イナズマイレブン!北のサッカープレイヤー 作:リンク切り
二人のストライカーの苦渋! #09
俺達がフロンティアスタジアムから雷門中の合宿に帰って来ると、中から響さんが出てきた。
響さんは、どうやら俺達の試合をテレビの中継で見ていたようだ。
何でフロンティアスタジアムに来てくれなかったんだ?
監督以外は入場禁止、っていうルールがあるのか?
いや、そんなまさか。
「全員、よくやった。これでアジア地区予選の初戦突破だ。」
「ありがとうございます!響木監督!」
「フ。俺はもうお前達の監督じゃあない。」
「あ、そうでした・・・・」
たはは、と頭をかいて笑う円堂。
それを見て俺達が少し笑いあった後、そして、今度は本当の監督、久遠監督が俺達メンバーの前に歩いて来た。
「監督!」
「お前たち。今日の練習は無しだ。各自自由に過ごせ。また明日から練習だ。さらに特訓を厳しくしていく。いいな?」
「「「はいっ!」」」
久遠監督が理由があって練習禁止にしたと知った今、もう俺達は誰も監督に不信感を抱いてはいなかった。
全員が、監督を信じていた。
「待ってください、久遠監督!」
それだけ言って久遠監督が宿舎に戻ろうとしたとき、その背中に鬼道が声をかけた。
「俺達が、オーストラリアに勝利できたのは、監督の采配のおかげです。あなたは、チームをダメにするような監督じゃない。桜木中で、何があったんですか?」
「・・・・お前たちが知る必要はない。」
「監督!話してください!俺は信頼のできる人に、チームを任せたいんです!」
「・・・・。」
鬼道が久遠監督に詰め寄るが、監督は話すつもりはないらしい。
監督は鬼道一瞥すると、宿舎の中に戻って行ってしまった。
相変わらず何も話さない人だな。
こんなんだから、俺たちに余計な心配が広がるんだよ。
「待て、鬼道。」
監督を追いかけようとする鬼道を、響さんが止めた。
「俺が説明しよう。」
「響さん。」
「・・・・10年前、久遠が桜木中サッカー部の監督をしていた時の事だ。久遠の指導により、桜木中はフットボールフロンティアの決勝まで勝ち残っていた。」
俺達が音無から聞いた、久遠監督の過去の話だ。
音無は、久遠監督がこの決勝の前日に事件を起こしたと言っていたが・・・・
「だが、最強のチームとの決勝戦の前日。部員達は、対戦相手と喧嘩して大きな怪我を話せてしまった。」
「部員が?」
「ああ。そしてその最強のチームとは、帝国学園だ。おそらく、影山が何か仕組んでいたのだろう。」
「影山が!?」
うわ、俺の予想当たっちゃったよ。
悪い事件とか噂とかの裏には、やっぱりいつも影山がいるんだな。
って事は、呪いとかも嘘っぱちだったんだろ、やっぱり。
まあこんな超次元サッカーがあり得る世界だ、本当に呪いがあってもおかしくはないと思ったのだが。
・・・・・流石に有り得ねえか。
「その事件が明るみに出れば、桜木中のサッカー部は無期限に活動停止になってしまう。久遠はこれ以上事を大きくしないでくれと頼み込んだが、影山がそんな事を聞き入れるわけがなかった。」
「くっ・・・・」
響さんの話を聞いて、鬼道が歯噛みする。
まあな。鬼道は影山にずっとサッカーを教えられていたし、思うところがあるんだろう。
「そして、久遠はサッカー部を守るため、自分が問題を起こしたと世間に発表する事で決勝を棄権した。」
「そんな・・・・」
「あれから10年。やっと指導者資格失格の処分が終わった久遠に、俺が代表監督を頼んだと言う訳だ。」
なるほど。
だから名前も聞いたことのない監督だったのか。
ネットに久遠監督のデータが載っていなかったのも、影山が絡んでいたとなると頷ける。
「そんなことがあったんですか・・・・」
「だが、これは決して同情ではない。久遠は、処分中もサッカーの情熱は衰えずに日々サッカーの研究を続けていた。その熱心さに惹かれたのだ。今日の勝利で、俺の判断は間違っていないと確信した。彼の素晴らしい指導力こそ、このチームに必要だ。」
