これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の花見 準備編

「まじっすかい・・・」

鎮守府の主である耳本は頭を抱えた

原因は机の上にあるたった一枚の書類

 

 

「天候不順による花見開催場所の変更」

 

 

今年は本土のほうでは風雨が強く、花見をすることが難しい目算が出ていた

東日本及び中部地区ではできる確率は20%にも満たないという試算が計上された

じゃあ今年は仕方なくあきらめましょう

 

 

 

 

そのようなことは許されないのだ

 

 

 

 

艦娘は深海棲艦への唯一の対抗手段

その間娘たちの士気を支えるために定期的な息抜きを行っている

納得はしてくれるだろうが士気の低下は避けられない

よって東日本本土の天候に左右されない伊豆諸島、駿河諸島、西日本方面で大型鎮守府の花見を捌くことになった

大型鎮守府は艦娘の数が多いため人のやりくりができる

そのため、季節もののイベントは各自での開催予定だった

しかし、今年の花見は無理だった

 

晴れの日がとびとび

しかも間には台風のような天候になる雨の日

これではいくらシフトが組めても花見は無理だ

 

というわけで駿河諸島鎮守府は中小規模の鎮守府の花見団体+大型鎮守府の花見団体をも受け入れなくてはならなくなった

 

幸いにも、試算では部屋数や人出はパンクせずに済みそうだ

だが、事前に組んでいた日程や区割りは再考しなければならない

 

 

 

「・・・てかどこの鎮守府だ・・・?」

横須賀に大湊・・・名古屋静岡三重・・・銚子、大洗、いわき・・・

どこもかしこも伊豆諸島や西日本方面が書かれていた

「あっれー・・・?うちが書いてないぞ?」

一人提督室でつぶやく

吹雪は長門の修行のために休暇中だ

「あった!・・・・・・。」

一番最後のところにようやく駿河諸島鎮守府と書かれていたのを見つけ、どこの団体が来るのかを確認した

「・・・・・・」スッ

提督は机の上にある受話器を取ると電話を掛けた

 

『はい。もしもし。こちら・・・』

『うちくんな。』

 

そう一言だけ言って電話を切った

するとすぐに電話がかかってきたので再び受話器を取る

『ちょっと!ひどくない!?』

『ひどくないですよ。ひどいのは職権乱用した大将でしょう。』

『なんのことかな?』

あからさまにとぼけた声

いつものロリコン大将である

『いやいや・・・ちゃんと理由があるからね?』

『ほう?』

『中小の鎮守府の提督との交流も目的としていてな?ほれ、視察となると大掛かりとなってしまうし、会食となると時間がない。』

『ほうほう。』

『じゃからこそ、ちょっとした雑談といった形でだな・・・』

『本音は?』

『嫁の写真交換大会があるんじゃ!』

『大本営ご一行は八甲田山っと・・・』

『桜じゃなくてあの世の花をまだ見とうはない!』

こんなところで言ったって明後日に迫っている花見を今更これ以上は変更できない

『この前の配分変更(軽減策)でわしの胃がもう痛くて痛くて・・・・・・。肌もガサガサじゃし。』

『今までのツケでしょう。あとただれろ。』

『ひどい!』

 

結局言い合い(ストレス発散)は10分ほどで終わり、受話器を置いた

 

「さて・・・妖精さんのシフトはっと・・・・・・。」

今回は妖精さんたちも一日だけだが一斉休みとなる。

花見期間は1週間(花がそれくらいしか持たないため)

妖精さんたちにも休みは当然ある

前回の秋祭りの時だって存在した

しかし、作戦が近かったこともあり一斉の休みではなかった

そのため、妖精さんたちは事前に陳情書として一斉休みのお願いが来たのだ

計算した結果、その日から増産ピッチを少し上げ、備蓄量を増やしたうえで臨めば期間中の一日だけならば問題ないという目算が出た

ちょっとお釣りも出そうなので、もう一日休みを各自輪番でとれるようしたところ・・・

一斉休みの前後の日の休暇券が裏で取引されているとかなんとか

 

「ん・・・・・・OKっと。」

机の隅の山になった書類束の上に乗っける

すでに40cmにはなろうかというこの書類束はマニュアルである。

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精さんたちの一日休みの許可書類を出したとき、時雨がポツリとつぶやいたのだ

 

「僕たちも一斉休みとってみたいよね・・・。」

 

それをつぶやいた後、ちょっと言いたげにこちらを見ていた

輪番で休むことはあれど一斉休みというものはない

吹雪も「そうだね~」と苦笑していた

しかし決済が誰もできないというのはまずい

かといってここで「じゃあ俺が残るからみんなは休みでいいよ」

こんなことを言った日には血の雨が降りかねない(大本営に)

