これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の取材 その4

しばらく執務室には近づかないことにして艦娘を探す。

だが見つからない。

正確には取材をしていない人がということだ。

あと取材をしていないのは川内さんと吹雪さん。(鳳翔さんは居酒屋のほうで聞くことにしているため除外)

吹雪さんは最初司令官さんに質問の内容を聞かれたくなかったためあえて聞かなかったが、取材を進めるうちに一言を聞いてほしくなってしまったのだ。

「失敗したなぁ・・・」

「何がや?」

「あっ!龍驤さん!」

夕日が差し込む廊下をとぼとぼ歩いていると反対側から歩いてきた龍驤に話しかけられる。

「実は吹雪さんと川内さんが見つからなくて・・・。龍驤さんはどうかしたんですか?」

「うちは警邏部やからな。見回りや。吹雪は・・・うん。時雨がな?」

「あっ。」

「大体わかったやろ?たぶん晩方には解放されると思うでその時さがしたほうがええよ。ところで提督知らん?」

それじゃあ先に居酒屋に行ったほうがいいかな。

「ああ司令官さんなら・・・。」

「その様子だとなんか余計な事口走って古鷹にこれやな。」

首根っこをつかむしぐさをする。

「ご明察です。よくわかりましたね。」

「提督のことなら何でもわかるで!たぶんみんなお見通しやで。」

「なんというかもはやエスパーの域ですよ・・・。」

「提督にも言われたわ。それじゃあうちはこの辺で・・・。あっ言い忘れとった!」

すれ違ってすこし歩いたところで龍驤が振り向き少し大きめの声で呼びかける。

「川内なら居酒屋に居れば顔出すから大丈夫やで!」

 

 

「そんなわけでやって来ました。けどまだ暖簾が出てないですね。」

結局時間つぶしのついでにあちこちを歩き回って写真に収めてきましたがのんびりと過ごすにはいいところですね。

今度はあの人と・・・。

「あの?」

「おひゃあ!」

目の前には着物を着た女性が一人。

鳳翔さんが暖簾を持って苦笑をしていた。

「青葉さんですね?準備ができましたのでどうぞ中へ。」

 

 

 

 

 

 

「ご注文はどうされますか?」

「じゃあウーロンハイと枝豆でお願いします。」

「かしこまりました。」

「あの・・・」

「取材ですよね?ちょっと待ってくださいね。」

ほほえみながら厨房へといったかと思うと5分もしないうちにお盆に注文したものを乗せてやってきた。

「ご注文のお品です。」

「あっ・・・どうも・・・・。」

出鼻をくじかれたからか、どうにもうまくいかない。

相手のペースになってしまっていて切り出しづらくなってしまった。

緊張をほぐすために枝豆を口に含みウーロンハイを一口。

「ふふ」

「どうかしましたか?」

「いえ。青葉さんってもっとがつがつ質問に来るかと思ったら借りてきた猫みたいにおとなしいので。」

「あー・・・ちょっと雰囲気にのまれたといいますか・・・。」

「ここの鎮守府はどうでしたか?」

逆にこちらに質問を振られるが相手の助け舟だと気づくと心底ありがたいと思った。

「本当にいいところですねここは。所属している皆さん笑顔で生き生きとしてますし、司令官さんは艦娘を、艦娘は司令官さんを互いに思いやっている。ほかの鎮守府もそうですけどここは特に強いですね。うちも参考にしたいくらいです。」

「提督さんはやりたいことをかなえられる範囲の限界までやってくれます。ここのお店だってそうです。ただ・・・ちょっと無茶しすぎているところが玉に傷ですね。」

「皆さんそう言ってますよ・・・。でもここまで素晴らしい環境を築いたのは流石としか言えません。機会があればまた来たいものです。」

「じゃあさっきの顔はあなたの司令官を思ってってところですね。」

「あはは・・・。さすがは居酒屋のおかみさん!大正解です。」

緊張がほぐれたのか半分自棄になりつつあるのか・・・。

おかげで話しやすくなり次々と質問をしていった。

 

 

 

「いやー助かりました!」

「いいえ。どういたしまして。」

柔らかなほほえみを浮かべるとちらりと壁の時計を見た。

「そろそろ来ますね。」

「?誰がですか?」

「やっせーん!」

時刻はフタマルマルマル

そう!あのや川内すき・・・おっと夜戦大好きなあの人だ。

「川内さん!やっと見つけた!」

「あれ?私を探してたの?」

「取材したかったんですけどなかなか見つからなくて困ってたところを、龍驤さんにここにいればと聞いてここで待ってたんです。」

「そっかそっか!ごめんね~。今日はちょっと仕事が忙しくてさ。」

「川内さん苦しいです・・・」

後ろからはおあつらえ向きに吹雪さんが首根っこをつかまれていた。

「おっとっと!ごめんね。とりあえず飲みながらでいい?」

すでにテーブルにはビールと梅酒が用意され、カウンター席から4人席へと物が移動していた。

なるほど。鳳翔さんはこれを気にしていたわけですね。

 

 

 

「「「かんぱーい」」」

私もビールに変更して改めて飲み始めた。

「それで?取材ってどんなこと聞いているの?」

「それじゃあ早速ですね・・・」

 

 

 

「あとは・・・」

先ほどはすぐにできなかったので、今回はいつもの調子の矢継ぎ早に質問をしたため私は一杯目のビールがあと少しなのに対して川内さんは焼酎2杯目、吹雪さんは相変わらず梅酒で3杯目に入っていた。

