これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第六夜

秋祭りが始まって6日目の朝

午前様の生活サイクルからまだ若干抜けきらない今日この頃

「司令官ちょっとおきーや」

「んー?いまなんじよ?」

眠い目をこすりながら開けると目の前に書類を突き出された

「7時ちょいすぎや。急ぎで書いてもらいたい書類があるんやけどお願いできない?」

「んー。・・・・サラサラポンん~。」

サインだけの書類のため目を通し異常がないことを確認すると捺印をして書類を返す。そして再び布団へと潜り込む。

「あんがとさん!それじゃあ9時に執務室でな!」

 

 

「珍しい事もあるもんだよなぁ」

「ほんとですね~。」

時刻はマルハチサンマル

朝食を食べにくると吹雪もいたため一緒に食べている。

その時に今朝のことを思い出し話題にしている。

「ところで吹雪ちゃん・・・。昨日は・・・。」

「モウシマセン」

目のハイライトが消えたところを見ると大体察せる。

「・・・・そろそろ行こうか。」

食器をかたずけ執務室へと向かう

執務室の前には先ほど部屋にいた龍驤がたっていた。

「龍驤じゃないか。また急ぎがあったか?」

「おお司令官にブッキー。そうやないんや。今度は連絡や。」

「連絡ですか?」

「そうや。今日はもう執務終わっとるから吹雪は自由、司令官はうちとちょっち来てや。」

「「え?」」

いくら毎日仕事が減っていたとはいえ一日一枚くらいはある。

昨日の日報の受け取りサインこれだけは絶対あるはずだが

「朝最後の一枚やったやん。」

「・・・・・・・あ」

うっすらとだが日報と書いてあった記憶を探し出した。

「実は本土でシステムトラブルがあったらしいで。それで今日来るはずの書類が全部受信できないんや。」

現状書類の輸送には四通りの方法がある。

陸路、海路、空路と電子上でのやり取りだ。

ここは島だから当然陸路は無理、空路も滑走路を建設していないため無理。

ということは海路か電子上だが電子上で送られてくるのは事後報告等の優先度も低ければ重要度も低い書類だ。

以前は電子上で重要書類が送られていたが、傍受されていることが発覚する大事件が発生したおかげで現在は人と人との手渡しのみに限定されたのだ。

「それって明日山のように来るってことじゃねぇか・・・」

「そうですよね・・・」

「大丈夫や。責任はあちらさんやし極力減らしてもらうように言っといたで~。そんじゃブッキーは休んどいてぇな。いくで、司令官」

「はいな。そんじゃ吹雪ちゃんまた明日~」

「はい!司令官!」

 

 

 

「なにこれ」(艦これ!)

目の前には屋台があった。

お好み焼きと書かれている暖簾と調理台には半分が鉄板半分がたこ焼き器が設置してある。

「粉もの屋や」

「誰がやるの?」

「うちらや」

「何で?」

「ほかの鎮守府だって出しとるのにうちらが出さんわけにもいかんやろ?」

「まぁ・・・・そうだな。」

「それに司令官も毎夜屋台巡りはそろそろ飽きてくるころやろと思うたしな。ええやろ?」

確かに5日目でほとんどの食べ物屋の屋台は巡り終えてしまった。

「楽しそうだしいっか。でも定番のお好み焼きとたこ焼きってのが芸がないような気もするなぁ。」

「何を言っとんのや司令官。うちがそんなつまらんことをするわけないやろ?」

そういってクーラーボックスを取り出した。

開けると一面ピンク色の小エビが入っていた。

「おま!これサクラエビじゃん!しかも生!」

「前に司令官から聞いた業者に頼んで仕入れてもらったんや!15kあるから大丈夫やで!」

「これならご当地名乗れるし大丈夫だな!今日は静岡側で出ているのは焼津と清水だからかぶりの心配もないし、問題があるとすれば・・・。」

「値段やな。」

サクラエビは静岡でしか水揚げされていないため一キロ当たり結構するのだ。

(安くても地元で1キロ5,000円くらい)

「大丈夫や!キロ3,000まで抑えたし、お好み焼き一枚250円、エビ焼6個(たこ焼き風)で200で行けるやろ!」

「よっしゃ!じゃあ下ごしらえしますか!」

 

 

「よっと!」ジュー

「うまいやん!お好み焼きは大丈夫そうやな。じゃあエビ焼のほうをやってみてや!」

「ふっふっふ!一人暮らし中は料理を多少やっていたからな!これくらい簡単簡単!」ヒョイヒョイヒョイ

「おお!・・・ってエビ焼のほうひっくり返せてないやん。」

「よ!・・・ほ!・・・いけっての!・・・・・・・いってくださぁい!」

「・・・・司令官にはお好み焼きと途中の下ごしらえの追加頼むわ。エビ焼はうちがやる。」

「・・・・・・ちくしょう・・・。」

 

 

「そいや!」

日が傾きオレンジ色に染まり始めるころ、隣の島に屋台を移した。

場所は神社の前の展望台(榛名と神輿を見たところ)の一角に構えた。

旗を立て、まずは一枚客寄せ用に焼こうとしたとき、龍驤が戻ってきた。

「いや~!遅くなってゴメンな!」

「浴衣は燕か。しかもしっかり腕まくり済みかよ。」

「こういう時にしか着られへんでな!どや?きれいやろ?」

記事は紺のため、どちらかというとおとなしい印象を受ける。

「なんというか落ち着いた色合いだからか女将さんみたいな感じだな。」

「ふふーん。ほめ言葉として受け取っとくで~。さって!客寄せ用のを焼こうや!」

 

