イナズマイレブン!北のサッカープレイヤー   作:リンク切り

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第二章 アジア予選開始!呪われた監督久遠の謎!
メンバー達に広がる不安! #05


 

 

 

 

 

「うん、選ばれたよ。日本代表。」

「うん。ちゃんと起きてるし、歯も磨くし顔も洗うよ。」

「はいはい、わかってるって。怪我にも気をつける。」

「うん。わかった。ありがとう、母さん。」

 

俺は、早朝にかかってきた電話を切る。

時計を見ると、まだ5時前だった。

 

「ふぁあ。心配してくれるのはありがたいんだが、過保護も過ぎると気疲れはするよな。」

 

ベッドに入ったままの体を起き上がらせる。

そして机の上に置いてある、タイマーがセットされた目覚ましを止めた。

鳴る前に母さんが電話をかけて来たもんだから、タイマーが鳴る前に起きてしまった。

さて、着替えて朝食でももらいに行こうかな。

・・・・いや、こんな早くにまだやってないか。

そう考え、俺はグラウンドでシュートの練習でもすることにした。

 

物置からボールを探し出して、一つ持ち出すと宿舎を出た。

グラウンドに出てみると、日が出たばかりだった。

空はまだ完全には明るくなっていない。

俺は誰もいないゴールに向かって、1人ボールを蹴り上げた。

 

「デス・スピアー!」

 

足首で思いきり捻ったボールは、グルングルン回転しながら細長いドリルのように変形する。

赤黒く染まったサッカーボールをもう一度蹴りつけて加速させる。

すると、槍となったサッカーボールはゴールへと一直線に向かって行った。

 

「・・・・こんなもんか。」

 

その後も何回か必殺技を打つが、結局これまで以上の手応えを感じることはできなかった。

デススピアーも、何かが決定的に足りない気がする。

いや、このままでも充分な威力があるのだが、なんだか上手く扱えきれていないような気がするのだ。

言葉では上手く言い表せないが、なんか、こう、本物のデススピアーではないような・・・・・

 

昨日も、俺のデススピアーはザウォールと正義の鉄拳で弾かれたが、本来はあんな技に止められる威力ではないはずだ。

飛鷹のあの謎現象は別として。

パワーインフレ、御都合主義、俺のキック力が足りない、だとか理由は並べれば並べるほど出て来る。

一体、何がダメなんだろうか。

それとも、俺はただ映画で見たときのような迫力がないからそう思っているだけなのか。

考えれば考えるほど、わからなくなるな。

 

耀姫(ようき)くん!」

 

「ん?ああ、吹雪か。どうした、こんな早朝に。」

 

耀姫(ようき)くんが練習してたのが部屋から見えたから、つい。」

 

俺が考え事をしていると、不意に声がかかった。

俺に声をかけたのは吹雪で、さっき合宿所から出てきたようだ。

寝巻きなのか着替えたのかは知らないが、吹雪は新しく支給されたイナズマジャパンのジャージを着ていた。

勿論、俺もジャージを着ている。

動きやすいからな。

 

「その技、完成してたんだね。」

 

「デススピアーのことか?まあな。」

 

「驚いたよ。高熱が出た、なんて聞いたから心配してたのに、その次の日からもう新必殺技の練習を始めてるんだから。」

 

「ああ、新しい技のヒントが浮かんだんだ。いても立ってもいられなかった。」

 

「あはは、耀姫(ようき)くんらしいね。」

 

俺が記憶を取り戻したのは約1週間ほど前だ。

その時に、記憶が戻る副作用なのか風邪をひいてうなされていた。

幸い熱はすぐに下がったので、次の日からデススピアーの練習を始めたのだ。

吹雪は、そのときのことを言っているのだろう。

 

「ねえ、シュート対決とか、やって見ない?」

 

「・・・・いや、それだとキーパーが居ないと面白くないだろ。吹雪が俺に蹴って見てくれ。」

 

「ボクはそれで良いけど・・・耀姫(ようき)くんはいいの?」

 

「ああ。今丁度、シュートを受けたかったんだ。」

 

時にはキャッチする側に回ってみるのも良い。

それに、なにかデススピアーのこともわかるかもしれないしな。

フォワードの、単なる気分転換だ。

受ける側になって見ると、見えてくることがある事もある。

そんな思いで、俺はゴール前に立った。

 

「最初はエタブリで来てくれ。」

 

