これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の抱き枕

大本営で中規模作戦の計画があるとの書類を受け取った。

最先行の情報だ。

なぜそんな情報がうちに来るかというと資源関係だけではない理由がある。

「じゃあ吹雪ちゃん行ってらっしゃい!」

「はい!行ってきます!」

大演習の時期である。

 

本来は、週に最低10回ほど演習を行うことが各鎮守府に義務付けられている。

だがうちは毎日が事務処理で忙しい。

そのため作戦前にまとめて行うことで、クリアをしているという状態なのだ。

作戦前の中だるみの時期は補給関連の仕事が減って、多少人が抜けてもなんとか回せるためだ。

今回は吹雪、川内、古鷹、榛名の4人が2日でたまった演習の半分をこなす。

その後入れ替わりで時雨、加古、龍驤が残りをこなすことになった。

しかし、いくら少ないとはいえここは日本一忙しいと言われている鎮守府。ということは・・・。

 

「次!生産部の書類!」

「はい・・・提督そろそろ休まなきゃ体が・・・。」

「休みたいけど流石に無理・・・。時雨は先に休んでて。」

なるべく期限の長い書類は後回しにしているが、補給に来た艦隊の書類で手いっぱいだ。

普段は補給部で処理される書類が時雨が秘書代行を行っているために、半分近くが回ってくるのだ。

時雨も秘書艦代行を何度も務めたことがあるが、直近の忙しさが尋常なものではない。

普段この時期に来る艦隊数と今年では明らかな差がある。

なんでも沖ノ鳥島方面に鎮守府ほどではないが、監視府を置くことになったのだ。それには、資源の輸送を行わなければならないため、普段の時期よりも寄港してくる艦隊が多いのだ。

完成すれば確かにうちの負担は減るのだが・・・かなしいかな。

縦割り行政の弊害でうちが演習に出ることを知らずに発注してしまったらしい。

おかげでうちは俺含めてみんなパンダ目赤疲労状態。

 

「僕はだいじょb・・・とと・・・」

「言わんこっちゃない。大丈夫。あと少しで終わるから。部屋に戻ってとはいえないけどソファーに横になるさ・・・。」

ふらついた時雨をソファーまで連れていき寝かせる。

「・・・一時間だけ寝させてもらうよ。起こしてね。」

時刻は現在マルサンマルマル。

時計を見たのち時雨を見るとすでに寝息を立てている。

この様子なら始業までは起きないだろう。そっと撫でてやり、書類整理に戻る。

 

「司令官生きとるか~・・・」

「なんとかな~・・・」

マルハチマルマル龍驤が入ってきた。

「今日出港の艦隊の書類できとるか?」

「ああ。これだ。」

「こんなん一人で持てるかいな!どんだけ出港予定がおるんや!」

書類束は30センチくらいあり一人ではつらかった。

「沖ノ島方面が18艦隊、本土に16艦隊、東南方面に4艦隊・・・。」

直前まで時雨が個別にファイル分けしてくれたためわかりやすくまとまっている。

「時雨の疲労度やばいやん・・・。」

ソファーで寝ている時雨の顔を覗き込んだ龍驤が真顔で告げた。

「そういう龍驤もだ。仮眠はとったか?」

「1時間4回はとれたけどそういう司令官はとれたんか?」

「・・・計3時間くらいかな?」

「嘘やな。まだとっとらんのやろ?とりあえず今日の朝あげなきゃならんのは終わったんやろ?」

「だがこれからの分がまた・・・。」

「提督。あとは僕が引き継ぐから寝てよ。」

時雨がソファーからむくりと起き上がりタオルケットをたたみ始めた。

「・・・わかったヒトフタには戻るからそれまで頼む。」

執務室を出て部屋の前まではほんの少しだが、一気に疲れが来たのだろうか。

部屋前でドアノブに手を伸ばすと同時に瞼が下りてしまった。

 

 

 

 

 

