話がある。
そう言って歩き出した大和について歩いている。何やら翔一も難しい顔をしていて話しかけれる雰囲気ではない。
……風間ファミリー。自分から辞めようと思ったんだけどな~。
きっとクビになるんだろうな~。
そう思いながら夜道を歩いている。
「着いたぞ」
大和がそう言う。
顔を上げると目の前にあったのは……
「秘密基地……」
基地の中にはいるとモモ先輩以外の全員が揃っていた。
全員引き締まった顔をしており、覚悟は決まっている、といったような顔だった。
怒っているような困っているようなどっちつかずの表情をしている者もいるが。
綾也は先手を切って口を開こうとしたが遮られた。
風間ファミリーのリーダー、風間翔一に。
「リョーヤ、お前ファミリーを抜ける、とか言うつもりじゃねーだろーな!」
翔一のストレートな物言い。
予想と反対方向の発言に戸惑いつつも綾也は口を開く。
「そうだよ。ファミリーの一員であるモモ先輩を完膚無きまでに叩き潰したんだ。そんなやつがファミリーの一員でいていいわけねーだろ」
綾也の物言いにピクリと全員が反応する。
そして予想外な事に次に口を開いたのはなんと岳人だった。
「そうだ……お前はファミリーの仲間であるモモ先輩を叩きのめした……」
岳人の低い声が綾也の言葉を肯定する。しかし、
「なら「だけどよ!! そんなこと言うんならリョーヤ!! お前だってファミリーの仲間じゃねーのかよ!?仮だとは言え仲間だと思ってたのは俺様達だけなのかよ!?」!?」
岳人の次に発した言葉に綾也の言葉はかき消された。
ガクトもそんな風に思ってたんだ……と周りの見方も少し変わる。
そして次に言葉を発したのは保守派で一番ファミリーに固執している京だった。
「私も……馴染みだしたところで今更抜けられても同じクラスだからわだかまりが残るのは面倒だし……」
全員が驚く。
ガクトもだが、もともとこの二人はファミリーの加入に反対だったのだ。
特に今までの京ならこんな事を言うのは到底考えられなかった。
「それに……」
全員が続く言葉を待つ。
「まだ媚薬を受け取っていないんだッッッッ!!!!」
ズルッと全員がずっこけた。
今の空気の中そんなことを言うのか。
大和がジト目で綾也を見ているが顔を逸らす。
「まあこんな感じでよ!皆おまえが言うほど気にしちゃいねーんだ。事情も聞いたしよ!」
その言葉に綾也が反応する。
「事情を聞いた?…………一子か」
自分の方を向いた綾也に一子はうんうんと頷いて言う。
「そうよ!アタシがじーちゃんから聞いたの!…………でもアタシ、じーちゃんからじゃなくて綾くんの口から直接聞きたかったわ……」
最後の方は語気が弱くなりしょんぼりしながら話す一子。
そう。とどのつまり皆が怒っているのはソコなのである。
綾也が自分達にいっさい相談してくれなかったこと。このことに皆さんは怒り心頭なのです。
「リョーヤはさあ……何時も一歩引いたところで話してたよね。踏み込み過ぎないように、みたいに心の距離を一定に保ちながら、さ。でもボクたちは仲間なんだからもっと遠慮せずに話して欲しかったよ! ……確かに今回はモモ先輩にとっても大事な事で軽はずみに話せることじゃなかったかも知れないけどさ、それでもボクは力になりたかったよ……」
モロが珍しく大きな声を出して話す。
それを綾也は目を見開いてしっかりと聞いていた。
しばらくの静寂のあと、綾也がゆっくりと口を開く。
「……ああ、そうだな。皆、すまなかった」
全員がソレを聞いてすっと表情を緩める。
ファミリーの中で閉鎖的だった京やモロから引き留めの言葉を聞いたことで綾也も皆が一子の言うとおりに皆が心配してくれていた事もわかり安堵する。
そして、一番の懸案を口にする。
「……で、モモ先輩はどうなった?」
再度全員に緊張が走る。
皆が顔を見合わせ、表情を強ばらせる。
そして頷いておずおずと一子が話し始める。
「お姉様はまだ目を覚ましてないわ。肉体的なダメージは大丈夫だと思うんだけどじーちゃん達は余りにも圧倒的な負けだったから心がどうなっているのかが心配だって……」
綾也は一息ついて
「そうか」
とだけ答える。
肉体的なダメージは自分が攻撃したのだ。
どうなっているのかは本人以上に分かっているつもりだ。
綾也が知りたかったのは精神的なダメージ。
つまり心が折れてしまっているか否かだ。
まだ目が覚めてないなら分からない。
「俺自身としては一度モモ先輩と話してみる必要があると思う。……皆が認めてくれていてもあの人に拒否されたら俺は此処には居られない」
「確かに姉さんが拒否したら確実にわだかまりが生まれるだろう。でも俺は、俺達は姉さんがそんなに心が弱いとは思っちゃいない!」
綾也の言葉を否定する大和の言葉に皆が頷く。
「……でもさ、今回の負けはモモ先輩にとって初めての敗北だったわけだろ?どんな影響を与えているか分からない。もしかしたら心が折れてしまっている可能性もあるんだ。才能に恵まれていてもたった一つの敗北で潰れてしまった武術家なんて言うのはよく聞く話だ」
全員が押し黙る。
嘘混じり気のない言葉が全員を縛りつける。
そして何分にも感じられた数瞬後、響いた声が静寂を破る。
「……私抜きで私の話か?それとリョーヤ、お前の中で私の位置付けはどうなってるんだ」
その声の主は件の人、川神百代だった。
「モモ先輩……気がついたんですか?」
百代の登場に全員が少なからず動揺する。
その姿はあちこち包帯を巻いていて痛々しい。
「ああ、リョーヤ今日は完敗だった」
憑き物が落ちたようなさわやかな笑顔。
ガクトやモロや大和がドキッとした感じで紅くなっている。
それくらい魅力的な笑顔だった。
「怪我はまだ治ってないんですね」
綾也が苦笑混じりに言う。
百代はそれに笑いながら答える。
「まだ瞬間回復が使えるほど気が回復していなくてな」
まあ殆ど綾也が気を削り取ったせいなので綾也は苦笑でしかかえせない。
「もう一度一からゆっくりと鍛え直して見ることにした」
「それが良いですよ」
モモ先輩の宣言を肯定して返す。
「また闘ってくれるか?」
モモ先輩の問いに対して綾也は
「ええー?」
とぼけた感じで返す。
「だ、だめなのか!?リョーヤ!?」
焦って言う百代に対して綾也は笑って答える。
「冗談ですよ」
百代の怒った声が響き、直後皆の笑い声が溢れていった。
……………………to be continued……⇒
第38話でした。
これで取りあえず若獅子タッグマッチトーナメント編終了です。
一区切り。
終わりではないのであしからず。
読んでくれている方はもう少しおつき合い願います。
誤字脱字、意見、感想ありましたらお願いします。