これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

133 / 134
前回のあらすじ

大忙しとエゴとピンチの足音


駿河諸島鎮守府とレイテ沖海戦 中編

名前を書いて捺印

名前を書いて捺印

名前を書いて捺印

なま・・・・・・これは書き損じあり

名前を書いて捺印

名前を書いて捺印

 

 

 

期限に追われながら仕事をするのは久しぶりだ

あの頃は悲鳴を上げる暇すら惜しいくらいだった

久しぶりにこの状況になっているが、以前とは比べ物にならないくらい手が進む

そして、それを打ち消すかのように以前とは比べ物にならないレベルの書類が舞い込んでいる

 

あちこちからカラの輸送船が来ては積み込んで南西方面に向かう

そして、南西からは怪我人が回されてくる

怪我人と言っても艤装ではなく、体を怪我した者たちや病気の者たちが回されてくる

一応、四鎮守府や大きい都市の基地であれば併設の病院があるためそのどこかに搬送される

が、これは本人の希望で変えられる

必然的に人の出入りが激しく逐次情報が集まるここを希望する人が圧倒的だった

 

 

それ以外にも設備環境がいいという理由があるのだが・・・・・・

 

 

 

幸い、病床の拡張も行ったばかりであり問題がないと言えばない

しかし、ここである問題にぶち当たった

 

 

 

警邏部の仕事が急増したのだ

今までは呼ばれて日に1件2件だったのが今では2桁を超えるようになってきた

いったい何が原因なのかというとこの怪我をした艦娘たちが問題を持ち込んだのだ

今までは大規模作戦の場合の怪我人は生命の危険が迫ったものだけが引き受けられてきた

そもそも、主戦場から遠く離れたここよりも最寄りの泊地に運ばれるのでそのような事は数例しかなかったのだが

 

怪我をした艦娘たちは暇を持て余す

本土に近いためネットやテレビなども見れるが、それでは収まらないモノがある

戦場で中途半端に火をつけられて引っ込められたものが多いこの場所で流行るものと言えば・・・

 

古来より飲む打つ買うの三拍子なんていうのがある

 

飲むのは簡単だし、同じ性の者でも買うの欲は晴らせることはできる

 

問題になったのは打つの部分

 

 

サマをやったやらないの問題や、のめりこみ過ぎて有り金以上をスって払えない

 

この2つが突出して多く、そしてそれが喧嘩を生み出していた

ならば禁止にすればいいと主張する人もいるだろう

 

だが、そんなきれいごとが通用するはずがない

人は禁止されればされるほど逆にやりたくなるのだ

ましてや、強制的にいなければならない艦娘なら余計にだ

 

今までこの問題がなかったのは提督の方針が影響していた

提督は、艦娘が羽を伸ばせる場所を作りたいという気持ちでここを開発をしてきた

その為、純粋な保養所としての側面が大きかった

もちろん、簡単な賭け事が行われていただろうが短期滞在だからその場限りだったし賭けるものや額もかわいいもので済んでいた

 

折りしも今はタイミングとしては最悪だった

タシュケントという外国の艦娘が常駐するようになった

そして、あくまで推測だがこの先海外の艦娘が常駐するようになるだろう

 

そんな中で防諜も担っている警邏部が別件で忙しいのはこの上なく不味い

 

今はあきつ丸と八丈島の応援があって何とかなっているが、いつまでもというわけにもいかない

怪我人の受け入れの中には長期療養患者も含まれる

中には定着する者たちがいるだろう

 

 

ため息をついて内線をかける

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなぁ・・・・・・。うちにそれができる知り合いはちょっといないなぁ」

「・・・・・・いることはいるけど。うーん」

 

龍驤はお手上げといった表情で両手を軽く上げた

そして、皐月は今まで見たことのないくらい渋い顔をした

 

「いるのかい?」

「公表はされてないけどはみ出し者ってどこの世界にもいるもんなんだ。そして、徒党をすでに組んでいる。そして、タイミングが今はものすごくいい」

 

 

 

どうやら3つの大きな組織のトップが隠棲場所を探しているとか

3人とも知り合いで、話がつけられるのだがどうやら人となりを気にしているらしい

そもそも裏世界の人となりを気にしてもしょうがないと思うのだがというと首を振った

 

 

「1人は超過激なんだけど来てほしい?」

「ぜひともそれ以外の方にしてください」

 

そんなこと言われたら即答せざる得ない

 

「だけどなぁ・・・・・・。うーん」

 

 

 

皐月がここまで迷うのは初めて見た

即断即決するタイプが迷うというのはいったいどういうことなのだろう

 

「とりあえず話をしてみるよ。すぐに連絡が取れるか怪しいし」

 

そう言って皐月がスマホを片手に退室していった

 

「それじゃあうちも戻るな。3人ともあんまり無茶するとこれするで?」

「あっああ!わかった!わかったから・・・・・・」

 