「はい。俺達も、今日の試合でわかりました。」
だが、チームと打ち解けるつもりの一切ないあの性格はどうにかならんのかな。
久遠監督だけを見ていると、とてもサッカー部を救うために
俺や不動と同じで捻くれている気がする。
「久遠監督なら、世界に連れて行ってくれるかもしれない・・・・」
「そうだな!よーし、優勝目指して皆で特訓だー!」
「「「おうっ!」」」
円堂や鬼道、壁山などの熱血組を見送りながら残ったメンバーは宿舎に入ったりそれぞれ話をしたり始める。
この時にも、虎丸は早上がりで帰ろうとしていた。
「では、皆さん。俺はこれで失礼します!」
「待ってくれ、虎丸。」
「はい?」
俺は、帰ろうとする虎丸を呼び止めた。
俺には、虎丸に聞いておきたいことがある。
それは勿論、今日の試合での事だ。
「試合終了直前の事だ。お前、なんであの時にシュートを打たなかったんだ?」
「・・・・!!」
「ディフェンダーもいなかったし、何よりあのタイミングでオフサイド判定にならずゴール付近に近づけたのは運が良かった。そのままシュートすれば、綺麗に終わったと思うんだが。」
勿論、運だけでなく虎丸のおかげでもある。
ボールを受け取ったハーフラインからゴール前まで一気に駆け上がったんだからな。
そこまで持って行ったのは虎丸自身だ。
ゴールが決まらなくても、誰も文句は言わない。
「・・・・それは、俺よりも試合中に点を入れた清川さんがシュートした方が、確実だと思ったんです。」
「でも、そこで試合が終わった。今回は良かったものの、これが一対一だったら延長戦だぞ。」
「それでも、決められる確率は少しでも高い方がいいかなって・・・・」
「虎丸!」
「すみません!お、お疲れさまでしたっ!」
「おい、ちょっと待てよ!」
待ってくれませんでした。
虎丸は俺の話を打ち切って、うつむきながら校門の方へと走って行った。
チッ、なんなんだよ。
「
俺が虎丸に置いていかれて少し苛立っていると、それを見ていた豪炎寺が話しかけてきた。
「え?ああ、まあ・・・・」
俺はただ、今回のアシストが流石に癇に障っただけだったんだが。
まあ気になるか気にならないかでいうと気になっているし、嘘を言ったわけではない。
「俺も、チームメイトとして、虎丸のあの行動は気になる。」
「俺はフォワードとして、だが。」
俺の記憶では、虎丸はすごいシュートを持つフォワード、という覚えがある。
なのにそのシュートを使わないなんて、フォワード失格だ。
そんな思いを、俺は少しずつ虎丸に抱き始めていた。
まあ勿論、喧嘩したり悪口を言ったり、そんなことはしないんだが。
チームメイトとしてはちゃんと振る舞う。変わるのは、単なる俺の評価だ。
「・・・・、わからなくもない。だが、俺は事情を知ってから決めたい。」
豪炎寺は、俺の気持ちに気付いたらしい。
少なからず、豪炎寺にもそんな気持ちはあるのだらう。
「ふーん。・・・・それで、豪炎寺はこの後どうするんだ?
「ああ。妹の夕香を迎えに病院へ行くつもりだ。」
あれ?
夕香ちゃんって、世界編でもまだ病院に通ってるっけか?
「妹さん、病気なのか?」
「いや、1年ほど前、事故にあってな。今は病院でリハビリをしてるんだ。」
「へえ。リハビリねえ。じゃあ、早く行ってやった方が良いんじゃないか?」
「ああ。そのつもりだ。」
なんだ、リハビリか。
俺はてっきりまた事故なりやらかしちゃったのかと思った。
そりゃあ寝たきりだったんだからリハビリも必要か。
「じゃ、ついて行こうかと思ったけど、邪魔になっちゃうかな?」
「病院だ、付いて来ても面白いことは何もないぞ。」
「良いじゃん良いじゃん。豪炎寺の妹も気になるし、お前の髪、染めてるのか地なのか気になるし。」
「お前の方こそ染めてるだろ?」
「俺は良いんだよ、俺は。」
ちなみに、豪炎寺の言う通り完全に赤に染めている。
赤っていうか、赤黒い感じか?
