イナズマイレブン!北のサッカープレイヤー   作:リンク切り

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対決!カタール!監督の驚きの指示! #10

 

 

 

 

 

『フットボールフロンティアインターナショナル、第一、第二ブロックの試合です!我らがイナズマジャパンにとっては決勝へと進むための第二回戦です!』

 

試合当日。

俺達イナズマジャパンは、デザートライオンとの試合のためにフロンティアスタジアムへと来ていた。

 

「それでは、スタンディングメンバーを発表する。」

 

 

ベンチで、監督がスタメンの発表をはじめた。

 

「フォワード。吹雪、豪炎寺、清川、基山。ミッドフィルダー。鬼道、緑川、八神。ディフェンダー。壁山、倉掛、木暮。ゴールキーパー、円堂守。」

 

今回はフォワードが4人か。

前回のフォーメーションに比べて、攻撃的な陣形になったな。

 

「よし!」

 

「またかよ。」

 

緑川が喜び、不動が苛立つ。

よかったな、緑川。

練習が終わってからも、お前だけはずっと走り込み頑張ってたもんな。

 

「清川!」

 

「は、はいっ!?」

 

俺がそんなことを考えていると、久遠監督に呼ばれた。

 

「今回の試合、お前の好きなようにプレーしろ。」

 

「え!?ど、どういう意味ですか・・・・?」

 

「そのくらい、自分で考えてみろ。今日のチームキャプテンはお前だ。」

 

「待ってください!何故、耀姫(ようき)なんですか?」

 

鬼道が久遠監督に突っかかる。

まさか、俺もイナズマジャパンのキャプテンをすることになるとは思ってなかったが・・・・

 

「指示を変えるつもりはない。・・・・私からの指示は、それだけだ。」

 

それだけ言って、黙りこくる久遠監督。

またこの監督は指示の本質を俺たちに教えることはなかった。

また鬼道が久遠監督に不信感を感じ始めたその時、円堂が鬼道を宥めた。

 

「鬼道!久遠監督には、きっと前みたいに何か考えがあるんだよ!」

 

「ああ・・・・」

 

 

鬼道は小さく呟いたのを聞いて納得した円堂は、今度は俺の方へと向き直る。

 

「キャプテンは任せた!頼んだぜ、耀姫(ようき)!」

 

「・・・・そう、言われてもなー。まあ、俺の好きなようにプレイすることが勝利に繋がるなら、俺の好きなようにやって見るけどさ。」

 

「ああ!」

 

困惑するマネージャー達からキャプテンマークを受け取った俺は、そのまま腕へとまきつける。

日本代表の中の代表を示すこの印。

だが、俺はこの布切れにプレッシャーも重みも全く感じることはなかった。

こんな軽い気持ちで日本代表を務める俺は、俺はそもそもキャプテン向きではないのだろう。

それにしても、好きなようにプレーしろ、か・・・・

俺の好き勝手やってもいいって事か?

俺は、いや、俺達は、監督の指示の意味がわからないままグラウンドへと出ることになった。

 

 

 

 

 

『エリザマノン率いる、カタール代表デザートライオン!キャプテンのビヨン・カイル選手を筆頭に、一回戦の相手サザンクロスを、その精錬された体力で勝利をもぎ取りました!』

 

なるほど、俺たちの聞いていた情報と変わらないな。

この二日間で鍛えた俺達の体力がどこまで通用するのかが大きく試合の結果を分けそうだな。

 

『そして対するは、オーストラリアの大波、ビッグウェイブズを打ち崩した、我らがイナズマジャパン!互いのキャプテン同士が握手を交わし、いよいよ試合が開始されます!・・・・んん!?なんと、今回キャプテンマークをつけているのは清川です!!これは、一回戦とは全く違う展開になるかもしれません!』

 

いつもは円堂がキャプテン同士の握手をするところを、今回は俺が出ることになった。

デザートライオンからは、緑色の髪をした褐色の野郎が出て来た。

うわ、こいつクマすごいな。

 

「アッサラームアライクム。お初にお目にかかります、デザートライオンのビヨン・カイルと申します。」

 

ビヨン・カイルか・・・・

なんだか面白い名前だな。

カエルを文字った名前だったりするのか?