電話のジェスチャーで吹雪、親潮の血の気が少し引く

提督も焦って返事がどもる

 

「まぁええわ。見た感じそこまで無茶しとらんようやしな!ほななー」

 

高笑いしながら出て行ったのを見て親潮と吹雪、提督は互いに目線を交錯させる

 

 

「・・・・・・てっきりばれたのかと思いました」

「あれは気づいてないね。間違いない」

 

親潮が大きなため息をつき、吹雪はほっとしながらも不思議そうな顔をした

そして、提督の顔をじっと見始めた

 

「一応3徹目だったのは黙っておこうな?」

 

鏡で自分の顔を見るが、特にいつもと変わらない顔色だった

吹雪と親潮の目が自分と同じく若干疲れた目をしていることぐらいだろうか

今まで2徹程すると提督には隈ができていた

忙しくて提督の行動が全員で把握できない時などは、これを目安にしていたようだ

 

 

 

「軽巡阿武隈リンガ泊地より帰投いたしました!」

「ご苦労様。戻ってきて悪いんだけど明日から通常業務に戻ってもらっていいかい?」

「はい!OKです!」

 

本当は1日休みを上げたいが、そうも言ってられない状況だ

 

「ところで提督。少し会わせたい人がいるんですけどぉ・・・・・・」

「会わせたい人?誰だい?」

 

もらった報告書から顔を上げる

阿武隈が部屋の外に声をかけると失礼しますと言って金髪で張りつめた顔のツインテールの娘が入ってきた

 

「アメリカ太平洋艦隊艦娘部隊所属Gambier Bayです!あの!耳本提督でお間違いないでしょうか!」

「そうだが・・・・・・。一体何用でこちらに?」

「アメリカ太平洋艦隊長官より親書をお預かりしてまいりました!どうぞ!」

 

震える手から手紙を受け取り、お礼を言うと少し緊張が解けた様子だ

ソファーに座るように促し、阿武隈は下がらせた

 

 

 

 

 

(なるほどね。そういうことか)

 

色々なつじつまが合い、思わず頷きながら手紙を見ていた

タシュケントが先に情報収集にために入り込んだというのを米露首脳会談の時に匂わせ、その情報のごく一部を記録が残らない歓談の場で話したのだろう

こちらの情報を集めていたアメリカのことだ、自身も踏み込まねばならないと決心したのだろう

情報収集役である着任艦の先触れ役としてガンビア・ベイを送り込んで来た

しかし、気になる点がある

書かれた日付が随分と前なのだ

 

 

「あのぉ・・・・・・。それなんですが・・・・・・」

 

言いにくそうに顔を下の方に向けた

 

「実は位置が途中からわからなくなって彷徨っていたんです・・・・・・」

「ええ・・・・・・」

 

思わず呆れた声が漏れてしまった

それに反応して顔を真っ赤にしながら身振り手振りで英語交じりの言い訳を早口で話し始めた

途中から何を言っているのかわからなくなっている様子だ

 

「や!えっと!あの!」

「あははは!わかったわかった!確かに受け取りました」

「あっアリガトウゴザイマス・・・・・・」

 

我に返って、小さくなった

 

「ただ・・・・・・ちょっとこれに関してなんだけど難しいかもねぇ」

「えっ?!」

 

そういってあるところを指さすと彼女は顔を青くする

正規空母サラトガ着任に関してのところだ

 

「なっ何か問題があるんですか?!」

「いやねぇ・・・・・・。確かにここ最近サラトガが来ているんだけど・・・・・・。八丈島に着任しちゃってるんだ」

 

そう

少し前にアメリカ太平洋艦隊所属を名乗る正規空母が来ていた

しかし、先触れも何もない状態だったため照会に手間取った

本人は駿河諸島着任を希望していたが、秘密の宝庫かつ火薬庫みたいなところにはるばるアメリカから来た特級の戦力たる正規空母を着任させるわけにはいかなかった

そこで、妥協案として一番近い八丈島に着任が決まったのがつい数日前の事

 

彼女が迷っている間に、状況がだいぶ変化してしまったのだ

 

それを伝えると、青を通り越して白い顔になった

見ていられなくなり、そっと電話を机から持ってきて渡す

半泣きで受け取り、震える指で押した

 

 

 

コロコロ変わる顔を見ながらお茶をすする

泣き顔が消え、真面目な顔になったの見るに本題に入ったのだろう

そっと廃棄用紙とペンをそばに置き、阿武隈からの報告書を見ることにした

 

 

「・・・・・・Have a nice day」

「終わったかい?」

「はい。Admiral」

 

提督に向き直り敬礼をすると

 

「改めまして本日より貴艦隊に所属させていただきますGambier Bayです!」

「了解した。貴艦を歓迎する」

「へ?あのぉ・・・・・・驚かないんですか?」

「まぁそうなるだろうなとは思ってたからねぇ。ま、とりあえず君には基地航空隊の管理をお願いするよ。詳しいことは龍驤に聞いてほしい。基地航空部隊はこの建物を出て・・・・・・あ、いや自分が案内しよう」

