これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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前回のあらすじ

長門の結婚式と怪しげな機運とバニ淀


駿河諸島鎮守府と亡失? その1

「駆逐艦時雨。佐世保第二鎮守府より帰投しました。現時をもって駿河諸島鎮守府に復帰します。」

「お疲れ様。よく無事で帰ってきてくれたね。」

 

穏やかな顔で敬礼をする時雨に微笑んで答礼する

手のひらで、ソファーに座るように進める

 

「今日、明日は休みでいいからゆっくりして頂戴な。」

「えっ?仕事のほうは大丈夫なのかい?」

「今のとこはな。明後日ぐらいにおおよその概算が出てくるからそこからが本番だね。」

「それまではゆっくりしていてくださいね。」

 

吹雪がお茶を時雨の前に置くと、提督の隣に座った

提督は眉間に少ししわを寄せながら歯切れ悪く話をつづけた

 

「それで・・・・・・。その後はどうなんだ?」

「今のところ何も見てないよ。」

 

その後とは例の夢のことである

もともとは、時雨自身が嫌なことやトラウマになっていることを想起してしまうことを代償に、未来の情報を見ることができる不思議な能力だ

しかし、以前の事件で時雨のトラウマの一部が軽減された結果、悪夢の内容が史実のスリガオ海峡夜戦のものがメインとなり、前任地の悪夢を見ることは大幅に減った

 

そして、今現在時雨はスリガオ海峡夜戦で突破できなかったあの悪夢を討ち果たした

 

ここから想定されることはただ一つ

その能力が失われた可能性が高いことだ

 

支払う代償がなければ当然見返りもない

悪夢を見るだけとは言うが、時雨の悪夢はけた外れにきついものだ

精神の摩耗がひどく、一番きつい時は一日休みにしなければならない時もある

 

「そっか。まぁこの先見ないほうがいいからな。」

「でも・・・・・・。よかったの?結構重要な情報だったと思うんだけど。」

「重要っちゃ重要だが、優先順位を付ければそれより重要なものがあるからな。」

 

そういって時雨の頭をなでる

 

「時雨が穏やかに夜を過ごせるほうが重要さ。そのためにも大将が精いっぱい引き付けてお前を佐世保に行かせてくれたんだ。」

「・・・・・・。大将にお礼を言っておかなきゃね。」

「そうだな。」

 

予想では、大本営から妨害が入るものと思われた

未来のことが分かる貴重な人員を普通は見逃すはずがない

しかし、大将の独断での初期対応がちょうどこの頃発覚し、時雨の臨時出向は何事もなく受理された

 

「それじゃあまた何か見たら報告してくれよ?」

「うん。それじゃあちょっと用事があるから失礼するね。」

 

山風のことかと聞くと、まぁそうだね。とあいまいな返事をした

 

「あ、それと・・・・・・。」

 

 

みんなで受け止めてくれてありがとう。提督には今度はちゃんとしたのをお願いしたいな?

 

 

 

「「!」」

「何かあったら呼んでね。」

 

 

提督と吹雪が呆気に取られている間に、パタンと扉がゆっくりしまった

 

「・・・・・・あれは夢じゃなかったのか?」

「司令官もあのスリガオのところにいたんですか?」

 

 

 

「も」といったところを見ると、どうやら吹雪もあの不思議な夢を見ていたようだ

 

 

 

いや時雨の言い方からして、ひょっとするとここに所属している全員が・・・・・・

そういいながら手を見つめながら、あの時の重さを思い出す

 

 

「とりあえず片付けましょうか・・・・・・。」

 

吹雪は、時雨の飲み残しと提督の湯のみをお盆に乗せはじめた

 

「ところでこれでほぼひと段落とみていいんでしたっけ?」

「いや。あとこれだけが残ってる。」

 

机の上から、ここ数か月見ない日がなかったといっても過言ではない書類を持ってくる

 

「人員補充で異動してくる最後の一人が近々くるんだ。」

 

この子が来れば、現在警邏部に手伝いとして出している皐月を元の部署に戻してあげられる

 

多少の戦後処理のあとは平常通り・・・・・・

 

 

 

そうつぶやいたとき、内線電話が鳴った

 

「はい執務室耳本です。」

『お疲れ様です。大鷹ですが、少し気になったことがありましたのでお電話をさせていただきました。』

「何かあったのかい?」

『救難信号を受信したのですが・・・・・・。』

 

 

聞けば、ここから西に45キロ地点かららしい

西からということは、時雨が通ってきた航路

しかも、救難信号を出しているのは輸送船団で、船足の早い時雨はすれ違っているはず

更に不可解なことがある

その一方を受けて、先に偵察機を飛ばしてみたところ、その海域には何もないのだ

輸送船が沈没したのならば、油膜なり木材なりの何かしらが浮かんでいるはず

もっとわからないのは、ここ数日は駿河諸島の西側から寄港、あるいは付近を通過する船団の届けはない

 

大鷹に少し待つように伝え、電話を置く

 

「・・・・・・。どういうことだ?」

 

頬杖をついて考えを巡らせる

可能性として一番高いのは、着任予定の子がここに来るついでに臨時で編成された輸送船団だ

佐世保の工廠で新しく進水した輸送船をこちらにまわして、南方方面に回送するというのはない話ではない

また、うちに着任する予定だった新鋭防空駆逐艦は、予定を変更してトラック泊地への仮の着任が決まっていたはず

一緒に行動してくる可能性はあるし、新鋭艦の回送ということもあってこちらに通知がないのもわかる

 

 

 

じゃあなぜ時雨はすれ違ったはずの船団について一言も言わなかった?

