時雨のスリガオ海峡夜戦と大鷹着任、大将のとばっちり?
円形のテーブルには豪華な食事に珍しい外国の酒類
隣には紺色のドレスを着た吹雪が座っており、他の席にはリンガ付近の基地の提督と秘書艦が提督は礼服、秘書艦は普段着ている制服ではなく、吹雪みたいにドレスやワンピースなどを着て席についている
会場は広く、料理に見合う豪奢なつくりとなっている
一段高く上がった演台には、美しく純白のドレスを着た黒髪の女性と、タキシードを着た40代ほどの小太りの男性が並んで座っており、仲睦まじく微笑んでいた
以前約束していた視察(兼披露宴)がようやく実現したのである
結婚式のほうは済ませているため、かなり遅れた披露宴になってしまったが、このご時世ではよくあることだ
隣に座っている吹雪は終始キラキラとした目で壇上の女性、長門を見ていた
目の前に用意された料理を食べている途中、両名がテーブルに挨拶に来た
「耳本提督、師匠・・・・・・今日は来てくれて本当にありがとう。」
「ご無理を言ってしまって申し訳ない。なんとお礼をもうしあげたらいいか・・・・・・。」
二人は深々と頭を下げ、ぜひ楽しんでいってくださいと笑顔で言った
(耳本提督。)
(何でしょうか?)
長門の結婚相手の岩阪少将は去り際に、そっと耳打ちをした
(今晩お付き合い願えませんか?)
岩阪は指で円を作り、口元につけた
(かまいませんが長門くんのことはいいのですか?)
(大丈夫です。彼女は吹雪さんのことをうちの子たちに紹介したいみたいですから。)
(そういうことでしたらぜひ。)
ありがとうございますといい、再びあいさつ回りに戻っていった
「司令官。今日の夜なんですが・・・・・・。」
「リンガ泊地の子たちと食事会だろう?」
先ほど話しているとき、吹雪は長門と話しているのが見えた
「もしかして先ほど話されていたのは・・・・・・。」
「そ、行ってきなさいな。交流を広げておくのは大事だよ。」
「はい!わかりました!」
「ワインでいいですか?」
「あ、これはすみません。」
先ほどの会場から一転
8畳ほどの洋室にはワインセラーやウィスキーのボトルが並べられた棚などがあり、調度品のバランスなどに気を使っている事が分かる
おそらくは、ここの泊地で最上級の応接室だろう
軍服に着替えた岩阪が、ワインセラーから白ワインを一本持って戻ってきた
「ウィスキーはお嫌いと聞きましたので。」
「お気遣いありがとうございます。」
提督はグラスにワインを注いでもらい、提督は岩阪のグラスに注ぎ返した
「では乾杯。」
「乾杯。」
チンッと音を鳴らして一口
口に含むと甘く深い味わいが口に広がった
ボトルには、フランスの貴重なワインであることが一目でわかる
「あいにくこちらでは日本酒は貴重でしてご用意ができませんでした。」
日本の拠点基地の最西端に当たるリンガでは、レイテ沖海戦の影響が一番強かった
資源などはブルネイやオーストラリアなどから手配し、事なきは得ている
問題は嗜好品関係だ
船足の遅い輸送船で現在の南シナ海を通過するのは自殺行為にも等しい
そのため、国産の食料品や酒、たばこなどはここ1か月半ほど途絶えている
代わりに、欧州方面と貿易で栄えているリンガ泊地が、欧州から足りない物品を輸入して、南方方面の各地に供給している状態だった
とはいえ、長期化すると艦娘たちの士気に影響を及ぼしてくる
「何から何まで申し訳ありません。なるべく早く輸送船団を復活できるように手配します。」
「ぜひともお願いしたいです。そろそろ緑茶が恋しくなってきてましてね。」
レイテ沖海戦は無事南方方面の制海権を奪回し、大勝利に終わった・・・・・・
わけではない
正確には、深海棲艦たちをマリアナ諸島付近まで後退させたに過ぎない
もちろん、南シナ海は深海棲艦の残党が跋扈している
欧州方面にも勢力を割いている現在ではマリアナまで後退させ、南シナ海の残党狩りをするのが精いっぱいという、あえて言うなら辛勝に近い
欧州方面からの撤退は順調ではあるものの、完全に撤退するのは年明けの1月中旬から2月の中旬とみている
深海側の動きにもよるが、今までの深海棲艦の再建速度から見て、おそらくは2月ごろに南方方面の雌雄を決することになりそうな見立てだ
「それで・・・・・・。こちらに私を呼び出したというのは一体何用で・・・・・・?」
岩阪はワインを置くと顔を引き締めた
「改めてお礼を申し上げたかったのです。」
頭をしっかりと下げるとつづけた
「資源を融通していただいたことから、長門の不満を正面から受け止め、諭してくれた事。そして今回のご厚意で披露宴に参列いただいたことなどお礼を尽くしても尽くしきれません。」
