これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の後手

「・・・・・・。」

鎮守府執務室

提督は珍しく部屋でタバコを吸っていた

吹雪は提督の名代として房総鎮守府へと出向いている

 

 

 

軍資金横領、機密情報漏えい、軍規違反の杉蓋、骨田に死刑判決下る

刑は即日執行!軍令部長の謝罪会見の模様!

軍令部長の決断!前例なしの即日執行!

志垣軍令部長の聖断!軍内部の膿みを排除する

 

 

 

机の上の新聞の一面にでかでかと書かれていた

報道番組、週刊誌までもがこの話題一色となっていた

 

志垣軍令部長

桐月大将と同期

中将時代にインド洋(カレー洋)解放作戦にてインド洋北部の制海権確保、ドイツをはじめとするヨーロッパ各国との連絡手段の確保に成功した功績で大将に昇進

国民からは英雄とたたえられた

大将に昇進後、すぐに軍令部長に就任

見た目もいいため、国民にはとても人気がある

 

 

 

 

しかし、タカ派の筆頭格でもあり海軍内では裏で横領や他国への技術流出、艦娘の売買の仲介役を担っているなど黒いうわさが絶えない

これが表ざたにならないのは報道関係の手綱を握っているのが原因だ

 

 

 

「くっそ・・・・・・。」

提督は机をたたく

 

 

 

 

志垣軍令部長と杉蓋、骨田の両名は裏で通じていた可能性が高かった

それを証拠に、杉蓋か骨田のどちらかが出張で東北、北海道方面に出向いているときに同じく別件で視察という形で同じ方面に必ず出向いていた

他にもタカ派で黒いうわさがある人物とも行動を共にするなどの怪しい面があった

こんなことが今まで表ざたにならないはずがない

情報統制ができる強権を持った人物は海軍内には一人しかいない

そのためにも取り調べを入念に行い、余罪や協力者について吐かせる必要があった

 

 

が、結果はこの有様

控訴も認めず即日即断即執行

口封じのためだろう

調書を大将に頼んで入手したが、罪状について聞くと間違いありませんと2人ともあっさり認め、自供したことになっている

普通なら事細かに書かれるはずの調書は明らかに偽造してますといったものだった

 

 

 

だが、それを指摘するものは誰もいない

軍のトップの人物に歯向かうには旗色は悪い

国民は英雄のいう事は鵜呑みにしている

メディアも英雄のいう事にイエスと言えば利益を享受できる

誰もが疑わず、疑問の思っても自分の気のせいかと流す

結果として国民に今のところ不利益はない

今のところ’は’だ

 

確実にいつかはほころびが出る上、タイミングが悪ければこの日本どころか人類の危機になりかねない

そう思うが何よりも気になっていることは

 

 

「・・・時雨にどう説明しようか」

ある種の危機的状況だが、提督はそれよりも心配したのは時雨だった

うすうす感づいてはいるだろうがいつかは話さねばならない

その時のために言葉を選んでおこう

そう思い、大将から来た報告書を机の下から二段目の引き出しにしまいカギをかけた

机の上にはさらに川内から上がってきた報告書

 

北方方面での闇取引らしき活動が活発化してきている

 

現在の主戦場は南方を過ぎ、中部海域・・・いわゆる太平洋のど真ん中あたりだ

それぞれ、各地域でも小さな戦闘はあれど定期掃海で何とかなる程度だ

その中でも戦闘が少ないのは北方方面だ

こちらは、現在北方棲姫(ほっぽちゃん)が不在のため、活動が著しく落ちている

それを狙ったかのように、他国の不審船の流入率が上がっているのだ。

また、それに伴ってタカ派の東北方面の出張や配置換えが頻発している

もともと、タカ派の地盤ではあるが、ここ最近の動きは異常だ

8割がたの鎮守府や警備府などの拠点の提督が変更されている

今回の作戦が北方方面とはいえ4月を過ぎてもまだ配置換えがあるのはおかしい

 

川内からの報告書からはそう読み取れた

引き続き監視を続けるという言葉で締めくくられていた

 

のだが、最後の一枚に

カレー洋海域解放作戦についての資料を集めおよび情報収集の許可をお願いしたいと書かれていた

 

 

 

インド洋解放作戦

 

軍の暗号ではカレー洋解放作戦と命名されている

暗号といってもまんまなのだが

 

カレー洋一帯の制海権を取り戻し、ヨーロッパとの人員の行き来が再びできるようにするために立案された作戦だ

作戦は4段階でジャワ島を制圧、その後インド洋全体の簡単な掃海、それと同時にセイロン島に作られた敵の航空基地の空爆を行い、最後のマダガスカル島の確保でインド洋の制海権ある程度を確保するというものだった

作戦は最初は大成功だった

マダガスカル島を確保し、ドイツを通じてヨーロッパ各国の状況を知ることもできた

 

 

 

マダガスカル島制圧直後、セイロン島に姫級の個体が発生

港湾機能を併せ持つことから港湾棲姫と命名

再度制海権を脅かされる恐れがあったため、夜間に進軍し、朝方の先制攻撃で叩くことを上層部会で決定

まだ当時はケッコン艦が少なかったため、全国から高練度の艦娘を臨時招集し、戦艦4隻空母2隻の超重量編成が決定した

 

 

 

 

結果は事実上の大敗北

艦隊は大ダメージを受け一人が犠牲になった

事態を重く見た上層部は国民にまだ知らせていないマダガスカル島制圧の報を知らせ、索敵不足等を指摘される前にセイロン島の状況を報じた

そして、現状叩く必要なしと判断

戦線を張ったと伝え、セイロンの悲劇については完全に伏せた

完全に情報封鎖を行ったため、軍の内部でも知る人は少ない

 

 

 

「・・・」

改めて調べれば何か出てくるかもしれない

しかし、提督は許可印ではなく不許可の印を取り出した

 

「・・・・・・すまん。」

誰に向けて言ったのか

提督は不許可の理由を記載し、不許可の印を押した

そして、山のように吸い殻が盛られた灰皿に銜えていたタバコを押し付けゴミ箱に捨てた




暗い話が続きましたが次は明るいはず・・・(多分)

熊野改二・・・うちは当分見送りです☆
大鷹改二の方を優先したいので・・・
というか長門も改二にしてあげたいけどこっちは設計図足りないし(´・ω・`)
設計図艦が多すぎて毎日白目をむいている有様です

ちなみに瑞雲祭りの初日のチケットが当たったんで行ってきますw
ほんとに当たるとは思わなかった・・・

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