これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の混乱

「それじゃあ散会で。」

週一で行うようになった朝礼を終え、椅子に腰かける

時刻はマルハチゴーゴー

吹雪は川内と古鷹のところに書類を取りに出た。

自身も仕事をしようとペンと書類をつかんだとき、電話が鳴った。

 

『はい。駿河諸島鎮守府の耳本です。』

『わしじゃよ。』

『・・・チッ』

『舌打ちはやめてくれんかのう・・・。ふざけたのは悪かったから・・・。』

思わず出てきたほんし・・・本音を隠し切れなかったため、しょんぼりとした声が返ってくる

『それで?どんな面倒ごとですか?』

『いやいや。今日はそうではなくてだな。吹雪君か深雪はそこにおるか?』

『あーすみません。今二人とも席をはずしてまして・・・何なら呼び戻しましょうか?』

深雪は今は警邏の手伝いをしているため、内線が使えない。

吹雪ならどちらか二人に内線を飛ばせば行けるだろう。

『そこまで重要な話じゃないから大丈夫じゃよ。お前さんが伝えておいてくれればそれで十分じゃし。』

『わかりました。それで、いったい何の用事ですか?』

『お前さんは民間との商品コラボは知っとるかの?』

『ええ。夏木が進めている艦娘の宣伝活動の一環ですよね?』

『そうじゃ。それでな?お前さんところの吹雪君と深雪がラベルになった日本酒が売り出されることになったんじゃ。』

『それは本当ですか?!』

 

 

 

艦娘の宣伝活動は夏木が今の地位を確立する原動力となった

歌に始まり、民間企業では牛丼屋やデパート、最近なら服屋など様々なジャンル、業種に持ち掛けていた。

艦娘は誰も見目麗しいものばかり

企画はおおむね成功、大成功ばかりだ。

当然だが、コラボするにあたってはモデルが存在する

鎮守府ごとに所属している艦娘はよくよく見ると同じ艦娘であっても、顔つきが違ったり、身長なども違ったりする。(性格や考え方も当然違う)

そのため、コラボ企画の際には大本営が選定をし、提督や司令官を介さず艦娘に直接かつ秘密裏に計画が進められる。

そして、売り出しの数日前に提督や司令官にお披露目となるのだ。

もちろんこのことは手放しで喜べる案件である。

駿河諸島鎮守府では初、しかも深雪に至っては深雪自体が初めてのコラボ

こんなに喜ばしいことはない

 

 

 

『本当じゃよ。二人とも快諾してくれてな。今日はそのことを公表しても大丈夫という連絡をしようと思って電話したんじゃ。』

『そうですか!それで?発売日はいつなんですか?』

うちの鎮守府の子の商品

ましてや初だなんて手に入れないと

『えーと・・・あ、すまんもう売りに出てたわ。』

『・・・・・・・・・は?』

電話をつないだまま、ノートパソコンでデパートのオンラインショップにアクセスする。

本来、仕事用のパソコンでこういったサイトを見るのは褒められたことではないのだが、急ぎの事なので仕方ない。

オンラインショップでは吹雪、深雪、敷波、蒼龍と赤城のラベルの日本酒が並んでいたがどれも売り切れていた。

『いやすまん。手違いで書類がどうもまちがっていたy』

『・・・・・・・・。』

『え?なんて?』

『今すぐお伺いします。』

ワンオクターブ低い声で一言いうと受話器をたたきつけた

そして、引き出しを開けると9㎜拳銃やグロック、Ⅿ1911等が入っている中から一つをひっつかんだ。

「司令官。ただいま戻りました!」

カードリッジを装弾し、ホルスターに入れたところで吹雪が戻ってきた。

「ああ。吹雪ちゃん?ちょっと俺大本営に急な用事出来たから今日は急ぎの書類だけやってくれる?」

鍵のついた引き出しから、書類の決裁に必要な代理のハンコを渡すと足早に執務室を出た。

「あ!はい。護衛は・・・あれ?行っちゃった・・・。」

吹雪はいつもと違う提督の様子に疑問を抱いたものの、あっという間に去ってしまったため、仕方なく執務を始めた。

 

 

 

「・・・どうしよう・・・・。」

一方その頃大本営

ツーツーと無機質な電子音が聞こえる受話器を持ったまま部屋の主である桐月は固まっていた

書類には1週間前の発行日が記載されていた

1週間もこの書類はどこに行っていたのか?

 

答えは簡単

 

ちょっと仕事をお休み(サボった)した結果、こうなった

一言でいうなら自業自得だ

放心しているひまはないと気づいたのは電話が切れてから15分もしてからだった

 

 

 

「とにかく!助けを!」

受話器を置き、信頼できる自身の腹心の砂安中将に内線で電話を掛ける

 

『はい。砂安です。』

『砂安君!助けてくれ!!』

『ちょっと大将!どうしたんですか?!』

いつもと違う様子に砂安はびっくりした声で対応した

『実は・・・かくかくしかじかでな・・・?』

 

 

『無理です。あきらめてください。』

『そこを何とか!な?』

『どんなものを積まれても無理です!それに、自業自得じゃないですか。私を巻き込まないでください!!』

そういって電話は切れてしまった。

 

 

 

 

『深打君!耳本君が!!耳本君が!!!』

『大将!どうしたんですか?』

『実は・・・』

 