 

そもそも一斉休みなのに俺が残るという時点でダメなのだが

 

「いくらなんでも誰かしらはいないt・・・ん?」

時雨の左腕に握られているスマホが偶然目に留まった

どうやら誰かと通話中の状態のままである

「ん?どうかしたかい?」

時雨が不思議そうな顔をしてこちらに近づいてきた

それと同時に、画面に誰と通話中の状態かが見えた

 

 

古鷹さん

 

 

「よし!すぐに検討しよう!」

 

即断即決

後ろへと全力疾走

君子危うきに近寄らず

 

 

 

 

 

 

といった経緯で一日代理の提督を立てることになった

大本営組は頼れない、柏崎は技術畑なので却下

残った彩雲にお願いしたところ、快諾してくれた

「みっちゃんもたまにはみんなと遊んでおいでよ!」

ありがたい申し出だった

念のためにめっちゃ大変なことの旨を伝えたが

「僕をなめちゃいけないよ!」

その一言でなんというか説得力が増したというか・・・

 

事情も知らず丸投げというわけにもいかないので何かあった時のマニュアルを作成したものがこの40cmの書類タワーである

当日は妖精さんのシフトも通常と異なるため、最終確認をしたシフト表を置いて完成したのだ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・はぁ。」

皐月にねっとりと絡まれて執務室に戻ってきたのはフタフタマルマル

花見の区割りや日程変更の後詰を行ったのだが、6時間も拘束されるとは思わなかった。

 

望月はダイレクトなセクハラだが、皐月は何というか遠回しなセクハラがおおい。

だが、両者に共通していることは仕事はしっかりとやる

仕事の話となれば、おちゃらけているときでもエロムードの雰囲気でもきっちり切り替える。

実際、花見の区割り変更や警備関連の見直し、運搬等の話は早くに終わった

そこからは引き留めに引き留められ、ねっとりとしたボディータッチを躱しに躱し、ようやく帰ってきたのだ。

 

机の上には出るときにはなかった書類

達筆なところを見ると川内の報告書だろう

ちらりと表紙を見たが、精神が疲弊しているときに見たことを後悔した

 

 

 

 

「花見を狙った艦娘のテロ、反乱に関する事案」

 

 

 

 

艦娘とていい子ばかりとはいかない

中には司令官や提督に操られている

艦娘は本来いい子ばかりだ

 

そんな幻想はない

 

ここに捕虜として所属しているル級やリ級

この二人やほっぽちゃんがいい例だろう

深海棲艦を生物とした場合正常なのは人類や艦娘に憎悪を持ち攻撃することだ

しかし、上記3人は違う

憎悪や恨みは多少あれど、人並みであり攻撃に関しては殴られてから応戦か指示があった時しかしなかった。

 

いわゆる人類サイドに近い深海棲艦だ

 

深海棲艦にそういった存在がいるということは当然艦娘にも存在する

ごくごく小規模だが、川内から上がってくる報告書みたいに人類や艦娘に対して危害を加える者たちがいる

このような者たちは少数である

大多数は悪い意味で人間の闇に染まる

ブラック鎮守府の摘発

これがいまだに出る理由は艦娘側の隠蔽工作が関わっている

提督と艦娘が手を組んで資金流量や人命軽視の作戦が決行された場合、摘発が難しい。

発覚するのは、何らかの理由で艦娘側がいなくなった時である。

私利私欲に走って手を染めた艦娘は監視施設や刑務所的な場所に送られ、処罰される

ここの部分があいまいなのは自身が関わっていない暗部

軍の中でも超上級のシークレットとして扱われており、関連資料は閲覧することや口にすることもできない。

 

「あの二人の出番かな。」

一筆の書類を書くと、決済済みの箱に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おそらくここで提督は時雨さんのスマホに気づくはずです。」

「うんうん」

「わざと画面が見えるように気が付かない体で近づいてください。そうすれば提督は必ず検討しようというはずです!」

「さすが阿武隈ちゃんです!早速明日決行しましょう!」

一斉休暇は3人の戦略的勝利だった




やっとこさ花見編へと突入です・・・(ソメイヨシノ散っちゃってるけど)
話数は4~5話前後を想定しています!

それにしても一向に春イベの情報が来ない・・・
4/27日のファミ通に合わせているのかもという説が有力らしいですけどどんなもんでしょうかね?
ツイッターでごちゃごちゃ予想話しているのが一番楽しかったりしてw
(始まって地獄を見るパターン)

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