これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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※前回のあらすじ 銀〇鉄道999


駿河諸島鎮守府の視察 その3

仙台ー仙台ー

 

 

あらかじめ録音された放送がホームに降り立つと同時に流れてきた

暖かった車内とは真逆の突き刺すような寒さが顔を襲う

ブルリと体を少し震わせ、蛍光灯の明かりで寒々しいホームを見回す

反対側のホームにも人はおらず、さらにその先のホームに1人2人始発電車を待つ人が思い思いのことをしている

普段の制服ではなく、自分たちと同じ第二種軍装に外套を着た古鷹と時雨が下りたのを確認すると階段へと向かう

 

「先輩。」

「ん?」

「お遅れなきよう・・・お願いしますね?」

 

無言で軽く手のひらを上げ、歩き出す

古鷹と時雨も軽く会釈してそのあとについていく

 

下り階段に差し掛かると、一番下のところで一人

メガネをかけ、エメラルド色の帽子をかぶった女性が敬礼した

 

 

 

 

 

 

仙台港

 

正式名称は仙台塩釜港

東北最大ともいえる民間港であり、東北方面では大湊とほぼ同等の基地が配置されている

 

仙台塩釜港は仙台・塩釜・松島・石巻の4つの港区で構成されており、それぞれに独立した基地がおかれている

それぞれに塩釜、松島、石巻には仙台第三、第四、第五の名前がついている

しかし、実際はそれぞれの港区の名前を関した通称がよくつかわれる

 

唯一数字が飛んでいる仙台第二はすべての基地の補助のための小型基地であり、野蒜におかれている

 

 

 

今回の視察先の仙台第一は仙台塩釜港仙台港区

地元の人たちから新港や仙台港と呼ばれているところだ

 

 

 

黒塗りの威圧感ある車から降りると、先ほど出迎え、ともに乗っていた艦娘が鎮守府を背に敬礼した

 

 

「耳本中佐。改めましてようこそ仙台第一鎮守府へ。私は筆頭秘書艦の鳥海です。」

「こちらこそ出迎えありがとうございます。こちらは当鎮守府の補給部責任者時雨と生産部責任者古鷹です。」

 

後ろに控えていた時雨と古鷹がそれぞれ敬礼する

 

 

 

「せっかくご足労頂いて申し訳ありませんが、些か急な訪問のご連絡でしたので当鎮守府責任者の九山の都合がつくのが午後からになってしまいます。」

 

 

申し訳ありませんと深々と例をされた

些か急な訪問というところの語気が少し強かったのは、当てつけだろう

 

 

「いえ。唐突な視察打診をしてしまいこちらこそ申し訳ありません。」

「午後の会談時間までは、私鳥海が鎮守府をご案内させていただきますのでよろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

鎮守府のあちこちを回りながら鳥海から説明を受ける

ゆく先々で艦娘と会うが、どの子もピシッと無表情の敬礼をする

話しかけようにも、常時出撃関係の呼び出し放送が流れておりとても話しかける状況ではなかった

どの子も目に回りにはクマを作り、口を真一文字に結んでいる

その中に、ちらほらと普通の様子の子も混じっていた

みれば、手に指輪を付けている

 

 

 

そんな時、話を聞くチャンスが巡ってきた

放送で誰にも呼ばれていない子が敬礼していた

今までは、放送で名前が呼ばれていた子ばかりで呼び止められなかった

 

「・・・・・・?」

 

提督はここの鎮守府に来てから違和感ばかりを感じていた

そして、その子の顔を見た時更に強まった

 

「あの・・・・・・?」

「はい。なんでしょう?」

 

無機質な声が返ってくる

 

『第三艦隊第二小隊旗艦飛龍!演習場に集合せよ!』

 

「すみません。呼び出しがありましたので・・・・・・。」

「あ、すみません。」

 

 

結局最後まで話せずじまいでここの主である九山との会談の時間になった

 

 

「そろそろ提督のとの面会時間ですので参りましょうか。」

「わかりました。ところで質問が一つあるのですがいいですか?」

「何でしょうか?」

「提督とのご関係は?」

 

 

鳥海も指輪を付けている1人だった

 

 

「・・・・・・。それはいったいどのような理由があっての質問でしょうか?」

「あくまで気になっただけですので。」

「部下と上司それ以上でもそれ以下でもありません。こちらも信頼の証としていただきました。」

 

スパっと言い切り、ご案内しますと顔をそらされた

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして。私が九山です。」

「急な視察の許可ありがとうございます。駿河諸島鎮守府の耳本です。」

 

中肉中背だがのごく普通の体形・・・・・・ではあるが、スキンヘッドで愛想笑いもせず無表情でこちらをじっと見ている

威圧感を振りまいており、口数少なく挨拶を終えた

 