物凄い飛び跳ねるやつだったりして。

 

「イナズマジャパン臨時キャプテン、清川耀姫(ようき)だ。今日はいい試合にしよう。」

 

「ええ、どうかお手柔らかに。それでは、マアッ・サラーマ。御機嫌よう。」

 

「お、おお、アマッサラーマ・・・・・」

 

こいつちょくちょくカタール語?なのか?を入れて来んなあ。

でも、かなり礼儀の正しい日本語を使うやつだったな。

 

『さあ、それぞれのチームがポジションへとつきました。そして、試合が始まろうとしています!今回、イナズマジャパンのフォーメーションがビッグウェイブズとの試合から大きく変わっています。久遠道也監督の指示に期待が高まります!』

 

そう。

今回イナズマジャパンのフォーメーションは、鬼道にお願いして俺が指示を出して好き勝手弄らせてもらった。

久遠監督が好きにしろって言ってたからさ、と、俺の指示通りに動いてもらうように頼んだ。

そしてこれが、カタールのデザートライオンと俺達イナズマジャパンのフォーメーションだ。

 

 

 

デザートライオン

 

GK ナセル

DF ムサ、ジャメル、ビヨン、ファル

MF セイド、メッサー、スライ、ユスフ

FW ザック、マジディ

 

 

 

イナズマジャパン

 

FW 俺

FW 吹雪、ヒロト、豪炎寺

MF 緑川、玲奈、鬼道

DF クララ、壁山、飛鷹

GK 円堂

 

ベンチ

木暮、不動、風丸、虎丸、立向居

 

 

 

相当おかしなポジション取りだ。

俺がワントップで最前線へいて、その後ろに吹雪ヒロト豪炎寺のフォワード陣が揃っている。

これは、「おれのかんがえたさいきょーのふぉーめーしょん」だ。

白恋でのツートップに不満があったわけじゃないのだが、どっちかと言えば俺は1人で活躍を上げたいタイプだ。

簡単に言えば、俺は自分の独りよがりなワンマンプレーが好きなのだ。

勿論、チームプレーもちゃんとする。

ただ、俺の好きなようにしていいならワントップが理想だというだけだ。

久遠監督が好きにしていいと言ったことをいいことに、俺は本当に好きなようにサッカーをするつもりだ。

ただ、司令塔が中心にいない事で、どれだけプレーに支障が出るのかが気になるな。

俺が鬼道を中心から追いやってまで玲奈を真ん中に置いたのは、俺とヒロトと玲奈でスペースペンギンへと繋げるためだ。

しかしこの技、実はまだ完成してなかったりする。

試合の中で完成できればいいのだが・・・・

 

そして、相手のデザートライオンのフォーメーションだ。

ビヨンって奴はセンターバックなのか。

ディフェンダーがキャプテンとは、珍しいチームだな。

突出して上手い奴がいるとは思えないんだが、どんなプレイをするチームなのか。

フォーメーションを見る限り、あまり攻撃的なチームじゃないのかな、と思う。

チームキャプテンもディフェンダーだしな。

まあそれは、試合の中で確かめればいいか。

 

ピーッ!

 

『さあ、試合開始です!今回ガラリとフォーメーションを変えて来たイナズマジャパン。さて、どんなプレーを見せてくれるのでしょうか!?』

 

試合開始のホイッスルが鳴った。

ボールは俺達イナズマジャパン側からだ。

 

「よし、行くぞ!」

 

俺は、ボールを蹴り上げて試合を始めた。

 

「フォワードは一緒に上がるぞ!ミッドフィルダー、ディフェンダーはそのポジションに待機!」

 

後ろで聞こえる困惑の声を無視して、俺と吹雪は走り出した。

それに一拍遅れて、ヒロトと豪炎寺が走る。

吹雪や豪炎寺達フォワードが後ろからついて来ているのを確認して、俺は敵陣内を駆け上がった。

鬼道含めフォワード以外は自陣で立ち止まっていることから、この試合は本当に俺の指示通りに動いてくれるようだ。

 

『清川、ハーフラインからそのまま1人で持ち込みます!しかし、フォワード以外の選手はポジションを離れません!一体どんな策があるのでしょうか!?』

 

策なんて大袈裟なものはねえよ。

とりあえず一気に攻めてとりあえずの先制点として、一点とる。

 

「そのボール、もらった!」

 

『デザートライオンフォワード、ザックアウドラが猛然と迫ります!』

 

ザックは、ある程度近づいて来たところで俺にスライディングタックルを仕掛ける。

それを体勢を崩しながらもステップを踏むかのようにリズミカルに躱した。

 

「何!?」

 

