時刻はマルナナマルマル
机の上には大量の書類の山
ここ1、2週間お目にかかっていない惨状に執務室はなっていた。
「やいやいやい・・・こいつはひどいな。」
「さぁ司令官やりましょう!」
心なしか二人とも生き生きとしている。
提督は困ったような声色だが顔は輝いている。
吹雪に至っては俗にいうシイタケ目だ。
普段だったらハイライトが消えているはずが今この時今まで見たことのないような輝きを見せている。
「システムトラブルにしちゃ書類多すぎないか?」アコレフブキチャンノサインネ
「何でも大将が逃げたせいで昨日の分と今日の分こっちに来たらしいですよ」リョウカイシマシタ。アトコノショルイシリョウテンプサレテナインデスケドソチラニアリマスカ?
「あー。それでか。しかも大将まだうちでつぶれてるしな。」ホイヨ!コレトコレチェックオワッタカラウエニマイガリュウジョウシタガフルタカデオネガイ
「昨日鳳翔さんのところで宴会したって言ってましたね。」リョウカイデス。コノタバハゼンブサイントナツインデOKデス。
「なんでも聞いてみたら俺たちの書類の負担1/4が大将と中将に行ってたみたいでな。普段の仕事量でもそこそこあるのにさらに押し付けられて嫌気がさしたって言ってた。」アンガトサン。コレチェックシタラアサイチデクルセンダイニマワシテ。
「わからないでもないですね・・・。」リョウカイデス・・・。アッシレイカンココナツインガカスレテマス
「しかもその件で二人に土下座しまくられてさ。額から血がにじむまでやられたよ。」オットイケナイ!ヒサシブリデチョットニブッタカナ?アトコレカコニダイリデタノンドイテ。
「お疲れさまでした・・・。」リョウカイデス!コレデキンキュウノハシュウリョウデスネ
「今頃客室で大騒ぎしてるかもな。今日の出勤すっぽかしてんだから。」チョットスピードオトスカ
この会話をしながら緊急性の高い書類を分別し決済までに実に1時間
書類束にして厚さ50cmの書類束が決裁済みの箱へと収まった。
「よーし!パパどんどんやっちゃうぞ!」
「ママもやっちゃうよ!」
笑いながら久しぶりに高速で手を動かしながら何気ない会話をしていく
「提督ー!ってもう執務始めちゃってるの?規定時間を守らなきゃ・・・。」
マルキュウマルマル
川内が書類束をもって入ってきた
「そんなこと流暢に言ってる間のない書類がわんさかあったからしょうがないでしょ?決済箱にあるやつ全部終わってるで持ってってね。」
「うはぁ・・・。久しぶりに見たね。遅くても午後から監視要員兼手伝いで来るからね~。」
決済済みの書類を両手で抱え退出していった。
「・・・いったな?」
「・・・いきましたね?」
書類の量はガンガン減らし、現在特急で上げなければいけないものはすでに終わらせた(先ほど仕上げ切ったものとは別のもの)
「さて!吹雪ちゃん!」
「はい!司令官!」
「このままのペースだと昼前には終わってしまう。そうだね。」
「はい。」
「だが俺たちは今絶好調すぎてスピードを落とすことができない。ならばどうすればいい?」
「新しく仕事を作ることだと思います!」
「その通りだ!そこでだ!直近で新しく2つの案件があるんだ。」
一つは港の新設
現在の港の容量は繁忙期にギリギリ対応ができる状況だ。
ギリギリはよくないということで新しくもう一つ作ってしまえば、現状を上回っても対応ができるうえ、逼迫しなくなることで余裕をもって裁くことができる。
(事務処理の負担は増えていく一方だが)
だがこの書類は実は残念ながら一昨日に時雨によってボッシュートされてしまった。
もう一つは滑走路の新設
以前も言ったように書類の伝達は船団を通してこちらに配送される。
例外として緊急の書類は軍用機を通して迅速に配達される。
しかしここでも問題が一つ
