これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府とマッサージ

「・・・・・・。あ、飲み終わったか。」

 

提督はそうつぶやくと手に持っていた缶を机の上に置く

定番のモンスターだ

机の上に同じ空き缶がもう2,3本乗っているが、そばのごみ箱には山のように積みあがっている

時刻はヒトマルマルマル

当然のことながら徹夜だ

 

 

 

普段であれば古鷹や時雨に言われるが、のっぴきならない状態であることを伝え、しばらく残業が許可されている

 

 

 

 

 

石炭採掘を行う代わりとして大本営側に対する譲歩案を考えていた

当初、大本営側に要請していたのは正規空母1、軽空母1、防空駆逐1、駆逐2だった

しかし、石炭が採掘できるようになった今、駿河諸島鎮守府は本土からの補給がなくても自立できるまでになっている

そのような中での戦力強化は下手をすれば独立の準備、つまりは日本国に対する敵対行為ともとられかねない

そこで、人手が足りないが工夫をすれば何とかできる物から譲歩案を考えた

 

正規空母と軽空母これは、龍驤の基地航空隊業務の負担軽減のために要請しているものだ

これを、軽空母1人の着任に変更する

代わりに、八丈島にいる瑞鶴と基地航空隊の業務を12時間交代で行う

八丈島に置かれている拠点のランクは監視府のレベルだが、あくまで駿河諸島鎮守府の指揮下にある

滑走路を増設し、八丈島にいる空母系の子たちと連携、軽空母の子が着任すれば、龍驤の勤務時間は6時間まで減らすことができる

 

また、夕張が開発した例のブツで対空系も一応ではあるが補えることが分かったため、防空駆逐の着任も取り下げる

 

着任関係は何を取り下げるか決めるのはそう時間がかからなかった

 

とはいっても、夕張から着任予定の1人に改二改装が内々で決定していることを聞いてなかったらこの子も取り下げなければならなかっただろう

 

しかし、ただ戦力の増強を抑えるだけでは引っ込まない

今まで石炭を仕入れていたところが困ってしまうからだ

 

そこで、石炭の消費先として横須賀に大規模な火力発電所施設を建設する

その建設費の9割をこちら側の持ち出しにし、運営を大本営側に任せることを提案する予定だ

 

大本営側に出す譲歩案は以上だ

譲歩案はすぐに決まった

 

 

 

問題なのはここからだ

 

 

古今東西交渉の際の言い方や書類の文言で意味としては、同じことを言っているはずなのに伝わり方が180度変わってしまうことがあるのは必定だ

 

また、あえて小難しい文言を組み込みわかりづらく、あらゆる受け取り方ができるようにするなどの工夫をしなければならない場合もある

今回は、後者のほうに気を付けなければならない

 

 

 

そのようなことをしなければならない理由

 

石炭以外にも地下資源が発見されているからである

 

 

 

それも特大級にマズイものだ

ウランだとか天然ガスなどの兵器やエネルギー資源ではない

古代からずっと争いの種になってきたものである

 

考えてみれば駿河諸島や伊豆諸島は富士火山帯に含まれ、海底には多くの熱水鉱床が存在することを失念していた

 

 

こればっかりは、馬鹿正直に報告することはできない

影響が日本だけにとどまらず、世界にまで及ぶためだ

しかし、妖精さんは採掘を始めてしまっているため止めることはできない

 

 

 

 

 

「次のやつ・・・・・・あれ?切れてら・・・・・・。」

 

給湯室の冷蔵庫の中にはエナジードリンクは入っておらず、飲み物は麦茶や水しか入っていない

吹雪は龍驤とともに瑞鶴たちがいる八丈島に行っている

 

「しょんないで散歩ついでに下の自販機にでも行くか・・・・・・。」

 

頭を掻きながら執務室を出る

扉の横にあるホワイトボードに外出中と書いて施錠する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧建屋と新建屋の間に設けられた中庭に自販機が設置されている