「任せろ!」

 

『ザックの次はメッサーが迫ります!息をつく暇を与えない見事なプレーです!』

 

メッサーがタックルで近づいてくる。

それに、俺もタックルで迎えうつ。

 

「抜かせんぞ!!」

 

「くっ・・・・しゃらくせぇ!」

 

思っていた以上に強いタックルだったため一瞬よろけたが、それをそれ以上の力で押し返す。

 

「うおぉっ!?」

 

競り合いには勝ったが、当たった肩がジンジンする。

くそ、見た目で細いから油断したが、かなりの力があるみたいだ。

デザートライオンはやはり身体能力がかなり鍛え上げられているらしい。

だが、ボールは俺が持っている。

結果オーライ、このまま攻め上がろう。

俺は後ろを見ないまま左手で吹雪へと指示を出して、ゴール前へと走った。

 

「これ以上進ませるな!」

 

「「おう!」」

 

ペナルティエリア近くにいたディフェンダー達が動き出す。

ようやくキャプテン、ビヨンのお出ましってわけだ。

 

「はあああっ!」

 

ビヨンはお出まししませんでした。

ボールを取りに来たのは、ビヨンと同じくディフェンダーのジャメルとムサだった。

2人でプレスしにかかるものの、俺もそう簡単にボールを奪われるつもりはない。

俺は、背後を見ないまま勘で吹雪へとパスを出す。

そのまま俺は2人に向かって走る。

 

「ジャメル!ムサ!あっちだ!」

 

「なっ!?いつの間に!?」

 

ビヨンが叫んで、ようやく俺の足元にボールがなくなっていることに気づく2人。

中央突破を意識させて空いたスペースにパスを出すのは、昔からありふれた戦術だ。

 

「吹雪!いけ!」

 

「うん!」

 

そこにきて吹雪の方向を振り返ると、しっかりと吹雪の足元にはボールがあった。

 

『ここで吹雪にパスが回りました!確認を一切取っていない素晴らしい連携です!』

 

やっぱり、白恋で昔使っていた連携はまだ続いているようだ。

俺が吹雪に出したハンドサインは、「出来るだけ左サイドに寄って上がれ」だ。

ボールを受けた吹雪は、俺にプレスしに来ていたためにスペースの空いていた左サイドからシュートを放った。

 

「ウルフ!レジェンドぉぉぉぉおおおおっっ!!」

 

吹雪と共に、餓狼が雄叫びをあげる。

俺の知らない間に完成させていた必殺シュートがゴールへ向かってすっ飛んでいく。

 

「ストームライダー!」

 

クルクルと、まるでエターナルブリザードかのように回転して砂埃を巻き上げるゴールキーパーのナセル。

が、そのままボールはゴールへと突き刺さった。

 

『ゴール!!開始数分でイナズマジャパンの先制点です!吹雪と清川、2人の連携で初ゴールをもぎ取りました!』

 

「よし!ナイスプレー、吹雪。」

 

「うん。久しぶりだったね、ボク達2人でこんな連携するなんて。」

 

「そうだな。」

 

俺なら、いや、俺達なら、互いがどんなプレーを求めているのかよくわかる。

どうせなら俺がシュートを決めたかったが、あれだけあからさまに隙を作られたら突きたくなるってもんだ。

俺もまさかこんなに簡単に吹雪のいる左サイドに隙ができるとは思っていなかったが、何にせよ一点だ。

 

「いいぞー!吹雪!耀姫(ようき)!」

 

反対側のゴールから、円堂の声が飛んでくる。

俺は腕を突き上げることでそれに答えた。

そして、フォワード達は試合開始位置のポジションへと戻る。

 

「ヒロト、玲奈。今回はスペースペンギンの出番は無さそうだ。玲奈は鬼道とポジションを交代してくれるか?」

 

「ああ。」

 

「鬼道!豪炎寺!吹雪!」

 

玲奈が頷くのを確認して、鬼道を呼び寄せて玲奈とポジションを入れ替えさせる。

そして、俺以外のフォワードもポジションを少し入れ替えた。

ポジションを確認した後、全員へと声をかける。

 

「一点取れたから、これからはそれぞれ自分の思うプレーをしてくれ!必要があれば俺か鬼道が指示を出す!」

 

「「おう!」」

 

『イナズマジャパン、早くもポジションチェンジです。鬼道と八神が、豪炎寺と吹雪と基山が、それぞれ持ち場を交換する形になりました。』

 

