これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府と改二 その2

「「えっ?」」

 

思わずエンガチョしたくなり、二人とも勢いのままに扉を閉めた

そして、顔を見合わせた

 

再度大将室のドアを開けて、中の様子をうかがう

 

「「・・・・・・。」」パタン

 

中の様子を説明すると

 

大将の顔は満足に満ち、目をつぶってどこぞの拳王みたいに右腕を天に向かって突き上

げている

しかも片足は机の上、もう片方は椅子の上とバランスを崩したらけがしそうだ

・・・そして妙に壮大な音楽がどこからともなく流れている

 

中将は床に・・・倒れ伏していた

すすり泣きをしながら

先ほど聞こえたすすり泣きはこれだろう

時々

「なんでや・・・なんであの変態に先を越されにゃならんのだ・・・」

と口汚く罵っていた

しかも、中将の周りに水たまりができている

 

その様子を文月は苦笑いで何とも言えない顔をしている

 

 

 

 

「なぁにこれぇ?」

「みっちゃんあたしが聞きたい。」

再びドアを閉めた後、望月と提督はもうどうしたらいいのかわからなくなっていた

ふと、廊下の先を見ると誰かが途中に看板を置くとそそくさと退散していく姿が見えた

反対側にもいつの間にか看板が置いてあることに気づいた

 

 

『大将ご乱心につき近寄るべからず』

 

 

「・・・・・・。」

「ダメだこりゃ。」

この看板見た感じ即席ではない

という事は前例があったという事だ

おお・・・もう・・・

頭が痛い

額に手をやりながら扉の前に戻る

そして、あきらめたように再びノックをしようとすると

「ちょっとまって!耳本中佐!」

聞き覚えのある声の主が呼び止めた

「おや。雷か・・・どうかしたのかい?」

「ええ。文月に言われてきたのだけれど・・・中で何か?」

「あー・・・うー・・・。・・・えっとね?」

 

カクカクシカジカシカクイムーヴ

 

簡単に説明すると雷は苦笑した

「時々あるわ。ちょっと待ってて。話ができるようにしてくるわね!」

そういって入っていった

 

 

 

 

「大丈夫よ!」

10分くらいして、中から声がしたので扉を開けてみる

・・・信用していないわけではないのだが恐る恐る

 

「おお!先ほどはちょっと見苦しいところを見せたようですまなかったのう!!」

「・・・うう。雷ちゃーん・・・。」

扉の向こうでは、ソファーの上で上機嫌に座っている大将と部屋の隅っこでいつの間にか敷いた畳の上で雷の膝に泣きついている中将がいた

・・・あまり好転していない気はするが大将と話ができるようになっただけましと思うようにしよう

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでリンガに行くにあたってタカ派の方も視察をお願いしたいのですが。」

「なるほど・・・。うーん・・・・・・。」

大将は顎に手をやり、ちらっと中将を見た

中将はいまだに落ち込んでおり、復活の兆しは見えない

雷も大将の視線に気づいて苦笑し、首を振りながら指でバッテンを作った

こういった方面の話は中将が詳しい

しかし、残念・・・情けないことにその中将はとても使い物にならない

「あー・・・そのー・・・な?」

「もういいですわかりましたんで。」

ハイライトが消えうせた目で淡々と返答する

「ここでははっきり言えないが東北、北海道方面に行ってもらう可能性が高いことは承知しておいてくれ。」

 

 

 

最近異動が活発になっている地区でもあるため、視察を行う予定だったようだ

候補として告げられたのは、仙台第三、函館第二、釜石の3つらしい

どの候補も重要な場所であり、リンガと規模のつり合いは若干取れないが申し分はない

一番大きいとしたら函館第二だろう

そして、タカ派の中でもそこまで活発ではない部類だ

 

タカ派といえど何も不正ばかりたくらむものばかりではない

ただ単純に、海域奪還を優先的に行うべきだという意見を持っている者もいる

ハト派の慎重すぎる姿勢には同意できないからという理由でタカ派に属す

タカ派の中でも穏健の色が強い系統の特徴でもある

 

逆にハト派の中にも不正をたくらむものがいるがそっちに関しては詳しいことは中将で止まっているとのこと

裏付けや証拠集めが終わってないのだろう

 

 

 

 

「承知しました。・・・ところで。」

「あ?わかる?いやー参ったのぉ!」

話を持っていくまでもなくあちらから振って来た

見るからに顔がにやけており、聞いて聞いてオーラがにじみ出ている

「うっぜぇ。」(何かいいことでも?)

