これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

110 / 134
駿河諸島鎮守府の変革 その3

「さぁやってまいりました!夕張ショッピング!本日ご紹介いたしますはこちら!」

 

『ボフォース40mm四連装機関砲集中配備』

 

「いやそれはもういいから!」

 

九州発祥の某テレビショッピング番組の如く例の物を紹介した

提督が慌てて止める横で吹雪は苦笑いをし、制止された夕張は渋々説明をやめた

 

「扱えそうなの吹雪ちゃんくらいしかいないんですもん!」

「人の嫁さん実験台にすな!」

 

軽いチョップを夕張の頭に見舞う

 

「・・・・・・吹雪自身はどうなの?」

 

夕張は懲りずに吹雪に直接聞く

 

「えっ!私ですか?」

 

振られた吹雪は驚いた反応をする

少し考えると提督の方に向き直った

 

「装備してみてもいいですか?」

「え?しかし・・・・・・。」

「あの件。流れる見込みが高いんですよね?」

 

提督はそれを言われると黙った

大本営に要請していた防空駆逐艦の着任

石炭事業の交渉カードとして、着任要請を取り下げる方針でいた

鎮守府の戦力増強案を削れば多少なりとも大本営からのにらみが薄くなること狙ってのことだ

 

もしこれを装備できれば、防空駆逐艦の穴を多少なりとも補う事が出来る

 

「夕張。」

「はっはい!」

「うちの演習場でもデータはとれるか?」

 

それを言うと夕張は顔を輝かせて勿論ですと即答した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

夕張は深々と頭を下げる

それに対し、吹雪ちゃんが申し出てくれたからだと提督は少しぶっきらぼうにいう

 

実験はまさかの成功だった

吹雪曰く、33ノットでスピードは頭打ちだが撃墜能力は秋月型をはるかに上回った

また、回避能力も少し下がっているため使いどころを慎重にしなければならない事

さらには疲労度の蓄積も早く、実験後吹雪はそのまま非番にした

 

「それにしても読み通りです!やっぱり吹雪型じゃないとこういう関係は無理そうですね。」

「?吹雪型じゃないと無理?」

「ええ。」

 

元々吹雪型は実験艦夕張のデータや手法を駆逐艦に昇華させたものである

しかし、その実態は攻撃力の増大の代わりにトップヘビーかつ耐久性に難があるものとなってしまった

それを解消するべく、補強工事を行った結果38ノットの俊足が35ノットまで速度が低下してしまっている

 

艦娘になった今でも吹雪型には改にすると無印の時には島風に次ぐ38ノットが35ノットまでスピードが落ち込むという報告がある

 

 

 

が、改二改装でそれが変わる

改二改装された吹雪の最高スピードが再び38ノットに戻ったという事だ

これは、少し遅れて実装された叢雲においても同じ報告が上がっている

また、吹雪も叢雲も改二改装後は体がやや成長したというデータもある

 

ここから導き出されたのは、IF改装によるものだと結論付けた

 

もし、当時はまだ未熟だった電気溶接が成熟していたら

もし、設計時点あるいは改装で艦の全長、もしくは制限がもう少し緩かったら

 

たらればの話ではあるが、これは吹雪型に限らずすべての艦娘の改二改装はたらればの話を前提としていることが多い

 

そして、そこに目を付けたのが夕張だった

魔改造アメ機銃(bf4連装機銃)は途方もなく重く駆逐艦に装備させたらバランスを崩しやすくなり使い物にならない

しかし、対空能力は間違いなく突出したものになる

 

吹雪型はもともと補強改修をせずに、スピードと回避を多少犠牲にすれば行けるのではないだろうか

吹雪型改二はほかの駆逐艦よりも余裕があるのではないだろうか

 

推測ではあるが、その考えがあったからこその提案だったと夕張は説明した

 

 

「嫁さんを実験体になんて本当は勘弁だけどな。」

 

防空駆逐艦の穴を埋めれそうになったことは喜ばしいが手放しに喜べず微妙な顔をした

 

「他にもいろいろな物がありますよ!!」

 

そう言って、工廠にある試製の目録と簡単なスペックの書かれた紙を数枚渡してきた

 

改良型タービンと新型高温高圧缶を組み合わせた物

駆逐艦に積めるように改良した46cm単装砲

7連装酸素魚雷

30cm連装砲(重巡用)

 

 

様々な武装がある

とは言ってもこれらは一癖も二癖もある物であり、同時に積み込めるわけがない

特に単装砲に至ってはどうやっても扱える見込みがない

他にも、タービンと高圧缶セットは吹雪であれば島風を超える最速50ノット以上出せる代物ではあるが、詰める武装が多少減るという弱点を持ち合わせている

とはいう物の、現在の組み合わせよりも改良されており、武装が2つまでなら装備可能なことを考えるとこれについては使い道がありそうだ

 

