これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の代理 その3

「おわったぁ・・・」

「お疲れ様。」

阿武隈が自分で取った最後の書類を自身の右側に置いた

時刻はヒトフタゴーマル

間食休憩に入っていたが時間をずらすことにし、中途半端な量を片付けた

一方古鷹は今日の書類は終わっているので、阿武隈のために間食を間宮さんのところに取りに行き、その後は自身の部署の仕事をしていた。

 

今日のお茶菓子は定番中の定番の羊羹

ソファーの前の長テーブルにおいて、お茶を入れに行く

 

 

 

「いつもこんな量を処理しているなんてほんとにびっくりしました。」

「そうなんです!体調悪くても無理しすぎるからこの間みたいなことになったり・・・・・・。」

「前の提督さんとは全然違って毎回びっくりすることばっかりです。」

少し苦笑というのだろうか

憂いのある表情を阿武隈は浮かべた

「いくら作戦指揮や哨戒任務の指揮をとらないとはいえこの業務量はちょっと・・・。」

「・・・・・・提督がいつの間にか仕事を引っ張ってくるんです。」

「・・・・・・ちょっとガサ入れしてみません?」

思わず同意をしそうになったがさすがにこらえた

倒れてからは無理は控えてくれている

それに信頼して任せてくれている提督不在の状態でのガサ入れはしたくなかった

 

 

 

 

「何か無理が発覚したらガサ入れしますけどね。」

「そうしましょう!」

お茶を一口飲んでぽつりと言うと阿武隈も強く同意した

 

「古鷹さん。一つ聞きたいんですけどいいですか?」

「ん?いいですよ。仕事でわからないことでもありました?」

「いえ・・・・・・古鷹さんってどうしてここにいるんですか?」

「え?」

「あ!悪い意味じゃなくてですね!」

はたから聞いたら物凄く聞こえが悪かっただろう

阿武隈も急いで続ける

「なんといえばいいんでしょうか・・・・・・古鷹さんってかなり腕が立つのに何で前線に行かないのかなぁって思ったんです。」

「ん~・・・どういったらいいのかな。」

少し困ったような顔をした

阿武隈は無理しないでいいですよといった表情をしていた。

しかし、目は違った

どうしても聞きたい

古鷹はそう感じ取った

「提督やみんなは知っているんだけどね。私が前線にいたころの戦闘のスタイルは今と結構違うの。」

湯呑をおいて恥ずかしそうな顔をし、いつもの口調を少し崩して続ける

「とにかく敵を倒す、味方をかばう。これしか頭になかったの。」

「?それは普通じゃないんですか?」

「違うよ。」

かぶりを振った

「何か一つ、できて二つ。これしかできない人は戦場で確実に命を落とす。」

さらりと言ったがその一言で部屋の温度が下がった

「倒すことにかまけて回避ができない。私はこれが致命的な弱点だったの。」

簡単に言ってしまえばトリガーハッピー

指示伝達がうまくいかない艦娘はその子自身どころか艦隊をも危険にさらす場合もある。

「場合によっては旗艦やほかの子を無意識的にかばっちゃう癖もあったから前の提督さんをよく困らせたの。」

情けないよねといった表情だった

おそらく前世からくる癖なのだろう

「ここに転属が決まる直前にはこんなことを言われたの。」

 

 

君の戦果は信用はするが信頼はしない

 

 

「それって・・・・・・。」

「結局言われたその時は真意がわからなかったけどね。」

「今はどうなんですか?」

「ここに着任したら今までと180度丸々違った。だからこそ気が付いたこともあるし、新しくできるようになったこと、提督に直接教わったこと、いろいろあるの。」

執務机を見るといとおしそうに目をつぶって間を入れた

「この間、久しぶりに前の提督さんに会いに行ったら戻ってこないかって言われたの。」

「え!」

「私はここがいいですって言ったらそうだろうなって返してきてね?」

「・・・・・・」

「何を焦っているのかは聞かないけど、ゆっくり自分のペースを崩さないこと。これが一番よ。」

「いつか・・・・・・私も前のように戦えるかしら・・・。」

阿武隈の目には戦果を再び上げたい

もっと認めてもらいたい

そういった表情が映し出されていた

「それはわからないけど・・・・・・焦りは禁物。時が来るまで待つことが重要だと思うわ。」

阿武隈はドキッとした

「この話はおしまい!お手伝いのお礼に今日はおごるから鳳翔さんのところに行きましょう。」

「そんな!悪いです!」

「ほかにも話したいこととかあるでしょう?」

提督のこととか

そう小声で言うと少し迷ったが

「行きます!」

そう答えてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくしょーい!」

「司令官大丈夫ですか?クシュン!」

「あーあー。二人とも・・・はい。これ。」

 

フタヒトマルマル

鎮守府基地航空隊

 

高さ50cmくらいの箱を担いだ提督、紙袋を持った吹雪、そして白衣を着てアタッシュケースを持った加古が機体から降りてきた

「悪いな。」

「この時期はつらいからねぇ。今はヒノキだからたちが悪いし。」

「ありがとうございます。」

提督と吹雪は加古から薬を手渡された

花粉症の薬である

駿河諸島なら関係ないが、本土ではそうはいかない

くしゃみに鼻水、目のかゆみ

二人は勝って帰ってきたはずなのにまるで負けた様相だ

「鳳翔さんのとこで水もらって飲んでいくか・・・・・・。」

「そうですね。」

 

 

 

 

居酒屋鳳翔では哀れにも古鷹の酒癖に巻き込まれた阿武隈がいた

(鳳翔さんはちゃっかり退避していた)




というわけで古鷹と阿武隈のちょっとしたお話しは終了です
次は花見・・・八重桜は咲いているからセーフ!

そろそろ日本酒が届くから楽しみだな~・・・

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