 

 

簡単な視察報告をし、何か要望があるか聞くが別にないとそっけなく返される

 

 

 

「それでは私から一つだけ。そろそろ茶番はやめていただきたいのですが?」

「茶番?」

 

九山の眉が吊り上がる

 

「艦娘はみな疲れた様相、ごく一握りの指輪持ちは疲労の色なしの差別。意志を出すことを禁じられたかのような機械的な応対・・・・・・と上辺だけなら運営に異常をきたしているようにうかがえる。」

 

 

 

近隣の人たちとの関係が友好的なのも俗にいうブラック鎮守府に見られる特徴だ

 

 

 

「少し質問がおかしいがうちはその俗にいうブラックではないと?」

「ですね。決め手になったのはいくつかありますが、ここに来るときの鳥海君の返事でほぼ確信しました。」

 

鳥海は表情を変えずに九山のそばに控えている

 

「上司と部下それ以上でもなければそれ以下でもない。この場ではそうでしょうね。しかし・・・・・・。」

 

 

なぜ指輪をはめているのが左手薬指なのか

 

 

そういうと九山は少しばかにしたような笑いをこぼした

 

「それが彼女の意思という証拠にはならんだろう?私が指示した可能性は捨てきれないが?」

「視察中、何人か指輪を持っている子たちがいました。その子たちは左手薬指の子もいれば別の指につけている子。右手もいましたし、ペンダントにしている子・・・・・・それぞれ思い思いの場所につけているように感じます。」

「・・・・・・。」

「着用指示をするならば一つの場所に固定が筋でしょう。そして指輪の状態。大なり小なり傷はあれど光沢に鈍りは見受けられない。無理やり押し付けられたものをわざわざ手入れするなんてありえません。」

 

提督はさらに続けた

 

「確信を得たのはある一人の子でした。」

「・・・・・・飛龍か。」

 

その言葉を聞くと提督の口元が少し緩んだ

 

「なれていなかったんでしょうね。目元に隈を書くことなんて。」

 

先ほど提督が声をかけた理由は目元の隈がおかしかったからだ

右側の隈が焦ったか何かしてうまくかけなかったのだろう

もみあげのところまで隈と同じ色の線がビッとついていた

さらに、そこで会う艦娘の違和感にも気が付いた

 

 

目の隈の色が全員同じ色だということに

 

 

「素晴らしい洞察力だ。監察官をやっているだけある。」

「・・・・・・。なぜですか?」

 

提督は先ほど緩めた口を閉めなおす

 

「確かに君は有能だ。艦娘の対する姿勢も共感できるところが多い。」

 

ふぅと息を軽く吐き出す

 

 

「しかし、私はなれ合うつもりはない。」

「っ!」

 

 

声を出そうとした提督に手で静止した

 

「私の戦略的な構想はタカ派に近いものがある。だがそれだけが理由じゃない。」

 

提督はちらりと古鷹たちを見る

今のところは抑えていることを確認すると九山に視線を戻す

 

「確かに、艦娘に人権をという気持ちはわかる。いまだに外出の制限が付いているこの子たちに休みの日くらいは町で自由にしててほしい。」

 

九山は鳥海を見た

 

「外はきれいごとばかりじゃない。戦後を見据えるなら確かに今制定しておかないと後々厄介なのもわかっている。・・・・・・だがな。」

 

九山は提督に向き直る

 

「貴様とハト派は何をやっているんだ?タカ派が瓦解したと思ったらハト派が同じ椅子に座ろうとしている有様。派閥内での地位争い、遅々として進まぬ議論に果ては黒い金の動きまで・・・・・・結局貴様もそこらの愚図と変わらないではないか。」

「だからあえて過剰な労働をさせてるように見せ、ここは異常があると報告すれば私の信用が失墜、失脚するのを狙ったんですね?」

「愚図という膿は出さねばならないからな。」

 

 

さっと古鷹の前に手を出した

顔を見なくても今古鷹がどんな顔をしているのか簡単に想像ができる

 

「なるほど。それでどこにも迎合せずタカ派というくくりの末席にいるというわけですね。」

「威勢だけはいいな?」

 

 

後ろから古鷹をなだめる時雨の小声がする

 

 

「古鷹。あれを。」

「えっ!あっ!はい。」

 

怒気を含んだ声を戻し、提督にアタッシュケースを渡す

中の書類を一度だし、底を出す

そこには、鍵穴が一つあった

 

 

 

「こちらをご覧ください。」

 

提督は九山に書類を一枚だけ渡す

 

「・・・・・・!」

 