 

 

ちょうど一枚焼き終わるころに初めてのお客が来た。

こういう時たいてい知り合いが知り合いが最初にくるものだがその通りであった。

「司令官!あたしこれ食べたい!」

「おお!もちろんだ!」

・・・正直言って何でこの人がここにいるか小一時間ほど問いただしたい。

そんな声が聞こえてきた。

「おや?耳本くんじゃないか。君の屋台かね?」

「耳本さん!お久しぶりです。いつも司令官がお世話になっています。」

中年後半の白髪交じりの頭にちょっとがたいのいいおじさんと、月の髪飾りをつけた茶髪でポニーテールの女の子

はたから見れば、爺孫に見えるが、桐月大将と文月のペアだった。

「・・・大将。仕事は?」

「そんなもの今日はシステムトラブルでないわい。」

「・・・・・・うちの分が結構たまってませんでしたっけ?」

「・・・・・砂安君がやっているさ!」

「私がどうかしましたか?」

もう一人聞き覚えのある声がした。

見れば壮年期でこちらは筋肉質ムキムキの男とセーラー服を着た茶髪にピンクの髪飾りをつけた女の子

「・・・なんで大将がここにいるんですか?」

「あっ!耳本中佐じゃない!いつもお世話になっています!」

もう知らぬ存ぜぬをしていたかったが店先でこうされては手遅れだった。

「それはこっちのセリフだ!」

「私は今日は有給です!大将にも書類が行ったでしょう!」

「あっ!・・・・じゃあ大本営の仕事は?」

「積み重なっているでしょうな。・・・明日も有給延長でいいですか?」

「・・・・」ニコッ

「・・・・」ニコッ

二人はそのまま秘書艦に待っているように言って、神社の外れへと歩いて行った。

 

「で?なにする?」テメェ!フザケンジャネェ!コチトライカヅチチャントヤスミアワセルタメニチャントチョウセイシテタンダゾ

「じゃあ~お好み焼き2枚とエビ焼き1パックくださ~い。」ショウガナイジャン!アソビタカッタンダモン!フミヅキチャンニユカタキセテアゲタカッタンダモン!

「あいよ~。雷は?」オレダッテイカヅチニユカタキセテノンビリアルクヨテイガパァジャボケェ!イカヅチチャンノユカタデノネリアルキシタイカラアシタモヨコセヤ!

「あたしはエビ焼2パックでお願いするわ!」ハァ!?フミヅキタンノユカタノホウガキレイダシ!シゴトハオマエガヤレヤ!コンドベツノヒニバイノユウキュウキカンヤルカラ!

「かしこまり!じゃあできるまでうるさいから二人止めてくれない?」イマジャナイトダメニキマッテンオワカッテンダロ!オロズゾコラァ!

「「わかってわぁ!/わかったわ!」」ジョウトウダ!キサマゴトキニコノワタシヲヤレルカァ!

 

 

 

これでもくらえ~!/ってー!

「「ぬわー!!」」

 

 

 

「大将が700円、中将が400円です」

「はい。」

「すまなかったな。」

傷だらけの二人が料金を支払うと同じ方向へと歩いて行った。

おそらく今日一日はここにいるのだろう。

「・・・・なんや嵐のように過ぎ去ったな。」

「・・・・だな。」

その後徐々に人が来始めた。

文月や雷が親しい人たちに情報を流してくれたらしく、ひっきりなしにお客が訪れたのだ。

 

 

 

 

 

「おつかれちゃ~ん!」

「いや~!司令官こそお疲れさんや!うちは腕がしびれてもう動かせへん!」

「俺は手首が・・・。片づけるのだるいなぁ。」

祭りは続いているがすでに具材はないため出店の後ろの椅子に腰を掛ける。

龍驤は席を外したらしくいなかったので煙草をポッケからだし火をつける。

こうやって派手に体を動かしたのはいつ以来だろうか。

思考を巡らせながら紫煙を吐き出す。

「なーにすっとるんや?」

「うお!!」

首筋にひんやりとした感触と耳元でボソッとささやかれ、飛び上がった。

「・・・びっくりしたぁ」

「ほい!ラムネ買うてきたで。匂いからしてアークやな?」

「吸うか?」

「ラムネと交換やね。」

龍驤にライターを渡し、俺はラムネを開けた。

「あー。しみるわー・・・。」

「今日は楽しかった?」

「ああ。高校の時以来かもしれん。文化祭で焼きそばをひたすら焼きまくってたの思い出した。」

「それでお好み焼きはうまかったんやな。エビ焼は・・・まぁうん。」

「たこ焼き関係はやったことなかったんだ・・・。でも楽しかったな~!たまにはいいかもしれんね。」

煙草の火を消し、ラムネで口直しをする。

そして、楽しかったことの後始末を始めた。

「これが一番俺は嫌いなんだけどな。」

「そんな司令官に朗報や。」

「?」

「今朝のサクラエビ実は一キロだけ残してあるんよ。」

「もしかして?」

「鳳翔さんとこにおいてあるんや!片づけたら」

口の前でクイッと仕草をする。

俄然やる気がアップし高速で片づけに入る。

 

 

 

 

 

なお帰ったと思われた大将と中将が鳳翔さんのところで飲んでべろべろになっていたのを二人は知る由もなかった。




この後酔っ払いに絡まれて飲むどころじゃなくなった二人でした。

次は・・・誰が来るかお楽しみに!(実質2択ですねw)
ある種祭りの時間にぴったりな方が次の方です。

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