これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の攻防

曇天の夜空に靄

そして潮と硝煙の香り

近くでは火災を起こした戦艦

あれは扶桑だろうか山城だろうか

乗員はあわただしく船内を駆け回る

海面にはほかの駆逐艦の船員が油にまみれながら浮いている

 

 

 

 

 

ああ

今日はスリガオの夢か

 

 

 

 

レーダーをひたすら必死に避けてまわって

 

 

ふと気が付き周りを見回すと敵のレーダーはとんでいない

そして味方もいない

 

 

 

 

この後残ったみんなと合流してあれか・・・

 

そう覚悟を決めたところで、幸いにも場面が移り変わった

予知夢を見るときは悪夢のような場面を改装してから見る。

今回は比較的精神を削られなかったのにほっとした

移り変わった先はどこかの海上

ふと横を見ると敵の艦攻が真横まで接近しており、ちょうど魚雷を投下したところがスローモーションで見えた

 

 

当然回避が間に合わず、視界が暗転する

 

 

 

 

 

再び視界が戻った時は、浮輪に乗せられていた。

前方で曳航しているのは吹雪で自分たちを中心に輪陣形

満身創痍だが、どうやら何とか生きている

会話はよく聞こえないが、笑いながら話しているところを見ると戦闘は勝利したのだろう

 

 

鎮守府の港に着くと、提督がこちらに駆け寄ってくる

顔面は真っ青だったが、僕の顔を見ると表情が幾分か和らいだ様子だ

後ろからは白い髪の・・・誰だろうか

顔が遠目でぼやけてよく見えない

そんなことを思っていると妖精さんたちによって艤装がパージされ、多少動きやすくなる

提督が自身の軍服を貸してくれる

目をそらしているあたり、服がかなり破れてしまっているのだろう

予知夢でもこんなことが起きるなら黙っていようかなぁ・・・

 

そう思いながら、入渠場へと向かって歩き出したとき

『危ない!!』

提督が急に大きな声をあげながら飛びついてきた

暖かい感触が広がるが、同時に少しべたつきを感じる

提督を起こそうと、手を見た時

 

 

べったりと赤いものが

 

 

「!?」ガバッ

「・・・zzz。」

 

暗い室内

隣では山風が気持ちよさそうな顔をして寝ている

 

「夢・・・?」

 

予知夢だったのだろうか

はたまたただの悪夢だったのだろうか

 

いつもならスリガオ海峡の悪夢は全滅を知るところまで見る

それが中途半端だったことはほかの悪夢含めて今まで一度もない

今までに見た夢の中で一番恐ろしく、中途半端だった

手は小刻みに震え、息はまだ整わない

 

「提督は・・・?」

 

 

 

 

 

静まり返った廊下をそっと歩く

背中には山風を背負い、寒くないように掛布団を掛けている

置いていくのははばかられたため、いっそ二人して押しかけてしまおう

そう思い立ち増設され、長くなった提督の私室までの道のり

山風の寝息で、何とか震える体を抑えてたどり着いた。

たどり着くまでは張りつめていた神経が和らぎ、ノックをしようと手を伸ばす

すると、部屋の中から声がしている

現在、時刻はマルサンマルマル

廊下にまで漏れる声で騒いだりするだろうか

 

・・・・・・・いやこの声は・・・

 

「だーかーらー!!今日はあたしが隠れるの~。姉貴には譲らないよ!」

「なら奪うまでだよ!さぁ尋常に勝負しよう!」

「いやだよ!姉貴に勝負事して勝てる確率低すぎんだもん!」

「じゃあおとなしく譲ってよね!」

「そうはいかないっての!ていうか、ここで騒いだらみっちゃんに嫌われるよ!」

 

・・・いろいろと突っ込みたいことはあるのだがここはもう見なかったことにしたい

少し開けた扉を、そっと閉めた

ドアノブのところが少し油臭かったところを見るといつもの入り方だろう

ため息をつき部屋に戻ろうとした時、違和感を感じた

 

「提督がいなかったような・・・・?」

「うん・・・いなかった。」

「あ。ごめん起きちゃった?」

ぽつりとつぶやくと、背負っていた山風が反応した。

おそらく、先ほどの言い合いで目が覚めてしまったのだろう

 