「わかった。行くよ、耀姫(ようき)くん!」

 

「ああ、来い!」

 

吹雪は、ぐるぐると体を回転させながらボールの周りの空気を凍らせる。

吹雪の周りに吹雪が吹き荒れ(とてもややこしい)、ボールが凍てつく。

そして回転させている体を最大限利用して、ボールへ回し蹴りをする。

 

「エターナル・ブリザード!!」

 

俺は、凍りついたサッカーボールを受け止める。

腕の中で暴れ出すエターナルブリザードを押さえつける。

しかし、強化されたエターナルブリザードを必殺技無しで受け止めるのは流石に無理だった。

俺はボールに吹き飛ばされて、シュートはゴールへ突き刺さる。

 

「だ、大丈夫!?耀姫(ようき)くん。」

 

「ああ、大丈夫大丈夫。」

 

素手でやって居たら流石に痛かっただろうが、キーパーグローブをしているので問題はない。

吹雪は、俺が無限槍を使うと思ったのか少し困惑気味な顔だ。

 

「何か、掴めないもんかなあ。」

 

耀姫(ようき)くんが何に悩んでいるかわからないけど、ボクは今のままでも充分だと思うよ。」

 

吹雪は、悩む俺に優しく声をかける。

ずっと前から変わってないな、お前は。

でも、それは吹雪の見解だ。

俺は何か物足りなさを感じてるんだ。

 

「・・・・・そろそろ、宿舎に戻るか。良い時間つぶしになった。ありがとう吹雪。」

 

耀姫(ようき)くん・・・・」

 

俺は吹雪を置いてサッカーボールを持つ。

そしてボールを戻すために宿舎の物置に向かった。

心配してくれるのはありがたいんだが、吹雪が心配するほど重要なことじゃないんだ。

大方、こっちの世界の体になったばかりだからまだ脳が戸惑っている、とかそんな事だろう。

体格や背格好などは全く変わって居ないのだが。

 

ボールを返して部屋へ戻ろうとすると、廊下にマネージャーの2人が立っていた。

どうやら、選手の部屋1つずつ部屋を回っているようだ。

何か連絡することがあるのか?

俺は話しかけるため、2人へと近づいた。

 

「あ、耀姫(ようき)君。ご飯の時間よ、食堂はもう空いてるからね。」

 

「ああ。ありがとう、木野さん、音無さん。」

 

「ふふ、私たちはもうチームメイトです。それに、私の方が後輩なんです。さんなんて、つけなくても良いんですよ。」

 

「ああ、わかった。音無、な。」

 

「はい!」

 

「あ、私も呼び捨てでいいわ。」

 

「ん。わかった、木野。」

 

俺が答えると、音無と木野の2人は顔を見合わせてにっこりと笑顔になった。

それを見て気の緩んだ俺は、無意識に2人の頭へ手を伸ばす。

 

「これからよろしくな、2人とも。」

 

「え、あっ、はい・・・・」

 

「えっと、よ、耀姫(ようき)君・・・・?」

 

「ん?えっ!?あ!?あ、ああ、ご、ごめん、2人とも、頭にゴミが付いてたから払ってたんだ・・・」

 

俺は苦しすぎる言い訳を叫びながら、バッと撫でていた2人の頭から手を離す。

や、やべー!ついやっちまった!!

ついうっかりいつもの癖で手が出てしまった!

なにこれ、痴漢の言い訳かよ!!

大丈夫かな、こんな事して訴えられないかな!?

これ、今の時代だとセクハラとか成立するんじゃねえの!?

 

「そ、そうなんだ、ありがとう・・・・」

 

木野もこうは言っているが、2人とも顔が真っ赤なので嘘なのは確実にバレているだろう。

多分、俺も顔が熱いので赤くなっているはずだ。

優しくよしよしと頭の上を数往復して、ゴミを払っていたはないだろう。

よし、早く退散しよう、気まずすぎる。

 

「じゃ、じゃあ、俺は食堂行くわ!教えてくれてありがとな!」

 

「は、はい!行ってらっしゃい・・・・」

 

俺は脱兎の如くその場から逃げ出した。

うわー、完全に白連中の奴(あいつ)らのせいだ!

俺はいつの間にか女の子が笑顔になると撫でてしまうマシーンに調教されていたというのか!?

