(おそいよ・・・)
「はい!こちら駿河諸島鎮守府です!ああ!えっはい・・・はい・・・少々お待ちください。司令官お電話です。」
艦隊大演習の書類から目をあげると、吹雪が隣の机で顔を顰めていた。
「緊急の融資だそうです。それも今日中に会談したいとのことです。」
「えー?今日って会談3件入ってないっけ?」
カレンダーには3件事前に予約が入っていた。
「どこの鎮守府?」
「房総鎮守府なんです。」
「・・・・電話変わるよ」
『もしもし?駿河諸島鎮守府の耳本です。』
『房総鎮守府の初霜です。融資の件なんですが・・・』
『・・・どれぐらい必要ですか?』
『燃料、弾薬4万と鋼材が10万です。』
『大本営からの許可証はありますか?』
『ええ・・・お願いできますか?』
『それは会談の時にしましょう。16時にお越しください。では』
通話を終了すると吹雪は不思議そうな顔をしていた。
「会談するんですか?」
「今回は別件かもしれない。」
顔を引き締め返答をすると吹雪は事情を察したらしく、鎮守府のある記録を取りにいった。
「ふむ・・・やっぱり入れ替わっているか。」
俺は鎮守府の人事記録を吹雪から受け取り、閲覧していた。
「初霜ちゃんどうしちゃったのでしょうか・・・」
実は房総鎮守府はうちの鎮守府と結構深い交流があり、提督も気のいいお爺さんだった。
しかし、ここ最近の忙しさで人事の変更を見ておらず今頃になって確認をしたというわけだ。
結論を言うとおじいさんの提督は退役してしまったらしく、代わりに若狭鎮守府から中堅の提督を異動したらしい。
初霜は、房総鎮守府の遠征のとりまとめ役であり秘書艦でもあったため、吹雪とはよく話をしたり、休日(うちにもちゃんとあるからな?)を合わせてほしいといった要望ももらったことがあるほどだった。
そんな彼女が内に電話をよこすときにガチガチの敬語を使うはずがない。いつもなら吹雪と多少話をしてから電話を替わるのに、それすらもない。
何よりも、過去の台帳を見ても鋼材の不足が突出して多かった時というのはある事やっていた鎮守府しかない。
絶対に何かある。そういった確信を持った俺は電話を取ってある予約を取り付けた。
「失礼します。」
「どうぞ。」
特にややこしい話もなくすんなりと会談を終わらせ、執務室で待っているとノックとともに久しぶりに聞く声がする。
扉の先には久しぶりに見る初霜の姿があった。若干やつれた雰囲気がある。
「ひさしぶりだね~。吹雪ちゃんにはあった?」
「いえ・・・その・・・」
「・・・まぁそういうプライベートは置いといて書類の確認をさせてもらえるかな?」
そういって書類を受け取ると確認を始めた。
対面してもなお日常会話を避けるということは嫌な予感が強くなる。
「確認しました。明日の明朝出発でもいいですか?」
「いえ!その・・・無茶なことは承知ですが今すぐに出発できませんか?」
「さすがにそれは・・・初霜ちゃんの頼みだし急ぐけど夜間出発でいいかい?」
わざと夜間を強調すると顔に明るみを帯びた。
「承知しました。本当にありがとうございました!」
退出した後に書類の中からある封筒を開く。
「かわいそうになぁ・・・。」
「初霜ちゃんどうでしたか?」
入れ替わりに吹雪が入ってきて心配そうに尋ねる。
「大丈夫・・・とはまだ言い難いかな」
吹雪に封筒の中身の便せんを見せる。
「なんですか?この手紙は?」
「初霜の決死の告発状だ。房総鎮守府は人身売買を行っているというね。口で言わなかったところを見るとおそらく盗聴器かなにかもつけられていたのだろう。」
中の手紙は衝撃的なものだった。
建造した艦娘を即解体し人に戻し、裏で流すというものだった。
艦娘は誰もがかなりの美少女だ。こういうことはするのは当然軍規で禁止されているのだが、裏に強いコネさえあればなんとでもなる。
そこでうちの鎮守府だ。
ほかの提督には知らされてないが、秘書艦や主要な艦娘には知らされている提督の不正を告発する場所。
それをうちでは兼ねている。
そのうえ俺は監察官としても大本営には登録されている。
監察官といっても、出向いて鎮守府のチェックは忙しくてできないため、補給に来た艦娘の状態から探るだけなのだが。
ここまで聞くとなんでそんな重要な役職を占めているかという疑問がわく。
答えは至極単純に、一人で力を持っていて圧力に絶対屈しないから。
軍の階級ならば一介の中佐風情だが、俺は資源会社の社長ということにもなっている。
もしこちらの機嫌を損ねたり、危害を加えて補給停止させられたらどうなるか。
そういった思惑でだれも手が出せないのだ。
俺個人がすでに大本営の勢力の一角であり、また俺の性分であまり派閥に興味がなく(ぼっちいうな)属してなかったら大本営から任せられた(押し付けられたともいう)。
「そんな!じゃあ初霜ちゃんは!」
「大丈夫大丈夫。うちの夜大好きな子が何とかしに行ってくれるって。」
先ほどの電話は川内にかけており、輸送船に紛れて諜報活動に向かった。
待ちに待った夜戦だぞと伝えたら『やったぁ!書類以外の夜戦は久しぶりだ!』
そんなに頻繁にあっても困るんですけどねぇ・・・・
2日後
「提督、報告書だよ。」
結果は真っ黒。
人身売買だけでなく夜伽の強制など、ブラック鎮守府の典型例だった。
おまけに、バックについていたのは大本営の中将。
挙国一致を!なんて会議ではお題目のように叫んでいる強硬派だ。
お前が一番してねぇだろと突っ込みたくなったがぐっとこらえて大本営に電話をかけ、軍法会議の準備を進める。
この一件で中将は階級剥奪のうえ日本国外への追放、房総鎮守府の提督は終身刑が決まった。
「え?房総鎮守府の提督やってみないかって?しかもこっちと兼任?するかバカヤロー!」
ちなみに2日ほど貫徹するぐらい書類が増えました。
うちの場合はブラック鎮守府にかかわる時は、こういった感じです。
現地などを見ることは基本無く、艦娘の状態をみて川内を派遣→調査その結果次第で決まります。
次はまた平和?な話に戻します。
E-3丙突破!
山風が攻略時に出たときはひっくり返りました(笑)
ああいった子はぜひとも出したいですねぇ・・・・。