「融通したのは岩阪提督の熱意があったからこそです。それに、長門くんの不満は痛いほどわかります。過去に後悔を残してくるのはつらい事ですから・・・・・・。」
解決したとはいえ、まだどこかで心の引っ掛かりを残してる瑞鶴と翔鶴の件を思い出す
「それに。
「・・・・・・。そうでしたね。」
あははと軽い笑いをすると岩阪はワインを飲んだ
「少し話がそれますが大本営の近況を聞きまして。桐月大将が大変なことになりそうだと聞きました。」
「ご存知でしたか。」
「南方方面の大半はハト派の桐月派に考えが近いです。しかし、決定権のない自分たちでは・・・・・・。」
大本営の上層部会については以前も言ったとおりである
「もし、桐月大将が元帥に推挙されるとしたら我々は大変遺憾に思います。」
「・・・・・・我々とはどの範囲でしょうか?」
「リンガはもちろんブルネイ、タウイタウイ、パラオなどの東側の主要拠点は保証しましょう。」
南方方面の東側で発言権が強いのは貿易で栄えているリンガか油田などの資源が豊富なブルネイである
特に、貿易で栄えているリンガは噂によれば大本営と同規模の財政基盤があるともいわれている
「もちろん西側でも同調するものは多いです。」
「・・・・・・。」
「耳本提督。現在の大本営をどうみますか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「派閥争いが激化して前線の事情は考えないこの現状では・・・・・・・。」
「いつか手痛いしっぺ返しが来る・・・・・・。」
「それが現在なのか戦後なのかはわかりません。しかし、このレイテ以上の危機があるのは間違いないでしょう。」
提督はテーブルにあるつまみのドライフルーツを一口かじる
岩阪はじっと提督の言葉を待つ
しばらくの沈黙の後、提督は軍服から封筒を取り出した
そして、岩阪に渡す
「私が駿河諸島へと戻ったら開けてください。」
「・・・・・・。了解です。」
岩阪は大事そうに懐にしまった
「それともう一つ。耳本提督のところには海外艦は着任していますか?」
「いえ。していませんが・・・・・・。」
「そうでしたか。近々、欧米諸国から接触があるやもしれません。今回の件で怪しむ動きがあるみたいですから。」
「・・・・・・。」
怪しむ原因は日本国内の動きだった
本来、南方方面と日本本土が分断されて困窮するのはどちら側か
本土側なのである
日本本土には、自国の消費量分の油田もなければガス田もない
これでは艦娘の艤装が動かせるはずがないのだ
南方から資源輸送ができないとなれば、必然的にロシアかアメリカのルートからの輸入となる
しかし、駿河諸島があるため、わざわざ厳しい交換条件や法外な高レートで輸入しなくてもよかったため、頼ることがなかった
このことを他国は怪しんだのだろう
駿河諸島は建前上は、資源輸送の中継基地
そして、以前の日本にはなかった島である
何かあると他国が探りを入れるのは必然だろう
「イギリス、フランスの特使がそれぞれ私のところへ来て、提督へと取り次いでもらえないかという話が来ました。」
そういいながらファイルを取り出して渡した
開ければここ最近いやというほど見た履歴書があった
イギリスからは駆逐、空母、戦艦
フランスからは水母、戦艦
以上の艦種が派遣の用意があると来ている
「ドイツの方は接触はなかったのですか?」
深海棲艦との戦争が始まってから一番交流があったのはドイツだ
そのドイツが接触してこないことに違和感を覚える
「・・・・・・。実はドイツとは少しありまして。」
当時はまだ艦娘に関する技術は日本だけ
深海棲艦に対抗できる唯一の技術を各国は欲しがった
日本としても、技術を広め各国で対処してもらうほうが負担が減るメリットがあったため、技術供与は二つ返事で了承した
各国の技術者が派遣されてきた中でいち早く自国に合った形で昇華し、ものにしたのがドイツである
現在では、欧州艦の大半はドイツ流の建造手法が使われている
Z1通称レーベレヒト・マースがドイツ海軍工廠で誕生
ドイツ海軍は艦隊運営のノウハウを学ばせるため日本へと派遣した
そこで、ドイツの技術者とともに建造の研究を行いZ3(マックス・シュルツ)とビスマルクの建造に成功した
その後、プリンツ・オイゲン、U-511、グラーフ・ツェッペリンなど続けて建造されて行った
が、依然としてレーベ、マックス、ビスマルク以外の3人はドイツ海軍工廠では建造ができなかった