地毛の方は綺麗な薄緑色だ。
「で。行ったらダメか?」
「・・・・病院だ。大声は出すなよ。」
「っしゃあ!」
どうやら許可が下りたようだ。
そんなこんなで、俺は豪炎寺と稲妻総合病院へと行くことになった。
「夕香。迎えに来たよ。」
「あ、お兄ちゃん!」
色々な健康器具?のような物が置かれていた大きな部屋に、夕香ちゃんはいた。
他の患者や看護師の邪魔にならないよう、端の椅子に座って足をプラプラと揺らしていた。
「お兄ちゃん、この人・・・・」
夕香ちゃんは、豪炎寺を見つけてトコトコ走って来た(病院の中では走らないようにしよう)。
隣にいた俺を見て、何か言いたげな夕香ちゃん。
「ああ。お兄ちゃんのチームメイトだ。」
「すごーい!清川選手だ!」
豪炎寺が俺を紹介し終わる前に、夕香ちゃんはぴょんぴょこ跳ねて喜ぶ。
俺のことを知っているのか。
それは嬉しいかな、俺も。
というか、夕香ちゃんとかチームメンバーの知り合いはともかく、世界大会に出場するんだしもしかして日本じゃそこそこ有名なのか?俺達。
「こら、夕香。病院の中は静かにしないと。」
「あ、はーい。」
豪炎寺に怒られたものの、にっこり笑う夕香ちゃん。
「ねえねえ、夕香、今日の試合見てたよ。勝ったんだね、おめでとう!」
「おー、ありがとう。じゃあ、俺のシュートも見てくれたか?」
「うん!くるくる〜ってなってて、とってもすごかった!」
デススピアーの事だな。
どうやら、本当に俺のことも知っているようだ。
夕香ちゃんが嘘をついているとも思っていたわけではないが。
「あっ、お兄ちゃんのシュートも見てたよ!夕香、テレビの前でずっと応援してたんだから!」
すごいな。
中学サッカーの試合は、大体30分ハーフで1試合の時間は一時間以上だ。
幼稚園か小学生かわからないが、その時間ずっと応援してるってのは案外疲れそうなものだが。
「ありがとう、夕香。夕香が応援してくれてたから、お兄ちゃん達が勝てたのかもしれないな。」
「本当!?」
「ああ。」
「わーい!じゃあ、夕香、これからもずーっとお兄ちゃんの事応援するね!」
ああ。こういう、仲の良い兄妹のやりとりってなんだか和むわ。
俺はお邪魔でしかなかったが、これを見れただけで来てよかった。
こっちの世界に来てから、俺は一人っ子だからな。
隣の芝生は青いとは言うが、本当にその通りだ。
「ねえねえ、清川のお兄ちゃん!」
「ん?俺か?」
「うん!」
俺がほのぼのと豪炎寺兄妹の会話を聞いていると、夕香ちゃんが俺に話しかけて来た。
あれ?兄妹の会話はもう終わったのかな?
「最後、残念だったね。あとちょっと時間があれば、もう一点入ったのに。」
「そうだな。あとちょっとだった。」
確かに夕香ちゃんの目から見たら、時間が足りなかったと見えたのかもしれない。
まあ別に、今チームメンバーの悪口を言う意味もないし、俺は夕香ちゃんの話に合わせて時間のせいにした。
「でも、お兄ちゃん達、本当にすごかったよ!また、すっごいシュート決めてね!」
「ああ。」
「任せとけ!」
俺達は3人で笑いあった。
小さなファンだが、気合は十分だな。
「修也。」
俺達が話していると、不意に背後あら声をかけて来た人がいた。
白髪混じりの髪の、白衣を着た色黒の男だ。
「今日も来ていたのか。」
「・・・・父さん。」
えっ、この人が豪炎寺のお父さん!?
うわ、厳つ・・・・
「あの、いつも豪炎寺と仲良くしてもらってます、清川です。」
「ああ。そうか。」
「・・・・・。」
えっ、それだけ!?
愛想無っ!?
