本土は紅葉が見ごろの今日この頃、大規模作戦も終了しほっと一息つき、どこの鎮守府も平常運転に戻るころ
「やった・・・!やったぞ吹雪!」
「本当に夢じゃないんですよね!」
二人は目を輝かせ抱き合った
「「てっぺん超えずに仕事が終わった!!」」
・・・なんもいえねぇ
思わず某スイマーのまねをするピンク髪の艦娘の言葉を川内はつぶやいた
「なにする?なにする?」
「なにしましょうか!」
「じゃあ祝杯を挙げるぞ!」
「私食堂からとってきます!」
考えるの下手なのか・・・
しかしこんな生き生きとしている(なお目は当然死んでいる)二人を見たのは・・・・・・・・・
あれ?
大規模作戦の期間が3週間くらいで前後2週は準備やら始末で忙しかったから・・・
・・・・・考えるのをやめよう
「司令官!これしかなかったんですけどいいですか?!」
「なんでもいいぞ!川内も飲め!なに泣いているんだ!よーしカンパーイ!」
「ああちょっとね・・・ってこれウイスキーじゃん!こんなの飲んだら・・・」
「「スヤァ」」
きれいに飲み干して立ったまま寝ていた
それもそうだ睡眠時間が2~3時間の日々が一定以上続いたうえ、エナジードリンクがぶ飲み、すきっ腹ならいくら酒が強い人でもすぐにべろべろだろう。
「・・・龍驤なら起きてるよね・・・・・」
フタサンサンマル
二人は幸せそうに立ったまま夢の世界に旅立った
「・・・書類は!?」
飛び起き執務室に急ぐと吹雪もあわててやってきた
「司令官!書類はどうしました?!」
「わからん!昨日の記憶があいまいで・・・」
執務室に入ると一人龍驤が書類を運び出していた
「龍驤!書類の進捗は!?」
「なんや起きたんか。安心しぃや。昨日全部君たちが終わらせとるから・・・まずは二人とも着替えてこんか。」
見れば吹雪はどう見ても寝巻のかわいらしいラフな格好で自分はスウェットだった。時計は7時を指しており始業までには時間がだいぶあった
「そうかーなんというかあの時はもうすぐ終わるっていることで頭がいっぱいいっぱいで。」
「そうかそうか・・・さすがに直近のこと考えれば川内の気持ちもわかるな。」
「すみません龍驤さん・・・・夕食あたりから記憶がなくて。」
食堂で遅めに朝食をとりながら昨日の様子を聞いていた。
食堂担当の鳳翔さんには、まるで幽霊を見たがごとく驚かれ少し傷ついた。
「まぁ夕食を取りに来たあたりで吹雪はまだいけるってうわごといっとったしなぁ・・・」
「ひぇ・・・・・・」
「心配で執務室に顔出したら提督はうめき声をあげながら半笑いで仕事しとるし」
「うわぁ・・・・・」
二人でばつが悪そうな顔をするしかなかった。
「今日は資源調達に来る艦隊は2艦隊、融資の予定はなし、出立が4艦隊くらいや。びっくりするほどの閑古鳥やな」
「はぁ・・・毎日これぐらいならなぁ・・・・・・」
「ほんとですね・・・・・」
「・・・・・後ろになんか青い線が見えるくらい落ち込むのやめーや」
「まぁそんなわけで提督に提案なんやけど出立の見送りしたら宿泊棟のほうを視察しといてくれんか?」
宿泊棟
補給や遠征の艦隊が一時的に宿泊する施設であり、中はぶっちゃけリゾートホテルである。
駿河諸島の位置が大体年間通して温暖な気候なため遠征という名のバカンスに来る艦隊も少なくない。
さらにややこしいことにこの宿泊棟、実は半民営である。持ち主?俺です・・・。
はっきり言うとこの諸島全部俺の私有地(現在は国に借用という形態)です。
大本営から赴任するとき危険手当の要望をすると。
「じゃあその諸島をあげるよ♡」
なんてふざけた真似をしたせいで俺のものになりました。
安く済ませようという魂胆に腹が立ったから、念書を書かせまくって強制執行権の放棄や非課税措置やらむちゃくちゃな条件を付けまくったのにあっさりと飲んでくれた。
