真剣で楽しく生きよう!   作:魔王の後継者

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36 武神討伐

 

武神、川神百代。

先代武神川神鉄心の実の孫であり、川神院の次期総代。

圧倒的なパワーに加え、瞬間回復を会得したことにより彼女に勝つどころかまともに相手になるものさえほとんどいなかった。

その美貌もあってかその人気は男女問わず高く、この会場にいる人の多くは彼女のファンだろう。

 

……つまり俺は悪役(ヒール)っぽいなあ。

そんな事を思いながら会場に向かう。

若獅子タッグマッチトーナメント優勝者に与えられる武神とのエキシビションマッチ。

その舞台に今向かっているわけだが正直なところやりにくい。

だってほら、会場の殆どがモモ先輩の味方っぽいんだよ?

あっ、俺を応援してくれてる人たちがいる。手を振っておこう。はいはいがんばりますよー。

ああ、あれだね?あっちらへんは川神学園の人が多い。

モモ先輩サイドの方が応援してる人が多いけどまあそれはしょうがない。

応援してくれてる人たちがいるだけでも感謝しておこう。

女の子ばかりだけど。モモ先輩は男女問わず人がいるのにな……。

はっ!これが人望の違い!?(違います)

まあいいや。考えるだけむなしくなってくる。

 

モモ先輩がすんごい楽しそうな顔してる。

なにがそんなに楽しいのだろうか。

今までの試合を見てたのなら少なからず俺の実力が分かったはずなのだが。

正直なところ咲さんに二人がかりで勝てない人が俺に勝てるわけがないのだが。

あれか?所謂まだあのときは本気じゃなかったってやつなのか?

いやいやそう言う訳じゃないだろう。

単純にこの人戦闘狂(バトルジャンキー)なのだろう。

まあいいや。先日川神院にも言ったように心をへし折ってしまう可能性もあるが俺はただ全力で闘うだけだ。

 

 

 

 

『さあ、皆さんお待たせしました。只今より優勝されました線香花火の御閃綾也選手と武神のエキシビションマッチを始めます!』

 

その瞬間、会場は二分する。

川神百代の闘気に煽られ盛り上がる者達、そして御閃綾也の闘気に呑み込まれ押し黙る者達。

その割合盛り上がる者達二割ほど、そして押し黙る者達八割ほど。

溢れ出した闘気の百代に対して染み出した本人からしたらほんのわずかな闘気でこの差である。

会場にいる実力者の中では二人の実力差は一目瞭然。

されど百代は気付かない。百代の中に有るのはただ強者と戦える事への歓喜のみ。

 

「やっとだ、やっとおまえと戦えるなあ綾也」

 

「……ええそうですね」

 

ニヤリと蛇のような眼をしながら笑う百代に対し、無表情で綾也が答える。

 

「悪いですけど、はなから全力で行かせてもらいます」

 

そう、あくまで本気では無く全力で。

 

「当然だ!」

 

綾也が刀に手をかけ、百代が拳を構える。

 

『それでは、レディーーーーッ』

 

ビリリと緊張が走り、会場の空気がこわばる。

 

『ファイッッッッッッ!!!!!』

 

合図と同時に百代が仕掛ける。

 

「川神流、無双正拳づ ウグッ!」

 

「御閃流、双頭龍(そうずりゅう)

 

綾也から直線で飛んだ、二本の斬撃が百代を吹き飛ばす。

龍の一撃は強力だが直線でしか飛ばせないためかわされやすいが初撃は別だ。

その証拠に百代は攻撃が直撃し、宙に飛んでいる。

 

百代は着地と同時に綾也へ向き直り、攻撃を仕掛ける。

 

「川神流、致死蛍!」

 

幾重もの気弾が綾也に迫るも一つも当たることなく流される。

百代は次々と放っていくが一つもかすりすらしない。

まるでくる場所が分かっているかのように。

 

「くそ!当たらない!」

 

