これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府と姉妹

「はぁ・・・これで全部だな?」

「ぶー・・・。」

「ぶーじゃない!全く・・・。」

 

 

鎮守府執務室

 

 

提督の部屋に望月が仕掛けた残り5台の隠しカメラが並べられていた。

「いったいどこからこんなカメラを買う金なんて調達してくるのやら・・・。」

「いやー。ここ給料良いじゃん?」

「・・・減給か。」

「勘弁してください。」

間延びした口調がなくなり、びしっときれいな土下座をかます。

「今回だけだからな。頼むから盗撮関連は勘弁してくれよ?」

軽くため息をつき、スケキヨの刑以上の罰は免除した。

「りょーかーい。」

「それにしてもそんなに支給してたっけか?」

うーんと頭の中で考えてみた。

 

給料形態としては基本給は艦種が大型化するほど増えていく。

つまり駆逐艦は最低給にあたる。

だが、そこに上乗せとして任務参加率、役職、勤続年数などのもろもろが鎮守府ごとの裁量で上乗せされている。

他の鎮守府だと駆逐艦が戦艦や空母よりも高所得だったりすることも多々あるらしい。

 

 

 

「こっちに転属してから約倍くらいになったよ~。」

「え?!教艦ってそんなにもらえないの?!」

大本営所属と言えば超高給取りのイメージがあったので、うちの方が給料がいいとは思ってもいなかった。

「いやいや・・・。ここが異常なだけだよ?みっちゃん何かにつけて全員役付きにしちゃってるし、あたしらは書類が9割任務なわけだから自動的に乗っけてもらえるし。」

「うちは人手が少ないからな。その分仕事大変だし、休みもとりづらいから代替としての措置だけどね。」

そういえばみんな何だかんだ一定期間を過ぎたら何かしらの役職に就けていた。

「深雪と二人でびっくりしたよ。時雨に聞いて納得したけどさ。他の転属艦もびっくりするんじゃない?」

「どうだろね。」

次の転属の子なんかは特にひっくり返るかもなぁ

なんてことをおもっていると電話がかかってきた。

一応休憩時間なんだけどな

そうは思っても緊急の連絡だった時が怖いため、電話をとる。

 

『はい。駿河諸島鎮守府の耳本です。』

『おおちょうどよかった!桐月じゃが。今から大本営に来れるかの?』

『?いったいどうしてまた?』

『休憩中に本当にすまん!じゃけど頼めんかの?』

『ええ・・・?いつぞやの時みたいにくだらない用事じゃないですよね?』

『いつぞやのって・・・。そんなことあったかの?』

はてと本当に覚えていないようなのでとげとげしく返す

『砂安中将に自慢する文月の写真を選んでくれって夜の九時に大本営に呼び出されたことは忘れませんよ?』

『くだらない事じゃないわい!あれだってn』

『それじゃあまた今度』

耳から受話器を離しそのまま電話を切ろうとすると大声で叫ぶ声が聞こえた

『まてまてまてまて!断じて違う!保証するわい!違ったら木の下に埋めてくれても構わんから!』

『わかりました。望月とスコップ持っていきますね。』

『・・・どうしてこうなったんじゃろ?』

『胸に手を当ててみればわかりますよね?それでは。』

 

 

 

 

「というわけなんで事後承諾で悪いんだが一緒に来てくれんか?」

「いいよ~!ふっふ~ん。みっちゃんとお出かけお出かけ。」

こうやってちゃんと普通にしていればいいのに

などとひそかに思っている提督の事などつゆ知らず。

自室に着替えに行ってしまった。

 

 

