これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の裏交渉と五歩

大本営 とある部屋

 

室内は広くもなく、狭くもない

1人で生活する分には何の支障もない部屋だ

といっても生活をするわけではなくここは仕事部屋である

6畳ほどの広さには鎮守府で使っている物より2回りほど小さい机

左側は、資料などが詰まった棚がびっしりと並んでいる

右側は、窓があるため、棚はなく代わりに小さな学校机があった

 

提督は、かばんを置くと部屋を出て鍵を閉めた

 

 

 

 

 

 

 

「どうかね?新しい部屋は?」

「何と言いますか・・・最初の頃を思い出しました。」

 

先ほどとは違い、広々とした部屋

いつもの大将室だ

 

「さて、君のもろもろのことについての結果だが、結果だけ言えば全部承認を得た。」

「ありがとうございます。」

「じゃが・・・。先にも伝えたが条件が付いた事もわかっとるな?」

「心得ております。」

 

提督が将官への昇進を蹴ったのが第一の難問だ

普通は昇進に関してはよほどの事が無い限り蹴ることができない

ましてや将官ともなれば軍政、国内政治のどちらかにはかかわることになる

または、海外の鎮守府へと出向になっていれば現地の政治的なかかわりがある

こういった観点から将官になれるものには厳しい裏の選別を乗り越えたごく一握りであり、それを断るのは逆に無責任という事になる

 

仰々しく書いているが、少将クラスならば実はさほど問題はない

少将であれば国内政治にかかわることはまずなく、軍政が主な役割である

また、将官でも一番下のため決定権を持たない

 

提督が推薦されていたのが中将だったため、厄介なことになった

中将となれば、大半の会議への招集や軍の重要なポストに就くことが通例である

もっとも、提督はそれが好きではないうえ、そういったことは苦手で自分には向いていないという事を理解しているため断った

 

 

 

 

 

「先に連絡したのは2週に1日、または月に2日はここ大本営内で業務を行う事。これが条件じゃな。」

 

大将は首を縦に振らせるのが大変じゃったとどんよりしている

簡単に言ってしまえば駿河諸島鎮守府の支部の設置である

 

呉や佐世保、舞鶴に大湊の主要鎮守府などの支部はおかれているが、それ以外は海外の泊地や基地しかない

つまりは、国内の主要鎮守府に準ずる扱いに上がったと言っても過言ではない

 

 

 

鎮守府としての格が上がったのがいいことばかりではない

月に2日の大本営への定期的な出頭は警戒されている表れでもある

何か理由をつけて出頭を見送ると何かしらのアクションがあるとみて間違いない

また、提督が他にも大将を通じて秘密裏に動いていたあることも起因している

 

「後はこれについて・・・じゃな。」

 

大将がジュラルミンケースを机の上に置く

提督に見えるように向きを整え、開く

 

中入っていたのは山吹色の・・・

 

とかではなく50枚ほどの紙束だった

 

一体何かと言うと、駿河諸島鎮守府の民間の部分

株を発行して、提督と大本営でそれぞれ保有している株券だ

そして、目の前にあるのは大本営が保有している残りのすべてにあたる

 

 

 

「良く受け入れましたね・・・。」

「まぁこいつにも条件が付くからのう・・・・・・。」

 

 

 

 

なぜ大本営の保有している株券がここにあるのかと言うと、先の空襲の被害補填の一環である

試算を出していった結果、設備補修だけでも相当膨れ上がっており、このまますべての補填を行うと財務省からの予算を大きくオーバーしてしまい、場合によっては海軍の今年度の予算どころか来年度まで響く可能性が出てきた

軍政にも支障が出かねないため、駿河諸島側からも貯めていた内部留保や債券で賄う事で合意した

 

その結果として、何とか支障のない予算で抑えることができたが、急務でないところの補填を見送ったところがある

その中には護衛艦も含まれていた

護衛艦の艦種は乙型だったとはいえ、約200億はするものだ

今回の補填で、一番の割合を占めていたのもこれである

代わりに、実艦の建造ドックの建設費を大本営が負担、そこで駿河諸島鎮守府自前で建造することで手打ちにしている

 

 

 

