一回戦がすべて終了し、会場のボルテージは上がるにあがっていた。
第二試合での戦いで会場が一度動揺に包まれたものの続く戦いで会場の雰囲気は段々と上がっていったのだ。
一回戦の最後の試合がヒュームさんと九鬼揚羽の登場で一瞬しらけたのだが何やかんやでテンションが戻った。観客の順応速いな。
本戦二回戦第一試合
線香花火 対 ファンシーチーム(改)
予選、本戦一回戦ともに圧倒的な力で勝ち上がってきた線香花火。
大方の予想に反し西の松永を下し、勝ち上がってきたファンシーチーム(改)。
この両チームの戦いには注目が集まっていた。
……と言うか女である松永燕の顔に傷を付けた事でかなり反感を買っているのだ。
つまり所謂
しかしそんなこと当人同士には関係無い。
ただ、目の前の敵を全力で倒すのみ。
両チームが舞台に上がる。ピリピリと張りつめていく空気の中会場にいる数人の達人が気づく。綾也が先ほどまでと違うと言うことに。
完全に違う、と言うわけではないが明らかに違う。
先ほどまでの刺すように静かな闘気とはまるで違う、荒々しく、全てをなぎ払うような激しい闘気に変わっているのだ。
しかしこの変化に気付くのは余程超のつく達人、それも気配察知に炊けたもの以外は気付かない。変わっていれど本人の気であることには変わりなくしかもそれは何か蓋をされているようなものだからだ。
この会場内にいた二人の達人、闘仙寺咲と獅子葉陽はその正体を知っていた。
そしてそれが本来此処まで表面に出てくるわけがないことも……
『それでは若獅子タッグマッチトーナメント二回戦第一試合を行います。レディィィ!ファイッッッ!!!!』
試合開始が告げられると同時にファンシーチーム(改)の二人が仁王立ちし、叫ぶ。
「予選で貴様たちに倒されたファンシーチームの仇をとらせていただくぞ!」
「ファンシー会九州支部支部長の私とファンシー会副会長のファンシー武藤がいれば貴様たちなど敵でない!」
そう言いながらファンシーチーム(改)の二人が手を互いの間で合わせる。
すると辺りと二人の気が急速にその一カ所へと集まっていく。
「!?」
「ヘェ……」
それを見て小冬は動揺するが綾也はいっさい動じない。
寧ろこの状況を楽しんでさえいるように感じる。
そして相手の二人が叫ぶ。
「見せてくれるわ!!」
「ファンシー会奥義!」
そしてその瞬間、気が爆発的に膨れ上がり一気に収束していく。
そして綾也はそれに対して刀を抜いただけで何もしない。
「「ファンシービーム!!!!」」
『おっとこれは!ファンシーチーム(改)から極大のビームが放たれたぁ!』
『お、これは私の星殺しよりもでかいんじゃあないか?』
放たれた莫大な気の固まりが一瞬の閃光と化し、綾也達を襲う。
誰もが驚き綾也達の負けかと思った、ビームが当たるその直前。
「「え?」」
綾也の纏う漆黒の気が気弾をかき消していた。
あれだけの気が一瞬で消え去り唖然とする会場。
チームメイトの小冬ですら驚愕の色を浮かべ、ファンシーチーム(改)の二人も信じられないといった表情を浮かべ、戦慄している。
「ば、馬鹿な」
「我らの奥義だぞ……そんな、何の挙動もなく……」
そして綾也は彼らのもとへ一歩一歩静かに歩み寄っていく。
荒々しく、激しいのに、不気味なほど静かな闘気を纏いながら。
そしてそれに気付いた二人が別々に気弾を多く次々と放っていくもそれらが全てかき消されるのを見て、表情が絶望に染まる。
何だ、何なんだこれは、一体何なんだ!?
「う、うわあああああ!!!!」
錯乱したファンシーチーム(改)の一人が手を目の前に構える。
そして、次の瞬間。
男の手から膨大な気が放たれ、綾也を飲み込んだ。
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あれ?俺は何をしてるんだっけ?
そう一回戦を戦ってその後……
綾也は自分の中から自分を見ているような感覚に戸惑う。
二回戦。自分が戦っているはずなのに自分で戦っていないようなこの感覚は何だ?
あ、相手の攻撃。上にはじかないと……あれ?今どうやってかき消した?
歩いて近寄って……相手の攻撃が来ない?またかき消してるのか?
そして相手の表情を見た瞬間、気づく。
絶望……つまり蓋が開いていて、飲み込まれていたのか。
なら、そろそろ
―――――――――――――――――――――
綾也が気に飲み込まれると思われたその瞬間、綾也の瞳に光が宿った。
「御閃流、厳山」
纏っていた漆黒の気は無くなり、静かな気と両手に輝く二振りの刀で相手の気を吹き飛ばしていた。
先程までの自動的な処理ではなく、意志を持った技で。
そして気が吹き飛ばされた次の瞬間、ドサリと音を立ててファンシー武藤が倒れた。
恐怖のあまり、自らが出せる限界以上の気を放ったため意識を失ったようだ。
『し、勝者"線香花火"!』
勝者のコールがされた瞬間、静まり返っていた会場に歓声が広がった。
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小冬に先に控え室に戻るように伝え、廊下を歩く。
すると待っていたかのように獅子葉陽と闘仙寺咲が立っていた。
「咲さん、陽さん」
少しトーンの低い声で話しかける。
心なしか綾也の目線は少し下がっているようにも見える。
そして陽は口を開く。
「蓋、開いてたみたいだな。別に封印とかしているわけではないから別に異常ではないが」
陽は落ち着いた口調でそう言う。
それについで咲がこう問う。
「でも、自力で押さえたわけだし、次は制御できるでしょ?」
「制御は出来ると思いますよ、次は。でもアレにはリスクもありますし……」
「ん、まあそうだな。でも、それを使うべきだ、とおまえが思った場面だとすれば使って言いと思うぞ?例え禁手でも、な」
それを聞いて陽が優しく言った。
「うん、私もそう思う」
咲がそれに同調する。
「じゃあ俺が使うべきだと思ったら使うことにします。……後悔しないために」
「それでいい」
「うんうん!」
会場隅の他人の気配のいっさい無い場所。
そこで行われた話は確かに綾也の考え方を定めた……
…………………………to be continued……⇒
第33話でした。
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