これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の花見 その5

今までのどんちゃん騒ぎのせいで目もくれる暇もなかったが、若木の桜は満開に咲き誇っている。

ある程度育った桜の木を植樹したのだが、今のところ枯れたり、元気がないものはいない。

といってもまだまだ若い木ばかりなので、満開になっても寂しいところが出てしまう

それを防ぐために、影響しない範囲で多くの木を植えた

お蔭で木の高さこそないものの、一面見渡す限りの桜で覆い尽くされており、筆舌に尽くしがたい

ぼやーっとみていると、川内がいないことに気がついた

どこかで追い抜いてしまったかと思ったが違う

後ろには先ほどのメンツがワイワイと飲んでいた

「提督。こっちこっち。」

右手の方に川内が急に現れた

「わりーっけね。ちょっと見失ったわ。」

見失わないよう川内についていく

そこで、見失ったわけがわかった

桜の木の植え方がこのあたりだけ少し違ったのだ

獣道みたいに人一人が通れるくらいの隙間を縫っていく

そこを抜けると広めの空間・・・といっても先ほどの花見会場よりかははるかに狭いが開けたところであそこの会場では見なかったメンツが飲んでいた

「お!司令官連れてこれたんやな。」

「司令官こちらにどうぞ!」

「・・・zzz。」

若干一名桜の木の幹を枕にぐっすり眠っている者がいる

 

「あっちはどうやった?」

「ん~・・・。まぁそこそこのカオスというか・・・ね?」

主に望月や皐月のあれとか古鷹のあれとか口に詰め込まれまくったこととか

話し出すときりがない

酒の肴にはいいだろう

話すと案の定そこにいるメンツは大笑いしていた

「また盛られそうになったんか。」

「あの時は不自然な甘い香りがしたから気が付いただけでなかったら気づかなかったよ・・・・・・。」

「あー。それあたしがつけるようにしたんだ。」

いつの間に起きたのか加古が提督の後ろから出てきて重箱の中のつまみを探していた

「前に作った後医務室に来た子が誤飲しちゃってさぁ。それ以来媚薬関連は甘い香りをつけるようにしたんだよねぇ。」

「・・・・・・媚薬そのものを撤去するという選択肢は?」

「なんとなくもったいないから?」

「・・・さいですか。」

おおもう・・・

またあれに気をつけなきゃならんのかと思い、静かにうなだれる

「って古鷹の目付けはいいのか?」

ちゃっかり隣で再び酒盛りを始めた加古に言う

「笑い上戸の軽いの引いたんなら大丈夫だよ。」

のんびりと時雨に任せときゃ大丈夫と言って手酌で煽った

「まぁまぁ。お疲れさんってことや。」

「司令官は何を飲まれますか?」

龍驤は肩をバシバシたたきながら慰め、吹雪は気を使ってか酒を進めてきた。

「日本酒で・・・。」

「はい。どうぞ。」

クーラーボックスから一升瓶を出し、お猪口に注いでくれた

「ありがとね吹雪ちゃん。」

「・・・あら?」

「おっと・・・これは。」

受け取った時、ちょうど桜の花びらがひらりとお猪口の中に入った。

「なんとまぁ。」

「きれいですね。」

2人で顔を見合わせて微笑み提督は煽った。

「おーおーいい飲みっぷりやね。」

次はうちがと龍驤が次の酒をと進めてきた

時間は穏やかに過ぎていく

向こうの方で少し騒がしくなった

どうやらル級とリ級が合流したのだろう

あとで顔出さないとなぁ

 

 

 

 

 

「やぁやぁ。飲んでいるかい?」

「え?大将?」

漫然とそんなことを考えているとあまり聞きたくもない声に振り向くと大将がいた

幻聴と最初は思ったが本当にいた

何やら顔色が悪く汗をかいている

「どうしてここに・・・。それより体調が悪そうですけど大丈夫ですか?」

「ああいや。問題ない。」

汗をぬぐい、呼吸を整えた

「・・・・・・失礼ですがお仕事の方は?」

「大丈夫だ。ちゃんと終わらせてあるわい。」

「それならよかったです。」

「わしらは明日からじゃからのう。前日入りというやつじゃ。ちょっといいかの?」

親指を後ろに向けながらつづけた

「あ、はい。鎮守府の方ですか?」

「うんにゃ。榛名君にいって旅館の一室を用意してもらったんじゃ。ちょっとこれもしながら話をしとうての。」

お猪口のしぐさをした

「あー・・・・・・私はいいですけど・・・・・・。」

ちらっと後ろを見る

吹雪以外のメンツは不満ありありの目をこちらに向けてた

特に川内が顕著だった

「大丈夫じゃよ。じゃあ行こうかの。」

「いやいやいや」ピロン

「あ、提督。大丈夫だよ!行ってらっしゃい!」

先ほどまでふくれっ面だったはずの川内がニコニコとしていた

手にスマホを持っているところからすると、何かいい知らせがあったのだろうか

龍驤や加古は驚いた顔をしている

が、すぐに川内が近づき少し話すと不満そうな顔は消えた

「ほれいくぞ?」

「え?あ?はっはあ・・・・・・。」

 

 

 

「まぁいっぱい・・・。」

「あっすみません。」

旅館の一室

縁側にはこちらも一面の桜の木

きれいに咲き誇っており、実に見事だ

「今度の作戦についての話がしたくての。」

「そうでしたか。でもそれなら後日でもよかったのでは?」

「それがそうもいかなくてな?あの中将がらみなんじゃよ。」

 

