これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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※前回のあらすじ あきつ丸とお話


駿河諸島鎮守府の視察 その2

規則正しく聞こえるカント音に、ゆっくりと揺れる部屋

窓の外には、寒々とした昼下がりの海岸線が広がっている

 

現在地は東海道線の湯河原を通過したあたりだ

 

 

 

 

なぜ、こんなところにいるのかというとあきつ丸から受け取った封筒が理由だった

 

 

 

 

 

仙台第一鎮守府への臨時視察を命ずる

 

 

                           

                            桐月

 

 

 

あまりに簡便すぎて一瞬偽造されたものかと思った

しかし、隅に拇印の割り印があり偽造されたものではないことが分かる

もう一枚の紙には、移動鎮守府に乗って現地入りするように書かれており、その紙が乗車許可証でもあった

 

 

 

 

「ジョウシャケンヲハイケンスルデス!」

「ん。はいどうぞ。」

 

紺色のダブルボタンの上着を着て、帽子をかぶった妖精さんが机の上にぴょんと乗ってきた

提督は、笑みをこぼしながら先ほどの言った乗車証明書を見せる

 

ちなみにであるが、この検札はお遊びである

乗車証明はすでに、ここの提督に見せてあるためだ

が、そのまま無視を決め込むのも心苦しいし、車内でやるのはいつもの仕事だ

何よりも、仕事で疲れているところに無邪気な妖精さんの姿にほっこりする

 

 

アリガトデスといって、帽子を軽く取った

 

 

「ツギノテイシャエキハウエノデス。テイシャジカンハサンジュップントニジュウゴビョウ!」

 

 

 

「細かいですね。」

 

隣に座っている古鷹がくすくすと笑った

 

「さ、あとちょっとだし仕事を片付けよう?」

 

反対に座っている時雨が珍しく仕事をせかす

 

 

 

 

今回の出張には、古鷹と時雨が随伴として同行してもらった

視察の理由として、南東北の備蓄状況に関する視察ということになった

そうなると、必然的に補給部と生産部の責任者を連れて行くのが手っ取り早い

 

が、少し不安なところもある

大将から最初に言われていた仙台第三、函館第二、釜石の責任者はどれもタカ派の中では日和見な部類だった

しかし、今向かっている仙台第一は東北では大湊に次ぐ規模の基地

さらに、仙台第一の提督はタカ派の再編組筆頭・・・になる予定だった人だ

 

だったというのは、タカ派が再編時に誰を担ぐかで一時争いが起きかけた

その際、仙台第一の提督が自ら譲ったため目立った混乱が起きずに再編が終了した

 

 

 

戦線拡大には賛成派ということしかわからないうえ、タカ派でも裏方にいたことから素性がいまいちわかっていない

有力なタカ派の将校で残ったのは須下とかの提督の二人・・・

 

 

 

「・・・・・・。」

「どうかしました?提督?」

「・・・・・・いや?」

 

提督は立ち上がると、窓の外を見た

普通の客車と違い、窓ガラスは内側からは普通に見えるが、外側からは中の様子がうかがえないようになっている

車内もくつろげるようになっており、隣の車両には個室の寝台車が併結されている

他にも、ドックに簡易工廠、食堂車に艦娘寮と、この列車自体が鎮守府そのもの

 

提督たちがいる客車は、通常の客車ではなく応接室みたいなつくりになっている

後ろには、個室寝台車があり、この列車に乗っている間はそこで寝泊まりする

 

 

 

相も変わらず寒々とした冬の海岸線を見つめる

もうすぐ、鉄路は少し内陸側に入るためこの景色ともお別れだ

 

「・・・・・・提督どうしたんでしょうか?」

「僕にもちょっと・・・・・・。昔実家に帰る時によく使ってた路線ってことは聞いたことあるんだけど・・・・・・。」

 

古鷹と時雨は顔を見合わせてぼそぼそと相談する

感慨にふけっているのだろうかと思ったがどうもそういう雰囲気ではない

何やらそわそわとしながら遠くを見つめて、時折口元に手をやってはため息をついている

 

 

 