「おーい提督ー?」

ゆすっては見るが起きる気配はない。

「しかたないな・・・よっと!」

俗にいうお姫様抱っこで提督を抱えると、部屋のドアを開ける。

部屋は簡素かつ物が少ない。

提督をベットに寝かせ近くに椅子に腰を掛ける。

『あ、龍驤?あたしだよ~。提督部屋の前で力尽きてたから寝かしといたよ~。』

『やっぱり限界やったか。3徹してる顔しとったからな。』

『あたしはいつまでいればいい?』

『そのまま提督が起きるまでそこに居ってや。まだ仮眠とっとらんやろうしそこでとっとき。今日来る艦隊のはこっちで処理しきれそうやから。』

『サンキュー。それじゃまたね~。』

スマホを置いて、さて寝る場所をと思ったが予備の布団もなさげだ。

「ここでいっか・・・」

 

 

 

「やっば!寝すぎた!時間は?!」

時刻はヒトゴーマルマル

約束の時間から三時間が経過していた。

スマホの着信履歴は・・・ない?

というかよくよく考えたらここは鎮守府内だから起こしに来るはず。

スマホで執務室に電話を掛けるとすぐに出た。

『はい。こちら駿河諸島鎮守府です。』

『時雨か?すまん今起きたんだけど執務はどうなっている?』

『提督起きたんだね。書類仕事はあとチェックと捺印だけだよ。』

『そっか。すぐに行くよ。』

『夜まで休んでいなよ。ちょうど一段落したところだから龍驤も仮眠を取りに行ったところだよ。』

『そういうわk『休んでてね?』はい』

電話越しのはずなのに背筋がぞくっとした・・・。

しかし、どうしようか。スマホを机の上に置こうと横を見ると不自然なふくらみがある。

はていったい何だろうとめくると

「・・・・・・加古?」

ゆるみ切った顔で寝ている加古の姿が・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・なんで?」

思い出そうとすると不意に旅館でのことを思い出す。

あの時は寝たら吹雪が・・・・膝枕?

「なーにゆでだこみたいになっとるんや?」

「どおおおおお!」

思わず奇声を上げ、声のしたほうを向く。

寝間着姿の龍驤だった。

「おきたかいな?ほなもう少し時間あるからねよか。」

何かが口の中から半分飛び出している気がする。

「ほれ。はよ。」

我に帰ると加古とは反対側に龍驤が寝っ転がり敷布団をたたいている。

「いやいやいやいやいやいやいや。なんで?!なんで添い寝?つーかなんで加古もここで寝てんの?!」

「君が部屋の前で寝潰れとったから加古が寝かしてくれたんや。うちも眠いからさっさと横になり!」

腕を引っ張られ倒れるとそのまま龍驤にがっちり固められてしまった。

自分の部屋で寝なさいと言おうとしたがすでに寝息を立ててしまっていた。

「・・・・ていとく?」

よかった加古が起きた。

これで何とかなりそうだ。

「・・・・・・・あと二時間行けるね」

あくびをしてそのまま反対側もがっちり固められてしまった

「ええ・・・・」

打開策を探したが思いつかず途方に暮れた。

時雨に見つかったら何と言われるか・・・

考える時間がもったいない。

あきらめて寝てやろう。

つかめっちゃいいにh

俺は変態じゃないぞ!いいか!変態じゃないからな!

目をつぶり一心不乱に眠くなれと自己暗示をかけ続けた。

幸い疲れは取れきっていないため、早々に夢の世界へと旅立った。

 

 

 

「交代の時間だよ。」

ゆすり起こされ時間を見れば、ヒトキュウマルマル。

仮眠をとるのだろうか。時雨も寝巻だった。

すでに龍驤と加古は起き上がって引き継ぎの書類に目を通していた。

「長く寝ちゃって悪いね。じゃあ行きますか。」

「提督はここで書類を片付けてね。」

10センチほどの書類束と判子を渡された。

「それじゃあ僕は寝るからね。」

布団に潜り込むと寝始めた。

「ってここ俺の部屋!自分の部屋に行きなさいよ!」

「加古と龍驤だけなのかい?」

「それは・・・・・・・・もういいや」

「ありがと」

ふふっと笑って俺の足を抱き枕のようにした。

「・・・・仕事できなくね?」

「はいよ提督」

加古が病院で食べるときに使うようなテーブルを持ってきた。

「・・・・準備やけにいいね?」

「じゃごゆっくり~」

「ほなまた明日~」

あっさりと逃げられ本日2回目の途方に暮れた。




膝枕書いたんだし添い寝も書かなきゃね☆
癒しがほしいあなたに提督抱き枕!

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