ここには滑走路やヘリポートがない
そのため八丈島に一回移送を行いそこから高速艦で配達が行われる。
これではあまりにも遅い
そこでせっかくだし自前のを持ってしまえばいいという案があった。
さらには民間機に何かあった時の緊急着陸場所にもなるし、軍用機ならここを経由していくこともできる、また現状正規空母がいないうちの艦隊には緊急時の防衛作戦の幅も広がる。
「というわけで滑走路の建設資料作成を行おうと思うのだがどうかな?」
「賛成です!やりましょう!さあ今すぐ!」
喜々としてやっているが皆さん間違えてはいけない
これは正真正銘遊びではない業務なのだ。
「提督?これ最後の追加だけど・・・・何してるの?」
早速取り掛かろうとし始めた時、書類束を持ってきた哀れなる犠牲者が一人。
「・・・」チラッ
「・・・」チラッ
目くばせをして吹雪に指示をする
「いや何でもないよ?」
「・・・すごい怪しいんだけど。その書類は何?」
特に止めることもせず書類を見せに行かせる。
「これって新しい仕事だよね?これはまたあし・・・え?」
川内は違和感に気付いた。
提督も吹雪もそうだよといって何事もなかったかのように普通の席について仕事を始めたのである。
「全くもう!古鷹に連絡・・・・あれ?」
普段持ち歩いているはずのスマホがないのである。
どこかに置き忘れただろうかと記憶を探るが、ずっと持ち歩いていた記憶しかない。
首をひねったとき視界の端に見覚えのある端末・・・スマホがあった。
あった場所は吹雪の机。
吹雪は川内を見るとにっこり笑った。
「・・・ちょっと出てくるね。」
いやな汗が噴き出したが、まさかと一蹴し提督に背を向け扉を開けようとするが当然あかない
何かの異常かと思いこの前時雨がつけた扉の画面を開くと、提督権限によるロック中と表示された。
「「川内/川内さん」」
川内は身に覚えがある
この感覚はあの夜戦、そう3時4時まで残業した時と同じ空気
さび付いたドアノブを回すようにして後ろを向くと提督と吹雪がとてもいい笑顔で
「「(書類)夜戦しようぜ(ましょう)」」
「・・・」
夜戦(昼間というツッコミは受け付けません)とは何か
自分のアイデンティティーである。
その自分が夜戦を相手から持ち掛けられて断るということができるだろうか
いや、できない
「やったぁー!!待ちに待った夜戦だー!!」ガクガクガク
かなしいかな
かろうじて声は震えずに出せたが下半身はマナーモードのごとく震えている。
体は覚えているのだ。
「そうかそうか武者震いするほどうれしいか!」
「それじゃあ川内さん早速ですけどこの資料を・・・・」
ヒトナナマルマル
最後の書類を決裁箱に入れた。
業務終了である。
「久しぶりに働いた感じするな!」
「はい!ちょっと肩が凝りましたけど楽しかったですね!」
ちょっとした柔軟をしながらキラキラと各自の机で輝いている二人だが
少し離れた机では
「・・・・・・・・・・・・」
真っ白かつ頭には赤いムンクの叫びのマークが見える川内が机に突っ伏したまま動かなくなっていた。
「はいるで~。うわぁ・・・」
「おう!今日の分終わったから龍驤持ってってくれる?川内がちょっと疲れちゃったみたいでさ。」
「うわぁ・・・」
もはやちょっとどころじゃないがと突っ込みたいのを抑えながら、龍驤は川内の近くにより
「成仏してや・・・」
「まだ・・・・・・生きてる・・・・・」
反論はしたものの動けず龍驤に肩を借りて退出していった。
「提督!明日は私の夜戦に付き合ってもらうからね!」
多少元気を取り戻した川内はそう言い残した。
今年最後の投稿となりました。
本当は今年中には秋祭り編を終わらせて次の話に行きたかったのですが間に合いませんでした・・・。
来年もどうぞよろしくお願いします!!
次は引き続き川内さんのお話です。