これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府と観艦式 その2

「失礼いたします!耳本中佐を連れてまいりました。」

 

第一軍令部長室

ひときわ豪奢な作りの扉を開けたのは須下少将

中は普段行く大将室の倍以上あり、部屋には様々な調度品がある

・・・が少々置きすぎで下品な印象を覚える

 

 

奥の机では部屋の主がニコニコと微笑んで手招きをしていた

 

 

「おお。ご苦労様だったね須下君。さ、耳本君こっちに来たまえ。」

 

須下少将の後ろについていきながら軍令部長の前に行く

机の前で目礼をした

 

「何か私に御用でしょうか?」

「ちょっと頼みたいことがあってな?今日の午後の演習に出てはもらえないだろうか?」

 

 

 

プログラムを提督に渡す

見れば、第二戦目のところに赤丸がご丁寧につけてあった

 

 

 

「なぜまた私に?ほかに優秀な者がいるでしょう?」

 

そういうと眉を一瞬ひそめたが、すぐに笑顔に戻った

 

「いやぁ・・・。水雷戦隊が主体の者たちがいなくてねぇ?限りなく近い編成は君しか頼めないんだがダメかい?」

 

見れば水雷戦隊vs打撃部隊を書いてあった

恐らくは打撃部隊の強さを引き立てるために負けろという事だろう

提督は何となくその意図が見えた

そして、ある提案をした

 

「それならば軍令部長直々にやられてはいかがでしょうか?観閲者である国民にも喜ばれるかと・・・。あの夜間航空戦法を編み出した軍令部長の采配を見たいと思う方もいらっしゃることでしょう。」

 

それを言った瞬間、軍令部長の温和そうな顔が崩れた

唇をかみしめ、敵意のある目を提督に向ける

そして、軽くチッと舌打ちをした

 

「あいにく今日は面会があってだな。難しいんだ。頼まれてくれないか?」

「では吹雪に・・・・・・。」

「なるほど?そうやって艦娘に任せるのかね?」

 

その言葉を聞くとカチンときたのだろう

少し眉を上げた

 

「そういうわけではありませんが・・・。」

「じゃあ君が指揮を執りなさい。これは命令だ。」

「・・・・・・普通科の私でよければ。」

「・・・!・・・・・・。」

 

最後の会話で、部屋の空気は劣悪なものとなった

提督は再び目礼をすると静かに退出していった

 

 

 

 

 

「くそ!あいつめ・・・!」

 

 

 

 

退出したのを見届けると同時に、机の上にあるペンをたたきつけた

須下は困惑した顔で志垣をなだめる

 

「おっ落ち着いてください!お怒りはごもっともです。私めが必ずやあいつを演習でたたきのめしてごらんに入れます!」

「・・・・・・。編成は?」

「ご安心ください。大和姉妹に2航戦組、北上と大井の火力重視編成です。」

「・・・そうか。」

 

革張りの椅子にゆっくりともたれかかる

 

「そもそも普通科のやつなぞに負けません!会議の時の雪辱を果たして見せます。」

「・・・・・・。くれぐれも侮るなよ?」

「はっ!それでは私も失礼します!」

 

礼をして須下も退出する

 

 

 

「・・・・・・まぁいいさ。ようやく抱き込みが終わったんだ・・・。大沢元帥の残した最後のあいつを片づければ・・・・・・憂いはない。」

 

ふんと鼻を鳴らし、引き出しを開けた

『西方再打通!欧州救援作戦概要』

 

「欧州のやつらもちょうどいいタイミングで助けを求めてきたものだ。」

 

一枚の紙をそこから取り出し、志垣も退出した

 

 

 

 

 

『第一回戦の空母機動部隊vs水上打撃部隊の演習はいかがでしたでしょうか?私としては・・・』

 

 

 

 

「こんな感じで行こうと思うが異議はあるか?」

 

第9埠頭

ここに鎮守府のメンバーが集まって作戦会議をしていた

 

