これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の取材 その2

マルキュウマルマル 執務室

「青葉取材しまーす!」

「はいはい。よろしくね。」

席に座り書類一束を自身の前に持ってくる。

「おお!さすが噂通りの書類の多さ!これを一日で裁くんですよね?」

三十センチくらいの書類の束を中身が分からないように写真に収めていた。

「それは今日の午前分だから12時までには終わらせるよ~」

「えっ?」

「えっ?」

「これって半日分ですか?」

「そうだよ。今日は多くもなく少なくもなくだね。」

うちの何日分だろうなんて思わずぼやいてしまう。

「うちはこれがメイン業務だからできることだよ。ほかの鎮守府なら出撃や哨戒があるからね。」

「そういえば哨戒任務はやらないんですか?」

 

哨戒任務は鎮守府で一番行われることの多い任務の一つだ。

この辺りはある程度の制海権を確保しているため、最前線でもない限り深海側の侵攻の迎撃なんてことはそうそうない。

「この辺りは八丈島や本土方面の哨戒域に入ってるから業務移管しちゃってるんだ。繁忙期はとてもじゃないけど事務処理でそれどころじゃなくなるからね。」

繁忙期はそれこそ午前の決裁書類が机いっぱいにくる。

それを知っているからこそ大本営は移管を申し出てくれたのだ。

「なるほど~・・・ってもう半分終わったんですか?!」

先ほど手に取っていた書類束の半分はすでに処理し、決済済みの箱の中だ。

「そりゃあ毎日のようにやっているからね。全部見ずに要点だけ見ておけばいいから慣れれば楽だよ。」

青葉と会話をしながら手を動かす。

忙しいときは電話と報告を聞きながら整理も同時並行しなければならないことが多々あるため、これくらいはお茶の子さいさいだ。

「はぁ・・・何かコツとかありますか?うちの司令官にぜひ教えてあげたいです。」

「こっちに来る書類は9割が同じ書式だからね~。残念だけど参考にはならないと思うな・・・よし!終わりっと。吹雪ちゃんよろしくね~。ところでなんか飲む?」

次の束を自身の前に据えてから冷蔵庫へと向かう。

「あっお気遣いなく。・・・えっ?」

「そう?喉乾いたら言ってね。」

 

青葉は見てしまった。

司令官が開けた冷蔵庫の中身がすべてエナジードリンク(しかもぎっしり)だったことに。

しかもレッドブルを一気飲みしたのちモンスターを持って戻ってきた。

「あの・・・」

「ん?どうかした?」

プシッと缶を開けてちびちび飲みながら仕事を再度始めた。

「さっきレッドブル飲んでませんでした?」

「飲んだよ?」

「今飲んでいるのって・・・」

「モンスターだよ?」

「・・・・何でもないです。」

吹雪の首が左右に振っていた。

しかし、彼女の手にはモンスターが握られており青葉は取材したことに少し後悔し始めた。

 

順調に作業も進み、ヒトフタマルマル。

少し前に終わらせ、談笑していたがお昼のサイレンに三人は気づいた。

「もうお昼か。青葉くんはどうする?」

「司令官はどうされるんですか?」

「こっちで食べながら仕事。」

「・・・・・休憩ですよね?」

「まぁ・・・間食休憩が2時間あるから大丈夫!その時は本当に仕事しないからさ!」

「じゃあちょっとほかの人の取材がてらお昼に行ってきます。2時くらいには戻りますので。」

 

 

食堂で日替わりランチを注文し、受け取るとあたりを見回した。

本当は鳳翔さんや間宮さんにも取材したいが今回はあきらめた。

様々な鎮守府の艦娘がいるが先日に会った一人を見つけ声をかけた。

「こんにちは!隣いいですか?」

「どうぞ。青葉さん。」

先日の圧迫面接?の一人、時雨だった。

「なんや?こないだいってたパパラッチかいな?」

「ねむー・・・」

前には龍驤と加古がそれぞれお昼を食べていた。

というか加古に至っては半分寝ながら食べている。

器用すぎる光景を写真に収める。

「パパラッチって・・・やったことは否定できませんけど・・・。」

「もうやらないでね?」

次はないからと絶対零度の視線に寒気が走る。(何かカチャッという金属音が聞こえた気がするが気のせいと信じたい)

「はい!」

 

 

食事を食べ終えたところで取材を始めた。

「それじゃあここの鎮守府について思っていることを時雨さんからお願いします。」

「僕からかい?何物にも代えがたい場所かな。ありきたりだけど。」

「ほっほーん?」

「龍驤さん?なにかあるのかい?」

明らかにそれ以外にもあるだろうと茶々をいれたが最後まではいわなかった。

「って次はうちかいな。せやなぁ・・・うちはここに骨をうずめる気でいるで!重いかもしれへんがここまで気の合う面子なんてそうそう揃わんからなぁ。」

手を頭の後ろで組み椅子に体を預けながら言った。

「・・・zzz」

「なるほどなるほど・・・あの?加古さん?」

「んあー寝てないよぉ・・・起きてる起きてる・・・ここは気楽に寝れていいところだよぉ・・・・・・・・zzz」

のそっと起き上がって答えてくれた思ったが、そのまま背もたれに体を預け再び旅立ってしまった。

「えー・・・」

「ごめんね。お昼時は大体こうなんだ。この後の質問はちょっとあきらめてほしいかな。」

「そうそう。誰かしらが見とらんとホンマに危なくてな。」

「はぁ・・・まあどこもそうなんですね・・・。」

気を取り直してほかの質問を多々ぶつけていった。

時間はあっという間で最後の質問をした。

「じゃあ最後に司令官さんに対して一言お願いします。」

「「「休め」」」

「・・・まったくもって私もそう思います。というか加古さん寝てませんでした?」

「ところで今更だけど提督はどうしたの?」

「仕事をやるとのことで吹雪さんと執務室にいますよ。」

「・・・僕ちょっと用事ができたから失礼するね。」

にっこりと笑っているがその目は笑っていない。

圧迫面接で見たときの顔だ!

龍驤さんによると提督、吹雪と艦娘の間で仕事量で毎回もめるのだという。

他の鎮守府なら提督側は仕事を少しでも減らそうとするが(それが普通)ここはオーバーワークのレベルまで引き受けようとするので、艦娘がストッパーになっているのだとか。

なお吹雪さんはブースターなのであてにならないとのこと。(見事に染まってもうたんや・・・)


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