これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の新人

「「失礼します!」」

ノックと共に入ってきた二人の艦娘

今日は机の上には書類の山ではなく、数枚の書類のみだった。

両サイドには吹雪と川内が控えて立っている。

 

 

 

「睦月型駆逐艦5番艦の皐月だよ!よろしくな!司令官!」

敬礼と共にキラキラ(ねっとり)した目をこちらに向ける

・・・どうも望月と対面しているような感じで少し身の危険を感じるのは気のせいだろうか?

そしてその隣にいるもう一人の艦娘

金髪で水色の瞳、背の高さは川内と同じくらい

そして、ちょっとおどおどしているがちょっと深めに息を吸い、皐月に続く

 

 

 

 

「長良型軽巡の阿武隈です!よろしくお願いします!」

骨田中将の麾下におり、戦闘、遠征の両方の取りまとめ役をかつて行っていた。

幸い忙しさのおかげか夜伽等の性暴力は受けていないため、男性恐怖症にはなっていない。

しかし、連日連夜戦闘と遠征を往復していたせいで被弾時には恐怖症で動けなくなる障害を抱えている。

 

「うん。俺はここの提督の耳本だ。こっちは秘書官の吹雪でこっちが採掘部の川内だ。」

それぞれ名前を呼ばれると礼をした。

「川内は俺と吹雪がいなかった場合、代わりに指揮を執ることになっている。細かい自己紹介は後で個々に行ってくれ。」

そう言って、川内に合図をする

川内はうなづいて持ち場に戻っていった。

 

 

 

 

「さて、二人にはまず書類を書いてもらわないとな。」

机の上に置いてあった書類を持ってソファーに腰を掛ける。

二人にも座るようにすすめ、書類を見やすいように机の上に置く。

書いてあることは基本的なことで、機密を漏らすなだとかといったごくごく普通の誓約書だ。

その他の転属の手続きは事前に通知があったため、すでに終わっている。

(望月、深雪、58は当然例外だ。)

 

「はい!終わったよ!」

「終わりました。」

書類を受け取り、サインを確認して決済済みの箱に入れる。

「OK。それじゃあ二人の配属場所なんだけど・・・」

書類の中から、一枚づつ内容の違った書類を手渡す

「通例なら秘書官補佐か補給部手伝いとして1か月位を目途に配属して、それから異動になるんだけど二人は最初から担当についてもらうからよろしくね。」

「了解だよ!司令官!」

「えっ・・・私に務まるでしょうか・・・?」

皐月は元気よく、阿武隈は不安そうに問う。

「大丈夫だよ。むしろ阿武隈じゃないと務まらない仕事だからさ。阿武隈はちょっと待ってて頂戴な。」

そういって先に皐月に話を振る。

「最初に皐月なんだけど、隣の島で旅館やホテルがあるのは知っているよな?」

「うん!何度か姉妹できたことあるよ!」

「そいつはあんがとさん。で、今回その土産物屋の区画を拡大して常設屋台や小規模な食事処、商店等の設置することにしたんだ。」

吹雪が持ってきた図面を机の上に広げる

 

 

 

地下鉄の駅と港からまっすぐ進むとホテルがあり、その通り沿いに土産物屋等の商店街がある。

途中左手に曲がるとしばらく空き地の区画があり、20~30mほど進んで曲がった先が旅館だ。

ここの通り沿いを整備しようという計画だ。

ちなみに突き当りを進んだ先が牧場予定地となってはいるが、山風の農園部がどれだけ機能するかによって計画の進み具合が変わる。

出店を行うのは各鎮守府の入札制となっている。

当初は希望者のみと思ったのだが、想像以上の応募の多さで仕方なく入札制へと切り替えた

 

いかんせんそこでの売り上げは派遣した艦娘への特別手当の支払いを条件に、申告無しで予算に組み込めるためである。

純利益が10万でも100万でも増えればそれだけ鎮守府の改築、もしくは機能改善などに当て艦娘の職場環境改善にもつながる。(資源等はさすがに厳しいだろうが)

また、こちらとしてもテナント料の定期収入が入ることで空き区画の有効活用

もう一つは、現在食べ物屋がないため、ホテルや旅館では昼食分も用意している。

もし、不要となればそれだけ人手を浮かせることができ、従業員の休憩時間の増加

や受け入れ人数も増加させることができる。

こういった事業は誰も経験したことがないため、現状誰を当てようか悩んでいた。

阿武隈の転属時に当てることを考えたが、あまり向いていなさそうな形だったのでひっそりと悩んでいたが皐月の追加転属で風向きが変わった(新しく教艦探しを行う羽目になった大将には悪いが)

望月の直の姉であるということは歴戦の猛者ということにあたる

望月は言わないが少なくとも相当な古株であるということは深雪から聞いたことがある。

それだったら愛想よし、人生経験豊富この2本柱を持っている皐月が適任だ。

 

 

 

 

「そういうわけなんだけどお願いできるかな?」

「もっちろん!僕に任せてよ!」

胸にこぶしを軽く当てて自信のほどを見せてくれた。

そして、手をするりと提督の手に寄せて

「僕が活躍するところしっかり見せてあげる。」

 

おおう・・・

なんというかイケメンオーラというか手練れの雰囲気というか・・・

榛名とも打ち合わせと顔合わせを行うため、吹雪と共に退出していったが依然として飲まれたままだった。

 

