これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府と増強と二歩

復旧工事の発注がほとんど終わり、あとは終わるのを待つのみとなった

しかし、唯一手つかずの場所があった

 

 

工廠である

 

 

ここは呉第二鎮守府の明石が週に何度か来ては、工事や改修の受注などを行う作業場として開設されている

が、現在は空襲によりかなりの数の工作機械に損傷が出ている

それを提督と、一緒にメモを片手にチェックして回っていた

 

「あっちゃー・・・この機械もダメっぽいですねぇ。」

「修理も無理そう?」

「ですねぇ。できないことはないですけど、日数と工賃を考えたら買い換えた方が安く早いです。」

「もういっそこの機械全部換装しちゃった方がええと思うんだけーが・・・。」

 

提督はため息をついてチェックシートを見る

大半が、修理や買い替えなどに丸が付いており、以前の見立てよりもひどいことが分かった

 

「そうですねぇ・・・。あっ!でも私が持ち込んだ機械だけはそのままにしておいてくださいね!」

「ああ。了解。」

 

 

 

 

 

結局、機械群の大半は換装となった

さらに、どうせいろいろと交換するならあれもこれもと追加していった

その結果、新しく工廠をもう一棟増設した方がいいという事になった

またこれにより、艦娘の装備類で作れないものがここでは何もないという事になった

 

「やったぁ!・・・もうここに住みたいなぁ。」

「おいおい。そんなことしたら柏崎に泣かれるぞ?」

「やだなー。冗談ですよ冗談。」

 

提督と明石は一通りの見回りが終わり、工廠の受付に戻って休んでいた

 

「もはやここ一か所で作れないものが無くなりますからね。16インチ砲だろうが6連装酸素魚雷だろうがFumoレーダーだろうが何でも作れますよ!」

「おっおう・・・。」

 

余りの気迫に少し引き気味になる

新しく追加する機械類で一般の鎮守府では開発不可能なものまで制作可能となっていた

もはやここまでくると一つの工業地帯分の工業力になっているだろう

 

「ところで耳本さん・・・。ドックって作らないんですか?」

「え?ドックって・・・そこにあるじゃないか。」

 

提督は首をかしげながら艦娘が入る入渠場(温泉)の方を指さす

 

「あ、いえそっちの艦娘用じゃなくてですね・・・。輸送船や護衛艦などの実艦のドックですよ。」

「ああそっちか。確かに作ってないねぇ。」

 

基本的に護衛艦などの点検やオーバーホールは本土で行う事になっている

他にも、輸送船もここでやるのは応急修理のみだ

本土が近いこともあるため、いらないだろうと思い、今まで作ってはいなかった

 

「そもそも、うちに工作関係の子が常駐してないからねぇ。」

「なるほど!でしたらこの子なんていかがでしょうか!」

 

そう言って差し出してきたのは一枚の紙

見れば先日からずっと見てきた履歴書だった

 

「軽巡夕張・・・?あれ?この子って柏崎とケッコンしてるんじゃないの?」

「え?やだなぁ!耳本さんったら!」

「え?でも前聞いた時は・・・なんか怪しげな目でって・・・・・・。」

「それは勘違いですよ。その・・・ね?私と提督の・・・ね?」

「あっ・・・。」

 

そういえば柏崎は明石とのジュウコンの時に少し手間取った経緯があった

恐らくはその時の様子を純粋に怪しんでいたのだろう

 

「じゃああいつのこれは増えてないわけか。」

「いえ。こないだ4人目の子とケッコンしましたよ?」

「あらっ?」

 

カクッと肩透かしを食らったようにつんのめる

 

「で、本題に戻りますけど!この子もなかなかの才能があるんです!艦艇設計もできるのでおススメですよ!」

「いやいやうれしいんだけどさ!・・・うちに送り出しちゃっていいの?履歴書寄越したってことはそういう事として受け取るけど・・・。」

 

そう言いながら履歴書を見る

艦艇設計から開発、機械修理などどの工作関係の項目も明石から高評価のお墨付きだ

 

