これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府と答え

志垣軍令部長の逮捕は後に海軍最大級の組織ぐるみの隠蔽、マスコミとの癒着による汚職事件として海軍省、大本営を大きく変革させることとなった

また、政財界をも巻き込む壮大な疑獄事件へと発展していくことになる

 

 

 

疑いが晴れ、鎮守府に戻ってきた提督は鎮守府に着くと床に伏してしまった

傷口は開いてはいなかったが、そこそこの量の出血をしていた

そのうえ、点滴を途中でやめてしまったのでけがからくる発熱が提督に襲い掛かり、復調までに相応の時間を取られた

 

結局、体が安定しある程度までの食事が摂れるようになる頃には、夏の大規模作戦は終了した

欧州各国との再打通作戦は無事成功をおさめ、欧州各国の救援に成功した

 

 

 

「うわぁ・・・。こりゃあひどい。」

 

思わず漏れてきた声に書類を持った吹雪は苦笑する

提督が見ていたのは空襲を受けた鎮守府全体の被害報告書だ

あの事件からひと月がたち、提督も執務に本格的な復帰の見通しが立ってきたころだった

といっても病室に入っている間仕事をしなかったわけではなく、多少の決裁が必要なものについては決裁をしていた

古鷹や時雨は顔をしかめたが、提督の判断が必要な書類に関しては仕方なく仕事をすることを認めていた

そして、いよいよ復帰目前で体力も戻ってきていると判断したときに一番苦労しそうな案件の処理に移った

 

 

鎮守府建屋      60%損壊

港湾施設(鎮守府側) 45%損壊(応急修理の場所多数)

  〃  (宿泊棟側) 15%損壊

滑走路        80%損壊(稼働可能滑走路1本)

工廠施設       69%損壊(一部艤装が完全損壊、修理ドックは1つが損壊)

弾薬生産ライン    20%損壊

製鉄ライン      35%損壊

鎮守府-宿泊棟連絡船  連絡船沈没

護衛艦        大破着底

 

etc・・・

 

軽く書かれた損害だけでも相当なものだった

因みに10%以下の損壊は書いていないだけで当然のことながらほかの場所も大なり小なり損害を受けている

特にひどいのは滑走路であり、稼働可能な滑走路は1本

それも、ただ土を固めただけの状態の臨時の滑走路だ

 

「まず鎮守府建屋は・・・うーん・・・・・・。建物自体がほぼ半壊だからねぇ・・・・・・。」

 

幸いにも病院の施設は損傷をそんなに受けずに済み、簡単な修復で済んだ。

しかし、本来新しい建屋を立てたのち補給部などにあてがうつもりだった部分は焼けてしまったり、穴だらけだったりと補修では済まない致命的なダメージがあちらこちらにあることが添付されている資料に書かれていた

 

「角の柱に亀裂も入ってる状態ですからね・・・。いっそ解体しちゃって2つとも建て直しの方が・・・・・・。」

「だねぇ。こりゃあどーしようもないわ。いつものように「なんとかなるら」って言ってる状態を超しとるわ。」

「でも前の建屋の図面って・・・・・・。」

「ないねぇ。運が悪いことに倉庫から火をだしてるから・・・・・・。とりあえず新しい建屋にそれぞれの新しい部署の部屋が小さくとも一つはあるから、大急ぎで着工してもらってそれからの話だね。」

 

早急に延期されていた新鎮守府建屋の着工に入るように書類に書いて承認印を押した

その後も、復旧の優先順位を決めたり、予算の大まかな振り分けを行った

当然のことながら復旧にかかる予算はすべて大本営もちだ

この空襲だって謀略がなければあり得なかった

八丈島の提督が不在だったのも空襲をさせるためだったからであったことが分かったからだ

 

「工廠施設は明石が来てからにしないと無理だなぁ。機械を再度入れなきゃならないものもあるし、拡張したいのかどうなのかも聞かなきゃな。こっちの護衛艦はどっかで発注しないと無理だし。」

 

提督は万年筆の後ろでぽりぽりと頭を掻いた

 

「でもま、これは急ぎじゃないし先延ばしにしましょ。そんなところに人員割く余裕ないし。」

 

年度内に発注予定と書いて締めくくった

 

「お邪魔するで!」

「耳本君久しぶり。」

「失礼する。」

 

病室に入って来たのは龍驤、瑞鶴、ヲ級だった

瑞鶴は見舞いの花束を持っており、吹雪が立ち上がって花瓶を持ってきた

 

 

 

 