「「あっ!大丈夫ですか/かい?!」」

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します!月山入ります!」

 

はきはきとした声とともに、背の小さい男が入ってきた

 

「先輩!少しお話が・・・って大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫・・・。少し酔っただけだから・・・・・・。」

 

 

古鷹の膝枕の上で少し青い顔をした提督が手をひらひらさせる

揺れる車内で細かい文字をずっと見続けたため、酔いが回ったのだ

 

 

「どうしても在来線では線形が悪くて揺れが大きいですからね。何か飲み物でも持ってこさせましょうか?」

「ああほんとに大丈夫。さっき時雨が持ってきてくれたから。」

 

起き上がって1人掛けのソファーに移動する

月山も反対側のソファーに座る

 

 

「提督。先輩って?」

「ああ、彼は俺の1年後輩にあたるんだ。」

「月山です!よろしくお願いします!」

「後輩・・・?」

 

時雨は月山の階級章を見た

細い黒い線には桜が3つ

 

「まぁ俺は干されてたし、月山は俺と同じ科の上の方にいたからな。抜かされるのも当然さ。というか普通に俺のほうが階級下なんだから先輩よびじゃなくてもいいんだけど。」

「先輩は先輩ですから!それよりも、機関車のメンテナンスありがとうございました。おかげさまでかなり調子がよくなりました。これからもお願いしますね。」

「気にしなくていいよ。うちの工廠担当もメンテナンスができて喜んでたからさ。」

 

 

ちなみにこの列車は、あきつ丸が言っていたように東海道線から伊東線を経由してきている

炭鉱で、掘りすすめられていた区間は大島まで

ここから大本営の直下まではまだ開通していない

しかし、大島から西に20キロほど行けば伊豆半島にぶち当たる

本来であれば、地下区間は20キロでも年単位の工事だが、妖精さんの技術で何倍もの速さで整備することができた

ちなみに、大本営までの地下区間の開通は年度末までに、全通は6月ころという試算が出ている

 

 

 

「それよりも、お伝えしておかなければならないことが!綾波!」

「失礼します。」

 

のんびりとした声で月山の秘書艦綾波が入って来て、提督に紙を渡す

びっしりと細かい字・・・が書いてあるわけではなく、見たところ簡単な行程表のようだ

 

「本来であれば上野から常磐線経由で行く予定だったんですが、ちょうどいま貨物列車が何便か連続で発着の予定があって線路の空きがない状態です。」

「つまり、東北本線で仙台に向かうってことで?」

「そうです。ですが、そうなると通勤時間を考慮しなくてはなりませんので、上野でしばらく停車して、帰宅時間が終わったころ合いを見計らって出発となります。」

 

何がいいたいかというと、到着予定時間が大幅にずれ込む見込みだということだ

 

「もちろん急ぎでしたら、貨物列車よりこちらを優先することが可能ですが・・・。」

「いやぁそこまでしなくていいよ。今回は抜き打ちに近いから先方にまだ連絡は行ってないはずだし。」

 

 

 

 

とはいえ、連絡は迅速に入れなければならない

急ぎ、大将にスマホで連絡を取り、視察が明日になることを伝えた

 

 

 

 

「これで良しっと。」

「視察期間は2日間でしたよね?」

「そうだね。帰りは横須賀まで頼むよ。」

「了解しました。発車時刻にはお遅れなきよう・・・。」

 

綾波に目をやると、頷いて退出していった

それを見て、提督も軽く頷いた

 

「ちょっと月山と話したいことがあるから2人とも席外してもらえる?」

「体調の方は大丈夫ですか?」

 

古鷹が顔を少し覗き込んだ

 

「さっきよりだいぶ良くなってるから大丈夫。何かあったら最悪月山がいるからね。」

「じゃあ月山さん。何かあったら呼んでくださいね。」

 

 

 

 

「ずいぶんといい雰囲気ですねぇ?」

「ずけずけといってくれるな?」

「失礼しました。」

 

いたずらっぽい笑みを返してきた

 

「さて、本題の頼まれ物ですが・・・書類じゃ酔ってしまいますし、口頭でもいいでしょうか?」

「ん。了解。」

 