「司令官。逆だよー。逆。」

つい本音が出てしまったが、大将はそれを気にする様子がない

 

 

 

 

「睦月型の改二ですか!」

「そうなんじゃよ!ついさっき妖精さんから電話があってのぉ!!本当に長かった・・・!」

そういって文月を抱き寄せ、頭を撫でまわす

「あのねぇ大将ぉ~・・・。まd」

「ついに砂安君に追いつき追い越せるのだよ!!」

提督はなぜ中将がメンタルブレイクしているのかようやく理由がわかった

ちなみに追いつきは雷には秋に大本営指定の浴衣が支給された事だろう

その期間は大本営から支給された衣装を身にまとうことになっている

しかし、文月には現状それがない

そのため、おそらくだが支給当時大将を散々煽ったのだろう(NDK?NDK?みたいな感じで)

そして、今その仕返しをしている最中なのだ

 

 

 

 

「改二は妖精さんが突然話を持ってきますからねぇ・・・。文月、おめでとう。」

「あのぉ~・・・。それなんだけどねぇ?」

提督は文月に祝いの言葉を言うと言いづらそうに衝撃の一言を言った

 

 

 

 

「妖精さん曰く睦月型の改二としか言ってないんだよぉ。」

 

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・え?」

少しの沈黙ののち、思わず聞き返した

「だからぁ!睦月型の改二としか告げられてないの!」

「ふふん!そうはいっても実装夏といわれとる!夏といえば7月!7月といえば文月!決まったも同然じゃな!」

文月の言葉を流し、大将はどや顔でソファーにふんぞり返っている

「へぇ~・・・じゃあ望月にも可能性があるってことですね。」

提督はちらりと望月を見た

「へっ?!いやまぁ・・・・・・ないわけではないけどさぁー・・・。」

姉の文月の方を望月は思わず見ると、文月も困ったように苦笑した

「改二が来ている皐月と一緒に暴れまわったのは文月じゃからのう。彼女に決まっているわい。」

「でも確約はもらってないんですよね?」

 

「何が言いたい?」

「いえ。あくまで事実を述べたまでですよ?」

 

大将は先ほどまでの笑みを消し、鋭い目つきで提督をにらんだ

提督はというと目を細めてにこにこと笑っている

 

「ちょっと外に行こうかの?」

「そうですね。」

すっと立ち上がると文月と望月を置いて足早に外に出る

 

 

 

 

 

ツギハフミヅキチャンデキマリッテイッタダロウガァ

マダキマッテナイデスゥ!ウチノモチヅキニクルカモシレナイジャナイデスカ!

ストーカーノキョウカハダレモシマセンー

マイニチマイニチストーカサレテルワケジャアリマセンー!フダンハチャントシゴトデキルイイコナンデスゥ!

ソンナノフミヅキチャンダッテソウダワイ!

モチヅキダッテソウデス!

 

 

 

 

 

 

どこかの格闘家のテーマ曲がどこからともなく聞こえてきそうな・・・

望月と文月はもうあきらめてお茶をすすり始めた

「でもよかったねぇ。」

「ん?何がー?」

「耳本さん。ちゃんと意識してくれてるみたいで。」

「ブッ!」

文月がニコニコと望月に爆弾を放り投げた

それに対して望月はすすりかけのお茶が変なところに入ってしまいしばらくむせる羽目になった

 

 

 

その後服がズタボロになった提督と腰が・・・腰が・・・とうわごとのように呟きながら同じくズタボロになった大将が戻ってきた

大将はふらふらとしていたが、提督曰く仕事はできる程度のエビぞりをかけたと言っていた

さらに服の弁償代金をちゃっかり大将の個人あてに送っているあたり提督の方が一枚上手みたいだ

 

 

 

 

 

 

「それで?どこに行くんだ?」

打ち合わせを終わらせ、先ほどまでの軍装ではなくラフな格好に着替えた望月と提督

大本営から少し離れたレストランで食事を済ませ、食後のコーヒー(提督は紅茶)を飲んでいた

「ふふふ・・・。お楽しみだよ。」

「?」

少しぞくっとはしたが、ピンクいホテルや大人のおもちゃ屋ではなさそうな雰囲気である(そういうときは大体にやけているのではなく、至極まじめそうな顔になっている)

 

 

 

「ここでーす。」

「・・・おう。」

ついたのはアニ○イト

買いたいゲームやグッズやCDでもあったのか?