これらもろもろの妥協の代償として大本営が持っている株券すべてを提督側に無償譲渡と言う形で折り合いをつけたのだ

 

 

単純な損得勘定から見れば提督側が大損と考えてもいい

 

しかし、日本で唯一の豊富な資源地帯を抑えている会社で、年間の配当や今後の成長などを考えれば損なのはどちら側なのかは一目瞭然だ

 

とはいえ、大本営も二つ返事の了承はできなかった

 

大将が歯切れの悪い雰囲気でケースの横に書類を置いた

 

「・・・・・・なるほど。確かにとんでもない条件ですねぇ。」

 

提督も書類に目を通すと顔をしかめた

 

 

 

 

『大深度の非常連絡線建設計画への参画』

 

各鎮守府にはシェルターがあり、具体的な深さは明言されていないがある場所は数百メートルもの地下にあるともいわれる

その中でもとりわけ重要な横須賀(大本営)、呉、佐世保、舞鶴の4大鎮守府は地下の連絡線が設けられている

緊急時に物資輸送や司令部や大本営の移転などで準備されているものである

提督は見たことはないが、計画書の内容からして、線路と道路が1本づつが通っているようだ

この計画書を見る限り、駿河諸島と大本営を結ぶ地下連絡線を建設しようというもので、しかもその費用を全部こちらが持つという条件だ

 

この事業がとんでもない理由の一つは、駿河諸島事態が孤島であることだ

本州と駿河諸島の前には水深1000mは優に超える深い海が広がっている

水深の浅い小笠原諸島を経由するルートがあるが、こちらも問題がある

距離が増えることと、もう一つある

 

 

海底図の作成が行われていないのだ

 

 

深海棲艦が現れてからというものの、護衛艦などの大型船舶の出番はへった

艦娘が誕生してからは輸送船くらいが現在も活動している

その輸送船が気にしなければならないのは岩礁や潮の流れであり、これは阿武隈にやってもらっているが浅いところや島の周辺だけで、海底などの詳しい調査は行っていない

調査船などの特殊船舶は戦争初期に海の底

新規建造は当時は護衛艦、今は輸送船がメインでありいまだに新造されていないのだ

 

つまりは、八丈島と駿河諸島の間の海の深さは不明なのだ

海底の隆起して繋がっているのかもしれないし、あるいは独立しているのかもしれない

この調査には時間と費用が莫大なものになることが予想にたやすい

 

 

「これはちょっと持ち帰らせてもらいますね・・・。」

「そうしてくれ。こうでもしないと軍のメンツが立たなくてなぁ・・・」

 

すまんのうと言ってため息をつく

 

大本営の思惑としては、巨額の調査費用及び建設費を賄うために再び株を発行

その引き取りを大本営が行う事で完全な独立を避けたいという事だろう

 

 

 

 

「いつぞや小笠原諸島の採掘権の申請とか来てたから多少は楽かもしれんがのう・・・。」

「妖精さん曰く、ひょっとしたら出るかもしれないと言ってましたから・・・。海底図とか作成してるといいですが・・・・・・。」

 

希望的観測を願いながら提督は書類をしまう

 

「それで今日明日とここで仕事をするわけじゃな。」

「ええ。一応来月からですが、来月の1日に鎮守府の落成式を行いますので・・・。」

「そうかね・・・。何はともあれ、復興はそこで一段落かのう。」

「はい。・・・まぁ厄介ごとが舞い込んできてますが。」

 

そう言いながらファイルをじっと見る

大将はわしの立場も考えとくれとしょんぼりしていた

 

 

 

 

 

 

 

「それはそうと・・・。おめでとうじゃな?」

「ありがとうございます。」

 

大将の言葉に提督は深々と頭を下げる

 

「まさか全員とのジュウコンまで決断するとは思わなかったがの・・・。」

「えーとそれは・・・まぁその・・・。色々ありまして・・・・・・。」

 

提督の目があっちこっちに泳ぐ

 

「まぁそうじゃろうな・・・。あと数日遅かったら・・・。いや・・・何でもない。」

「え?」

 

提督が大将を見ると今度は大将が目を逸らしてる

どういうことですかと提督が聞くと大将は歯切れが悪そうに

 