「いやまぁそのぅ・・・。」

「・・・何か問題あり?」

「ちょーっと探求心が強い子だなぁって・・・。」

 

いやな予感がすごいする・・・

 

「こちらを見ていただければ・・・。」

 

そういって明石は艤装からある物を取り出した

パッと見、25㎜3連装機銃の集中配備に見えた

が、そこについていたのは

 

「ボフォース40mm四連装機関砲じゃねぇか・・・?これ?」

「その通りです・・・。」

 

 

本来25㎜3連装機銃が付いている銃座には40mm四連装機関砲が据え付けられていた

 

 

 

ボフォース 40mm機関砲

1930年代初頭にスウェーデンのボフォース社が開発した対空機関砲である

戦間期に各国に輸出され、当時の主要国ではライセンス生産が行われたほどだった

日本の実用化は終戦間際だったためあまり実用化はされなかった

艦娘の艤装の一部としてアイオワが持っているが、誰にでも付け替えることができる

 

「これ・・・。絶対装備無理だろ?」

「・・・・・・。」

 

 

 

なぜ無理なのか

それはこの数字を見ていただければ納得していただけるだろう

 

25㎜3連装機銃   1.8トン

40mm四連装機関砲  11トン

おまけ

長10センチ砲     20トン

 

「つまりこれって単純に長10センチ砲の1.5倍近い重さってことだろ!こんなの補強増設に積んだらひっくり返るぞ!」

「・・・・・・。吹雪さんなら使えるかなぁと。」

「おばかっちょ!吹雪ちゃんでもひっくり返るよ!」

「とにかく!時々こんな魔改造やらかしますけどいい子ですから!」

 

面倒な子を押し付けられた感が物凄いが、受け入れを前向きに検討するという事で取り合ず履歴書を受け取った

 

 

 

「ん?あれ?」

「どうかした?」

 

明石が、ファイルのあるページをみて声を上げた

提督は夕張の履歴書を読むのを一旦やめた

 

 

「いえ・・・。耳本さん。予備の艤装保管庫の使いました?」

「いやぁ?使ってな・・・あ、使ったかな?多分ここが空襲受けた時に・・・。何かまずいことでもあった?」

「いえ。あそこの艤装は調整されていないんで使い辛かっただろうなぁともいまして。特にこれですのでねぇ・・・。」

 

そう言って明石はファイルのある場所を指さした

 

「ああ・・・。確かにこれは調整全くしてないからねぇ・・・。ま、文句言ってこなかったし大丈夫じゃない?あのこっちゃ今回みたいな事が無い限り使わないし。」

「そうですか?でもとりあえず調整だけはしておきたいんであの子たちに後で聞いてもいいですか?」

「大丈夫だよ~。」

「じゃああとはこれをもってっと・・・。」

 

どうやらまとめ終わったらしく、かばんにファイルを詰め始めた

 

「後は発注した機器が搬入されたらまた来ます。・・・夕張さんと一緒に。」

「了解。・・・夕張はこっちに着任がほぼ確定なのね・・・。」

 

まぁええけどさと提督は頭を掻いた

 

「それにしたって夕張がこっちに来るってことはあれか?月一くらいまでこっちに来る頻度下げるのか?」

「ええ。・・・私も提督と過ごす時間が欲しくてですね・・・。」

「おっとこれは失礼・・・。」

 

照れる明石に少し意地の悪い顔で口元を覆うしぐさで茶化す

 

「もう!・・・あっ思い出した。これ提督から耳本さんへの預かりものです。」

 

渡されたのは封筒だった

何かあったかなぁと思いつつ開けると折りたたまれた1枚の紙が入っていた

 

 

 

『さっさと決めろよJK』

 

 

 

 

「・・・。ちょっと待ってね。」

 

内容を見て即座にぐしゃりと握りつぶす

そして、近くにあった紙に

 

 

 

『ヤることヤりましたか?DT』

 

 

 

と書きなぐり明石に渡した

 

「これを柏崎のやつに渡しといてくれ。」

「えっ?あっ!はい!」

 