おそるべし。

俺はとりあえず、赤くなった顔を元に戻すためにトイレへ向かった。

幸い、中には誰もいなかったため手洗い場で水を流しながら顔を洗う。

火照っていた顔がすぐに冷える。

はあ、これからはマネージャー陣と会う度に気まずくなったら嫌だなあ。

よし。とりあえずは、飯食いに行くか。

 

食堂に着き(食堂とかあるんだ、校舎だったのに・・・・)、まん中にあるテーブルの椅子に座っている吹雪を発見する。

あわよくば、吹雪の隣に座ろうと思っていたが左右両方に人が座っていた。

俺は仕方なく、その隣のテーブルに着く事にする。

つか、不動は端の机でボッチ飯か。

 

「ここ、空いてるか?」

 

「ああ。」

 

風丸に断りを入れて、椅子へ座った。

すると、バタバタと忙しなく動いていた目金が、俺の席へと朝飯を運んできた。

俺は一言礼を言って、食べ始めることにした。

 

「いただきます。」

 

机の上に置いてあった割り箸を一膳とって、左右に割る。

うん、さっき運動したし、お腹空いてるんだよな。

この机には、壁山と緑川とヒロトが、そしてその対面に、円堂、風丸というメンバーが座っていた。

空いた椅子は1つしかなかったので、俺は必然的にヒロトと向かい合う形になる。

俺が食べ始めると、ヒロトが話しかけてきた。

 

「初めて見たけど凄いね、君のシュート。」

 

「そうか?」

 

「うん。吹雪君が褒めていただけはあるね。」

 

「ハハハ、そうなのか。お前もなかなかだったと思うぞ。」

 

俺たちはフォワード同士だ。

自然と話が噛み合うのかもしれない。

それに、ヒロトは昨日の紅白戦のイベントで吹雪とも仲良くなっていたようだし、俺も気になっていた。

しかし、それを抜きにしても会話が弾む。

途中からは話に風丸や円堂達まで入ってきた。

それにしても、世界編の記憶が無くなっていたからヒロトが仲間になるなんて思っても見ていなかった。

だから、ヒロトが呼ばれていたのを見てすげえ嬉しかったんだよな。

俺が知っているヒロトは敵役だったし、こんなヒロトは新鮮だ。

 

「おかわりッス!」

 

「俺もだ!」

 

「じゃ、俺も!」

 

「俺もで。」

 

「おいおい、もう三杯目だぞ?朝からよく食うなあ。」

 

壁山、円堂、緑川、そして俺の順にご飯のおかわりを頼む。

俺も朝飯はめっちゃ食うタイプだ。

朝から三杯くらいは基本的に普通に食べるしな。

でも、あまり食べすぎると朝の練習に支障が出るし、あまり食いすぎるのはやめておくか・・・・。

 

「今日から練習が始まるんだ。スタミナ付けないとな!」

 

白米をかきこんで、飯を食いながら大声を上げる円堂。

そんな急いで食ってたら体に悪いんじゃないか?

これには、長らく円堂に付き添ってきていた風丸も呆れ顔だった。

 

「はーい、皆さん。食べながらでいいので聞いてください。」

 

「ん?」

 

俺たちが、おかわりできたご飯を食べていたところに、木野が声を上げた。

何事だ?

俺たちは全員、木野の方向を向いた。

木野は俺と目が合うと、うっすらと頬を赤く染めて目をそらされた。

うーん、謝ったほうがいいのかな?

でも、ゴミがついてるとか言っちゃったし、謝りに行くのもおかしな話だよな・・・・・

 

「あ、えっと、新しいマネージャーを紹介します。はい、久遠冬花さん。」

 

木野の後ろから、1人の女の子が出てきた。

紫の長い髪を後ろで結っていて、横髪を垂らしている俗に言う触覚女子だ。

その女の子は、どこのかわからない制服を着ていた。

少なくとも、雷門中のものではない。

 

「久遠冬花です。みなさん、よろしくお願いします。」

 

その女の子、久遠さんは、ぺこりとお辞儀をして挨拶をした。

すると、俺たちと同じ机にいた円堂が、突然席を立って久遠さんの前に走っていった。

 

「ねえ、フユッペ。お前、フユッペだろ!」

 

「え?」

 

「俺だよ、俺!覚えてないか!?」

 

急に円堂が、ナンパとオレオレ詐欺を始める。

というか、ストーリーが進んだのか、俺に新たな記憶が増えた。

それは、久遠冬花についての記憶だ。

円堂とは、小学一年生の頃に一緒に遊んでいた友達だったみたいだ。

そしてなにより、cv。

色々とトラブったり、とあるゲームでレイピア使いをやっていたりするあの人だ。

 

「ほら、俺のこと守くんって呼んでたじゃない。サッカーの守くん、って。」

 

「あの、ごめんなさい、人違いじゃないでしょうか?」

 

「え、えっ!?そ、そんなあ・・・・」

 

あれ?