久遠監督と同じか、それ以上に話そうとしない人だな。
「ねえねえ、お父さん!今日のお兄ちゃんの試合、とってもカッコよかったんだよ!」
豪炎寺のお父さんからはちょうど俺達の後ろの死角にいた夕香ちゃんがぴょこっと顔を出して話しかけた。
このお父さんが夕香ちゃんの父親だなんて、到底考えられんな。
夕香ちゃんは母親似なのだろう。たぶん。
「サッカーだと?修也。まだあんなくだらない遊びに夢中になっているのか。」
はっ、えっ?
豪炎寺の父親はサッカー、認めてくれてないのか?
息子が日本一になって、今では日本の代表選手になっているスポーツを?
「父さん。夕香を家まで送ってくるよ。」
豪炎寺は、父親の話を無視して新しい話題にすり替える。
「行こう。夕香。
豪炎寺は、俺達乗せ中を軽く押して部屋の出口へと向かわせる。
夕香ちゃんも、なんだか元気がなさそうだ。
お父さんが豪炎寺が好きなサッカーが好きじゃないって事、気にしているのか。
「修也。約束は覚えているだろうな。」
「・・・・はい、父さん・・・・。」
豪炎寺のお父さんが、部屋から出て行く豪炎寺に声をかけた。
何だ?約束って。
まさか、医者になれ、とか・・・・?
豪炎寺は、夕香ちゃんを家まで送って行くと言うので、俺も一緒について行くことにした。
どうせ豪炎寺も夕香ちゃんを送った後すぐに宿舎に帰ってくるんだ。
別々に帰る必要はないだろう。
豪炎寺の家は、豪邸とは言えないもののかなりの立派な一軒家だった。
「たっだいま〜!」
「おかえりなさい。」
ドタバタとドアを開けて、夕香ちゃんが家へと駆け込んだ。
母親だろうか、家の奥から夕香ちゃんの声に返事が返って来た。
で、俺はどうしよう。
ズカズカと上がって行くのは流石に失礼すぎるか。
「俺、外で待ってようか?」
「えー?清川お兄ちゃんも上がっていってよ!」
それが聞こえたのか、玄関から残念そうな夕香ちゃんの声がした。
どうしよう、上がっていいのかな?
「・・・・いいか?」
「ああ。好きにすればいい。」
豪炎寺に聞くと許可が出たのでいいのだろう。
あ、でも、確かになんか豪炎寺はお父さんと似てるかもしれないな。
そっけないところとか。
「あら、今日は修也さんのお友達も一緒ですか?」
俺が豪炎寺の家に入って靴を脱いでいると、家の奥から老けたおばさんが出て来た。
「あ、え、え?豪炎寺、の、お母さん・・・・?」
「いや。家政婦のフクさんだ。」
俺が驚いて目を見張っていると、豪炎寺が答えた。
何だ、家政婦さんか・・・・
家政婦を雇うとか、豪炎寺の家はちょっとしたお金持ちなのかもな。
やっぱり医者は儲かるのだろうか。
「スパイクとかユニフォームとか、色々準備してくる。フクさんと夕香と、リビングで待っていてくれ。」
そう言って豪炎寺は奥の部屋へと入って行った。
おい、やめろよ。
知らない人と一緒の部屋にとり残すなよ、気まずいだろ。
「今、お茶を淹れますね。」
「あ、ありがとうございます・・・・」
俺はぎこちなく頭を下げて礼を言った。
家政婦さんはキッチンへお茶を淹れに行って、夕香ちゃんはそれにトコトコとついて行った。
危なっかしいな、大丈夫か?