「執務室行ってみようか?」

「うん・・・。」

隣の部屋をノックをする。

反応はない

不審に思い、横の壁をたたく

すると30センチ四方の正方形が一回転し、パネルが出てきた。

操作をして、入退室履歴をあさると提督はまだ退出していない

しかも、執務室には明かりがついている表示がされていた

「おかしいね?」

「うん・・・。」

これは久しぶりの違法残業の案件だろうか

古鷹に明日報告しようか

そんなことを考えて部屋のカギを解除しようとすると、バタバタと中から音がして扉が開いた

「すまんすまん!どうした?」

慌てた表情の提督が執務室から出てきた

「提督・・・ちょっと夢見が・・・ね?」

「ああ・・・・。そうか。こっちにおいで」

安心感からか言葉がしどろもどろになってしまった

提督は察してくれたのか執務室に招き入れる

 

 

 

 

執務室の中は書類が散乱・・・していなかった

机の上に書類は数枚あるが、処理をしていた気配はない

「いやぁ・・・寝落ちしちゃってたみたいでね?」

隣接された給湯室に引っ込むと、レンジの動作音がして戻ってきた

 

「ふーん・・・」

「・・・・・・」

「いやほんとよ?ほんと。」

時雨と山風は怪しいといった表情を向ける

あわてて否定したところがもっと怪しい

ここは問いただすべきだろうか

切り出そうとした時、チン!という軽快な音がした

「ちょっと待ってな。」

ふたたび、給湯室に引っ込む

少しして、マグカップを3つもって戻ってきた

「ほい。ココア。」

「ありがとう。」

「・・・ありがと。」

受け取って息を掛け覚ましながら一口付ける

紅茶やコーヒーだとカフェインが入っている

細やかな提督の気遣いだろう

 

「・・・うわぁ。どうしっかね・・・。」

提督は直通の扉(元隠し扉)から、そっと自室の様子を見てぽつりとつぶやいた

先ほどよりもヒートアップしているようだ

会話の内容がわかるくらいに声が大きくなっている

「かれこれ4時間くらいあれやっていたような・・・」

「鎮圧しようか?」

時雨と山風が銃を撃つ動作や持つ動作をした

拳銃を寄越せということだろう

「いやいや・・・。艤装つけてない時それやったら下手すると死んじゃうからね?・・・俺にいい考えがある。」

「・・・・・・・・フラグ?」

「山風!それは言わんといて!」

 

提督が苦笑いしながら執務机に近寄る

隅っこのところを開けると天板の一部にボタンがいくつかとパネルがある

そのうちの一つを押して、パネルを操作して閉めた

「さてさて。あとは見てればわかるよ。」

そっと隠し扉から隣の様子を3人で伺う

 

 

「もー!!いいかげんに・・・あれ?あんなとこに下着なんて落ちてた?」

「え!やっりー!ゲット!」

皐月が首を傾げた瞬間、望月が飛びついた

「あ!ずるい!」

「早い者勝ちだよ~!ひゃっはー!」

どこかの軽空母か世紀末か

そんな声を出しながら戦利品を皐月に奪われないようにする

しかし、同じ体格ぐらいのため、キャットファイトにもつれ込んだ

「はなしてよ!」

「あたしが先に取ったんだ~!」

「僕が先に見つけたんじゃないか!」

「とったもの勝ちにきまってるじゃん」

皐月が上になったり、望月が上になったり

下着(実は未使用)が嫌な音を立てはじめたその時

 

 

 

バガン!

 

 

 

 

「「・・・え?」」

 

 

 

 

下着・・・もといパンツを引っ張り合っていた時、床が二つに割れ二人共奈落に落ちていった

 

「「え?」」

時雨と山風も先ほど落ちていった二人と同じ反応をする

「こんなこともあろうかと安定の明石工房に発注しといた。」

真顔でサムズアップし、部屋に入る

「・・・・・・・」

「時雨姉ぇ・・・ねよ?」

「・・・・・・・・・・・・・そうだね。」

あの二人なら大丈夫か

先ほどまでの焦燥感は明々後日の方向へと飛んで行ってしまった

心配することをやめ、提督のベットに潜り込んだ

 

 

 

 

 

翌朝

 

朝の潮流検査に出た阿武隈が

おり付きの筏の中で二人してパンツを握りしめながら体育座りして漂流している様を見て悲鳴を上げたのは言うまでもない




鈴谷の改装がががが(;´Д`)
設計図計2枚要求なんて想定外ですわ・・・
しかもおそらく2隻持ち推奨・・・
そして熊野もほぼ同じ改装とみて間違いない

あ、これあかんやつや

設計図を売れとは言わないから
程よい難易度の勲章貰えるEO海域が欲しい・・・
設計図調達を上回るペースで設計図要求艦を増やすのだけは勘弁してほしいなぁ・・・

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