若獅子タッグマッチトーナメント。
開催決定から数週間しか開催までに時間がなかったにも関わらず、全世界規模で腕自慢が此処七浜にやって来ていた。
会場は活気に満ちあふれ、選手達のやる気の高さが伺える。
綾也は会場の熱気がキツいと言って外をふらついている。
実際腕自慢の方々は筋肉隆々の方が多く、会場及び控え室は暑苦しい感じである。
もう予選は開始され、既に多くの腕自慢が敗退している。
参加人数が多い分、予選落ちしてしまう人も非常に多いのだ。
予選が開始されてから40分ほどたった頃、綾也は会場に戻ってきた。
控え室では世界各地の言語、綾也が分かるだけでも英語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、オランダ語、ロシア語、が聞こえており、この大会が世界規模であることを実感させる。
男性が多いのはもちろんだが女性も想像以上に多い。
男性に限らず女性が強いというのはもう全世界共通のことなのかも知れない。
身体能力で上回られたら男性陣形無しなのだがこれが現実。女は強い。
……さてはて綾也なのだが次の試合が予選第一試合ということで準備運動を始めたのだがあまりにテンションが低い。
何故ならばこの男、極端に湿度によわいのだ。
暑さだけならまだしもこの湿気はキツいのだ。
そしてこのチームもう一人のメンバー、こちらもテンションが低い。
こちらの理由も至って簡単。チーム名がアレなせいだ。
「おーい、小冬。そろそろ出番だ」
テンションの低いまま二人は予選の舞台へと向かう……
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『予選一回戦第十二試合!会場も益々盛り上がって参りました!次の試合は"ファンシーチーム"対……』
このファンシーチームは相手の名前。
随分とふざけた名前だが相手は筋肉隆々の大男。
何がファンシーなのかと問いかけたい容貌だ。
そして問題の綾也のチーム名は……
『"線香花火"です!』
何故線香花火?と会場の殆どの人が思った。
最初は御閃の閃を取って閃光にしようと思っていた筈なのだがいつの間にかこうなっていた。
原因はもちろんこの男
「師匠、このチーム名何とかならなかったんですか?」
「ならなかった」
御閃綾也である。
「ふざけた名前だな!貴様ら!」
「「お前らにいわれたくねぇ!!」」
十分どちらもふざけた名前である。
『正直、私はどちらもふざけた名前だと思うが』
武神にそういわれる始末である。
……とりあえず気合い入れ直そう。
「まあいいやそれは。……で?あんたらのどこがファンシー何だ?」
そういうと目の前の大男の一人が口を開き、
「我々がファンシーなのではない!我々はファンシーの良さを世に広め、ファンシーを愛する者の強さを世界にしら知らしめるために此処にいるのだ!」
……アホかい。
「……小冬、ファイトだ。任せた」
「丸投げですか師匠!?」
「元々そういう話だったろ?」
「相手こんなのじゃないですか!」
あ、やべ言い過ぎだろそれ。
「こんなのだと……」
やっぱり。
「我々ファンシーを愛する者をこんなのだとぉぉぉ!」
大男が小冬に殴りかかる。しかし、
「何!?」
そのパンチは片手で止められていた。
「この程度ですか?」
そしてそのまま空中へと放り投げて構える。
そして全身の気が研ぎ澄まされてゆく。
「御閃流、
小冬が放った斬撃が蛇のようにうねり、相手を襲う。
そして、直撃すると同時に落下した。
「ファ、ファンシー斎藤ぉ!」
斎藤って名前だったのか。
それにしてもいきなり大蛇を使うかよ。流石に手加減しているとはいえ若干やりすぎのような……
斎藤さんが気絶していたのを確認し、勝利のコールがされる。
『つ、強い!空中へ放り投げた相手を一瞬で叩き落とし勝負を決めた!』
『闘っていない方も強いからなー。ここは優勝候補だなー』
とりあえず、まず一勝だ。このまま――
その時はそう思っていた。
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若獅子タッグマッチトーナメント予選三回戦第二試合