「特にないけど・・・。」

「・・・司令官って指揮取れるの?」

 

時雨と皐月が不思議そうな顔をした

それもそうだ

演習の時も提督はついていくことなく、指揮を古参のメンバーにゆだねている

 

「・・・真似事みたいなものだ。あんまり得意じゃない。」

「「「「・・・・・・。」」」」

「さぁ行きなさいな。軍令部長には引き立て役と言われたがそんな風になってやるつもりなんてないから安心してくれ。吹雪。頼んだぞ。」

「はい!司令官!」

 

敬礼を交わし、吹雪達はゴーグルをつけて抜錨していった

 

 

 

『さてさて準備が整ったようですので次の演習は・・・打撃部隊vs水雷戦隊です!こちらは戦艦2隻、空母2隻、雷巡2隻の攻撃力に優れた艦隊です!指揮を執りますは若手の注目株であり、次期軍令部長にも近いと噂のある須下少将です!』

 

「ねぇ?次の相手って誰なの?」

「さぁ?事前のプログラムだと何も書かれてないんだよね?」

 

放送を聞きながら準備をしている影が4つ

オレンジの着物と緑色の着物を着た二人組が首をかしげる

二航戦の二人だ

 

「まぁ~このメンツで相手が水雷戦隊なら誰でも勝てるっしょ。ねぇ大井っち?」

「はい!北上さん!」

 

仲睦まじげに艤装のチェックを行いながら二人の方を向く

 

『相対するは先ほど素晴らしい技術を披露してくれた駆逐艦吹雪の所属する駿河諸島鎮守府の艦隊です!』

 

「「「「はぁっ?!」」」」

「すみません!おくれま・・・あのぉ・・・?」

「・・・・・・何かあったのか?」

「「「「静かに!!」」」」

 

大きな艤装をつけた戦艦の二人組

大和と武蔵が埠頭にたどり着くと、そこには先ほどまでのんびりとした雰囲気で艤装のチェックを行っていた4人が耳に手を当てて一言一句逃さないように放送を聞いていた

 

『・・・というわけで今回は特例として水雷戦隊とありますが軽空母龍驤が組み込まれています。ご了承下さい。』

 

「うぁ・・・どうしよう・・・・・・。」

「これ私たち完全に終わったよぉ・・・。どうしよう飛龍・・・・・・。」

「いったいどうしたというんだ?」

「ああ・・・ええと実は・・・。」

 

途方に暮れている4人に武蔵が不思議そうに話しかける

それを飛龍がかみ砕いて武蔵と大和に説明をする

 

「ふむ・・・。私はまだ誰ともやったことはないな・・・。大和はどうだ?」

「私もありませんね・・・。用心していきましょう。」

「だな。過信をせず、慎重に行こう。みんなもそうしょげてばかりでは仕方ないだろう!それでは勝つ可能性がなくなってしまうではないか!大本営麾下の実力を見せてやろうじゃないか!」

 

武蔵が4人に喝を入れると表情がいくらかは和らいだ

 

 

 

 

 

『どうやら各艦隊所定の位置に到着したようです。・・・それでは!戦闘開始!!』

 

 

「はい。はい・・・。わかりました。飛龍さん。彩雲を飛ばしてください。蒼龍さんは直掩機を上げておいてください。」

「はい!」

「了解!」

 

飛龍は大和の指示に従い早速彩雲を、蒼龍は艦戦を発艦させた

その情報が逐一無線で飛ばされてくる

また、蒼龍の艦戦も警戒を怠らない

 

「!敵艦隊発見!ここから約4キロのところを9時から8時の方向に高速で移動中!」

「了解です!艦隊、これより反転して同航戦に持ち込みます!速度が違いますので丁字不利にならないように気を付けましょう!北上さんと大井さんは甲標的で先制雷撃準備を!」

「「了解!(です)」」

 

『おおっと!先に艦隊を発見したのはどうやら打撃部隊の方だ!駿河諸島艦隊は・・・どうやら之字運動を始めた模様です!雷巡の先制攻撃に備えているようですね!』

 

「そろそろ甲標的をしゅt・・・え?!」

「どうした?」

「敵の魚雷が右舷より接近中!!至急面舵を!丁字不利になりますが魚雷通過までの辛抱です!」

 

武蔵がうなずき後方に伝達を行う

伝達が済み次第進路を変更した

やがて、最後尾の北上から魚雷通過確認の知らせがあった

 

「危ないところだt・・・」ドォン!