 

報告書や今までの経歴などを思い出し、訂正する

 

「え?そこまでしていただかなくても・・・・・・」

「いやいやいや!せっかくだから案内ついでにね?もしくは吹雪ちゃんか親潮の方がいいかい?」

「でもお忙しそうな気が・・・・・・」

 

 

「もしもし!龍驤?大至急来てくれ!訳は後で話す!」

 

 

今度何か埋め合わせをするから渋い顔をしてきた龍驤に耳打ちをし、送り出した

出て行ったのを確認すると、再び電話をかける

 

 

 

「もしもし?若葉か?ちょっと急ぎでイギリス大使館の方を探ってくれるか?頼む」

 

アメリカが巻き込むとしたら一番つながりの強いところを抱き込むはず

想像しただけでも大きなため息が出る

 

 

 

 

 

 

 

書類の山が減り、今日中に目を通さなければならないものは消化した

さすがに今日徹夜すると明日何を言われるかわからない

親潮を帰るように促すと、素直に退出していった

お茶を入れに行った吹雪を待つが、なかなか戻ってこない

 

「お待たせしました!お茶葉が切れてて・・・・・・」

「わざわざ食堂まで取りに行ってたのかい。お疲れさん」

 

お礼を言ってソファーにどかっと座り込んだ

大きく息を吐いて目を閉じる

と、隣に重みを感じる

目を開けると、隣に吹雪が座ってこちらにしなだれかかっていた

 

「どうした?よっかさって」

「いえ・・・・・・少しこうしていたくって」

「そうか」

 

沈黙が流れる

ふと脳裏にいつぞやのタシュケントの言葉が浮かんだ

ちらりと吹雪の方を見ると、目が合いお互いに目をそらす

 

そっと後ろから手をまわし、肩に手をやると吹雪はさらにこちらによって来た

肩からおさげ、後頭部に手を移動させた

片手をそっとほほにやると、吹雪は目をつぶった

そっと顔を近づける

吹雪の香りに心拍数が増す

一度しているとはいえ、勢いに任せていたところもあったのだろう

 

1秒1秒がとても遅く感じる

吹雪のほほがだんだんと赤くなる

 

 

腹を決め、再び顔を近づけた

 

 

 

 

 

「提督!ちょっとごめ・・・・・・あ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

机の非常口から川内が飛び出してきた

そして、提督と吹雪の様子を見て固まった

提督はあまりの気まずさに顔をそらし、吹雪はゆでだこのような赤さにまでなった

 

「でもごめん!それどころじゃないんだ!」

 

そういうと、冊子を提督に押し付けた

 

「え・・・・・・?なに!」

 

渋々報告書を流し読みすると、気まずさとか恥ずかしさはどこかに吹き飛んでしまった

 

 

 

「すぐに大将に連絡を!いそげ!!」

 

 

 

 

 

 

 

八丈島基地

 

 

サラトガはロビーでコーヒーを飲みながら提督を待っていた

これから駿河諸島鎮守府へ人員の引き渡しなどの会議を行う

それに随行させてもらうためだ

 

 

「Hello?SisterSara」

「あら?あなたが・・・・・・。貴国も本気のようね?」

 

名前を呼ばれ、顔を上げると金髪の淑女が反対側に腰を下ろした

 

「フフフ。どうかしらね?」

「とぼけちゃって。あなたが来た時点でどれだけ首を突っ込む気なのかお見通しよ」

 

お互いに余裕のある笑みを浮かべている

 

 

「先手はいただくわね」

「さてそれはどうかしら・・・・・・こっちもカードが返ってきたからね」

 

その言葉に、淑女がまさかとつぶやく

 

「・・・・・・それh」

「サラー?準備終わったー?そろそろいくわよー?」

 

会話を遮るように瑞鶴の声が飛んできた

 

「はーい!ただいま参ります!」

 

マグカップを置くと、声がした方に歩き出した

 

 

 

 

「それじゃあ、あちらで会いましょう。Old Lady」




さぁ夏イベおわってもう秋イベですね!(白目)
なかなか筆が進まず申し訳ないです・・・

本日は吹雪ちゃんの誕生日ということで頑張って書き上げさせていただきました!
(ほんとは着任記念日やケッコン記念日を目指してたのは内緒)

さぁサンマ漁皆さんいかがでしたでしょうか?
当鎮守府は・・・まぁ割とあっさり終わってのんびり余った資源で周回してましたw
鰯の怒涛の追い上げで秋刀魚18匹集め終わったとき鰯が49匹ととんでもない接戦でした・・・
来る秋イベはどうも大規模の予想が出てるとかで・・・
皆さん頑張ってまいりましょう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。