夕張曰く、まだ図面で止まっているの段階のも多くあるらしい

提督は制作には許可を取ってからという事を念押しした

勝手に作られて艤装の中に組み込まれてはたまらないからだ

 

 

 

 

 

「で、明石から聞いていると思うけど榛名の艤装については・・・・・・。」

「ええ。伺っています。まだ、ここに集計されている過去のデータを見て見ない事には何とも言えないというのが正直なところですね。」

「そっか。」

 

提督が少しションボリとした様子を察したのだろう

夕張は話をつづけた

 

「とりあえずなんですけど昨日提督が炭鉱の視察に行っている間に所属艦全員の艤装をくまなく見させていただきました。」

 

そう言いながら、机の上にあるパソコンを操作した

少しして、提督の方に画面を向けるとそこには

 

「なんだこれ?」

 

画面に映っているのは白黒の画面で、座標軸の真ん中には黒い球体があった

端には様々なツールボックスのアイコンが映っているが、それにはちゃんと色がついている

 

「これは榛名さんの艤装コアの部分の音波映像です。」

 

画面に映る黒い球体を夕張は指す

 

以前説明した通り艦娘の艤装コアの部分はデリケートな部分である

開閉検査の認可がここには下りていないため、エコー機器でなんとなくの中の状態を知ることができる

 

因みにタカ派主導の計画の一つであった艤装コアの開閉検査権限の拡大も、現在の混乱で立ち消えとなっている

 

榛名の場合は球体であるが、これは艦娘によってかなり違うとのこと

四角い子もいれば不定形の子、星形や翼の形をしている子もいたなどの報告もある

 

「見たところやはりここにも異常はないのですけど・・・開けて見ればまた違った結果になるかもしれないですね。」

 

ポインターでくるくると球体の周りを回す

 

「そしてですね・・・。今回!私が発明した新エコー機器でなんと!色付きにすることができたんです!」

「おお・・・・・・。ってことはさらに詳しく異常があるかないかが見ることができるんだな?」

「それだけじゃないんです!なんと3Dプリンターで実物そっくりの物が再現できるようにしてあるんです!」

「・・・・・・そういう事やっていれば頭にマッドなんてあだ名がつかないんだけどなぁ。」

「いいですか?マッドは勲章です。」

「アッハイ。」

 

夕張が自慢げに胸を張ると提督はそれ以上何も言わなかった

 

「で、実はもう完成しているんですけど・・・・・・。提督はコアの色についてご存知ですか?」

「色か?えーっと・・・・・・。確か麾下に着いた提督のイメージに近い色に染まるんだったかな?」

 

艤装コアの開閉検査は例が多くはないが、すべての記録において艦娘のコアの色は違う

正確には、麾下についている提督ごとに色が違った

ある者は赤色、ある者は青色、またある者は金色なんてものもいた

しかし、同じ麾下の者でも色を精密に分けると微妙に色が異なっていたり、ほかの色とマダラに混ざり合っているなど興味深いものだった

 

単純かもしれないが、熱血溢れる提督の元ならば赤に近く、冷静沈着な提督の元であれば青に近い

おおよそそんな結論が出ている

 

逆に、建造やドロップしたての艦娘はどうだったのだろうか

 

これは、想像に難くなく白色であった

ところが、よくよくこちらも精密に検査するとわずかではあるが、何かしらの色が混ざっていることが分かった

つまり、これが艦娘が持ってした気質であり、これによって提督と性格が合うか合わないかがわかるという発見もあった

 

が、当然いちいち検査するには時間もなければ、リスクも付きまとう以上転属を繰り返して性格の合う提督のところに転属するのを待つしかないという事になっている

 

 

 

「はい!その通りです。で、耳本提督のは数少ない色なんですよ!」

 

夕張はニコニコとしながら一度奥に引っ込むと、ガラガラとした音とともに戻ってきた

ガラガラと言う音は台車の音であり、その上には丸く膨らんだ白い布が掛けられていた

一体何色だろうか・・・

提督も少し期待をしている中、布をめくる

 

 

 

 

 

布が取り払われ出てきたのは拳より一回り大きい黒の球だった

 

 

 

 

 

「・・・・・・え?」

「こちらが耳本提督の色です!」

「あの・・・夕張さんや・・・・・・エコーの画像と全く変わっとらんのだけども?」

「いえ?榛名さん含めて皆さんこの色の系統ですよ?」

「ええ・・・・・・。」

 

提督は困惑した

これがあなたの色です!