尤も資源があることが発覚した時には真っ青な顔で担当者が来たけどね。ざまぁ見ろってんだ。
おかげでプラントや宿泊棟の建設費は折半で運営は俺が行うことになった。
折半の資金はどうしたかって?資源の一定量の供給で決着がついた。一定量を超えると大本営から決まったレートで支払われる。(だがこれのせいで仕事が増えているという皮肉)
宿泊棟は遠征艦隊や補給艦隊以外にも、視察団(という名のバカンス)にも使われる。
又、自己負担すれば滞在日数を伸ばすことも可能だ。
おいでませ駿河諸島鎮守府(お仕事はできるだけ持ってこないでね♡)
「最後に視察したのいつだっけ?」
吹雪に聞くと手帳をすでにめくっていてだんだんと険しい顔になっていく。
「3か月くらい前ですね。」
「あっちゃー・・・・要望書たまってるな。」
「まぁゆっくり2日かければできるやろ。」
「ヒトゴー上がりがある程度約束されるって素晴らしぃー」
「ほんとですねぇ。」
(うちらは実質半日なんて口が裂けても言えへんな)
鎮守府がある島の隣の島に宿泊棟があり、移動には地下鉄か遊覧船になる。
遊覧船でのんびり行くのもいいが、今回は地下鉄でいくことにした。
「ほいで来たわけだが・・・」
「久しぶりですけどやっぱりなれないですね・・・」
ホテルに入ると、広いホールは大理石の床に高い天井、深紅のカーペットが敷かれ、待合のソファーはくつろげるよう落ち着いた色合いだが決して安っぽく感じさせないものだった。
一流ホテル並みの内装に毎回気が引ける。
設計者?
ヨウセイサンデス…
めっちゃノリノリで作ってたがどこの鎮守府でもそんなんかなぁ?
「すみません支配人はいますか?」
受付に聞くと、怪訝そうな顔をされた
「いらっしゃいますがどちら様でしょうか?」
「此処の鎮守府のものです。」
「!失礼いたしました!すぐに呼んでまいります。」
覚えられてないって・・・なんだかなぁ
「来ないからですよ・・・」
「でもここに頻繁に視察に来ても仕事サボってそうじゃない?」
そんな会話をしているうちに受付が戻ってきて、応接室に案内される。
開ければそこには、黒髪に巫女に近い服を着た艦娘が座っていた。
「榛名君悪かったね。突然呼び出しちゃって。」
「いえいえ。そろそろ視察に来る頃と思ってましたので準備は万全です。ところで・・・」
おしとやかに封筒を出すと微妙な表情をした。
「お体のほうは大丈夫でしょうか?」
「あー前にあったのって・・・」
「ひと月ほど前の月締めの書類を出しに行ったときに・・・その・・・・・吹雪さんと一緒に・・・・・」
「うん大体わかった。ぶつぶつつぶやくかうめき声ってわかった」
「すみません・・・」
情けなさに苦笑いしながら二人で軽い謝罪をして、要望書を見ると数枚しかなかった。
「こんだけ?」
あまりの肩透かしに目が点になった
「実はある程度選定をさせていただきまして見せられそうな要望書がそれくらいしか・・・」
「ちょっと見せられそうにないほうを見せて。」
見ればコ○ドームよこせだデ○ヘルはないのかとかの完全な下案件だった。
「特定できたら憲兵送ってやりてぇ」
「本当ですよ。一体ここをどこと勘違いしているのやら・・・。」
榛名は疲れの表情を見せた。
「マッサージのサービスがほしい、酒の種類をもう少し増やしてほしい、娯楽関連がほしい・・・いろいろ出てくるもんだね。でもこれくらいなら大丈夫かな。」
「こういう要望でしたら助かるんですけどね・・・」
「司令官これが最後です。」
「サンキュー吹雪ちゃん・・・・・これは!」
最後の要望書は自分が考えていたことにピッタリ沿っていたため即決した。
「別棟をつくろう!」
「「はい?!」」