真剣で楽しく生きよう!   作:魔王の後継者

42 / 42
41 「何より、見た目キショイよなそいつ」

御閃本家に到着した翌日。

昨日食べ損ねた晩飯の分も補給するべく朝食の用意を淡々と行っていた。

御閃本家には炊事担当の人間はもちろんいるが、御閃本家に稜也がいるときはかなりの割合で稜也が飯を作る時がある。

炊事当番20人に対して、彼らとほぼ同じ量の料理をほぼ一人で作るのだ。

稜也がいる時の御閃本家の日常は炊事担当が40人から20人+稜也に代わるのだ。

全体の味も稜也が調理に加わるだけで大きくグレードアップする。

これが無ければ党首自ら炊事をするなどと言う暴挙は誰も許していない。

現時刻は午前4時半。

作られる朝食の量は材料の量から鑑みるに凡そいつもの1.5倍。

そして今厨房にいるのは稜也一人。

厨房(せんじょう)ですでに今日最初の戦いが繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

 

●○●○●○●○●○

 

 

 

 

 

御閃流の朝は当然のように早い。

武術家の朝は得てして早いもので特に朝食前の鍛錬は定められていたものではないのだが当然のように門下生全員がそろって稽古をしている。

ただし、その中に稜也の姿は無い。

何故か、それは簡単だ。

稜也の朝は彼らとは比べ物にならないほど早く、すでに朝食前の修行は終え、朝食を作っているからである。

果たしてなぜそこまでして朝食を作ろうとするのかは謎ではあるが。

 

朝稽古の終わりはジャスト6時。

修行を一区切りすると、皆一斉に走り出す。

何処へ行くのか。

それはズバリ、シャワールームである。

汗まみれでの朝食など、現在帰省中の厨房の主が許さないからだ。

シャワーを浴びない=朝食抜き。

この方程式が成立している今、彼らにシャワーを浴びないなどと言う愚かな選択肢はない。

そして、言うまでもなく朝食にありつけるのは早い者勝ち。

遅く来た者は飯が残っていない可能性すらある。

故に彼らは急ぐ。

確実に朝食にありつくために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すごいわね、御閃流(此処)の修行。

川神院よりもハードかもしれないわ……」

 

 

満身創痍のムード漂う一子が言う。

おそらく、朝稽古に参加してきたのだろうその姿はまだ朝だと言うのに疲労の色が見える。

 

 

「だから、朝練は参加しなくていいと言っただろう。

ここは標高高いし、同じ修行メニューでもよりきついんだよ。

まあ、アレ自主練で、ホントの修行はあんなもんじゃないけど」

 

「え〝」

 

 

俺の一言を聞いて一子が固まる。

何だ?朝練は自主練だって前もって言っといただろうに。

 

 

「義経も結構疲れたのだが、本番はもっと過酷なのか……

最後まで持つだろうか……」

 

「今のペースでも結構大変だったのに、これでもまだ全然なのね……あうあう……」

 

 

義経も会話に入ってくる。

稽古に参加していたのはこの二人で、無謀にも参加していた翔一はわずかに30分ほどで脱落した。

弁慶たちは最初から参加せず義経の応援をし、他の風間ファミリーの面々もそれぞれの朝を過ごしていた。

 

ちなみに余談ではあるが、義経と一子が翔一の二の舞にならなかったのは日々の鍛錬のおかげ、としておきたいところだが実のところはタッグトーナメント後からは体力作り重視のトレーニングを行っていたからだろう。

出なければ、今頃朝食など吐き気を催して食べれなかったはずだ。

 

ちなみに、女子はシャワー室が別なので男子に比べて早朝デッドレースの規模がかなり小さかったりするわけだがそれはご愛嬌と言うやつだ。

だいたいこういう場所での女子の地位は高いのである。

 

 

「まあでも修行に関しては二人の体力を見つつやっていくから心配するな。

倒れたりしたら逆に効率悪いからな。

そこら辺はきっちりやる。

だから飯しっかり喰っとけ、喰わねえと持たないぞ」

 

「分かったわ! 」

 

「了解した! 」

 

 

俺の言葉を聞いて安心したのか、心もち二人の元気が少し復活したように見える。

よしよし、その調子だ。

これから修行(地獄巡り)をするんだから元気がないとな。

はっはっは!

 

そう思いながら二人ががつがつと朝食を食べるさまを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修行1。

【とりあえずまず下半身鍛えて見よっか♪】

 

 

夏の照りつける日差しの中。

さんさんと照り付ける太陽光を全身に浴びながら稜也は修行風景を眺めていた。

……場に響き渡る絶叫をBGMとして。

 

 

「「「うわああああああああああああ!!!! 」」」

 

 

修行を受けているのは一子、義経、そして稜也の弟子の小冬。

三人は走っている。

体中からダラダラと汗を垂らしながら走っている。

巨大なアリジゴクの様なものの中をそれぞれの足に錘を括り付けて。

 

 

「ほれほれ、ふぁいとー。

落ちると噛まれるぞ下にいるやつに」

 

 

時折稜也からすごく気の抜けた声援が飛ぶが、逆効果だろう。

それでもしかし、彼女たちは気を抜かない、いや、抜けない。

下にいるとある生き物を、恐れて。

 

 

「りょりょりょりょ、稜也君、何なんだあの生き物わぁ! 」

 

「稜くん、助けて! 」

 

「お師匠、ヘルプミーです! 」

 

 

3人から悲鳴交じりの声が飛ぶ。

稜也は数秒の間を開け、口を開く。

 

 

「あの生物か?

巨大砂漠蛭だよ。

噛まれると痛いしめっちゃ血も吸われる。

何より、見た目キショイよなそいつ。

あといくらなんでも助けを求めるのが早すぎだ。

まだ30分しかたってねえぞ。

よって、却下」

 

 

義経の質問に答え、二人の救援要請をばっさり切り捨てる。

3人は必死に抜け出そうと走るが、絶妙に見極められた適切な重さの錘とサラサラの砂、そして急勾配の坂が彼女たちの脱出を阻む。

 

地獄はまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

……………………to be continued……⇒

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:10文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。