最初のポジション取りは、俺のただの采配ミスだ。

一番警戒していたのがゴールキーパーがとんでもない実力を持っていることだったが、ウルフレジェンドを止められないとなれば話は別だ。

動かしやすい吹雪を俺の真後ろにおいて、鬼道を中心へと持ってきた。

更にスペースペンギン組を右サイドに固まらせることで一応保険は残してある。

俺が指示した後のポジションはこうなった。

 

 

 

FW 俺

FW 豪炎寺、吹雪、ヒロト

MF 緑川、鬼道、玲奈

DF クララ、壁山、飛鷹

GK 円堂

 

 

 

鬼道を中心に戻したことで、指揮が取りやすくなったはずだ。

一点取ったことで余裕もできた。

デザートライオンは、それぞれの実力が中途半端に高いだけだったのかもな。

 

ピーッ

 

審判の笛で試合が再開される。

ボールはデザートライオンからだ。

 

「うおおおお!」

 

試合再開直後、髪が左右で白と黒に分かれているちびっ子が突進してきた。

 

『マジディ、勢い良く飛び出した!』

 

俺はマジディの前に走り込んで、進行方向を塞ぐ。

しかし、それを見たマジディはむしろそこから速度をあげて走る。

 

「おっらぁあ!」

 

「ぐっ・・・・!?」

 

俺がボールを取ろうとしている所に、マジディはそのまま突っ込んできた。

俺は、そのまま吹き飛ばされて突破されてしまう。

 

耀姫(ようき)くん!!」

 

「来んな馬鹿!お前はヒロトとそのちびっ子をプレスしろ!豪炎寺はバンダナをマークだ!」

 

ズキズキと痛む腹を押さえて3人に指示を出す。

審判は今のプレーをファールにするつもりはないようだ。

さっきから、デザートライオンはラフプレーが多いな。

 

「邪魔する奴は全員吹き飛ばす!!」

 

マジディは、また無謀にもそのままヒロトと吹雪へと立ち向かった。

どういうつもりだ、何を考えている・・・・?

 

『マジディ、吹雪と基山に迫ります!』

 

2対1という不利な状況にも関わらず勝負を挑む。

 

「うおぉぉおお!」

 

「わっ!?」

 

「くっ!?」

 

『マジディ、吹雪と基山に果敢に挑みますが、ボールは基山が弾いた!』

 

マジディは吹雪を突き放してヒロトにチャージを仕掛ける。

吹雪は飛ばされ、ヒロトはチャージを強い受けつつもボールを奪い取った。

 

「鬼道くん!」

 

ヒロトは鬼道にボールを渡して、危機を脱する。

吹雪もヒロトもラフプレーを受けていた。

大丈夫か?アイツら・・・・

 

「よし、上がれ!」

 

鬼道を中心に、イナズマジャパンが攻め上がる。

俺は鬼道にボール要求の催促をした。

 

「鬼道!」

 

「・・・・耀姫(ようき)!」

 

鬼道は一瞬躊躇ったものの、俺にパスを出した。

吹雪がヒロトと共に右サイドへ寄ったのが心配だが、そのまま攻める。

 

「行かせない!」

 

布をカカシ先生っぽく口に巻いたミッドフィールダーが俺を止めにかかる。

俺はそれをフェイントをかけて躱す。

そのまま突破しようとするとラフプレーで押されるから、フェイントかけるのが一番いいな、きっと。

 

「吹雪!」

 

「う、うん!」

 

合図を出して、ポジションから外れている吹雪を後ろから駆け上がらせる。

そして俺達は攻め上がった。

 

「豪炎寺!」

 

俺より上がっていた豪炎寺にボールを渡し、ミッドフィールダー、ディフェンダーと抜いていく。

 

耀姫(ようき)!」

 

「豪炎寺!」

 

『清川、今度は豪炎寺との連携です!ここから一気に追加点か!?』

 

俺と豪炎寺の2人で、ワンツーをしながらゴール近くへと持ち込む。

ディフェンダーも抜いたことで、俺達はゴール前へと躍り出た。

 

「行くぞ!!」

 

「絶対に通すな!」

 

ディフェンダーが俺と豪炎寺をマークしに来る。

それを待っていた。

俺はまたしても、ちゃんと指示通りに上がってきていた吹雪にパスを出す。

言葉も視線も交わさない、この連携。

これこそが、俺が、俺達が、一番得意なサッカーだ。

 