(無駄が多く、気を余計にまき散らしすぎだ、そんなもの先を読んでくれと言っているようなものだ。)

 

全く当たる気配がない綾也の様子に焦り出す百代。そして段々と攻撃が単調になっていく。

それを見て綾也が打って出る。

 

「御閃流、 八岐大蛇(ヤマタノオロチ)

 

予選で小冬が見せた大蛇の上位技、ヤマタノオロチ。

二刀から四本ずつ、計八本の斬撃が放たれ、蛇のようにうねり八方から百代を襲う。

ただでさえ八方からの攻撃である上に軌道が読めないこの技を百代は為すすべもなく食らう。血飛沫が舞い、大きなダメージを百代が負ったように見える。

しかし、

 

「川神流、瞬間回復」

 

『出たーーーっ!武神の名を欲しいままにした瞬間回復!』

 

回復する。

何事もなかったかのように。

 

ギャラリーや百代にとってはいつも通り、百代はまだ異変には気付いていない。

いつもよりも格段に気の減りが速いということには。

 

百代は笑みを浮かべている。

恐らくこの戦いを楽しんでいるのだろう。

だが綾也は違う。これは戦いではない。ただ力をぶつけ合っているだけだ。

 

「東西交流戦の後、きっちり鍛え直したからな、パワーも気の量も段違いだぞ」

 

余裕綽々といったように、振る舞っているが綾也には関係ない。

百代は気付いていないが綾也の一撃ごとに百代の気は削り取られていっているのだから。

 

「…………どこまでもパワー思考ですね」

 

綾也の言葉に当然だろうという表情を浮かべて答える。

 

「力が一番わかりやすい実力の示し方だろう?」

 

その言葉を聞き綾也は思う。

(考え方が悪い方向に行ってるな……)

 

「それで?力を求めてどうするんですか?」

 

この質問にどう答えるかそれ次第で……

 

「今言ったろ?力は強さだ。求めることに理由がいるか?お前みたいに世界にはこんなにも強い奴がいる、私の乾きを潤してくれる……それだけで充分だろう」

 

……ふぅ……ある程度予想できていた答えだが……

一度中途半端に負けたことがこんな風になってるとは。

拗れに拗れまくってるな……。

修羅道に落ちてるも同然じゃねえか……。

 

この会話をしている間にも気弾と斬撃が飛び交い、激しい闘いが傍目から見るに続いている。

だがこんなものただの茶番だ。

 

「モモ先輩、あなたがどういう考え方をしようがあなたの自由だ。だが今の、あんたの考え方を修羅道っつーんだよ!!」

 

そう、どういう考え方をしようが自由だ。

だがそう言う考え方は、修羅道は、俺の一番嫌いなモンなんだよ!

 

綾也の言葉づかいが荒くなり、綾也の表情に怒りが見える。

 

「何だ綾也?私に説教でもするつもりか?」

 

百代の言葉に綾也は嘲笑するように返す。

 

「説教?そんなつまんねーモンするき更々ねーですよ。俺はただその修羅道の行き着く先にある最悪なモノを見せてやるだけですよ」

 

その瞬間、綾也の身体から二回戦で見せたあの漆黒の気が吹き出す。

より禍々しく、今度は完全に統制されて。

 

「それは……」

 

百代が驚いた表情を見せる。

間近で見るこれが此処まで禍々しいモノだったとは、と。

 

そして綾也は告げる。

災厄の言葉を。

 

「御閃流、禁手(・・)()()()()』」

 

 

 

―――――――――闇はただ全てを破壊し、

 

―――――――――闇は人を蝕み、

 

―――――――――そして闇はただ周囲を蹂躙するのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………to be continued……⇒

 

 

 

 




第36話でした。
まあ、強い奴だいたいは裏があるものです。
望む望まざるに関わらず。

誤字脱字、意見、感想、アドバイスありましたらお願いします。

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