「失礼します。」

ここ最近よく来る大将室に入るといつものようにのんびりと大将が執務机に向かっており、雰囲気からしてそこまでの深刻さを感じなかった。

「すまんの急に呼び出してしもうて。」

「いいえ。あ、こちらチャーター機の請求書です。」

椅子から立ち上がり、手前のソファーへと誘導される。

「おおわか・・・ってこれわしの個人名で出してあるやつじゃないか!?」

「がんばってください。」

「・・・・え?まじ?」

受け取った大将の顔が徐々に青くなっていく。

「うそですよ。ちょっとした仕返しです。」

そういって懐から大本営名義で発行してもらった領収書を渡す。

「肝が冷えたわい・・・。ま、掛けなさい。」

「お茶もどうぞ~。」

「ありがとう。」

「文姉さんさんきゅ~。」

望月はお茶を受け取ると啜り始め、文月はニコニコとほほ笑んで大将の横に座った。

「元気そうで安心したよ~。耳本さんに迷惑かけてない?」

「・・・あー。」

「・・・」チラッ

「?どうしたの?」

「大丈夫だよ。ちゃんとうちの戦力としてガンガン働いているよ。」

うそは言っていないが・・・

こういうところが甘いんだろうなぁ

そんなことを思っていると目の前に白い封筒が置かれた

「これは?」

「特別機密書類じゃ。鎮守府に帰ったら開けてくれるかの。」

「・・・・・・・」

じっと大将の顔を見ると文月が入れてくれたお茶を目をつぶっておいしそうに啜っている。

「?どうかしたかの?」

「・・・・えい。」ペリ

「あっ!」

封筒を裏返し、蠟で封印された封筒を開けた。

大将の顔は先ほどまでのにこやかさから一転、いたずらがばれたような子供の顔になった。

「・・・・やっぱりまたこれですか。」

封筒から出てきたのは数枚の上質な紙

表記されているのは辞令で、そこには4月1日付で大佐への昇進と書かれていた。

しかも、印鑑が黒いところを見るとどうやら写しであり、これをもし見ずに帰ったら自動的に決まっていただろう。

「お断りします。」

「・・・柏崎君と彩雲君は少将への昇進OKじゃったよ?」

「よそはよそ、うちはうちです。」

「ぐぬぬ・・・。そこをなんとか・・・ね?」

「・・・・・じゃあ条件付きでもよければいいですよ。」

「ほんとうかの!で、いったいどんな条件じゃ?!」

「私の階級を向こう5年引き上げ無しならいいですよ。」

「・・・・・・。」

がっくりとした様子で頭を垂れた

 

 

 

 

骨田や杉蓋の逮捕により、ハト派の勢いが強まった今

新しく上層部会にハト派のメンバーを加えてさらに確固たるものにしたいのだろう。

補給基地として国内の提督への圧力がかけられる数少ない提督である俺がハト派に入れば確実に大きな力を持つ。

上層部会は将官のみで構成されている。

俺が大佐になったところで何も変わらないだろうと思った方は大間違いだ。

絶対一か月後には少将への昇進通知が来るにきまっている。というか絶対用意している。

 

それは裏を返せば軍政に参加しろという返しでもある。

日本の資源に関する案件はうちがすべてを握っているといっても過言ではない。

そんな奴が軍政に参加したらどうなるか

あからさまに面倒ごとしか生まない

だったら今の佐官でとどめてもらった方がよっぽどましだ。

 

 

「くそぉ・・・。」

「一つアドバイスしますと、大将。心を読まれないように目をつぶる癖。直されたほうがいいですよ。」

「・・・直さないとならんのう。」

「それじゃ、用件も済んだようですし・・・」

「あ!いやいや!まだもう一つあるんじゃ!」

慌てて引き留められ、浮かせた腰を再度卸す。

望月は提督によっかさってスマホをいじっている状態だ。

「ほかに何かありましたっけ?」

「聞きにくいことを聞くんじゃが・・・」

「?」

 

 

 

「お前さん。どっかでナンパせんかったか?」

 

 

 

「・・・・・は?」

ついにこの爺ぼけたか?

そんな言葉が出かけたが飲み込んだ

「なにそれkwsk!??」

望月がスマホを放り投げて大将の襟首をつかんだ

そしてはよ!言わん!かい!と普段の口調が吹っ飛び大将の両肩をつかんで揺さぶりまくっていた。

その隣では文月がのほほんとお茶を啜って今日は元気だねぇ~と言っていた。

「やめ・・・しぬ・・・もち・・・すとっ」

「はいはい。落ち着け。ナンパなんてしてないからなー。」

望月を大将から引きはがし、落ち着けた。

 

 

 

「助かった・・・。なんか見えちゃいけない川が見えたわい・・・・・・・。」

「で?一体全体なんでまたナンパなんて?」

襟元を整え、少し冷めたお茶を一気飲みし、ゴホンと咳払いをして声を整えて話し始めた。

「いやな?望月と深雪が転属したのちに代役に据えた教艦がおるんじゃが、そいつが転属したいと申し出ておってな?どこに行きたいのか聞いたんじゃが、ミカン持ってた人としか言わなくてな。」