 

あの

ほっぽちゃんを追い回し、現在も北方方面に入りびたりの須下のことだろう

 

 

「何かあったので?」

「うむ。春の作戦が北方に決まってな。今回は駿河の出番はほとんどなさそうなんじゃが・・・。」

「あいつが動いていると?」

「そうなんじゃよ。しかも部長までもが動いている。近々ある軍法裁判のことでなんじゃろうが・・・。」

北方方面の監視を強化したいが、軍令部長の動向も気になる

諜報に特異な砂安中将とて両面の展開はできても少し薄まった収穫しかできないだろう

「それで川内を動かしてほしいと?」

「そうじゃな。北方方面をお願いしたい。」

軍令部長の方は君が許さんじゃろ?

そういったことを言われると提督の顔が少し曇る

「そういうことじゃ。よろしく頼んだよ。」

「はい。承知しました。」

静かに礼をした

そして、会場に戻ろうと立ち上がる。

 

 

「おいおい。もう行くのかい?」

「ル級とリ級と話をしていませんので・・・。」

「まぁまぁそういわずにもうちっと話さんか?」

肩をつかまれ、すっと着席させられる

「いやしかし・・・・・・。」

「付き合ってくれなきゃこれから毎日一日一回文月についての電話をするがいいかね?」

「わかりました。」

電話線を切りたいが、緊急の連絡があった時に困るので切るわけにもいかない

ぶん殴りたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢しグラスを持つ。

「ただし、ちょっと酔い冷ましに水をしばらく飲みますよ。」

「ああ。それなら大丈夫じゃよ。ほれ。」

いつの間に持っていたのかクーラーボックスから瓶を取り出し、注いだ。

 

 

 

「~~でな?・・・・・・で・・・だっだんじゃが。」

「ええ・・・・・・。はい・・・・・・。」

水を飲んでいるはずなのだが、ボケーっとして来た。

どうやらここに来るまでに飲みすぎたのだろう

眠気こそないものの、酔いが回ってきているのがわかる

「おーい!大丈夫かの?」

「!はい!えっとなんでしたっけ~?」

「おいおい。これについての話じゃないか。」

小指をひらひらさせる

「ゴーヤと阿武隈と皐月の分送っといたんじゃけどもう届いているんじゃろ?」

「ああ・・・・・・。引き出しにしまってありますよ。」

グラスの中を一気にからにする

「全く・・・。あの3人でもなければ君の意中の子はいったいどこにおるんじゃろうな。」

「そんなの。うちにいますよ~だ。」

「なに?」

大将はその一言を聞くと提督に向き直った

提督は見たこともないくらい真っ赤になっており、若干頭をふらふらさせている

「なぜそれを早く言わん!」

「だって~私にケッコンする資格なんてないからですよ~。」

提督は机に顎を乗せた

「教官の子と教官を西方であんな目に合わせた自分にそんな資格・・・」

「あれは軍令部長とわしの責任じゃないか。君に責任なんて・・・!」

「だから私のわがままで身勝手なところなんです。みんなの好意だって知っていて。それをしらないふりして。」

机の上にある瓶の中身をグラスに注いで再び煽る

「まったく・・・それで?渡す渡さないは置いておいてだ。誰が意中の子なんじゃ?」

「え~・・・。それ・・・は・・・・・・・zzz。」

「え?なんじゃって!?」

「zzz」

何か言おうとしたのだろう

しかし、提督の瞼は降りてしまった

 

 

 

「あー・・・さすがに飲ませすぎたかのぅ・・・・・・」

提督が先ほどまで飲んでいた液体の瓶をそっとこちらに持ってくる。

提督は酔いが回って気が付いていなかったが、これは望月が持っていたヴォッカの瓶だった。

最初に飲ませたのは薄めたもので、徐々に濃いものに変更していった

「・・・・・・阿武隈君にどうやって言えばいいのやら」

なぜ提督をここまで酔わせたのか

ここの所属している子たちは提督に好意を示しても照れこそするものの、誰が好きだという浮いた話をしない

だからこそ気になったのだ

提督の意中の子はいるのか

そしてそれは誰なのか

 

 

 

それを聞き出すのに使われたのが大将というわけだ

阿武隈と酔う前の古鷹の交渉術(?)によって大将は快諾(?)した

 

 

 

「・・・耳本君をこのまま阿武隈君だけに引き渡せば許してもらえるかもしれんの。」

さらっと保身に走るために提督を早々に売ることにした

 

後日、意中の子がいるとしかわからなかったことを伝えたが、無事許してもらえたらしい




というわけで花見編(やっと)終了です
次はイベントがらみの話で本編を進めてきたいなぁと思います

E-5の丙堀が辛くて辛くて・・・
一本目のゲージを何度破壊したことか・・・
楽なんですけど資材がそこそこいるんです
結果リットリオだけでも迎えられたので手打ちにすることにしました・・・
最近ツイッターで別の作者さんをこっちサイドに引き込もうとしているのが原因だったり・・・?お許しください!時雨の画像をささげればよろしいのですか!?(免罪)

ところでしばふ村の新しい子
wikiで性能を見ていろいろとビックリしました
ゲットしてから速攻で演習メンバー入りさせましたけど・・・
恐ろしい子です・・・



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