俺の記憶では、確かにこの2人は幼い頃に友達だったと思うんだが・・・・

どう言うことなんだ?

本当は知ってるのに、守くん知らないみたいなこと言ってんのかな?

でも、久遠さんの方も、別に嘘をついてるって言う感じはしないんだよなー。

本当にそのまま人違いだったら、円堂が恥ずかしいだけだろうが。

 

「あれ?もしかして、久遠って・・・・・」

 

「はい、監督の、久遠道也は私のお父さんです。」

 

「うーん、フユッペのお父さんって、あんな顔だったか・・・・?」

 

円堂は、また新しい謎が増えたとウンウン唸りだした。

円堂、早く食わないと冷めて不味くなるぞ。

 

「はいはい。朝ごはんの後は朝の練習よ。食べ終わった人はグラウンドに集合ね。」

 

「「はーい」」

 

ん、じゃあまあ、食べ終わったことだしグラウンド行こうかな。

俺はお盆を下げてから玄関へと向かう。

 

「うまかったぜー、じゃあなー。」

 

「はいはーい。」

 

グラウンドには、まだ俺と数人しか集まっていなかった。

久遠監督もまだ来てないし、適当に時間潰しとくか。

 

 

 

 

 

⚽️

 

 

 

 

 

「全員揃っているな?」

 

「「「はいっ!」」」

 

「まずは、FFIアジア予選が始まる前に一つ、言っておくことがある。」

 

グラウンドに出て、数分後。

虎丸がギリギリ走って来て、イナズマジャパンのメンバーが全員揃い、久遠監督が来た。

そして、これから久遠監督の初めての練習が始まろうとしている。

 

「いいか。お前たちの実力では、世界などには通用しない。」

 

「えっ!?」

 

「何だ、その顔は。まさか、自分たちが世界レベルなどと自惚れていた訳ではあるまいな。お前たちの力など、世界の前では吹けば飛ぶ紙切れのようなものだ。」

 

「か、紙切れ・・・・・」

 

そ、そんなに直球で言ってくるか。

やっぱりこの監督厳しいな。

逆に笑えてくるくらいの貶し様だったぞ、今の。

まあでも、若干自惚れていたところは俺にもあるしな。

 

「そして、円堂。鬼道。吹雪。豪炎寺。私は、お前たちのことをレギュラーだとは全く考えていない」

 

「えぇっ!?」

 

「私にとっては、過去の実績などなんの意味もない。試合に出たければ、死ぬ気でレギュラーの座を勝ち取ってみせろ。中には、私の言うことに納得いっていない者もいるかもしれない。だが、一切口答えは許さん。お前たちは、私の言う通りに実行することを考えていればそれで良い。」

 

うん、まあ確かに、円堂や鬼道なんかはキャプテンやって来てたしな。

多少の余裕があったりするのかもしれない。

それを見抜いて、厳しくしてるんだろうな。

そう考えると、良い監督ではあるな。

 

「清川、お前もだ!」

 

「は、はいっ!」

 

な、何で俺だけ名指しなんだ!?

 

「私からは以上だ。これから練習を始める。」

 

やっとか・・・・・

いよいよ、練習が始まる。

さっきので、久遠監督のことが少しわかった。

これなら、良い練習ができそうな気がする。

 

練習は、昨日の紅白戦のように2チームに分かれて模擬戦をするというものだった。

結局、やる事は変わらねえのかよ。

 

「ヒロト!」

 

ヒロトは、回って来たボールをトラップして敵陣内へと向かう。

 

「止める!」

 

「行かせない!」

 

ヒロトの前に2人のディフェンスがボールを奪いに来る。

しかしそんなディフェンスを持ち前の素早さで同時に2人抜き、ヒロトはゴール前へと躍り出た。

ウルビダや風丸もそうだが、ヒロトのスピードも眼を見張るものがあるな。

 

「流星ブレード!」

 

「正義の鉄拳!」

 