最初は黙って見始めたが、途中から九山の目の色が変わった

食い入るように一字一字を見る

九山が読み終わるのを見計らって今度は束を横に置く

 

 

 

 

沈黙が部屋を包み込む

先ほどまであんなに興奮していた古鷹も落ち着き、聞こえるのは部屋にいる者たちの息遣いと書類束をめくる音だけ

 

 

 

「・・・・・・。」

 

九山は書類束を抱えると、机のそばにあるシュレッダーに書類をかけ始めた

そして、すべて処理し終えると暖炉へと向かい、中にあるものすべてを火にくべた

 

 

 

 

「聞かせてほしい。なぜそこまで体を張る。」

「彼女らは家族のようなものであり誠実にありたいから・・・・・・それではだめですか?」

 

暖炉で燃えていく書類くずを見ながら九山は提督に問い、その背中を見ながら提督は答えた

 

「・・・・・・。きつい言い方をしよう。それが世間一般で化け物だとしても?」

「世間は世間、自分は自分です。それに・・・・・・。」

「それに?」

「化け物は我々人類と艦娘どちらなのでしょうかね。」

 

それを聞いた九山は少しの沈黙の後、確かになとこぼした

 

「さすがは提督適性で特甲をたたき出しただけはある。」

 

 

 

特甲

 

提督適性で甲の上位として備考欄に書かれる

この適性を持つものはごく一握りであり、特徴として艦娘に好かれやすく、気まぐれな妖精さんにリクエストを出しても了承してもらえるのが特徴である

具体的には、土木工事や採掘作業、通常艦(イージス艦や輸送艦)などの建造作業など普通ではやってもらえない作業を指示が妖精さんにできる

 

このクラスの提督は当然出世・・・することはほぼない

なぜならば、特甲の適性があるものは上層部と反目する傾向が高い

 

 

 

先ほどの小馬鹿にしたような笑みではなく、相手に敬意を持った微笑みと変わっていた

 

「もし君が書類の通りに動くのであれば不干渉を約束しよう。たとえ大本営からの要請があったとしても。」

「そのようなリスクを負っても大丈夫なんですか?」

「それだけの覚悟が見れたからさ。これくらい安いものさ。」

 

いつの間にか圧力は消え、執務室は穏やかな空気に変わっていた

 

「だが、あくまで不干渉だ。手を貸すようなことはできない。君は信用できてもハト派全体はまだまだ信用できないからな。」

「私を信用していただけるという言葉が聞けて十分です。」

 

 

九山は鳥海に耳をトントンとたたくジェスチャーをした

鳥海は頷き、執務机に近づいた

 

「今盗聴器の妨害電波を出させてもらった。」

「・・・・・・そういうことですか。」

 

 

 

端的に言ってしまえば、九山はタカ派でも持て余し気味な人材ということだ

須下からしてみれば次点の存在であり、厄介なことこの上ない

材料集めのために、周りの鎮守府や基地は監視役ということだろう

 

「あまり長くは出していられないから手短に言わせてもらおう。ここ最近近海ではロシア関係の船がたびたび目撃されている。」

「・・・・・・。私の視察も漏れている可能性があると。」

「ロシアはタカ派と蜜月状態だ。邪魔な存在である君の排除に乗り出さないとも限らない。」

「おあつらえ向きに、今は第二次レイテ沖に備えて航空機、輸送船は大本営に許可を得ないとなりませんからね。」

 

おそらく列車に乗ってしまえば何とかなる

相手もそれを計算に入れて行動してくるだろう

 

「そこでだ鳥海。任せたぞ。」

「はい。提督!」




最近厄年ってあるんじゃないかって本気で思い始めている作者です(;´・ω・)
ごたごたが多すぎて全く更新できなくてすみません

次は多分早い・・・はず?


さて、前回からいろいろとアプデを繰り返しているわけですが今日のアプデで白露改二実装とのことですね
うちは81で慢心中です(本当は80だったけど1を警戒して81にしました)
天龍改二が来てもいいようにぬかりなくこちらも80にしておきました(*´ω`*)

そして設計図不足が深刻なうちは伊勢改二で計画が狂いサブの鈴谷航改二がお流れになってます(白目)
でも伊勢改二が強すぎてこれは仕方ないなと踏ん切りもつきましたw
扶桑型に謎の対潜値の上方修正が来ましたがこれが地味に使える( ゚Д゚)
潜水艦を水爆でT不利以外はほぼ確実に落せるようになってるのは大きい・・・!


あと、氷上の観艦式ですがどうせ当たらんやろと思って3つ全部に応募して2つあたり両日参加が決まりました(*'ω'*)
ツイッターの方で付き合いのある方たちと楽しんでまいります!

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