「最後にこの鎮守府について思っていることと司令官さんに一言でおしまいです!」

「おっ。やっと終わりだね!」

「なんだかあっという間な気もしますけどね。」

「じゃあ私から行かせてもらうね!この鎮守府については書類夜戦さえなければ文句なしなんだけどね~」

「書類夜戦?」

「司令官が毎晩毎晩夜戦の要求してくる時に使う最終兵器です。」

「司令官と一緒に居れるのはうれしいけどさ・・・。いくら何でも3~4時までは私でも辛いものがあるよ?」

「3~4時って・・・というか司令官さんと吹雪さんっていつもそんな時間まで仕事しているんですか?」

「まさか!違いますよ!」

吹雪が苦笑いで手を横に振った。

「ですよねぇ!そんな生活してたらいつ倒れてもおかしくないですよ。」

 

「年間で合計四か月くらいですよ。」

 

「知ってました!もうこの展開お約束ですからねぇ!!頭のねじ吹っ飛んでるんですかあなた方は?!」

わかるといった具合で川内が頷いている。

「一言は一月ぐらい休まない?でお願いね。」

「そんなぁ!そんなに休めないです!」

「実際有給とかどうなっているんでしょうね?」

おそらくとんでもないことになっています。というかここの司令官さん休み返上で働いているから余計にひどいことになってる。まちがいない。

 

「で。私ですね。」

話を戻したのは吹雪さんでした。

「私はここの初期艦ですので他の鎮守府の様子はわかりませんけど、ここに着任したのが司令官で本当によかったと思っています。」

「ふんふん。」

「司令官さんはもっと体を大切にしてほしいなと・・・。」

「ブーメランって知ってる?」

「え?」

川内さんが笑顔でぽんぽんと肩をたたくが吹雪さんは小首をかしげている。

「今月のお前が言うな大賞決定ですね。」

「どっどういうことですか?!」

「そうそう!聞いてよ!この間なんてさ吹雪と司令官がてっぺん回んなかったからってさ!」

「あー!!その話はやめてください!鳳翔さん!あれください!火いらずの!」

非常に興味のある話をお預けされましたが、川内さんが引き下がってしまったのでしぶしぶあきらめました。

「ところであれって何ですか?」

疑問符が浮かんだところに川内さんがそっと声を潜ませて教えてくれた。

「実はうちの提督は日本酒好きなんだよ。ここにストックがあるんだけど銘柄を知っている人は提督含めて2人しかいないんだ。」

「それが吹雪さんというわけですね?」

「そうそう。実は吹雪と提督の飲み方って全く一緒なわけよ。ビールがダメなところまで一緒。」

「なんか意外です。日本酒好きなのにビールが苦手とか不思議なものですね。」

「ちなみにコーヒーも苦手」

・・・完璧な子供舌なのではないだろうか。

「何を楽しげに話しているんですか?」

カウンターから戻ってきた吹雪さんは不思議そうな顔をしていた。

「いえいえ!ところで何を頼んだんですか?」

「青葉さんにちょっとゆかりのあるものです。今回はそれで許してください・・・。」

「お待たせしました。」

出てきたのは火いら寿という福井県の酒造が作っている日本酒だ。

「私の名前の由来ですか。」

京都と福井の県境にある青葉山から私の艦名はとられている。

「ええ。どうぞ。」

お猪口にそれぞれ交代で注いでいき、再度乾杯をする。

口当たりはよく最初はさわやかな味が広がるが後味がしっかりとしている。

「いい日本酒ですね。とてもおいしくて飲みすぎちゃいそうです。今度帰ったら司令官と探しに行きます。」

「ぜひどうぞ。」

思わずすいすいと3杯目まで来てしまったが、あまり飲みすぎると明日帰るのに差し支える。そう思い一言断ってから離席しようと、立ち上がろうと思ったら何かに腕をつかまれた。

見ると川内さんが私の腕をつかんでいた。

「すみません川内さん。明日があるので・・・」

「青葉・・・一つだけ言い忘れてたんだけどさ。」

なんだろう。

頭の中で警鐘ががんがんとなっている。

「明日なんだけど提督と吹雪を無理にでも休ませようってことになっているんだ。」

「そっそうなんですか?いいことじゃないですか。ではこれで・・・」

「もうちょっとだけ聞いて?それで明日無理にでもかつ、簡単に休ませる方法が一つだけあるんだ。」

「まさか・・・。」

「今頃食堂で古鷹と龍驤、時雨が酒盛りをやっている頃合いだよ。」

「吹雪さんを酔いつぶせと?」

うん!

いい笑顔でうなづいた。

「・・・ちなみに吹雪さんのお酒への強さは?」

ちらりと見たところ顔は大分赤くなっている。

これなら0時には潰れてくれるだろうか?

「あの赤さのまま5時くらいまではたぶん続くよ。しかもしっかりチェイサーしていくからね。」

私はニッコリ笑って立ち上がり

「青葉!じっとしてられないな!」

「さあ!私たちと夜戦しよう!」

「?」

 

 

離脱失敗

 

 

 

結局私の鎮守府に帰り着いたのは翌日の20時でした。




取材編はこれにて終了です!
青葉たちにはいつかまた登場していただく予定です。
さてさて次はどうしよう・・・。
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