久しぶりに温かくおいしい夕食を食べ、風呂にもつかり自室に戻ると20時になっていた。
どうせならもう少し羽を伸ばすか。
そう思い自室を出てあるところへと向かう。
甘味処間宮の隣には、もう一つ建物がある。
鳳翔さんがやっている小料理屋だ。
軍艦だったころの記憶で料理がうまい艦娘というのは何人かいる。
鳳翔さんもその一人であり、かつそれで店をやりたいという本人の希望があったため許可をした。
仕事が少なければいつも来るのだがここ1か月前後はとんでもない忙しさだったためこれなかった。
「いらっしゃいませ・・・提督さん!今朝はすみませんでした。」
「ああ。別に気にしてないよ」
「鳳翔さんえらい顔やったもんなぁ。提督のこけた顔見て驚いたんやろ?」
店に入るとカウンターには先客がいた。
「龍驤もいたのか。」
「なんや?おっちゃ悪いんか?」
「んなわけないだろう。駄弁り相手が確保できて安心したとこだ。」
龍驤の隣に腰を掛ける。俺は一人で酒が飲めないタイプだ。
一人酒をやると大抵2、3杯でやめてしまう。
「朝は本当に驚きましたよ?ちゃんと食べてました?」
「あーそのことはもう勘弁してくれ・・・」
「古鷹にでも見つかったんか?」
「・・・・・察しろ」
若干ぶっきらぼうに言うと、おーこわと茶化しながら詮索はやめてくれた。
「ところで提督。以前のものでいいですか?」
「そうだな。そうしてくれる?ビンは4号でいいや」
「なんや?えらい豪華なもんでも出てくるんか?」
「そういうわけじゃないが。まぁ日本酒は豪華かな?」
「提督さんお待たせいたしました。」
持ってきたのは、きゅうりとたくあんの漬物の盛り合わせと枝豆の小鉢だった。
枝豆は飲む前に食べておくと胃を保護してくれて酔いにくくなる効果があるから、俺はいつも飲む前に食べるようにしている。(漬物はただ単に好きなだけ。たくあんおいしいです。)
「こうやって気を使うのに何であの時は、ウィスキーを一気なんてしたんやろなぁ?」
「どーもわからん。たぶん深夜テンションだろ。あの時は2徹してたし。」
「川内とうち二人で運ぶの大変やったわ」
「おごってやるから許してくれ・・・。」
「サンキューやで!でもこんなことはなるべく無いようにしてな?」
念押しされわかったよと返事をする。
「それにしても今日はついてるな。提督チョイスの日本酒が飲めるなんて。」
「そうなのか?」
「鳳翔さんとこにおいてある日本酒は種類が多すぎてどれがうまいのかわからへんのよ。提督の日本酒のチョイスに間違いはないって噂やで。」
実は鳳翔さんのところには、日本酒は全国の有名どころは全部置いてある。(マイナーは自分が気に入ったやつのみ)
「そんな噂があるのか?確かに好きだけどさ。」
そんな噂がついているとはつゆほどにも思わなかった。
「やっせーん!」
話を続けようとしたらいつものこの時間になると来る乱入者が突入してきた。
「おう!じゃあこの書類を。」
「夜戦ばっかりじゃ疲れちゃうもんね!」
「うそだよ。」
「あの川内から夜戦を断らせるのは世界広しといえどもうちの提督くらいやな。」
「褒められてるのか?」
正直けなされたとしか思えないが・・・まぁ置いといて
「川内も昨日は世話になったし、出してやるから付き合ってくれ。」
「ほんとに!」
「しかも提督チョイスの日本酒やで!」
「やったー!」
うきうきとした顔で俺の隣に座る。
鳳翔さんに頼み一升瓶に注文を変更した。
「押しかけようとしたら電気がついてないからこっちにいると踏んで正解だったね。」
「時々夜戦って言って突っ込んでくるがよく来るな?こっちに来てもほぼ確実に書類との夜戦しかないのにな。」
「もー!察してよ!」
「?」
むくれているが心当たりがない。
「提督と吹雪が心配なんだって!どうせ今日早上がりしてるのは時雨が半ば強制的に追い出したからでしょ?」
「今日は港のほうから来とったからなぁ。大方、船の上で二人して仕事のことでも浮かんで先の書類を片付けようとして時雨と古鷹に絞められたんやろ?」
・・・・・・盗聴器や発信機でも俺についているのか?
「図星でしょ?みんな長い付き合いなんだから顔にそっくりそのまま書いてあるよ。」
「さらにさっきの沈黙は盗聴器や発信機でもついてないか一瞬考えたやろ?」
「お前らみんなエスパーか!!」
「「わかりやすすぎ(や)るんだもん」」
・・・・・・そんなでてるかな?
意味はないが顔を撫でてみるがわかるはずもない。
その後は他愛もない会話に切り替えた。
絞られたことなんて思い出したくもない・・・。
「お待たせいたしました。」
出てきたのは、揚げだし豆腐としめさば、そして酒は磯自慢だった。
磯自慢はフルーティーで飲みやすく、初めて飲む人にもお勧めできる日本酒だ。
そして、俺が特に好きなのが揚げだし豆腐だ。
だしを吸った豆腐が実においしい。
さらに、残っただしと大根おろしでいっぱい飲むのは最高級のうまさだ。
すいすいと酒が進む。
「なんや提督の杯あいとるやん!川内ついだれや」
「やっせーん☆」
なんだその掛け声
・・・・・まぁ楽しいからいいか
メシテロになっているか怪しい・・・w
さて、今回で閑散期のシリーズは終了です。
次はまたちょっとだけ忙しい日常に戻っていきます。