吹雪が花瓶に挿している間に、どうなったのかの近況の話になった

裁判所でのやり取りの後、大沢元帥を訪ねた

元帥は最初見た時のセリフが

 

『いかんなぁ・・・。もうお迎えが来ちまったかぁ・・・・・・。』

 

なんて言葉を天を仰ぎながらつぶやいたとか

とりあえず爆撃をかまして幽霊じゃないことを証明すると、大泣きで抱き着いたとかで再度爆撃を敢行したらしい

今は元帥とともに半分隠居して時々大本営に出頭するときについていく

それぐらいののんびりとした暮らしを送っているらしい

 

「俺だってあの時はいったい何が起きているのかわからんかったよ。」

「心配をかけてごめんなさい。主機がやられてて外洋まで航行できなかったの。」

 

 

 

 

 

 

囮となった後、瑞鶴はひたすら避けていたが至近弾が片足の推進装置に致命的なダメージを与えた

それでも何とか逃げ回っているうちにいつの間にかリランカ島へと戻ってきていた

そして、陸へ上がると同時に力尽き意識を失った

 

 

目が覚めると、気を失ったときは砂浜だったのに木造の小屋の中にあるベットに寝かされていた

包帯で巻かれ、ちゃんと処置がされている

しばらく呆けていると、小屋の主・・・もといリランカ島を占有している主が入ってきた

 

 

港湾棲姫である

 

 

姫や鬼級ならば、さぞや威厳のある風格だろう

そう思い浮かべるものも多いが、この港湾棲姫が入って来た時は・・・

 

『ア・・・アノ・・・ダイジョウブデスカ?』

 

部屋の扉をちょこっと開けてこちらをうかがっている

何とも小動物的な対応だった

 

 

 

 

警戒を解き、一対一で話をしてみれば何のことはない

なぜ襲うのかの問いについては、こちらが攻撃しながら進軍してきたから対応しただけの事であり、攻撃さえ加えてこなければこちらも何もするつもりはなかったという

だから、瑞鶴も助けたという事だ

そして、別に捕虜を取るつもりもないから帰りたいときに帰っていいという

 

これは早急に大本営に伝えなくては

戦いを好まない深海棲艦もいるというのがわかれば戦争の終結も早まる

そう思い、外された艤装を見た

が、修理できそうにないと匙を投げた

 

動力のタービン周りは焼き付いる上、足元の推進部はスクリューがなくなっていた

他にも片方の舵は吹き飛んでいたり、ボイラーの一部には穴が開いていたりと、とても海を航行できるものではなかった

応急修理の度合いを超えており、曳航してもらうほかない大破状態である

 

ならばと、持っていた艦載機を飛ばして連絡を取ろうとした

しかし、烈風や天山の航続距離は近くのリンガ泊地まで約2500kmも飛べない

増槽があれば天山なら届くが、積んできてないうえぎりぎりのため深海棲艦機に見つかって追いかけまわされたら途中で落ちてアウトだ

 

無線で救難信号も考えたが、艤装がここまでダメージを受けていて無線部分が無傷なわけがない

そう思って開けてみれば、案の定だった

記録関係のところは生きてはいたが、送受信部は全滅で使えない

 

あきらめて捜索隊がこちらに派遣されるのを待つことにしたというのが事の顛末だった

 

 

「だけど待てど暮らせど一向に来ないし、船団も通らないからどうしようか湾ちゃんと頭を抱えていたのよ。」

 

リランカ島の奪回を失敗した時点で欧州への定期便は大きく南回りとなった

また、瑞鶴の艤装の一部

特に今回の裁判の決定づけとなった通信機部分が発見されると志垣としてはまずいため、捜索部隊や再攻略部隊の結成は極力避けられた

 

「そしてちょうど先日私がこちらに派遣されたというわけだ。」

 

瑞鶴が両手を上げて首をひねるとヲ級が補足をした

 

「なるほど。しかし、もっと早く来れば・・・あー・・・いや。よくよく考えりゃぁ無理か。」

「私らもいたぶられる趣味はないからな。そんな折、北方棲姫様からの連絡でこの鎮守府を知ったんだ。」

「ほっぽちゃんから?」

 

意外な人物の名前に少し驚いた

西に知り合いがいるとは言っていたが、もしや・・・と考えを巡らせる

 

「知っているも何も港湾棲姫様とは実の姉妹のような関係だ。めったに合う事が出来ないがな。」

「ああ・・・。なるほどね。で、本来の居場所から大湊に移ったからその連絡の時に知ったと。」

「そうだ。折を見て行ってみるのもいいかもしれないと思ったのだが、いかんせんこんな試みは初めてでな。いろいろと準備をしていた時に起こった事があの親書に書いた有様だ。」