カクカクシカジカ

 

『大将・・・。すみませんがそれは無理です・・・。』

『なんとか耳本君の怒りを治めるだけでも出来のか?!』

『・・・大将は拳銃の見分けはつきますか?』

『ああ。つくがそれで治まるのかね?!』

『もし、9㎜拳銃を持っていたら素直に謝り倒してください。嘘や誤魔化しを一切せずにですよ?』

『わかった!』

『で、グロック18を持っていたら・・・』

『持っていたら?』

 

 

 

 

『・・・おとなしく撃たれてください。』

 

 

 

 

『それ死ぬよね?わし死ぬよね?!』

『大丈夫です!おそらくゴム弾かスポンジ弾の物ですから!』

『そうでなくてもめっちゃ痛いじゃないか!助かってないじゃないか!』

『もうその銃持って来ているってことは許す気0ですからね?!とにかく!9㎜拳銃持っている事を祈ってください!あと、多分ですけどもうすぐきますよ!』

『え?もうか!?電話切って30分くらいしか経ってないだけど?』

『おそらくですけどみっちゃんは怒り心頭なんで、基地航空隊の彩雲使ってきますよ?彩雲ならもう到着しておかしくないですし。あ、みっちゃん。』

ブツっといった音がし、電話は切れた。

 

 

それと同時にいやに周りが静かなのに気が付いた

廊下の大理石を革靴で歩く音が聞こえる

 

コツコツコツコツ

「・・・・・・」

コツコツコツコツ・・・

「・・・・・・あ。」

コンコンコンコン

「・・・・・・・・・どうぞ。」

「失礼します。」

 

 

 

 

「それで?なぜ連絡が遅れたんですか?」

にこにこと愛想のいい笑みを浮かべている提督

その反対側に座っているのは真っ青な顔をして縮こまり、冷や汗をだらだらと流している大将

どこかで見た構図だが、決定的に違うものが一つ

提督はこぶしを握り締めており、その色は力が入りすぎて白くなっていた。

「あの・・・ですね。その・・・。」

「私も忙しいんです。早くしてくださいね?」

「はい・・・。その・・・。」

「早く。」

「サボって書類の日付を見間違えました!!」

そう叫ぶと同時に土下座をかました。

銃の種類は見ていないがもう9㎜を持っていることにかけるしかない

「すみませんでした!!!」

「大将・・・。頭をあげてください。」

先ほどまでの声色よりかは和らいだ印象を受ける

恐る恐る顔をあげると

 

 

 

 

 

 

「それで許されるとでも?」

目の前にはグロック18が握られていた

 

 

 

「ひっ!悪かった!!本当に申し訳ない!!」

「ああ。大丈夫ですよ。中身はスポンジ弾ですから。」

「お願いだから!再販をお願いしてみるから!!」

 

その一言にピクッと反応した

人気商品などは再販されることが多く、実際服屋とのコラボでは再販を決定したばかりだ。

大将の権限であればこういったことはできるはず

 

「大将。売り切れた日本酒の販売ってどうなっているか知っていますか?」

「え・・・?いや・・・知らないが・・・?」

「日本酒って言うのは酒造さんが作った分しかないんです。しかも、仕込みを行う季節によっても銘柄が違います。つまり・・・」

「・・・再販は・・・。」

「難しいです。これが私の怒っている主な理由の一つです。」

迷いなく引き金を引いた

もちろん、大将に当てないように撃った

隣に飾ってある花瓶にあたると、衝撃で机から落ち、割れた。

「・・・すまん!なんとかして手に入れるから!だから!」

「うちの子たちの初めてを・・・!よくも!」

「耳本君?!落ち着け!なんかものすごい勘違いされそうなんじゃが!?」

「いっつもサボっているくそ大将が!今日という今日は許さんぞ!!」

引き金を引いたまま、乱射を始めた

大将はソファーの陰に急いで隠れた

ソファーを貫通することはないが、中身が飛び出ているのだろう

スポンジが自身の下に落ちてきた

何とかしなければと思ったとき、廊下が騒がしいのに気が付いた

「みっちゃん!落ち着いて!」バン

夏木と深打が大将室に入ると大急ぎで取り押さえた

 

 

~10分後~

 

 

「すまん。どうも頭に血が上っていた・・・」

すでに拳銃は手放して頭を抱えていた。

やれやれといった表情で二人は提督の対面に座っていた

「大将が悪いがみっちゃんもやりすぎ。・・・9割大将だけどね。」

現在大将は隣の部屋で文月にこってり絞られている

「ああ・・・。それにしてもどうすればいいんだ・・・。俺も注意を払っておけばよかった・・・・・・・。」

「その事なんだけどね?」

夏木が机の下から、段ボールを取り出した

「?」

「吹雪と深雪のラベルの日本酒よ。こっちでは今日から販売予定だったの。3本ずつなら確保できたわ。」

「いいのか?」

「ええ。大将に代金は請求しておくから持って行って。」

「ありがとう!恩に着る!」

 

 

その後、大将は物品の破損など巨額の請求に涙を流すことになるがそれはまた別のお話し。




というわけで今回は日本酒コラボの話でした
再販検討と言ってますけど日本酒の再販って結構難しいですけどねぇ・・・?
あり得るならまた買いたいもんです(吹雪のは2本、それ以外は1本づつ確保済み)
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