これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の新弟子?

「え?リンガ泊地からの再度の融資会談?」

吹雪からの報告を聞いた提督は思わずオウム返しをしてしまった。

「はい。なんでも納得できないとのことで・・・。」

「ええ?あそこの提督が直々に来て納得してったよね?」

融資報告書の控え台帳を開き、再度確認するがどう見ても本人のサインがされていた。

「燃料5千に鋼材7千、弾薬6千にボーキ3千だよ?これで少ないっていうのか?」

あそこの提督とは面識はなかったが、熱烈なアタックで仕方なく融資したのだ。

ふつうは演習や練習での資材融資は認めていない。

一番悪用されるからだ。

演習や練習なんて書類上での処理をして自身の懐へナイナイ

これが横行するからである

「なんでも代理の艦娘が来るようです。」

「えー・・・?どうなってるんだ?」

 

 

「リンガ泊地の長門だ。よろしく頼む。」

「駿河諸島鎮守府司令官耳本です。」

連れはなく、割かし友好的に接してくる。

握手を交わし席に着くと相手から切り出した。

「早速なのだが前回の融資を増やしていただきたい。」

「大本営の許可か特別な理由はありますか?」

「特別な理由がある。」

そういって一枚の書類を差し出した。

内容は依然記載された内容と全く同じものだった。

「・・・すみませんがこれでは融資はできません。」

「なぜだ?艦隊強化のための資材なら出して当たり前だろう?」

「できないものはできません。大変申し訳ないのですが別の理由か大本営の許可を・・・」

「またそれか!艦隊強化のための資材が足りないのだ!貴様はわが艦隊の強化がそんなに疑わしいのか!」

先ほどまでの普通の空気が一転、険悪なものへと変わる。

そして冒頭へと続く

 

 

「どうやら噂通りのところらしいな!」

「噂?」

「現在供給されている資源の大半はここで作られている。貴様らはそれを独占している。だから外国へ法外な値段で横流しして私腹を肥やしているというな!」

「私どもはそんなことはしていません。」

「じゃあなぜ出せない!」

興奮して机を思い切りたたきつけて叫ぶ

ちらりと吹雪を見たが動く気配はない

これが古鷹だったと思うとぞっとする

「答えろ!」

「落ち着いてください長門さん。」

吹雪が長門を制止する

「司令官。ちょっと手荒いですけどあの方法にしましょう。」

ため息をつき、吹雪の提案にうなづく

「長門さん。ちょっとしたゲームをしましょう。」

「ゲーム?」

「はい。長門さんと私で単艦の演習をしましょう。あとはわかりますね?」

長門は瞬きを何度かしたのち、ふき出した。

「貴様とか?笑わせてくれる!いいだろう。だが本当に一人でいいのか?」

「ええ。大丈夫です。」

 

 

 

「準備OKやでー。」

鎮守府南東の少し離れた沖合の演習場

黒潮の影響を受けないこの場所は台風や嵐でも来ない限りは凪いでいる

「すまんな龍驤。」

「ええってええって。それにしても相手さんかわいそうに。」

龍驤が南無三を手を合わせている

俺たちは護衛艦に乗っての観戦となる

長門が艦載機を放ったのだろう

吹雪がいる方へ向かって飛んでいくのがかすかに見える

 

 

吹雪の真横で水しぶきが2つ上がる

さすがは長門型。

かすり傷ではあるがわずかながらの傷の判定をつける

「そろそろですね。あたってください!」バシュ

長門のいる方角より少し東寄りに演習用魚雷を撃つ

砲弾や魚雷にはペイントが入っており、当たった瞬間は爆音と光だけがする。

 

またペイントは、同じところにあたったり、弾着時のスピードで色が変わる。

これで小破、中破、大破の区別をつける。

 

艦載機が自身の上を通過したときスピードをほんの少し上げる

おそらくこの瞬間に主砲を発射させるのだろう

見立て通り今度は、後ろで水しぶきが上がる

「見込みはありますが・・・・まだまだです。」

視認できるようになったとき、長門が急に進路を右に切った

実はスタートの合図とともに長門へ牽制用の魚雷を撃っておいたのだ

警戒をしっかりしていたのだろう

西に切ると黒潮の流れで計算が少し変わるから選択しない

思った通りのドンピシャで長門は右側へとかじを切った

その瞬間水しぶきが4つ

今日は調子がいいみたいだ。

全魚雷着弾

長門の右半身はオレンジ一色で中破判定だ。

右側の二門は使い物にはならないだろう

主砲を構え照準を合わせる

するとこちらをぎっと睨むと、まだ使える左側の砲門を向ける。

「第二主砲!一斉射!てぇー!」

そういった瞬間、主砲のほうが爆ぜ、真っ赤に染まった

大破判定

全主砲使用不可

さすがに歩みが止まり、長門に焦りの顔が見える。

「まだやりますか?」

「・・・・・」

呼びかけると黙って両手をあげて、降参の意を示す

 

 

 

 

「なぜだ・・・。」

港へとつき体に着いたペイント弾を落とすために二人は宿泊棟の風呂へといた。

「私は強くなりたいだけなのに・・・。」

「何を焦ってらっしゃるんですか?」

吹雪が問う

「私は・・・日本のために力になりたかった・・・。だが前世ではそれは叶わなかった。」

「・・・・・」

「ほかの戦艦はみな、作戦に連れていかれ本懐を遂げたもの、遂げられずとも一翼を担えたもの、基本はこの二手に分かれる。しかし私や陸奥はどうだ?」

「・・・・・・・・・・」

「連合艦隊旗艦は確かに名誉あることだった。しかし、戦では何もすることができなかった。いつしか陸奥は去り、私は一人残された・・・・。」

「・・・・・先日の作戦ですか?」

シャングリラを追っていった結果、B環礁いわゆるビキニ環礁へとたどり着いた。

「私はまだ着任してそんなたってないから練度が足りなくてな。・・・くやしかった。うちの提督は何度も頭を下げていたよ。お前を参加させてやりたいのはやまやまだがとな。」