「いやなに・・・少し・・・やばい質問が・・・・・・。」

「え?なんです?怖いんですけど・・・。」

「既成事実・・・。」

「あ、何も聞こえませんでした!はい!」

 

 

明らかに聞いたら背筋が寒くなるような単語を提督は聞かなかったことにした

 

 

「そうじゃな。質問の話題じゃないものにしよう。で、届けが11日に吹雪で12日がほかの子たちになっておるが・・・なんでまた揃えんかったんじゃ?」

 

大将は不思議そうな顔をする

 

「いやその・・・。吹雪があの日を少しでも楽に迎えられるようにしたかったんです。それと・・・まぁはい。」

「ほほう?正妻と側室の差かのう。」

 

意地悪そうにニヤニヤしながらタバコを吸う

久しぶりにうまい味がするわと茶化す

 

「式とかはどうするつもりなんじゃ?」

「ちょっとしばらくは無理そうですね。戦況が落ち着いたらってところでしょうか。」

 

秋の作戦もありますしと言うと、大将はそうかと残念そうにきゅっと顔を引き締める

その様子からして、今回の作戦も忙しそうな雰囲気が伝わってくる

 

「ま、作戦に関しては追々連絡が行くと思うからの。」

「承知しました。ではそろそろ・・・。」

「ああそうじゃ・・・。忘れ物が一つあったから机の引き出しに入れておいたでの。」

「?はぁ・・・?」

 

何が何だかわからないという顔をして提督は部屋を退出した

 

長いを廊下を歩き先ほどかばんを置いた部屋まで戻ってきた

大本営の中でも端っこの部屋

そこが支部として割り当てられた部屋だ

明らかに建物の売店や出入り口等から一番遠く、歓迎されていないことがわかる

 

相当嫌われたものだと思いながらノブを回して扉を開ける

 

 

「って出るときに鍵を・・・開いてる?」

「おかえりなさいです!耳本さん!」

「青ちゃん?いったいどうしてここに?」

 

扉の先には青葉が小さな机についていた

提督が驚きながら話しかけると笑顔でこちらを向いた

 

「耳本さんがこちらで仕事を行うという事を聞いてきたんです!」

 

提督のそばまで来て、詰め寄るように鼻息荒くしている様子に提督は少し違和感を覚えた

取材をしているとき等はあの様子に近いが、自分と話すときにはこういった様子ではない

もう少し落ち着いた雰囲気だ

 

「そっそっか・・・。」

「はい!」

 

違和感を抱きながら席につき、引き出しを開ける

そして、大慌てで閉めた

 

 

なぜか

 

 

この最近の間に散々なほど見た青い箱

ケッコン指輪の箱だ

 

「え?!なんで?」

「・・・・・・。」

 

思わず大声を出してしまったが、青葉がいたことを思い出し慌てて取り繕おうと青葉の方を向く

が、先ほどの勢いは消えており赤い顔になっていた

 

「その・・・皆さんももらったと聞きまして・・・・・・。私だって指揮下には入ってないですけど・・・・・・。いただければなって・・・・・・。」

 

思えば、青葉だけは着任していない

青葉が、編集長と言う立場にあるためこちらへの勧誘がし辛かったためである

 

青葉の様子は恥ずかしそうに顔を赤らめている

 

提督はもう一度引き出しを開ける

先ほどは気が付かなかったがメモ用紙が置いてあることに気が付いた

 

『大本営直属の子だけどその辺は何とかするから by桐月』

 

 

「あのクソ大将!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

初めて自分の麾下以外の艦娘とケッコンした提督として少し話題になった




と言うわけで最後に青葉でした(´・ω・`)
ケッコン関係のお話はこれでひとまず本当に一段落となりますはい

次回からは新しく着任する子が登場し始めますのでよろしくお願いいたします

また、作者からお知らせがございますのでお暇でしたら活動報告の方をご閲覧いただければ幸いです


さて、いよいよ明日にイベントが迫っております
うちの鎮守府では大和武蔵を狙って大型を10回ほど回して大爆死しました(白目)
資源的には回した当時カンスト寸前で、現在は各種25万以上で全く問題ないのですが・・・

開発資材が100を割り込んでいるという有様(ノД`)

緊急の改修ができないのが若干怖いなぁと思いながらのイベント突入です

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