「・・・あ。」

「みっちゃん!心当たりあるの!?」

望月は首が引きちぎれんばかりの速度で振り向くと肩をつかんできた。

大将みたく揺さぶらては敵わないので、落ち着けと再度言ってソファーに座らせる。

「たしかに、ある子にミカンあげましたね。」

「やはりか。正直言ってまたしても教艦の交代は避けたい・・・というか後任人事をまたやらなきゃならないと思うと・・・。」

大将の顔が薄ら笑いをしているがその顔色は優れない。

それもそうだろう。

教艦を務める艦娘は一定以上のベテランかつケッコンしていないことが条件だ。

大本営所属は栄誉あることなのだが、当然制約等も多くし、なによりも住み慣れた鎮守府を離れなくてはならないというのが嫌がられる主な原因だ。

条件の合う子はいても了承を取り付けるのは大変なことなのだ。

「やっとやっとで見つけた子なんじゃ・・・どうかここに残るように説得してくれんか?」

「大変なのは知ってますし、いいですよ。なるべく努力はします。」

「そうか!じゃあ今から呼ぶから待っててくれ。」

 

 

 

・・・努力はします(むりなときはむりです)

 

 

「大丈夫だよみっちゃん。何が何でも断らせるからね!」

「・・・おう。」

フンスフンスと気合たっぷりに追い返す気満々である

これでも教艦を務めた望月だ。

そんじょそこらの子には負けない実力がある。

「ところでどんなこなわけ?その泥棒猫は?」 コツコツコツ

「ん?あー・・・駆逐艦だったよ?」 コツコツコツ

「駆逐艦?あたしの力なら余裕だね。」 コンコンコンコン

「お?来たみたいじゃの?どうぞ。」

 

 

 

 

「皐月だよ!大将、いったいなんの・・・。あ!」

「やっぱりか。」

「・・・・・・・・え?」

それぞれ、皐月はうれしそうな顔をし、提督は合点がいったという顔を

そして望月は先ほどまでの余裕な顔は吹っ飛び、絶望の顔をしていた。

「大将!見つけてくれたんだね?!改めて皐月だよ!よろしくな!」

「あの時は名前も言ってなかったな。耳本だ。よろしく。」

「じゃあ大将!早速手続きを・・・。」

「あー・・・そのことなんじゃがなぁ」

「ひょっとしてだめって言わないよね?前のもっちーと深雪が自己都合で転属したんでしょ?僕だけダメってこと?」

大将はこちらに視線を向けた

 

助けて?

 

自分では無理だと判断し、先ほどまで息巻いていた望月を見る

「皐月姉ぇ・・・まじかー・・・・・・。」

 

 

あ、これ多分駄目なやつだわ

艦娘にも同期がおり、その姉妹艦などは本当の姉妹関係みたいなつながりを持っている。

望月のこの怯えようからしてその力関係は大体お察しだろう

 

 

「あれ?もっちーじゃん!?ひょっとしてもっちーが転属したのって・・・」

「・・・・・・・・皐月姉ぇ?ひょっとして?」

「うん!僕はこの人を嫁にもらうって決めたんだ!」

「嫁に取る?!・・・・さすがの皐月姉ぇでも・・・・・それは譲らない!」

「へぇ僕とやる気なの?かわいいね!」

 

嵐が過ぎ去ったように二人は表へと出て行った

 

 

 

「みっ耳本君・・・・・・・・?」

「・・・・・・・・・無理です。」

何が無理なのかは大体わかったのだろう

現実逃避からか文月の膝の上に頭をのせて、額に手を当てていた。

普段ならシバキ回すが、心中を察して見逃すことにした

そして、この後の処理をどうしようか考えなければならないことに頭が痛くなってきた




やっと長門が出てきました・・・
もう他の戦艦70~90代だよ・・・

メンテに入りましたね。
はてさて鈴谷の改二は来るのかw?
来たら運営を尊敬しますw(予想では春イベ直前くらいかなと見ます。)
でも一番気になるのは次の軽巡と戦艦の予告なんですよね・・・
戦艦は大方長門型で想像つくんですけど
軽巡がなんとも・・・
個人的には声の追加があった由良さんあたりかなぁと
次点で5水戦があと一隻でそろう名取とみてますけど・・・
どっちもレベル一桁・・・・(やばい)

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