しっかし、本当にびっくりしたな。
あんな顔して豪炎寺のお父さんに年寄り趣味があるのかと思った。
「ねーねー、フクさん。清川お兄ちゃん、すごいんだよ。今日のサッカーで、お兄ちゃんと清川お兄ちゃんとで2点取ったの!」
「まあ。それは凄いですね。」
キッチンの方で何やら話している。
俺の話題なのはわかるが、それなら俺の目の前でしてくれればいいのに、と思った。
「待たせたな。」
豪炎寺が部屋から出てくる。
いや、全く待ってないぞ。
むしろお茶が出てくる前に帰って来たよな、お前。
「そう言えば、豪炎寺。お前のところのお母さんは?」
「・・・・母さんは、昔・・・・」
豪炎寺は部屋の隅にある仏壇の方へと視線を向けた。
「あ、悪い。」
俺は全く心のこもっていない謝罪をした。
だって薄々そうなんじゃないかな、って思ってたからな。
家政婦を雇っているから、死んだか別れたか共働きか、だし。
まあでも、普通はこんな時一言謝るだろ。
仏壇には、豪炎寺の母親らしき茶髪で美人の女性の写真が立てかけてあった。
やっぱりお前髪染めてんじゃねえか。
そしてキッチンから2人が帰って来て、少しの間四方山話をした。
夕香ちゃんの学校での出来事。最近の天気。宿舎での話。サッカーのこと。色々なことを話した。
そして、俺達は夕香ちゃんに別れを告げて宿舎に戻る。
豪炎寺が家にいなくて寂しいのだろう、別れ際にとても寂しそうな顔をしていたのが印象的だった。
父も母も兄も家にいないなか、家政婦と2人で生活するなんてまだ小さいのに可哀想なんだが。
日が沈みそうな赤い空を見ながら、俺は隣にいる豪炎寺へと話しかけた。
「なあ、豪炎寺。」
「何だ?」
「お前の父親が言ってた、約束って何なんだ?」
俺は、病院からずっと聞きたかった事を聞いた。
豪炎寺は俺と目線を合わせた後、小さく息を吐いて話し始めた。
「・・・・サッカーを、やめろって言われてるんだ。」
「へえ。」
なるほど。
豪炎寺の父親を見た限り、そんな感じだったもんな。
豪炎寺、木戸川の自己の時といい宇宙編といい離脱多いな。
でも、きっとまた帰ってくるんだろ?
「意外だな。もう少し、驚くかと思ったんだが。」
「まあ、俺にとってはライバルが減るだけだからな。」
「・・・・そうだな。」
豪炎寺の小さな呟きの後、それから俺達は一言も喋らなかった。
⚽️
「お前達も知っている通り、第二回戦の対戦相手はカタールに決まった。」
翌朝。
俺達が朝の練習を始める前に、久遠監督が話し始めた。
へー、次はカタールか、知らなかった・・・・
「カタール。デザートライオン、だっけか?」
デザートって、砂漠って意味のデザートだよな?
食べる方のデザートじゃないよな?
それだったら可愛すぎるチーム名だけど。
「どんなチームなんスかね?」
「デザートライオンは、疲れ知らずの体力と、当たり負けしない足腰の強さを備えているチームです。」
「カタールは中東にある、砂漠に囲まれた国です。砂の上でサッカーをして来たデザートライオンの体力は並じゃないようです。」
砂漠の上でサッカー、か・・・・
それは確かに、足腰は頑丈だろうな。
俺なら砂漠にいたらサッカーなんて絶対にやらないけどな。
砂丘ですら走るだけでも一苦労なのに、そこでボールをコントロールするとなると足に負荷が半端なくかかるだろう。
俺は思わず顔をしかめた。
「デザートライオンに勝つためには、基礎体力と身体能力を身につけることが必要だ。カタール戦までには、この2点を徹底的に鍛え上げろ。いいな。」
「「「はい!」」」
「私からは以上だ。練習内容は自分たちで決めろ。」
そう言って、久遠監督は宿舎へと入って行った。
うわ、丸投げかよ!
まあ好きにできるなら、それに越したことはないんだけれども。
久遠監督、俺たちに指示をしたあと、どこ行ってんだろ。
自分の部屋で、また読書でもしてるんだろうか。
「
「知らん。」
吹雪、お前は少しは自分で考えろ。
と、俺はそんなことを思いながら円堂の指示を待つ。
棚上げ?何のことですか?