「ウルフレジェンド!!」

 

「ストーム・・・・ぐわぁっ!?」

 

不意を突かれたデザートライオンは、必殺技を出す暇もなく得点されてしまった。

 

『ゴール!!得点をあげたのはまたしてもイナズマジャパンだ!!』

 

これで2対0。

デザートライオンは、ただ体力があるだけで強い必殺技やテクニック、戦術なんかはあまりないのかもな。

これなら、1回戦のビッグウェイブスの方が格段に強かった。

これまで戦ってきた中で、1番戦いやすい相手だ。

 

 

 

 

 

「一年の9月、練習試合!」

 

「・・・!!」

 

俺の指示に、一つ頷いた吹雪が背後で思い切り左側に走る。

吹雪に注意が向かうが、ゴール前へ進もうとしている俺の方にディフェンダーが集まる。

 

「行かせん!」

 

「そこだ!」

 

俺はそいつらを無視して、ゴールへとボールを蹴り込む。

 

「いけえぇ!!」

 

「このくらい、止めてやる!」

 

だが、俺の狙いはそこじゃない。

俺の蹴ったボールはデザートライオンのゴールに向かうことなく、途中でコースが変わった。

そのボールが向かうのは、左サイド。

そしてピッタリの位置に走り込んでいたのが、吹雪だ。

 

「ウルフレジェンド!!」

 

「くっ!?」

 

『ゴール!!吹雪士朗、ハットトリックだぁああ!!!』

 

3対0。

すべてが俺のアシストによる吹雪の得点だ。

やはり、吹雪は動かしやすい。

今の指示は、俺達白恋中時代での練習試合で起きた奇跡プレーだ。

ディフェンダーに囲まれた俺が破れかぶれでシュートを打ったと見せかけ、吹雪にパスを出す。

そんな高度な連携でも、吹雪がシュートするとバレると元も子もない。

だから、デザートライオンにはわからない俺達2人しか知らない言い方で指示を伝えた。

というか、吹雪もこの連携の事よく覚えてたな。

 

「ナイス吹雪!」

 

「はあ、はあ・・・・う、うん、ありがとう、耀姫(ようき)くん・・・・!」

 

「大丈夫か?かなり疲れてるみたいだけど。」

 

「うん、大丈夫・・・・」

 

苦しげな表情から笑顔を見せる吹雪。

ちょっと前半から飛ばしすぎたか?

今の時間は、前半25分ほど。

バテるにはまだ早い時間だ。

 

「よーし!この調子でもっと攻めるぞー!」

 

ゴールから円堂の声が飛ぶ。

しかし、ここから5分は膠着状態だった。

全員が少しずつ疲労がたまり、あまりいいプレイができていない。

ヒロトが飛ばされ、豪炎寺が倒され、緑川が押し負け、鬼道が投げ出され。

そして、吹雪がとにかく疲れまくっていた。

俺が指示を出して動かしてきた反動だろう、後半からは交代だな。

デザートライオンも疲れているはずなのに、最初よりも動きが良くなっている気さえもする。

これが、体力の差なのか・・・・?

 

「吹雪!こっちだ!」

 

「わかった!」

 

吹雪が足をもつれさせながらもこちらへと視線を向ける。

しかし、それを見たビヨンが吹雪から必殺技でボールを奪う。

 

「デザートストーム!」

 

足を地面に擦って砂を巻き上げ、目くらましをした後にボールをかすめ取る。

必殺技の中で考えれば、かなり現実的な技だ。

 

「行け、メッサー!」

 

「おう!!」

 

ビヨンからボールを受けたメッサーが上がる。

そしてそのポジションを守っていたのは玲奈だ。

 

「止めろ!」

 

「くっ・・・・」

 

進路を塞いだ玲奈も、メッサーのチャージを止められずに倒れた。

女にも容赦なしかよ。

 

ピッピー!