自販機に210円を入れ、ボタンを押すと、青と銀色の缶がガコンという音ともに出てきた

近くのベンチに腰掛けながら缶を開けて、ちびちびと飲む

 

 

 

 

「あっいたいた!おーい提督!おーーい!」

 

 

 

飲むのをいったんやめて右側を向くと、遠くに衣笠の姿がぼんやりと見えた

手を振り返し、レッドブルを一気に飲み干した

 

「執務室にいなかったから探し回ったのよ?」

「え?スマホに連絡くれりゃよかったんじゃ・・・・・。」

「執務室の中から着信音がしたのよねぇ?」

 

少しジト目で返された

ポッケをとっさにたたくが、何も入っていない

 

「ちょっと寝ぼけてたみたいだわ。」

「まぁそれは置いておいて、提督何か忘れてない?」

「んん・・・?なんかあったっけ?」

 

提督は首の後ろに手をやり、ながらひねる

 

「加古から呼び出されてなぁい?」

「あっ!!」

 

提督は思い出した

術後の経過観察の診断をしたいから来てほしいと言われていたことに

 

「やっば・・・。加古は・・・・・・?」

「今日は学会のほうに行ってていないわ。で、経過の診断の説明を私が頼まれたの。」

 

ついてきてといわれ、医療棟へと向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも加古が座っている椅子に、衣笠が腰をかける

机の上に、何枚かの書類があり、きちんと説明用、渡す用と分けられている

 

「で、加古の診断だけど・・・もう大丈夫みたい。」

「そうかね。感染症とかいろいろ脅かされたからね。」

 

規則正しい生活を!と珍しく厳しい口調で注意されたのを思い出す

普段昼寝に明け暮れるやつに言われても説得力がないと思ったのは内緒だ

 

「で、これを言ってほしいって言われたの。」

 

そう言って説明用と書かれたファイルから紙を取り出す

 

 

 

 

『糖分摂取を控えろ!!!』

 

 

 

 

「・・・・・・。そんな糖分とってるか?」

 

甘いもの好きの自覚はあるが、毎日毎日お菓子を食っているわけではない

ほかにも、酒を毎晩飲むわけでもないし、過食の傾向もない

少し運動不足かも知れないが、それ以外に思い当たることがない

 

「さっき飲んでたじゃないの・・・・・・。」

「・・・レッドブル?」

「エナジードリンクの飲みすぎなのよ!!」

 

確かに、今は頻度こそ減ったものの1回の徹夜で1本、そのまま仕事をするためさらに2~3本は飲む

これが2徹、3徹を続くともっと飲むことになる

 

「血糖値が健康と境界のぎりぎりのラインになっちゃってるのよ!」

「うぇ・・・まじか。」

「せめて飲むなら・・・そうねぇ・・・・・・。コーヒーとかは?カフェインが高めだから大量に飲まなくて済むんだけど?」

「コーヒーねぇ・・・・・・。砂糖とか入れちゃダメ?」

「・・・どれくらい入れるかによるわね。」

 

そういうと、席を立って隣の部屋へと消えた

戻ってきた衣笠の両手にはコーヒーの入ったカップが握られていた

机の上に置くと、再び隣の部屋から砂糖とクリープをもって戻ってきた

 

「これで試しに作って飲んでみて。」

 

提督は苦々しい顔をして砂糖を1杯、2杯、3杯と入れ、クリープを2回いれたのち一口飲む

 

「・・・・・・。」

 

提督は再び砂糖の入った瓶を取り、4杯、5杯と入れて飲んだ

そして、これでいけるとどや顔をした

 

 

 

「意味ないじゃないの!!」

「あ、ダメ?」

 

3杯目は顔が引きつり、4杯目は思わずえっ?という声が漏れた

5杯目に突入した時は黙って頭を抱えていた

 