「うーん。やっぱり、ランニングとかかな?」
「単純だが、それが一番か。」
うわー、体力づくりとか俺が一番嫌いな練習じゃないですか、やだー。
俺はボールが触りたいのに、これじゃあこの二日はずっと運動するだけ、とかになりそうだな・・・・
「よーし、それじゃあ早速。皆でランニングだー!付いて来い!!」
「おう!」
はあ。やっぱりそうだよな、そうなるよな。
せめて、音楽を聴きながら気を紛らわそう。
監督がいなくなったなら、俺は好き勝手やらせてもらおうと思う。
勿論、走り込みもしっかりする。
だが、PENGUIN RECITALの曲を聞かせてくれ・・・・
俺は一度自室へ戻って、イヤホンと音楽プレイヤーを装備して練習を始めた。
ランニング中、イヤホンが耳から外れまくって逆にイライラした。
今度から外れないイヤホンを探すか。
「よし、一旦休憩!」
円堂の合図で、俺達は地面に座ったり壁にもたれかかったりと思い思い休憩した。
これで皆はグラウンドを20周した。
俺は一週遅れで始めたので19周だが。
「はあ、はあ、つ、疲れたッス・・・・」
どっしーんと大きな体を地面に横たわらせる壁山。
驚くことなかれ、壁山は円堂に付いてしっかりと20周走りきった。
まだ代表が決まったばかりの最初の頃は、壁山も走ることは苦手で途中でバテることが多かった。
その度に久遠監督に走らされ、今ではしっかりと体力もついて来ているようだ。
にしても、なかなかその体型は変わらないな。
「お疲れ、玲奈。」
「ん?ああ。ありがとう。」
俺は、マネージャーが用意して持って来た水を一本多く受け取って玲奈に手渡した。
「なあ、玲奈。聴きたいことがあるんだが、いいか?」
「何だ?」
俺は、玲奈が水を一口飲んだあとを見計らって声をかけた。
「昨日の試合、お前がシュートを打った時の・・・・」
「あの、皆さん!」
俺が話をしていると、虎丸が大きな声をあげて俺の話を遮る。
おい、嘘だろ、まさか・・・・?
「どうしたんだ?虎丸。」
「すみませんが、俺、今日は早めに失礼します!」
「おいおい、特訓は始まったばかりだぞ?」
「すみません!また明日、よろしくお願いします!」
虎丸は、元気よく頭を下げてグラウンドから走って出て行ってしまった。
今日、まだグラウンド20周しかしてないぞ。
「虎丸の奴、また早引きか。」
「みたいだな。」
「どうしてアイツだけ、いつも早めに帰ってるんだ?」
「さあ・・・・・」
休憩していた俺達は、グラウンドから出て行った虎丸へと目線を送った。
それを見ていたマネージャー達が、なにやら企て始めた。
「皆、虎丸君の特別扱いが気になってるみたい。」
「そういうことならキャプテン!私達で調査してみましょう!」
「調査?」
「ええ。虎丸君が早引きしていつもどこに行っているのかを調べるんです!」
「えっ。でも、走りこみの特訓が・・・・」
「そんなの、走りながら調査をすればいいんですよ!」
音無の、いつものやかましモードだ。
鬼道に言わせれば、こうなった春奈は誰にも止められない、だそうだ。
「じゃあ皆さん!急いで虎丸君を追いかけましょう!」
そう言って、音無は真っ先に駆け出して行った。
「あ、待てよ、音無!」
円堂やイナズマジャパンのメンバー達は、それに続いた。
どうやら、思った以上に多くのメンバーが虎丸の事が気になっていたようだ。
残ったメンバーには興味を示さない飛鷹や不動、走りこみの特訓を続ける緑川、疲れ果てた壁山などがいた。
「あ、ヒロト!」
俺は、円堂達について行こうとしていたヒロトを呼び止めた。
ヒロトは、律儀に俺の方へとやって来た。
「何かな?
「ちょっと話に付き合ってくんない?」
「話?」
「ああ。」
俺は、ヒロトから視線を外して玲奈へと向き直った。
「さっきの話の続きだ。俺は玲奈が必殺技を使った所見たことないんだが、必殺技とか、持ってないのか?」
「ああ、あるにはある。けど・・・・」
「スペースペンギン?」
「と、スーパーノヴァだね。」
俺達の会話に、ヒロトも混ざる。
お前も流星ブレード以外にも何か覚えろよ。
「連携技か。それなら使えなくても仕方ない。・・・・で。提案があるんだが。」
「まさか・・・・?」
玲奈とヒロトは、俺が何をしたいか気づいたようだ。
「俺を入れた3人で練習してみないか?連携必殺技を、さ。」
玲奈とヒロトの2人は、俺のセリフに呆気にとられた。
さて。楽しくなってきたぜ。