これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の酒宴

「お!司令官やん。」ガラガラ

久しぶりに鳳翔さんのところで飲んでいると、入ってきたのは龍驤だった。

「おお今回も龍驤か。」

ちょうどタバコを吸おうと咥えかけたところだったのでちょっとこもった声になった。

「ビール頼もう思うたけど司令官におすすめもらおうかな?」

猫なで声を出され苦笑した。

「全く・・・。鳳翔さん。今日は熱燗の奴で。」

「はい。承知しました。」

鳳翔さんが微笑んで奥に引っ込むのを見届けてタバコを灰皿から拾って吸う。

「今日の銘柄は何なん?」

「ん~・・・。一番お前たちがよく知っているのかも。」

「ほぉ・・・?ってそうやなくてこっちやこっち。」

龍驤はタバコを吸う仕草をする

「ああそっち?今日のはアークロイヤル。」

「皮肉やな・・・。火ぃ貰うで。」

ケースからタバコを取り出し咥えると、吸っているタバコの先に自身のタバコを当てて吸った。

「・・・ありがとさん。」

「・・・ライター貸したのに。」

若干呆然としつつライターを出した。

「わかっとらんねぇ・・・。まぁいいか。」

龍驤は少し大げさにかぶりを振ってタバコを灰皿に置いた。

「というかお前の銘柄さ・・・。」

「アメスピやけど?」

「人の事言えないじゃんか。」

ちょっとツボに入ってケラケラ笑うとせやなと龍驤も笑った。

 

 

 

 

「今日は誰かと飲む予定じゃなかったんか?」

「うんにゃ。今日は任務入れちゃったから来ないよ。吹雪もリンガに招待されてるから来ないし・・・加古は寝てた。」

「ほうほう・・・。うちの以外の酒飲みは全滅っちゅうわけか。」

そういう事と返事をしてタバコを深く吸う

「なんやえらい疲れてるな?」

「ああ・・・・。夏木がな?」

「もうわかった。花見と見た。」

苦笑いをして水を飲んだ

「正解・・・。もうめっちゃ張り切ってんだけど・・・。」

「でも今回もあっちが主導やろ?うちらとしちゃ関係ないんとちゃう?」

「それがなぁ・・・そうでもないんだ。」

 

前回の秋祭りの終了後、簡単な決算を出した。

土地の使用料や出店の出店料、そこから神主さんや巫女さんを呼んだ経費やこっちも地の準備の経費の計算を行った。

赤字だったのかというと全く持って違う。

それどころか大黒字だった。

 

「ああ。それで臨時ボーナスが出たんやな?」

「そう。せっかくだから予算に組み込んじゃうのは悪いかと思ってね。」

「でもそれならなおさら渋る理由がわからへんな。」

「問題は鎮守府としてみればってことよ。」

「?どういうことや?」

龍驤は訳が分からないといった顔で提督を見る

「うちは民間の側面もあるのはわかるよな?」

「せやな。・・・あ。」

「わかったか?」

 

 

 

 

軍としての機能は辺りの哨戒や補給量の決定などである。

そして民間としての機能はそれ以外の面ということになる。

端的に言うとホテルと旅館がパンクしたのだ。

人員の臨時増員をと思ったが、雇っているのは全員退役した軍の関係者か艦娘のみだ。

人員の確保はできるものの、その期間だけ人員がほしいので人が集まらない。

かといってそのまま雇ったままだと人員過剰になってしまう。

じゃあ大本営から派遣してもらって臨時で働いてもらうといった手があるが、そこは軍とてお役所。

民間に対してそういった支援はできないという制約がある。

なんとも難しい問題だ。

 

 

 

 

「ほんで頭を抱えてるっちゅうわけか。」

「そーいうこと。」

次のタバコに火をつけ吸い始める。

「2日、3日の連荘なら我慢してって言えるけどさすがに2週間はなぁ・・・。」

「あらあら。大丈夫ですか?」

鳳翔さんが大きな徳利に2つお猪口を持って戻ってきた。

今日のおつまみはおでん

がんもが実においしい

「ま、とりあえず乾杯すっか。」

「せやな。かんぱーい。」

龍驤と乾杯して、酒に口をつける。

香りは吟醸の繊細な香りそのものだが、口に含むと芳醇な味わいがする。

「これどっかで飲んだことあるなぁ?」

うまいなぁといった後龍驤がふとなんだろうと考え始めた。

「蔵香りって商標だけどわかるかな?」

ちょっと意地悪くヒントを出してみる。

「え~・・・。駄目やわからへん!降参!」

「正解は千福だよ。」

「千福!?」

龍驤が目を見開いて驚いた。

千福はかつて海軍御用達の日本酒の一つである

もう一つは賀茂鶴といい、二つとも呉の酒造だ。

「柏崎に頼んで送ってもらったんだ。懐かしいんじゃないかと思ってな。」

「せやなぁ・・・。船だったころ下士官の皆がのんどったわ。」

昔を思い出してしみじみとうなづいている。

ちなみに千福が下士官用、賀茂鶴が士官用だったらしい。

「酒保の方で買うてきたり、銀蝿してくるやつおったなぁ・・・」

そういったとき、ふと何かを思いついたのか酒保と再度ぽつりとつぶやいた。

「なぁ司令官。うちのところの土産物の店って何件あったっけ?」

「え?・・・2件かな?」

それぞれ食品系、雑貨系に分かれている。

2件しかないとは言ったが2つとも店舗はでかく、まるで複数件あるように見える。

「そこの人員ってそこそこおるよな?」

「まさかと思うが店を閉めさせて回せって?」

「駄目かいな?」

「いや・・・確かに店の売り上げなんかは度外視でやってるけどいくらなんでもそれは駄目だろ。」

ため息をついて再度酒をあおる。

「せやからこうするんや。」

 

 

龍驤曰く

まず店を花見期間中閉店する。

代わりに、店先に屋台を出店させる。

屋台の売り物を卸すのは店側が行うことでその期間の売り上げ減少を防ぐ

そして、屋台側のメリットとしてその場所の出店料を極力抑える。

 

 

「これで誰も損しないやろ?」

「・・・屋台を使う手があったか・・・。」

何はともあれこれで人員不足は解決した。

「どや!褒めて褒めて~!」

「えらいえらい。お礼に何でもしてやるよ。」

安堵した顔で、微笑み頭をぐりぐり撫でまわしてやる

「・・・なんでも?」

龍驤はお猪口を置くとずいっと顔を近くに寄せた。

「おっおお・・・。」

「・・・・ほな。」

そう一言つぶやくと

「今日はとことん付き合ってもらうで!司令官の独り占めや。」

「へ?」

「あらあら。」

鳳翔は意味深に笑うと料理を作りに奥に行ってしまった。




呉の方だと海軍に縁が深いので結構コラボしたものがあるらしいです。
普通に売っているものだと江田島の方に古鷹といった銘柄がマジであってラベルが艦これの古鷹のだったりしますw

ツイッターの方のアドレスをいまさらですけどここと自己紹介に後で乗っけときます。
よかったら見てくださいね(ろくなこと言ってませんけど)
http://twitter.com/@baricatsuo_cat

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