 

審判の笛が鳴った。

ファール判定がやっと出たのか、と思ったら違ったようだ。

どうやら前半終了らしい。

 

「助かったか・・・・でも、みんな疲れてきているな。吹雪。お前は後半ベンチに下がれ。」

 

俺が吹雪に近づいて話しかける。

しかし、吹雪は荒く呼吸をするだけで返事は帰ってこなかった。

 

「おい、吹雪?どうしたん・・・・」

 

俺が吹雪の肩に手を乗せると、吹雪はそのままがくりと倒れ込んだ。

 

「吹雪!?おい、吹雪!?」

 

異常に気づいた他のメンバー達もやってきて、俺達は吹雪を囲んで呼びかける。

吹雪は俺たちの声に反応したものの、過呼吸かのように荒い呼吸を繰り返していて辛そうだ。

 

「・・・・ここからが、俺達デザートライオンのサッカーの始まりだ。」

 

「何だと?」

 

デザートライオンのメンバー達が俺達に近づいてきた。

 

「ここまでよく全員の体力が持ったと褒めてやろう。」

 

「俺達は、灼熱の大地と砂漠で育ってきた。この程度の運動は寧ろ軽いもんだ。」

 

「鍛え上げられた体と、無限の体力。それが我々デザートライオンの最大の武器!」

 

「昨日今日と特訓しただけのお前達が、俺達と同じだけ動けるはずがないだろう。」

 

とりあえず、吹雪をベンチに下げよう。

話はそれからだ。

 

「吹雪、立てるか?」

 

「う、ん・・・・」

 

吹雪が一番走り回っていた上にラフプレーも貰っていたからな。

それでも、こんなになるなんて珍しい。

 

「悪かったな、吹雪。久しぶりに、俺もちょっと舞い上がってた。」

 

「ううん、プレーについて行けなくて、ごめん・・・・」

 

「馬鹿、いいから寝てろ。」

 

ベンチに行くと、すぐさまマネージャー達が吹雪の介抱を始めた。

俺達が勝ってるっていうのに、こんな気持ちで前半が終わるとは・・・・

 

「これまでのラフプレーは、イナズマジャパンを消耗させるためのものだったんですね・・・・」

 

「それに、今日はこの気温の高さです。こちらが不利になってきているのは、誰の目から見ても明らかです。」

 

前半の3点を守れるか。

それがこの試合の勝敗を分ける鍵になりそうだな・・・・

 

「このままでは、全員疲れて動けなくなって負けてしまうな。」

 

「久遠監督・・・・」

 

「どうする。清川。」

 

「・・・・」

 

久遠監督は、俺に何かを求めている。

そのために、俺を今日、チームキャプテンにした。

・・・・でも、その、何を求めているのかがわからない。

久遠監督の性格からして、素直に教えてくれるとも思えない。

 

「試合が始まるまでに、考えておくんだな。」

 

「・・・・はい。」

 

クソ、どうしろってんだ。

 

 

 

 

 

ピーッ!

 

試合が再開される。

ボールはデザートライオンだ。

 

『前半で大活躍だった吹雪に代え、風丸を投入してきました。これがどう試合に影響してくるのかが気になります!』

 

吹雪の代わりには風丸が入った。

ベンチのメンバーはまだ元気だからいいものの、フィールドにいるメンバーはバテバテだ。

攻め入られるとまずいな。

 

『対してフォワードを2人から3人に変更してきたデザートライオン。これから攻撃のリズムが変わってきそうです。』

 

「行くぞ!」

 

フォワードが3人、それぞれが向かってくる。

俺は、ボールを持っていたザックに向かって走り出す。

デザートライオンは、ボールを取られそうになってもパスを出す事がない。

ラフプレーをして体力を削るのが目的のようだが、俺にとっては好都合だ。

 

「はぁぁああ!!」

 

案の定、パスを出さずに突っ込んでくるザック。

俺は、ザックのチャージを正面で受けて押し返した。

 

「くっ、お前、まだこんな力を・・・・」

 

俺はボールを奪うことに成功したが、まだフォワードが2人残っている。

それぞれが俺へとボールを奪いに走ってくる。

くそ、どうすればいいんだ、久遠監督・・・・

 

「寄越せ!」

 

「吹っ飛ばす!!」

 

俺は、2人からの強引なプレイを()()()()

 

「くそ、なんなんだコイツ!?」

 

「あれだけプレーして、なんでこんなに力が残っているんだ!?」

 

俺に、力が残っている・・・・?

俺は、ふと周りを見渡す。

俺の目に映るのは、疲れ始めてきている仲間達。

15分、休憩があったものの前半での疲労が回復しきっていないように見える。

それに引き換え、俺はどうだ。

疲れなんて、さっぱり残っていない。

どうせ神様のくれた力だろう、俺は全く疲れていなかった。

 

・・・・好きにプレイしろって・・・・まさか、そういうことなのか・・・・!?

 

 

 

 

 

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