予選二連勝をし、快調に予選を勝ち抜いていたのだが。
『予選三回戦第二試合戦うのは今まで小冬選手独りで敵を倒し圧倒的な強さを見せる"線香花火"!対するのは此方も圧倒的な強さで勝ち進んできた"ブルーフラワー"!』
「よろしくねー」
ああ……困った。本当に困った。
マジで困った。
「お手柔らかに……咲さん」
『この大会でも特に注目してた優勝候補の二組なんだけどなー。予選でぶつかっちゃうかー』
そして二組が向かい合い、だんだん空気がビリビリと緊張していく。
『それでは、試合開始ー!』
開始のコールがされた瞬間、リングの真ん中で咲と綾也の拳がぶつかり合う。
そしてその衝撃でリングが少し抉れる。
そして双方がリングの端に降り立ち抜刀する。
そして一瞬の膠着の後、先に仕掛けたのは綾也だった。
「っ」
刀と短刀が鍔ぜり合う。
刀を打ち合わせる度に火花が散り、金属音が響く。
咲も壁を超えた達人。しかも防御に関してかなりの自信を持っている。そう簡単に破ることが出来るものではない。
一合、二合、三合…………十四合、十五合と打ち合い続けるが、互いに引かず緊張が続く。
「綾ちゃん?いくら何でも数え太刀すら使わずに勝とうなんていくら何でも虫が良すぎるんじゃない?」
「……そうですね」
本来なら小冬が援護してくれれば楽なのだが向こうも葵が控えてるし、下手すればこちらで巻き込んでしまいかねないのでそういうわけにもいかない。
つまり、自力で何とかしなければいけないということだ。
目を閉じ、気持ちを切り替える。
すると身体が戦闘状態に移行し、世界の時間が遅くなったかのような錯覚に襲われる。
動体視力が格段に跳ね上がり、他のあらゆる感覚も研ぎ澄まされていく。
そして何よりも纏っていた気の性質が変わった。
――より、鋭く――
「御閃流
綾也の放った何の変哲もないただの飛び込み突きが咲を襲う。
何の変哲もないただの突き。しかし、速さも威力も今までの物とは次元が違う。
その鋭い突きを咲が何とか捌く。
咲が顔を上げた瞬間、綾也はもう間合いに潜り込んでいた。
「御閃流
綾也が横に刀を撫で斬る。
それを咲が短刀で受けた瞬間、咲の腕に衝撃波が走る。
腕がしびれて握力を奪われ、武器を手放しそうになる。
しかし、そのままやられる咲ではない。
「御閃流、空迅!」
両手両足に構えた四本の短刀が綾也に向けて払われる、がその一撃は綾也に当たることはなかった。
綾也の位置が技の間合いよりわずかに外だったのだ。
「御閃流
目付、現代剣道にも存在する刀の見える範囲で距離を測るものだが、これを利用し相手の自分の位置の認識を阻害し、技を外させたのである。
綾也が咲に追撃しようとする。
その瞬間綾也と咲の間に割り込んで来る影が一つ。
「させない!」
葵が割り込んできたのだ。
しかし、綾也が気にする必要はない。なぜなら、
「私を忘れて貰っては困ります!」
小冬が葵を吹き飛ばし、戦闘に持ち込んだからだ。
「あー、やっぱり強いわね、さすが当主」
「……じゃ、決めさせてもらいますよ、奥義の一つで」
綾也が二刀を構え、冷気と熱気を放っていく。
「私も最後の足掻きをさせてもらうわ」
そして咲も短刀を構える。
「御閃流 破の太刀、『
「御閃流、嵐山気我!」
打ち合った瞬間、短刀が上へと弾き飛ばされそのまま氷と炎の連撃が入り咲はリングに膝をついた。
『きまったぁーー!!予選三回戦第二試合、激戦の末勝者は"線香花火"です!本戦出場二組目は線香花火にきまりましたー!!』
『最初は実力が均衡していたんですけど途中から完全に圧していましたね。このチームは頭一つ抜けていますよ』
試合終了がコールされ、会場が湧き上がる。
まあ、ほめられて悪い気はしないよね。
「綾ちゃん」
気が付いたのか咲が話しかけてくる。
「ありがとうございました咲さん」
「うん。……一応それなりには頑張りなさいよ決勝トーナメント」
「はい!」
こうして俺の若獅子タッグマッチトーナメント初日は幕を閉じた。
……………………to be continued……⇒
第31話でした。
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