 

ヲ級はため息をついて情けないことだとつぶやいた

最初は助けを求める際、瑞鶴もつれて行こうと思った

しかし、隠密行動をとるのに曳航しながらだとヲ級が危険とみて、最終的に誰か1人を駿河諸島側からの派遣を取り付けることになった

 

「で、そっからはうちやな。」

 

港湾夏姫を追っ払った後、探索に移った龍驤は奥の探索に移った

そして見つけたのが小さな小屋だった

窓から偵察をしたが、人影を見つけることがかなわなかった

扉を開け、ワンテンポおいてから拳銃を構え突入するとそこには・・・

 

「瑞鶴と港湾棲姫がぽかんとした顔でこっちをみとったんや・・・。一体目の前で何が起こっとるのかわからんかったわ・・・・・・。」

「で、湾ちゃんが説明して港湾夏姫がいなくなったことが分かったのと、龍驤さんがここの所属ってわかったから私も帰ってこれたというわけ。」

「はぁ~・・・・・・。」

 

納得がいき、ペットにばふっと寝転がった

 

「なんかもういろいろ・・・言いたいことあったけどねぇ・・・・・・。」

 

深く息を吐いてむくりと再度起き上がった

 

「無事でよかった。これの一言に尽きるわ。」

「ありがと。耳本君があんなことになってるとは夢にも思わなかったけどね。」

「せめて一矢報いようと思っていろいろ情報を集めてたんだけどねぇ・・・・・・。」

 

結局あの時まで決定的なものが残せなかったからずるずると長引いちゃった

苦笑いをした

 

 

 

 

 

 

 

「それで翔鶴姉ぇのことなんだけど・・・・・・。」

「ああ・・・。うん・・・。そうねぇ。」

 

翔鶴の身柄はうちの鎮守府の預かりとなっている

やむにやまれない背景がある事にはあるが、何らかの処罰は避けられない状態だ

提督の殺人未遂の隠蔽は何とか可能だが、それ以外の背信行為への追及はどうあっても避けられない

が、これは前例がないことでもあるので裁判所としての判断も非常に難しいところである

 

「何にせよ。あと1~2年はとてもじゃないけど着手できないだろうねぇ。あっちにかかりきりになるし。」

「そっか・・・・・・。」

「まぁもうちょっとだけ・・・。もうちょっとだけまっててちょうだな。どっかで裁判になるまでは一緒に暮らせるように大将と相談してみるからさ。」

「何から何までありがとね。」

「なぁに。こっちもお世話になった身と救われた身でもあるからこんなの何とでもないさ。」

 

腕の見せ所さと点滴が刺さっているところを叩かないように二の腕を叩いた

 

「じゃあ翔鶴姉ぇとあってくるね。」

 

そういって立ち上がった

 

「ああ。旅館の離れにいるからな。今度は元帥とも会わせてあげるといい。」

「そうね。提督さんも半隠居させられた後は離れ離れになってたみたいだし、話してみるわ。」

 

それじゃあねといって後ろ手に手を振って出て行こうと扉の前に来た時に、そうだったと言って戻ってきた

 

「なんかあったかいな?」

「これよ!これ!」

 

瑞鶴がポケットから出したのは小さな鍵

 

「なんやこれ?」

「これは・・・確か司令官の机の引き出しの鍵ですね。」

「あらま。そういやあの時着てたズボンのポッケに入れっぱだったわ。拉致られた時に着替えさせられてたからか。」

 

ありがとさんと言って受け取った

瑞鶴はじっと怪しげな瞳を少ししてそっと耳打ちをした

 

 

 

 

「そろそろ結論出しなよ。」

 

 

 

 

「!?」

「私の枷はなくなったからいい加減腹くくりなよ。それじゃあね~。」

 

 

小さく提督にしか聞こえないように前半は言って、これ見よがしに左手を大きく振って出て行った

 

指に光る物を見せながら




というわけでそろそろ・・・ね?(´・ω・`)

なんでかわからないけど満潮改二が発表されてから4日後にはLv30の満潮がLv80に到達していた不思議・・・(´・ω・`)
燃料、弾薬がカンスト迎えたから3-2-1を解禁したらあっという間でした・・・
秋刀魚漁もあと少し
皆様が30匹到達
もしくは目標の達成ができることをお祈りしてます(=゚ω゚)ノ

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