そう言って見せられたのが真っ黒だったら誰もがこんな反応を示すだろう

 

「あ、大丈夫ですよ!コアの色が黒っていうのは悪いことじゃないんですから!」

「そうなのか?」

 

夕張はショックを隠せない提督の反応に慌てて弁解をする

 

「実はこれをこうして・・・ちょっと見てみてください。」

「?」

 

夕張はペンライトを出すと、球に上から光を当てた

提督は夕張に促されるまま少しかがんで横から球をみる

 

「透けてる・・・・・・?」

「そうなんです!これが悪いことではない証拠なんです!」

 

提督が球を覗き込むとぼんやりと向こう側が見えた

どうやら、黒色の場合は2通りのケースがあるらしい

1つは光を当てても透過せず、ただ真っ黒く淀んで見えるもの

もう1つはこのように光を当てると向こう側が透けて見えるくらい透き通ったもの

 

前者は、人間不信や廃人と化してしまった艦娘に現れる症状である

後者は、提督と艦娘の相性が抜群であり、意気投合している場合に染まる色らしい

 

提督は後者の方だった

 

 

 

「黒というのはほかの色に染まらない色という側面を持っています。艦娘のコアがこの色に到達するというのは本当の信頼関係が結べているという証拠です。」

「へぇ~・・・・・・。」

「ただ・・・・・・問題点もあったりします。」

 

夕張は少し眉をひそめてつづけた

 

「信頼を寄せている提督に何かあった場合、その色が濁ってしまう可能性が非常に高いという事です。」

「それって・・・・・・。」

「良くて廃人、事と次第によっては反乱という子も・・・・・・。」

「・・・・・・なるほど。」

 

その先はあえて聞かないことにした

 

因みに、わざわざコアの部分を複製したのはこれを榛名の補助艤装のコアに据えるためとのことだ

呉の明石とここにいる夕張が研究や試作の結果、複製でもコアがあった方が安定するのではないかと言う案が出ていたのだとか

 

 

 

 

 

「あ、そうそうあとこれも追加しておいてくれる?」

 

話が終わり、工廠を出る際夕張にある書類を渡す

深雪から直談判が来ていた2人の履歴書だ

 

「あ、了解しました!艤装が届きましたらこっちでメンテは行って構いませんか?」

「お願いしてもいい?最近あっちの雲行きが怪しくてさ・・・・・・。」

「ああ・・・・・・。」

 

提督が上を指さすと夕張は察してくれたようだ

 

「ほいじゃ・・・・・・。」

「あ、はい!おつかれs・・・・・・あっ!すみません!待ってください!」

「え?なんかあった?」

「こちらの子なんですが・・・・・・。」

 

夕張は夕雲型の1人の履歴書を見せる

 

「近々改二改装が来るって話ですよ?」

「・・・・・・それは大本営に通告は?」

「いえ?まだ各拠点鎮守府の工廠担当者で止まっていますけど。」

「わかった・・・・・・。その子だけは1週間以内に着任させるようにするから夕張は準備をお願い。川内?」

「はーい?」

 

提督が川内を呼ぶと天井から降りてきた

その様子を見ても夕張は動じなかった

 

「工廠担当者にしばらく公表を伸ばすように根回しを頼める?」

 

了解と言うと、天井に再び戻っていった

 

「それにしてもよく驚かなかったね?」

「え?ああ!明石さんによく言われてたんですよ。ここに来たら突拍子もないことが起こるからって。」

 

深海棲艦が陸上で軽トラ運転してるを見た時に比べたらこんなの屁でもないですと言われ、提督は苦笑した

 

「それにしても・・・・・・。提督はこちらがある子の方が好きなんですか?」

「はぁ?」

 

夕張が自身の胸を指すと提督は間抜けな声を出した

 

「いえ。今回渡された履歴書の二人はなかなかの持ち主ですので・・・・・・。」

 

陽炎型のこの子も浜風さんには劣りますがなかなかの持ち主ですものとつづけた

 

「いやどうしてそうなるのよ・・・・・・。」

「あ、でも吹雪とか阿武隈の例外もあるのよねぇ。」

「おーい?」

「でも駆逐や潜水艦以外の子はそこそこの胸あるし・・・・・・。あ、でも白露型の二人は駆逐の例外だし・・・・・・。あ、龍驤さんは特に・・・・・・。」

 

どうやら自分の世界に引きこもってしまったようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが駆逐と一部の子たちはやたら豆乳を飲んだり、マッサージをしたりしている姿がよく見られるようになったとか(ごく一部3名は夜戦(意味深)を申し込みに行って叩き出された)

 

さらにはある子は姉妹がいる佐世保に話を聞きに行ったという話もあったとか




大変遅れました・・・(;´Д`)
本当はもう少し多く更新したいのですが私生活の方が忙しくて中々更新ができずにいます
年が明ければ安定する・・・と思いたいですね
変革に関しては終了で次からは一回日常話を挟んでイベントに行きたいなぁと思ってます
あとできれば年内にもう一回更新できれば・・・!

さて、次に着任予定の2人ですが予想を楽しみにしていただけると嬉しいです
といっても1人は確定してますけどね(´・ω・`)
うちは改装設計図が足りなくて来月に持ち越しです(白目)

それと武蔵建造率アップしてたので大型回して無事武蔵を着任させることができました!
5回回しましたけどね(白目)
他の人は1発や多くても2~3回で来てるのにぃ・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。