これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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前回のあらすじ 九山提督と密約


駿河諸島鎮守府の視察 その4

来るときと同じ黒塗りの車に乗り、鎮守府を後にする

高速道路の下をくぐり、国道へと入ると空気が変わった

 

「来ましたね。」

「言った通りになったなぁ・・・・・・。」

 

来る時と違うのは、鳥海が運転手で助手席には隈のメイクに失敗した飛龍が乗っているということだ

そして、後ろには同じく威圧感を放ちスモークミラーで車内の様子がうかがえない特別車が後ろや追い越し車線に入ってくる

 

「それじゃあ行きますね!」

 

一気にアクセルを踏むとブオンとエンジンが呻きだす

チラッと後部座席からスピードメーターを見ると180の限界に届かんばかりの勢いで針が右へと向かっていた

最初は引き離したかに思えたが、すぐにスピードを上げて追いついてきた

幸いにも夜間のため、少なめの一般車を縫うように追い抜き一路仙台駅へと急ぐ

 

が、当然ただ黙って追いかけてきてはくれない

チュインという音が後ろからし始めた

 

「相手も必死だな!」

「RPGも通さない防弾ガラスですから大丈夫です!それより列車の発車時刻は何時ですか!!」

「午前0時ちょうどだ!あと20分ある!」

「このまま一直線に行ければいいんですが・・・・・・!」

 

銃弾が地面や周りのガードレールなどあちこちに当たっては火花が散る

飛龍が窓から応戦のために拳銃を発砲しているがどうやら当たっていない雰囲気だ

 

「古鷹!ちょっとごめん!」

「えっ!はい!」

 

窓を開け、腰につけていた拳銃を取り古鷹に覆いかぶさるようにして後続車へと狙いを定める

狙いを運転席ではなく、タイヤに定めて引き金を引く

 

が、当たってもパンクする様子はない

 

「チッ。やっぱり防弾タイヤか!仕方ない!」

 

そういって、今度はヘッドライトに狙いを定める

4、5発当てると、貫通したらしくライトが消える

 

「時雨もちょっとすまん!」

「うっうん!」

 

同様に反対側のライトも打ち抜き、光を奪う

 

「これで多少手が緩めばいいが・・・・・・。飛龍君もできる?」

「当ててはいますが・・・・・・!なんで抜けないの!」

 

弾を補充しながら飛龍に呼びかける

 

「ライトのカバーも防弾使用だ!そういう時は同じところに銃弾を・・・・・・!こうだ!」

「・・・・・・提督も無茶いいますね。」

「僕もそう思う・・・・・・。」

 

古鷹と時雨が苦笑いで顔を見合わせ、飛龍は半泣きだった

 

「少しルートを変えます!いったん応戦をやめてください!」

 

そういって鳥海は左にハンドルを切る

どうやらバイパスに乗り換えるらしい

相手の方は予想外だったのだろう

3~4台はそのまま直進していった

しかし、まだまだ山ほど後ろについている

 

「っ!耳本さん!すみませんが列車の責任者の方に連絡が取れますか?!」

「月山にかい?取ってみる!」

 

スマホを取り出し、履歴から月山を呼び出す

幸い、2~3コール目には出てくれた

 

「変わってもらえますか!飛龍さんはスマホを持ってください!」

「はっはい!」

 

どんな会話をするのだろうと聞き耳を立てようとしたが、銃弾の音が一気にうるさくなったため聞こえなかった

片側3車線になり、真後ろや横につく車が増えたのだ

 

 

 

「あれ!発車まで時間が!」

「大丈夫です!話は付けてあります!」

 

飛龍がスマホをこちらへと投げて渡すと同時に鳥海が言う

今度は右にハンドルを切り、一気に加速する

時刻はフタサンゴーハチ

軍の列車とはいえ、緊急性がなければ発車時刻を遅らせることはできない

何より、今ここで変更すると後続のダイヤが大幅に乱れ次回からの列車の受け入れが厳しくなる

 

 

0時を回り、5分ほどしたとき鳥海が口を開いた

 

「皆さん・・・・・・。ジェットコースターは平気ですか?」

「・・・・・・え?」

 

予想していなかった質問を聞き、思わず聞き返してしまった

 

「あんまり得意じゃないですが・・・・・・なんでまた?」

「僕は平気だけど。」

 

古鷹と時雨も不思議そうな顔をしている

 

「少し・・・・・・揺れますよ!!」

 

左に急ハンドルを切り、目の前の陸橋に差し掛かると今までにないエンジンのうなりが聞こえた

よく見ればまだ開通していない陸橋だ

提督は鳥海の意図に気づいた

 

「古鷹!時雨!頭下げろ!」

「えっ!はい!」

「わかった!」

 

 

 

 

 

歩道に乗り上げ、設置予定のガードレールを過ぎればその下は・・・・・・線路だった

 

 

 

 

ガシャンという大きな音と揺れが車内を襲った

幸いにも横転せず着地で来たらしく、再び走り出した

ひびの入ったリアガラスからは戸惑った追手たちがこちらを恨めしそうに見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とかなったか?」

