
聞いてなかった。
「私は辰子~。キミのお名前は~?」
「俺は綾也。よろしく。あ、呼び方タツでいい?」
「良いよ~、よろしくねリョーヤ君」
ぐるるるるる~
あ、大きなおなかの音。……タツか。
「あはは~、お腹鳴っちゃった~」
そう言ってすっと立ち上がる。
こうして見ると、すごい背が高い。それにこの人、かなり戦い慣れていそうだな。
そういう身体をしている。それにかなり素養も高そうだ。
まあそんな事よりも、
「腹減ってるの?じゃあ家来る?」
食事に誘ってみる。
すると表情がパッと明るくなるが、直ぐ表情を落とす。
「私家族のご飯作らないといけないから~」
そういうことか。ならしょうがない。
……ん?なら……
「別に家族も一緒で良いよ?」
どーせ大量に作るし。
「いいの?じゃあ家族に連絡するね~」
タツ大はしゃぎ。といってもモーション小さめだが。
今日の晩飯は大所帯になりそうだな。
……頑張りますか。
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……タツの家族は何というかまあ、ずいぶんと
ドSな感じのお姉さんに刺青入れた弟さん、めっちゃテンション高い妹さん。
「こいつが辰姉の知り合いか?飯食わせてくれんだって?」
笑いながら話しかけてくる妹さん。
「そうだよ。俺は綾也、キミの名前は?」
そう言うと顔が一気に不機嫌そうになる。
あれ?なんかやばい事言った?
「ほら、天、自己紹介しな。私は板垣亜巳、辰子の姉だよ」
「あ、御閃綾也です」
きちんと挨拶しておかないと。
……というかさっきから尻に視線を感じる。
「俺は板垣竜平だ。……てめえいいケツしてんな」
ひぃっ!こいつ同性愛者か!
「……よろしく。そっちの気はないぞ!」
そうだ!俺はノーマルだ!
きちんと言っておかないと掘られる!
「ほら、天」
おずおずと口を開く。
「…………えんじぇるだ。ウチのことは天でいいぞ!」(笑ったら殺す)
えんじぇる?確かに変わった名前だな。だから言いたくなかったのかな。
「えんじぇる?可愛らしい名前だと思うけど。確かに発音もしやすいし俺も天って呼ばせてもらうよ。よろしく」
(ウチの名前が可愛らしい?そんな事を言われたのは初めてだぜ。)
?なんか顔が赤いな。まあ良いか。
「もうそろそろご飯できるんで中入りましょうか」
そう言ってぞろぞろと中へ入っていった。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
その後板垣家の皆さんを瞬と葵に紹介して今飯の真っ最中だ。
「天てめえそれは俺の肉だ!!!!!」
「ちげえ!ウチの肉だ!!!!!瞬!」
「いや、俺がもらうぜ!」
ある人曰く、鍋は戦場だという。
いま、この場において、セーフティーゾーンは口の中のみ。
取り皿の中など鍋の中と同じ。
そして、このすき焼きにおいて肉の獲得はかなりの難易度を要する。
すなわち、天と瞬と竜平以外もきっちり肉の獲得争いに参加していた。
「お前ら行儀悪いぞ」
ひょいと横の肉をかっさらう。
「「「あ!」」」
「そうよ、自重しなさい瞬」
と言いながらひょいと肉をかっさらう。
結局のところ他も食べているのに相当なハイペースで平らげている綾也が居るからではあるが。
「そう言いながら食ってんじゃねえかお前ら!」
その分白滝とかも食ってんだろ。
肉だけ狙って他殆ど食ってない奴が文句だけいっちょ前に言ってんじゃあねえよ。
「きのこでも食べてなさいよ」
瞬の皿に大量のきのこ類を放り込んでいく。
良し。ついでに俺も。
「綾也まで放り込んでるんじゃねえよ!」
もう皿はきのこの山。瞬も涙目だ。
流石に少し可哀想だな。
「あはははは!ざまあみろ瞬!」
天が瞬を笑う。
お前も肉しか食べてないだろ。
「天ちゃんも野菜食べなよ~」
「あ!」
どさどさと白菜やらが放り込まれていく。
「竜、あんたもだよ」
こちらにも大量の白菜が。
「何ぃ!」
頭を抱える三人。ご愁傷様。
「………………しょうがないな。とっておきの肉を出してやるから三人ともさっさとそれ食っちまえ」
「マジで!」
「やったぜ!」
「俺これ食いきったら腹一杯に何じゃねえかよ」
……ほう?
「じゃあ竜平は和牛の肉無しな」
「わ、和牛!い、いや、何でもねえ!くえるぞ!」
現金だなー。
そのまま騒がしく夕食は過ぎた。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
「今日はありがとうね~」
「別にかまわないよ?こっちも楽しめたし。またきなよ」
「うん、わかったよ~またね~」
「うん。また」
そう言って手を振りながら夜の街へと消えていった。
…………to be continued……⇒
遅くなりました。13話でした。
大所帯の鍋は戦場ですよね。
誤字脱字、意見、アドバイスありましたらお願いします。