輸送船団は沈んでないとしたらどこに行った?

 

 

 

吹雪に意見を求めようと顔を上げた時、再び内線が鳴る

 

「すまんがもう少し待ってもらえないか?」

『え?何がだ?』

 

 

大鷹と思い込んで取った電話の声の主は長波だった

 

 

「ああ、すまん。さっき大鷹と話しててな。それで?何かあったのかい?」

『んああ!そうだそうだ。いや今な、大破した磯風が入港してきて、輸送船団が襲われたって言われたんだけど来てもらえるか?』

「!・・・・・・わかったすぐ行く!」

 

電話を荒々しく置くと、吹雪に留守番を頼み駆け出した

 

 

 

 

 

「陽炎型駆逐艦磯風だ。司令。着任早々大変申し訳ない。」

 

駆けつけると、磯風は深々と頭を下げて謝罪された

どうやら、高速修復材を使ったようで大破状態から回復していた

ここで事情を聴こうと思ったが、誰が聞いているかわからない

長波には、警邏に戻ってもらい磯風は執務室へと来てもらうことにした

 

 

 

 

 

 

 

 

磯風からの情報を整理すると、船団といっても一緒にいたのはうちに着任するための磯風とトラック泊地へと仮の着任をする新鋭防空駆逐艦の涼月、そして牽引していた古い木造の漁船が一隻だけだったらしい

なぜ漁船がいたのかというと、うちが欲しがったので用意したとのこと

漁船が欲しいという要請を出した記憶はないし、所属している子たちから上申書が上がってきた事もない

 

そして、磯風たちは佐世保鎮守府から時雨より2時間ほど早く出発している

その途中、深海棲艦に襲われ漁船は牽引ロープが切れて行方不明

しばらくその場所で回避運動に努めた後、涼月と二手に別れた地点が救難信号を発信した地点だという

 

 

 

「そうか・・・・・・。道中で時雨には会わなかったかい?」

「いや?特に誰とも会わなかったが・・・・・・?」

 

どう考えてもおかしい

いくら漁船を2隻で牽引していたとしても、スピードは多少落ちる

それなら、時雨が追い付くはずだ

また、同じ航路を通る時雨が会敵しないのもおかしい

襲撃してきたのは軽巡3、駆逐3の水雷戦隊

とても敵が索敵漏れするとは思えない編成だ

それとも時雨の艦としての幸運で回避できたのか

 

 

 

 

ぶっ飛んだ事案に提督の頭は混乱していた

 

訳が分からない

 

提督は目頭を押さえてうつむいた

吹雪がそっと近寄ってきて大丈夫ですか?と声をかけてくる

 

「失礼します!提督さん!」

 

いつも上品で静かなしゃべり方をする大鷹が珍しく声を荒上げて入ってきた

磯風に気づいた様子はなく、そのまま机の横まで走ってきた

 

「水上機部隊が海上で輸送船団の遺留物と思われるものを発見しました!」

 

大鷹がジップロックを机の上に置く

ジップロックに入っていたのは細長い黒い帯

片方には金色の錨のマークが入っており、もう片方には漢字の切れ端が入っていた

漢字を推測するに、隊という文字とみられる

隊と書かれたほうは、焦げ付いた跡があり戦闘の後を物語る

 

「それは!涼月の鉢巻きだ!」

「・・・・・・。」

 

提督は、腑に落ちないという顔をしていた

襲われたのは今から2時間半ほど前

その間に、うちの哨戒機ともあとから追いついてきた時雨ともすれ違わず沈むだろうか

しかし、目の前の遺留品はどう見ても涼月の亡失の証拠である

 

 

 

ふらふらと磯風はソファーから立ち上がると、ジップロックに入った鉢巻きを見つめ、膝から崩れ落ちた

 

 

 

結局、提督は磯風の証言をもとに整合性が取れるように補正を入れながら報告書をまとめた

このままだと、磯風に責任が行き過ぎるためだ

そして、防空駆逐艦涼月は亡失したものとみなすことを大本営に報告することになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とか成功したようじゃな・・・・・・。」

 

涼月亡失認定の報告書を手に持ちながら深いため息をついた

 

「工作も大変じゃわい。」

「大将!失礼します。」

 

どうぞというと、入ってきたのは厳しい面持ちの砂安中将だった

 

「大将・・・・・・。例の審議が始まりました。」

「そうかい。2月まで長引くといいんじゃが・・・・・・。」

 

心配そうに見つめる文月を大将はやさしく頭をなでた




前回の視察編は話数をまたいでの続きとなりますのでご了承ください

ついに・・・!
ついに吹雪ちゃんの4nを脱出し、耐久37にすることに成功しました!
E1で海防艦&まるゆを掘り続けようやく成功しました・・・( ;∀;)
結局8セット食べさせてようやくです(白目)
1期終わるまでに達成できてほんとによかった・・・( ;∀;)


堀残した秋津洲も掘ってしまおうかとE2にいそいそと出かけたわけですが・・・
S安定無理だこれ!となりまして早々にあきらめて撤退しました
支援入れたけど第二が残る可能性高いの・・・


磯風と浜風に改乙実装のアナウンスが来ましたね
2人とも70以上ではあるので改乙なら行けるはず・・・・・・多分(;´∀`)

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