ヒロトと円堂の必殺技の打ち合いだ。

円堂はシュートに弾かれて尻餅をつくが、ボールはゴールに入らず試合続行。

ボールが回ったのは壁山だ。

そして壁山から鬼道、風丸とパスが繋がる。

 

「入れっ!」

 

シュートコースをディフェンダーにふさがれる前に、風丸がシュートを打ち込む。

必殺技じゃなくても、普通に守りにくい場所をめがけてシュートを打つのも大切だ。

勿論、相手の必殺技があるなら、打てたことに越したことはないが。

っていうか、風丸がシュート打ったからフォワードである俺の出番がなかったんだが。

ゴールの左端を狙ってカーブがかかったボールは、立向居のナイスセーブによって弾かれる。

そしてこぼれたボールを拾ったのはクララだ。

クララから緑川、ウルビダ、虎丸、そしてヒロトへとボールがつながり、ヒロトが豪炎寺へセンタリングを上げる。

豪炎寺がシュートをする前に、良い動きをしたのが壁山だ。

 

「そうはさせないッス!ザ・ウォール!」

 

「ナイスだ、壁山!」

 

壁山が取ったボールは飛鷹へと回される。

しかし初心者の飛鷹はまだパスを受けることが難しかったのか、ボールを取りこぼしてしまう。

そのボールをディフェンスに戻って来ていた仲間の風丸がフォローする。

 

「ドンマイ、飛鷹!ボールの動きをよく見るんだ。」

 

「うす・・・・」

 

こんな調子で、ちゃんと上手くなるのかな、飛鷹。

ボールをキープしていた風丸がディフェンスに囲まれる。

 

「風丸、耀姫(ようき)にパスだ!」

 

「ああ!耀姫(ようき)!」

 

よし、出番だな。

鬼道に言われたように、逆サイドにいた俺は風丸がパスを出しやすい位置に移動し、風丸は俺にパスを出す。

ディフェンスを避けるように回転がかけられ、曲がったパスが俺の元へと飛んで来る。

さっきから、曲がるキックを打つのが上手いな、風丸。

しかし、俺が遠すぎたのが原因か、あるいは虎丸がナイスプレーだったのか、ボールは俺に届く前に虎丸にパスカットされてしまう。

 

「よし、取ったぞ!」

 

ハーフラインから、上手なボールさばきでゴール前まで上がる虎丸。

豪炎寺とヒロトが左右に分かれて、ディフェンダーを牽制する。

すると、虎丸からゴールに向かって一直線に守備に穴が空いた。

フォワードならば絶対にシュートを打ちたくなるような、そんな最高のシュートチャンスだった。

 

「ヒロトさん、お願いします!」

 

そんなタイミングで、やはり虎丸はパスを出した。

おい虎丸!シュート打てただろ、今!

でも俺は敵側だからゴールが決まらなかったのは嬉しいんだが。

・・・・虎丸には、なにかシュートを打ちたくない理由があるのか?

 

「しまった!止めろ、壁山!」

 

「はいッス!ザ・ウォール!」

 

壁山のそばで注意を引きつけていたヒロトは、壁山にとっては格好の獲物だっただろう。

またしても必殺技でボールを奪った。

 

「ストップだ!」

 

虎丸も色々と問題のあるメンバーだ、と思いながらパスを待っていると、久遠監督からストップがかかった。

 

「壁山!何なんだ、お前のプレーは。」

 

「お、オレッスか?オレ、な、何かしたッスか?」

 

「どうしてもっと前へ出ない。突っ立っているだけがディフェンスの役目か!私のチームには、守ることしか考えてないディフェンスなど必要ない。」

 

「えっ!?」

 

「それから、風丸!」

 

「はい!」

 

「あの時、どうして清川にパスを出した?鬼道が言ったからか?お前は鬼道の指示がなければまともにプレーができないのか!」

 

「そ、そんな事・・・・」

 

うわー、この監督、一言足りないってレベルじゃないだろ。

もっと選手に納得のいくように説明してやれば良いのに。

まあでも、俺はこんな空気も好きだけどな。

不動が、口の端を釣り上げてニヤニヤしているのが見える。

お前も俺と同じで、他人が怒られてるとこ見ると笑っちまうタイプか。

後で、お前先生に怒られてやんの〜とかいう中学生ノリだ。

 

「どうした、練習再開だ!」

 

「は、はいっ!」

 

壁山が風丸にパスを出し、風丸はそのまま上がる。

流石に気まずかったのか、鬼道は今回は何も指示を出さない。

 