「いいえ。列車に乗るまでは油断できません!」

 

ガタガタと揺れる車内で舌をかまないように気を付けながら話す

線路は車が走るように設計されていないから仕方ない

 

「見えました!」

 

遠くで光が見えた

徐々にその光は近づき、誰かが手を振っているのに気が付いた

 

 

「せんぱーい!はやくはやく!!」

「私が先に手伝いとして乗り移ります!提督はそのあとで来てください!」

 

飛龍が、窓から天井へと行き、列車の展望デッキに飛び移った

提督は頷き、窓から身を乗り出す

2人がかりのおかげでスムーズに終わり、続けて時雨も乗り移る

荷物も移動し、最後に古鷹を

そう思った時だった

先ほど散々聞いた銃弾の音がした

 

「あいつらだ!いったいどこから!」

「・・・・・・!踏切か!」

 

最初に曲がったとき3~4台振り切った追手がいた

おそらく陸橋で振り切った追手から連絡が回ったのだろう

 

「これでは古鷹が移れない!」

 

荷物など後回しにしておけばよかったと後悔するが、後の祭り

どうするか考えを巡らせる

 

「もうすぐ橋に差し掛かりますから後ろについてください!!」

 

月山が手を振って鳥海に指示を出す

銃弾は列車のシールドではじかれているため安全ではある

が、車から乗り移る際のわずかな間にハチの巣にされかねない

おりしも、簡易艤装はこちら側にあるため今の古鷹は普通の人間に近く撃たれたらひとたまりもない

 

 

 

「・・・・・・古鷹。行けるか?」

「!」コクリ

 

提督は少しのジェスチャーを交えながら古鷹に聞く

伝わったのか古鷹は頷くと鳥海に指示を伝え始めた

 

鳥海はこちらに顔を向けると小さく頷いた

と同時に反対側の線路へとハンドルを切った

それに気が付いたのか追手側の銃撃がぴたりとやんだ

今度は追いつくためにスピードアップするためだろう

車のライトがどんどん近づく

橋までのこり100mを切った時

 

 

 

「今だ!」

 

 

 

車が、再び急ハンドルでこちら側に戻ってくる

追手は驚いたのか加速をやめ、射撃の準備を始めるがもう遅い

乗り移ってた時の位置で古鷹はジャンプした

提督は身を乗り出して古鷹の腰に手をまわし、こちら側に引き寄せる

 

 

 

 

「やった!」

 

 

 

 

賭けは成功した

鳥海の車もそのまま後ろにつけ、追手との間に割って入る形になっている

 

「綾波!15号車の切り離し準備!」

『了解です!』

 

月山はインカムで運転室にいる綾波に連絡する

 

「時雨さん、古鷹さん!お力をお貸し願いますか?!」

「うん!いいよ!」

「大丈夫です!」

 

返事を聞くと月山は炭水車まで来てくださいと走り始めた

 

 

 

 

車内を走り抜けると、炭水車には本来ついていない扉があった

開けると、どこかで見たようなメーターや波形機などが壁にびっしりついていた

 

「ここに簡易艤装をセットしてもらえますか?」

 

月山が指さすところに簡易艤装をセットした

すると、がくんというと音とともにスピードが上がっていくのを感じる

 

 

もともと、外見はただの蒸気機関車だが中身はほぼ全くの別物である

移動鎮守府という旧来の目的は広い範囲をカバーすること

それには、いついかなる時でも発車できなければ困る

そのため、電力不使用かつ比較的手に入りやすい石炭を主燃料とした蒸気機関車が選定された

また、蒸気機関車だけでは力不足である時は艦娘の艤装を接続することでパワーアップすることができるように設計されいる

 

ちなみに、トンネルなどの狭い空間ですすにまみれることを防ぎたいときは艤装の方で運行している

 

「私の艤装も使ってください!」

「飛龍君いいのかい?」

「どうぞ遠慮なく!」

 

飛龍の艤装もセットすると、列車はさらにスピードを上げた

 

「もうすぐ橋を抜けるぞ!」

「・・・・・・!」

 

提督は双眼鏡で後方の鳥海の車が離れていくのを見ると叫んだ

 

「綾波君!いまだ!!」

「はい!」

 

ガクンという先ほどよりも強い揺れが列車に走る

そして、かすかにガシャンという衝突音や悲鳴が聞こえたが警笛の音とスピードを上げたドラフト音にかき消された




これにて仙台視察編は終了です(*'ω'*)
次回からはいい加減レイテ後編・・・だと思います(白目)
表立って参戦ではなく今回も独自の視点からのお送りとなります

さて、鎮守府氷祭りですがとてもすごかったです!!(語彙力)
なんというか・・・すごかったです!(語彙ry)
いろいろ言いたいことがあるのですがまとめられませんww
それくらいすごかったですw(語ry)

強いて言うのであれば艦これアーケードの世界を壊さずそっくりそのまま目の前に持ってきた感じです!

あと無良提督がマジでかっこよかったです(理想の提督像的存在)

これっきりなのがもったいないといっても過言ではないですね・・・
とりあえず行けなかった人のためにもDVD発売はよ!(もう一度見たい)

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