 

 

 

「あのー・・・・?」

阿武隈が言いづらそうに声を掛けてきた。

「ごめんごめん・・・。なんというか・・・濃いなぁって・・・・・・ね?」

望月と面倒ごとにならなきゃいいがと思いながら遠い目をする

「さて!もう後は野となれ山となれだ。」

膝を叩いて奮い立たせる

 

「阿武隈は遠征や哨戒、迎撃に防衛戦でいろんな海域に行ったことがあるんだってね?」

「はい。北から南、西方東方に中部すべての海域に行ったことがあります。」

ただ・・・と続ける顔色は良くない

戦闘ができないことを気にしているのだろう

「大丈夫。君にやってもらうことはそういった方面ではないからね。」

先ほどとは別の地図を出す

皐月に見せたのは隣の島の地図で、阿武隈に見せているのは鎮守府がある島と旅館のある島、そしてその周辺の様子が描かれた海図だった。

「ここの島の潮流の計測係と船団誘導をやってほしいんだ。」

 

 

駿河諸島は黒潮の海流が直接当たることがある

その際、気が付かないうちに流されてしまい、ここにたどり着けなくなって遭難する事故が月に一回はでる。

この海域にも暗礁が存在するため、輸送船が座礁することだってある。

こういった事故を防ぐため、気象庁や海軍がちゃんと潮流計測を行って出している

だが、厄介なことに駿河諸島にぶつかって不規則な変化を起こすことが多々ある。

こういった事故を防ぐためには、艦娘がその海域を航行して直接計測を行うのが確実である。

今までは人手不足でできなかったが、あらゆる海域に行ったことのある阿武隈なら適任だ。

 

 

 

「でももし、敵が出てきたら・・・。」

「それについては心配しなくてもいいよ。龍驤の基地航空隊が上空から見張りをしているからまず、敵との遭遇はない。」

それにと続けた

「もし、敵が出てきたら真っ先に帰っておいで。」

「え!!それじゃあ敵前逃亡じゃ・・・。」

阿武隈が焦った顔をする

海図の上に置かれた手は震えているところを見ると闘志は燃え尽きてはいないが、体が言うことを聞かないのだろう。

「敵前逃亡じゃないよ。通報、報告のための帰還だ。」

だからさと続ける

「今は無理して戦うことはないんだ。ゆっくりでいい。焦れば焦るほど逆に遅くなっちゃうよ?」

阿武隈の震える手をそっと握ってあげると震えが少しおさまった気がした

「・・・わかりました。阿武隈!頑張ってやらせていただきます!」

凛々しく、死線の場慣れを感じさせる風格

恐怖症がなかったら引く手あまただっただろう

「よろしく頼むぞ。」

頭を撫でようとして、慌ててひっこめた。

阿武隈は確かあまり髪を触られるのが好きじゃなかった事を思い出した

「ふふっ・・・よろしくお願いしますね。提督。」

伸ばし掛けた手を取って握手をした。

「ああ。よろしく頼むよ。」

 

「・・・でここからがちょっと問題なんだけどね?」

手を離し、後苦々しい顔をした。

「実は阿武隈君の部屋なんだけど・・・」

「?」

「ないんです・・・。」

「え!?」

もともと用意していた部屋は先ににゴーヤの転属で、埋まってしまった。

最後に残っていた部屋は皐月が追加転属により埋まった

「ええ・・・。私はどうすればいいですか・・・・?」

「それなら問題ない。俺の部屋を使ってくれ。」

「え?!そそそそれって!」

「ああ。数日間だが我慢してくれないか?」

「いえ!あの・・・阿武隈的には・・・その・・・・・・OK・・・・・・なんですけど・・・。」

顔を赤らめながらもじもじした様子でこちらを見ていた。

「すまんなぁ・・・。実はこの隣の部屋なんだ。」

「そっそうなんですか・・・。じゃっじゃあその・・・。」

「あと3日もすればここに併設の新艦娘寮ができるから頼むな?」

「はい!ががが頑張ります!!」

「?ああ。」

 

 

 

 

提督は言葉足らずなのを知らなかった

阿武隈は同室で提督と3日を過ごすと思い込んでいた

しかし、提督は執務室の隣の部屋なのと自分が使っている部屋を一時的とはいえ使わせてしまうことへの謝罪であって、同室で過ごすことは考えてはいなかったのだ。

その夜、阿武隈は緊張からひと晩ずっと提督が来るのを待ち続け、提督は隣の島の旅館でのんきに寝ていた

翌朝、目の下にクマを作った阿武隈を見て、齟齬があったことが発覚した




さてさて・・・鈴谷がひたすらコンバートじゃないこととlv85で足りることを祈っている作者です(欲を言えば設計図もなしだともっと嬉しかったり)

1/1瑞雲
てっきり4月馬鹿だと思ったら本気だったのが一番の衝撃でしたw
三越コラボの瑞雲押しと1/1瑞雲、そして航巡の改二・・・
戦艦の改二はどうも伊勢日向が濃厚っぽいですねぇ・・・
日向さんだけ何故か来るのが遅くてうちではLv41で止まってます・・・

あと今更ですけど皐月とジュウコンしました(゚∀゚)
まったく、駆逐艦は最高だぜ!(初のジュウコン艦です)

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