意地の悪い返しに怒るだろうなぁと思いつつも明石に渡した

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんわー。」ガラガラ

「あら!提督さんお久しぶりですね。」

「ようやく落ち着いたんで・・・。あ、いつものお願いします。」

 

そう言ってカウンターに腰を掛ける

鳳翔さんのお店に来るのも随分久しぶりになる

ここ数か月は作戦やら怪我やらで来る暇もなかった

 

「最後に来たのは・・・7月だったかしら?」

「そうですね・・・。もう10月ですから3か月丸々ですね。」

 

いつもの冷酒とお新香を出しながらお疲れ様ですと言った

提督はお礼を言って、一口飲んだ

 

「そうそう。こちら今回の臨時手当と休暇の申請書です。」

「あら。ありがとうございます。あの人と相談しなくちゃですね。」

 

鳳翔は嬉しそうに提督から封筒を受け取った

 

「特に期限を設けていないのでいつでも大丈夫ですよ。」

「決まりましたらすぐに連絡しますね。」

 

上機嫌で封筒を奥に置きに行った

 

 

 

 

「・・・。ところで・・・どうなさるおつもりなんですか?」

「・・・・・・鳳翔さんもですか。」

 

提督は深いため息をついた

 

「それはその・・・。同期の恋路も気になりますから・・・。」

 

同期とは龍驤のことだろう

 

「勿論提督のも含めてです。」

「・・・・・・。」

 

残った酒を一気に煽ると代金をカウンターに置いた

 

「ごちそうさまでした。」

「・・・。ありがとうございました。」

 

鳳翔は微笑んで提督を送り出した

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

提督は鎮守府の建屋を見上げていた

あちらこちらに空襲の爪跡が残されている

先日、ようやくとりあえずの補強作業が終了し、荷物の運び出しが行われている

と言っても現在は夜のため誰もいない

中に入るとギシッという音が響く

 

 

 

執務室へと入るとそこはある程度原形をとどめている物の、あちらこちらにヒビや補強された板が露出していた

提督は椅子にどっかりと体を投げ出して座る

 

「・・・・・・。」

 

椅子に座ったまま天井を見上げるとそこも補強の板が目に入る

くるりと椅子を回し、机に向き直ると一番下の鍵のかかった引き出しに鍵を差し込む

開ければ出てくるのは青い箱が15個

少し崩れてはいる物の綺麗に並んでいた

提督はその箱を1つ追加すると閉めようとした

 

しかし、閉めかけた時ぴたりと止めた

そして、再び開けると腕を引き出しの奥に突っ込んだ

何かをつかむと机の上に置き、引き出しは再び鍵を閉めた

机の上にあったのは先ほどの青い箱だが少し色あせた印象を受けるものだった

提督はそれをじっと見つめると深いため息をついた

 

「提督~?入っていい?」コンコン

「いいぞ~。何かあった?」

「お邪魔しまーす。いや仕事でもしてるのかと思ってさ。」

 

入って来たのは川内だった

 

「あれ?それって・・・・・・。」

「ん。ああ・・・・・・。」

 

提督はあいまいな返事をしながらさっとポケットにしまった

 

「ふふ。迷ってるの?」

「・・・・・・。」

「提督の好きなようにすればいいと私は思うよ。誰かに渡すのもよし、渡さないのもよし。」

 

私にくれてもいいよと冗談めかして笑いかけてきた

 

「とりあえずまた無茶してないならいいや。それじゃあね。」

「・・・・・・川内。」

「ん?なぁに?」

 

提督は川内を呼び止めた




衣笠さんに続いてさらりとメロンちゃんも合流(予定)ですはい(´・ω・`)

秋イベ、冬イベがレイテで確定しましたね
と言うかモロバレでしたが・・・
作者は西村艦隊と志摩艦隊のレベリング作業でてんてこ舞い状態ですはい(白目)
とりあえず70あれば甲まで対応できるという目安で必死にやってます
・・・山雲47、曙52、不知火25

イベに間に合うけど大和武蔵を建造したい・・・
あっちこっちやることづくめで白目向きっぱなしですはい

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