そうは思ったがそっちは完全に望月の趣味でもある

ぐちぐち言うのは自分の性分ではない

これならば早く終わって帰れそうだな・・・

 

 

 

 

 

そう思った自分を張り倒したくなった

 

 

 

 

 

店内に入った望月が向かったのはゲームでも漫画でもCDコーナーでもなかった

 

コスプレのコーナーだった

 

そして、今現在あらゆるものを望月自身の体に当ててはこれはどうだ、それともこっち?という事やっている

 

女性とのデートでよくあるシチュエーションだろう

女性が服をとっかえひっかえしてこれは似合うか?こっちの方がいいか。

たいていこういう時男性は何でもかわいいよなんて言ってしまい女性の機嫌を損ねる

テンプレの一幕ではある

 

それが今現在目の前でごく自然に繰り広げられている

 

・・・服がコスプレ関連なことを除いては

 

 

「どれがみっちゃんはいいの?!」

「・・・・・・一つ聞きたいがそれを聞いてどうするんだ?」

「もっちろんそれを着て夜戦を・・・」

「はい!てっしゅー!」

ナースやらメイド服、ミニスカポリスだなんて定番者から今はやりのアニメやゲームのもの

終いには艦娘の衣装まで売っていた(もちろん模造品です)

 

 

 

さっきの寒気はこれだったのかと理解した提督は大急ぎで店を出ると、ちょっとして望月が店から出てきた

「もうちょっと選んでくれたっていいじゃーん・・・。」

「却下。まったく・・・頭の中で下着売り場にでも連れてかれるかなと一瞬思ったが・・・」

「ああ!」パチン

「行かないからな!!」

その手があったかと指を鳴らし、こちらを向いたが速攻でくぎを刺した

「ちぇー・・・。」

むくれた様子で少し引いたところからついてくる

 

 

 

「・・・?」

「ん?どーしたのみっちゃん?」

そのまま地下道に入り、駅に向かっている途中ふとある物が目に留まった

駅地下の店には様々な店があったが、たまたま店先に飾られた上着がたくさんかけられたラックに目を奪われ、近寄った。

 

季節は5月の終わりごろ

 

セール品の中にまぎれていた紺色のパーカーを手に取った

 

「?」

望月を手招きし、首を傾げた状態でそばまで来させると背中に当て、肩幅を見る

あっていることを確認し、そのままレジに持っていく

 

「え?みっちゃん?」ガサッ

さっさと会計すると頭の上に、はてなマークがいっぱい乗った状態の望月へと渡す

「さっさと出ちゃったお詫び。改装がくるようにっていう願掛けだ。」

先ほど買ったパーカーは、ほかの睦月型の改二改装の服装に似ていた

来るといいなと頭を撫で、再び駅へと向かう

一瞬呆けた様子の望月はすぐに我に返り、提督の後を追った

 

 

 

 

余談ではあるが、帰ったのち望月はこのパーカーを出しては着ずに抱きしめているのを彼女の昔からの同僚が目撃している




というわけで久しぶりに少し早めの更新でしたがこちらのお話はこれで終了です
分割する必要なかったかもと今更思ってます・・・

ほんとは望月も演習入りさせてあげたいけど枠がいっぱいいっぱいで・・・
育ててあげられないからせめてこっちで・・・という事で珍しく変態成分抑え目乙女成分マシマシ・・・になってるかわかりませんがやるだけやってみました

ついに由良さん改二実装!
80で慢心中ですが・・・
大丈夫よね(´・ω・`)
これで85だったら笑えないですけど・・・
設計図使うんだから75で十分なはず・・・うん・・・

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