そこで、日本で建造された3人を一度ドイツへ送り、建造技術を伝承
伝承された手法で新たに建造された3人を、日本に送るという計画が立てられた
「問題があったのはドイツで建造された3人がこちらへ来るときでした。」
当初は日本の艦隊が護衛につくことになっていたのだが、ドイツ側が固辞したのだ
曰く、これも訓練の内
単艦でレーベが日本に来れたことから過信したのだろう
譲歩として大本営付きのレーベ、マックス、ビスマルクがスエズから護衛についた
建造されたばかりで、訓練も何も積んでない艦娘を含んだ艦隊の船足は遅く、陣形を整えることにばかり気をとられた
そして、敵偵察機に発見された
「空爆を受けた結果、生き残ったのは回避性能が高かったレーベとマックス、浮上航行から潜水して爆撃を免れたU-511でした。」
「・・・・・・なるほど。この件は公にはできませんね。」
事実、提督はこの一件を知らなかった
ドイツの圧力があったのだろう
それ以来、ドイツが日本に艦娘を派遣する際は極力陸路となっているらしい
「くれぐれもこの件については内密に・・・・・・。」
「承知しました。・・・・・・それでは話してくれたお礼にこちらももう一つ。」
「何でしょうか?」
「先日、ロシア海軍の艦娘を一名新たにうちに派遣したいという話がありました。」
それを聞いた岩阪は固まった
「それは大本営を・・・・・・?」
「通しておりません。ロシア海軍元帥より直々の親書が届きました。」
「・・・・・・どうなさるおつもりですか?」
提督はため息を一つついた
ロシアとしてはレイテ沖海戦の勃発で日本から天然資源の発注が絶対増えるという見込みだったのだろう
その原因を探るために、息のかかったものを派遣する
「とりあえず保留中です。大本営に通すよう要請することも考えましたが・・・タカ派の一部がロシア系とつながっていることを考えると・・・・・・。」
「どんな手を使ってでも来るでしょうね・・・・・・・。ではイギリスとフランスの件については。」
「今回は見送りをお願いします。誰が来るかわかりませんが最低でもそれなりの手練れとみて間違いないですしから慎重にならねばなりません。」
その後は明るい話にシフトし、終始和やかに話が弾んだ
「おっと!もうこんな時間に・・・・・・。すみませんこんなお時間まで付き合わせてしまいまして・・・・・・。」
「いえいえ。実りあるお話ができてよかったです。」
すでに時刻はフタサンマルマル
明日は自分は帰るだけだが、岩阪には仕事がある
そんな話をしていると扉の外から失礼しますという声がした
「提督?まもなく食事会が終了しますのでそろそろ耳本提督を・・・・・・。」
「ああ、わかった。すぐ・・・・・・?え?」
「・・・・・・え?」
扉を開けたのは大淀だった
そう大淀だったのだが・・・・・・
「「バニー・・・・・?」」
驚いていたのは耳本だけではない
岩阪もである
(え?岩阪提督のご趣味ではないのですか・・・?)
(違いますよ!確かに長門のなヴヴン"!!とにかく知りません!)
岩阪の反応に提督は驚いた
岩阪はぶんぶんと音がするくらい首を振った
「あの・・・・・・。そんなにじろじろと見られると恥ずかしいのですが・・・・・・。」
「あっあー・・・・・・すいません。」
提督は目線をそらす
「あー・・・・・・ヴン大淀くん?その恰好は一体どうしたのかね?」
岩阪が不審そうな目で見ると大淀が恥ずかしそうに話す
「その・・・・・・冬の決戦に向けて戦意高揚のための制服と聞いたのですが。」
「なにそれ?!どこ情報ですか?!」
「え?提督も知らないんですか!」
「知らないですよ!耳本提督の反応を見ればわかるでしょう?!」
結局どこから伝わってきたのかわからないが、きちんとバニー服は大本営名義で送られていた
不思議なことに、大本営も把握しておらずこの件は迷宮入りとなった
バニ淀がなぜかわからないけど流行っていたので・・・w
皆様イベントの進捗はいかがでしょうか?
作者は甲甲乙乙乙丙丁で無事完走いたしました(;´∀`)
最後は丙でも行けたんですがナイオワを解消したかったため丁に落として堀をしました
そのかいもあってアイオワを無事ゲットし、他の新規艦堀も無事終了したため、今までにないスピードで冬イベは終了となりました(秋津洲堀とか残ってるけど)
・・・まぁE7の資源消費が重すぎて泣きそうになりましたが(白目)
1週ボーキが700~900ぶっ飛ぶとかくるってやがる・・・(震)
噂によるとアイオワはもう一隻出るみたいなんで出るなら掘りたいなぁと思いつつも堀の資源の重さを考えると震えが・・・