耀姫(ようき)!」

 

風丸が今度こそ自分の意思で俺にパスを出した。

今度はしっかりと俺につながり、シュートを決めようとした。

しかし、後ろから不動のスライディンが迫っていた。

突然死角から来た不動に、俺は咄嗟に反応ができずにボールを奪われ、ついでにすっ転がってしまう。

肘が地面にぶつかって痛え。

 

「おい不動!!今のはわざと死角から・・・・」

 

「良いぞ!不動。ナイスチャージだ。」

 

鬼道が声を荒げるが、久遠監督が不動を褒めた事で思わず閉口してしまう。

こんなラフプレイを褒めるなんて、あの監督は一体何を考えているんだ、って顔だな。

ゴーグルで表情あんまりわかんないが。

俺も、不動に何か一言言ってやろう。

 

「不動。」

 

「何だよ。」

 

「ナイスプレー!」

 

グッとサムズアップして笑って見せれば、ニヤニヤしていた不動はたちまち不機嫌になる。

その後不動は俺を鼻で笑って、相手側へドリブルでボールを持ち込む。

それを合図に、固まっていた他のメンバーはまた動き始めた。

俺は、ああいう荒くれたプレーや態度と性格の悪さを含めて、不動が好きだ。

何だろ、俺もそんなところがあるし、親近感が湧いてんのかな?

 

「あんな独りよがりのプレーを、何故久遠監督は褒めるんだ?くそ、あんな奴に、レギュラーの座は渡さないぞ!」

 

「なんだか、嫌な雰囲気だ・・・・。この監督で、本当に大丈夫なのかな?」

 

他のメンバーに不安が広がる。

うん、あんなきつい言われ方したら不安にもなるか。

 

 

 

 

 

「では、これで失礼します!」

 

「おう!また明日な!」

 

「はいっ!」

 

練習が終わり、虎丸はいの一番に荷物をまとめて帰って言った。

あいつだけ、宿舎に泊まらずに実家通いなんだよな。

何か、事情があるのか?

 

「は、はあ、やっと終わった・・・・初日からこんなにハードとはね・・・・」

 

練習が終わって、メンバーたちは全員クタクタだった。

特に、グラウンドを走り回っているミッドフィルダーが酷い。

久遠監督は適度に走るフォワードやディフェンダーも走らせまくっていたからそのメンバーもいつもより疲れていた。

 

「ねえ。円堂君はどう思う?あの監督のこと。」

 

「え?どうって、確かにちょっと変わってるな、とは思ったけど・・・・」

 

「ちょっとじゃなかったッス!」

 

「まあまあ。」

 

「でも、俺は良い監督だと思うぜ!だって、思った事をはっきりと言ってくれるんだしさ。きっと、俺たちにはまだまだ足りないところがあるんだよ。世界を目指すためには。」

 

「なら、良いんだけど・・・・」

 

凄いな、あの監督を見て良い監督って言うとは思わなかったな。

ポジティブで前向きだな、本当に。

 

「よーし!皆でこの後一緒に雷雷軒行こうぜ!」

 

「賛成ッス!」

 

全員がラーメン屋に行くことが決まって行く。

そして円堂は、飛鷹へと声をかける。

 

「飛鷹、一緒に行こうぜ!」

 

「すみません、キャプテン。ありがたいお誘いですが、俺は失礼します。」

 

「ごめんな、円堂。また後で。」

 

「私は食堂で済ませる。」

 

と、飛鷹を皮切りにして何人かが断りを入れる。

俺は遠慮しとこうかな、宿舎で食べればタダなところを、別にお金払ってまでラーメン食べたいわけじゃないし。

ノリ悪いって言うなよ、別に何人か行かないって言ってるわけだから良いだろ。

そりゃあ俺だって、全員行くならついてくけどさ。

 

耀姫(ようき)くん、行かないの?」

 

「まあ、疲れたし歩くのはちょっとな。俺のことはいいから、吹雪は行ってこいよ。」

 

そして残ったメンバーが、飛鷹、不動、クララ、ウルビダ、俺、緑川だった。

不動は自分勝手だし、虎丸は毎晩どっか行っちゃうし、緑川はまた練習始めちゃうし、飛鷹は付き合い悪いし、監督はどこか不穏だし。

まだ世界への挑戦は始まったばっかだって言うのに、こんなことで大丈夫なのか・・・・?

 

 

 

 

 

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