頼まれ物というのは、仙台第一の提督の情報だ

以前に川内達に頼んでいた情報収集の中に彼の名前は入れなかった

当時は有力な地位にいなかったからだ

時間か人手があれば収集できただろうが、万年人不足かつ時間もない

有力な地位にいる人物に絞って収集していたことがあだになったのだ

また、タカ派の再編でも須下が摘発を逃れたためどうにか追加の証拠を探すのに躍起になっていたせいでそちらに手が回らなかった

 

「あくまで地元での噂ですので何とも言えませんが・・・・・・。」

 

・艦娘との仲は良好

・港には定期的に視察に来ており、港湾関係者との仲も良好

・怪しげな船の寄港や黒いうわさも皆無

 

「何よりも気になったのが、同伴していた艦娘に指輪が付いている子が何人かいるということですね。」

「ん?妙だな・・・・・・彼は人権制定には参加してなかったはず・・・・・・。」

「そこです。じっくり話し合ってみる価値はあると思います。」

「・・・古鷹を連れてきたのは失敗だったかなぁ。」

 

提督は大本営でプッツンした古鷹を思い出す

相手方の口が悪くなければいいのだが・・・・・・

 

 

「まぁ何とかなるらぁ・・・・・・。」

 

ボソッとつぶやいた

 

「とりあえずありがとさん。上野で少し下車して飲むかい?」

「すみません。それはちょっと・・・・・・。」

「あら・・・・・・。まぁ何か理由があるなら・・・・・・。」

「そういうわけじゃなくてですね。今日上野では抗議集会が・・・・・・。」

 

提督はそれを聞くと、ため息をついてまたかとこぼした

 

 

 

未目麗しい艦娘とて、万民に受け入れられているわけではない

もちろん、多数の支持は得ている

が、100%ではないということだ

人が多く集まる大都市圏では毎日どこかしらでデモ活動が行われている

そんなところに、艦娘や軍人が行けばどうなるか想像にたやすい

しかも今日一緒にいるのは古鷹という爆弾

古鷹や時雨は何とかいなせるだろう

が、自身に危害が加えられようものなら・・・・・・?

とても想像したくない

 

「こうなると人間という存在に嫌気がさしてくるな・・・・・・。」

 

はぁと息を深く吐き出しながら舌打ちをする

外を見る数少ない機会を邪魔された腹立たしさが声に出た

 

「・・・・・・。今度また用事があったらよらせてもらいます。うちの綾波も吹雪さんに会いたいでしょうし。」

「確か同期だっけか?初期艦に選ばれたから吹雪のほうが先に着任になったけど。」

 

 

「シツレイスルデス!」カラカラ

 

部屋のドアが開いて、先ほどの妖精さんが入ってきた

 

「テイシャジカンノヘンコウヲオシラセスルデス!ウエノノテイシャジカンハナナジカントニジュップンヨンジュウニビョウデス!マモナクウエノニテイシャシマス!」

 

そういって小走りに退出していった

気が付けば、夕焼けに染まる都心が窓から見えた

 

「外食はできませんが、代わりにうちの食事で我慢願います。最も、外の店に引けを取るつもりはありません。」

 

そういいながら月山は立ち上がった

 

「ああ、楽しみにしてるよ。何か手伝えることがあったら言ってくれな?」

「お気遣い感謝します。でも先輩は今回はゲストですからゆっくりしててくださいね。」

 

お願いですからね!と気迫のある念押しに思わず




次回は仙台の提督と邂逅!



皆様の食材集めはいかがでしょうか?
自分的にはかなり精神的に摩耗したイベントだったなと早くも振り返ってます
何とか鳳翔さんのディナー券追加2枚分迄集めきり、今はのんびり資源回復に努めている日々です

ちなみにとあるつてでよみずいランドを閣下動画作成者の方々と共に回ることができました(*´ω`*)(チケットは当たらなかったけど)

伊勢改二、黒潮改二はそれぞれ99と80まで上がっているので絶賛お慢心中ですw

最後に皆様に食材が落ちることを・・・(今更だけど食材入った木箱が海に落ちてる時点でびっしょびしょな気がする)

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