自嘲気味の笑いをして上を向いた。

目には光るものがあったが吹雪は見ないふりをし手続けた。

「今回の融資の件ですが本来、演習や練習での資源融資は禁止されているんです。」

「・・・・なに?」

長門は目を見開き、表情が硬くなった。

「演習や練習は書類上一番偽造が行いやすいのです。練習なんかは特にです。」

「だが貴様らは融資を・・・」

「長門さんの司令官さんの熱意ですよ。」

 

『何とかお願いできませんか?』

『そうは言われても・・・。』

『どうしても長門を強くしてやりたいんです!特に今回あいつの未練を断ち切ってやる最大のチャンスだったんですがあいにく・・・練度が足りず、またしても彼女だけ見送ることになりました・・・。』

『今回はB環礁でしたね・・・。』

『今回は叶わずとも!いつか彼女が後悔をすることがないように!私は最大限のことをしてやりたいのです!だからどうか!』

『・・・・・・はい』サラサラサラポン

『これは!』

『ちゃんと使い切ってくださいね?今回だけですよ?』

『ありがとうございます!!』

 

 

 

 

「そんな・・・・・・。」

「大方、少なすぎる!私が交渉してくる!と言って出てきたのでしょう?」

「私は・・・。」

「ちゃんと謝りましょう?」

「すまない・・・。貴方たちにもひどい言葉を浴びせてすまない・・・。」

吹雪はいいえと一言いい風呂場を後にした。

長門の性格上、一人のほうがいいだろう。

 

 

 

 

「大変申し訳ない!」

「大丈夫だよ。気にしないで。」

執務室で書類をこなす提督に長門は深々と頭を下げる

「わかってほしいのは資源は有限なんだ。資源の割り振りを極力平等にやっているつもりだ。」

「・・・」

「だが。やる気がある子は別だ。多方面に支障が出ない範囲内であれば要望に応えてあげるつもりだ。」

「耳本提督・・・。」

「帰ったらちゃんと謝るんだよ?」

「はい!」

きちっとした敬礼をすると提督はうなづいた

「ところで一つ質問が」

「?何かあった?」

「吹雪殿の砲撃でなぜ私の艤装が大破したのだ?駆逐艦の兵装では装甲を大破まで持ち込むことは基本的にできないはずだが・・・。風呂場でじっくり見たのだが特にこれと言って変わった点は見受けられないのだが。」

吹雪をなめるような視線で見ている。居心地がものすごく悪そうなので助け舟を出した。

「ちょっと細工がしてあるんだ。吹雪ちゃん。兵装を長門に貸してやって。」

はいと言って長門に普段使っている12.7㎝連装砲を渡す

「・・・・・ひょっとして一斉射しかできないのか?」

あれやこれや見立て不可解そうに言った。

「正解だよ。正確にはコンマ五秒差で斉射されるようになっている。」

「ほかにも速射性をあげたりしているんですけどそっちの方は普通の改修でもできるんです。」

「・・・すまない。わかってもなぜ大破したかまではちょっと・・・。」

「吹雪ちゃんは最初交互の斉射ができなかったんだ。」

 

 

 

全部の兵装に言えることだが、連装砲は一斉射をすることは少ない。

片門ずつ撃ち、砲身の冷却や内部のライフル構造の摩耗を防ぐためにある。

一斉射をする癖は艤装と艦娘自身の訓練で治るのだが、吹雪はなかなか治らなかった。

そこで、長所に変えるある方法を思いついた。

 

「計算は大変になるけど初発と2発を同じ弾道に乗せることにしたんだ。」

 

つまり、1発目が当たった直後、2発目が全く同じところに命中する

金属は熱に弱い

そのため、1発目が命中して間もなく2発目が命中した場合、1発目の着弾した時の熱とその歪みでほぼ確実に破れる。

 

血のにじむような努力の積み重ねによる賜物だった。

 

「あの時は司令官と空き時間にやってましたね~。」

「そうそう。あと数ミリずれた時は発狂したな~。」

「なるほどそれで・・・。」

「結果的に戦力は増したけど連装砲の寿命は短くて・・・。」

懐かしい思い出や失敗を思い出すと笑みがこぼれてくる。

長門は一人小刻みに揺れていた

 

「吹雪殿!いや!師匠!どうかその技を教えてください!」

「ええ!?頭をあげてください!長門さん!」

長門はその場に跪き、額を土に擦りつけた

「あらー・・・。話したの失敗だったかなこれ?」

「司令官助けてください!」

「吹雪ちゃんごめん頑張って~。」

ちゃっかり仕事関連の道具と書類をもって隠し扉で自身の部屋へと退避すると鍵を閉めた。

「しれいかーん!!!!」

「師匠!おまちください!!どうかご教授を!!!」




なおうちの鎮守府では長門に敵をとらせてやれませんでした・・・。
だって着任してくれないんですもん・・・。
E-5で10%で出てくるって言ったのに・・・。
書けば出るで今日のデイリーで出てこないかなw

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