「もうこれ砂糖湯じゃない!」

「いやぁ・・・コーヒーって飲んだあと、舌べらに残る苦いのが苦手なんだよねぇ。」

 

提督は5杯も入れてなお苦さを気にしている雰囲気だ

 

「これじゃエナジードリンク飲んでるのと変わらないじゃないの・・・・・・。」

 

呆れたように頬杖を突く

そして、低い声でえー・・・とうなりながら何かを考え始めた

 

「いやまぁ・・・・・・飲みすぎに気を付けるでさ。ちょっと急ぎの仕事あるから失礼するね。」

 

提督は立ち上がると、肩をぐるぐるとまわしながら出ていこうとした

 

「!それよ!」

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどの医療棟ではなく、執務室に戻ってきた

提督はベットにうつぶせになっていた

ソファーやローテーブルなどは妖精さんの不思議な力でどこかへと収容され、代わりに病院などに置いてあるビニール生地のベットが一つあった

そして、そばには白衣を着た衣笠が立っていた

 

「そもそも眠気覚ましを飲むのが悪いのよ!マッサージをすれば眠気以外にも疲れもとれるはずよ!」

「え・・・?それって俺大丈夫なのか・・・?」

「・・・ちょーっと痛いかもしれないわね。」

「まって!ちょっとまって!最初の間怖いんだけど?!」

 

衣笠は抵抗されないうちに足をつかむと、ツボを押し始めた

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「え?ガサさん・・・・・・押してる?」

「押してるわよ?結構きつーく。」

「・・・・・・痛くも痒くもない・・・。」

「うそ!」

 

衣笠は驚いて、今度は肩のほうをマッサージする

少しお仕置きの意味も含めて痛めに施術をしているはずだが、それが効果がないということは相当凝っている状態だ

衣笠は半分意地になってきつめに押すが、提督は時々あー・・・と気持ちよさそうな声を出すだけだった

 

「痛いと・・・・・・聞いて・・・・・・。」ゼーハー

 

扉が重々しく開き、若葉が息を切らしながら入ってきた

何やら、「くる・・・しい・・・が・・・・・・悪くない・・・・・・。」

と言っているのでスルーした

聞けば、川内から特急の書類を預かり鎮守府内を探し回っていたようだ

川内はまだ根回しが終わっていないらしく、そのまま出て行ったそうだ

若葉にお礼を言って、ベットに寝ころばしてやる

そして、執務机に座り書類を読む

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・・・。」ホントニヤッテイイノ?

「・・・・・・!」イッ・・・!ダガワルクナイ!

「!」ナンカノッテキタ!ホラホラー!

 

若葉が声をあげながら悪くない!と叫んでいる中、提督はぼそりとつぶやいた

 

 

 

「助かった・・・・・・。」

 

 

 

書類には

 

『台湾沖航空戦の戦果誤認と輸送船団被害、及び捷一号作戦発動の報告』




新年あけましておめでとうございます!
少し遅れましたが今年もよろしくお願いします!

と、新年一発目でいかがわしいタイトルですが健全な内容でしたはい(え?若葉?)
そして本編ではこれからようやく秋イベに入っていきますのでよろしくお願いします
がたが来ていたノーパソを買い替え調子も上々!
12月のような更新率にならないよう気を付けていきます!


無事長波様を改二にしてやれやれと思ったら新春任務の最後がまさかの5‐5・・・
初めて行ってまいりました・・・

でもぶっちゃけると4‐5のほうが難しいというのが作者の所感でした
資源消費を度外視すればそう難しくはないと思いますはい
それをかたずけたら今度は駆逐、軽巡、戦艦に改二・・・
設計図足りんわボケー!!と荒れ狂っておりましたはい
幸いにもレイテ参加艦の大半のレベリングが終わり、70以上にはもっていっているのでイベントは安心できそうかなぁという次第です

駆逐は絵師のイチソさんのツイートから村雨、軽巡は能代が改二かなぁという予想です
設計図足りないヨ・・・

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