「どうしましたか!!」

「すみません・・・。被雷しました・・・・・・!」

 

魚雷を避けてやれやれと思ったその矢先、爆発音がした

後ろを見ると大井がペイントで真っ赤に染まっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『重雷装艦大井戦闘不能!駿河諸島の艦隊はラッキーですね!』

 

会場ではざわざわと声が上がっている

その様子を深打はスクリーンで見ていた

相変わらずえげつないことをするなぁと思っているとある声が聞こえた

 

「あれがまぐれと本当に思っているのか・・・?」

(おや?)

「そうじゃないの?」

「あれは相手の心理を見透かしたうえでの二重の雷撃だ。」

 

そう言って地図を片手に相手に説明を始めた

 

 

 

まず之字運動を始めた時点でおそらく相手の偵察機を見つけたんだろう

それで大井、北上の先制雷撃に備えてると思わせる

さらには浅めの進度で魚雷を撃ち、相手に見つけやすくしておく

ここでどっちに進路を取るかだが・・・どっちに取る?

 

ええ?・・・うーん。やっぱり面舵かな?火力もあるし、少しの間の丁字不利なら目をつぶれるし・・・。取り舵にしちゃうと遠ざかっていくし、後ろから被弾すると舵やスクリューがやられて動けなくなる可能性があるからなぁ

 

回避運動後は魚雷の航跡からは目が逸れて、丁字不利を気にするあまり敵艦隊の方に注意が向く

これが罠だ

相手の艦隊は交わされるのは織り込み済みで之字運動の反転したときに魚雷をもう一回打つ

するとどうだ?海面に向ける注意は低いから接近に気が付かずに・・・

 

おお!すごいねぇ!

 

全くだ。

この私もあのような戦略を立てる指揮官の元に行きたいものだ

 

一連の会話を聞き終えると深打はくすっと笑った

(みっちゃんもこっち方面でモテるねぇ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!まだ一隻です!飛龍さんは艦攻、艦爆隊を順次発艦させてください!その後艦戦隊を発艦させて入れ替わりの直掩をお願いします!」

「了解しました!」

「蒼龍さんは艦攻、艦爆隊が発艦させたら現在の直掩機を護衛につけて攻撃を開始してください!」

「了解です!」

 

大和は艦隊を鼓舞するように呼び掛ける

相手は軽空母一隻・・・

水雷戦隊がメインの艦隊にとって防空のみに回すはずがない

須下少将もそれを見越し、艦戦隊を3つとした

 

「えっ?!うそ!」

「・・・どうしました?」

 

飛龍が声を上げた

大和は恐ろしい報告を聞きたくないと思いつつ、報告するように促す

 

「・・・敵艦隊の艦載機隊がいません。直掩機がいないんです。」

「上空や離れたところや低空には?」

「いません。見たところまだ発艦していません!・・・ただ。」

「じゃあ至急攻撃を開始してください!発艦がまだ終わってないのでしょう!」

「・・・はい。」

 

大和の焦った表情に飛龍は顔を曇らせた

しかし、指示通り突入を指示した

 

 

 

そして悲劇は起こった

 

 

 

艦隊の対空砲火はすさまじく、吹雪を筆頭に皐月、川内たちの対空砲火に艦攻、艦爆隊は散っていった

最大の戦力である加古や龍驤を狙うが、この二人の対空砲火もすさまじかった

飛龍が懸念していたのはこのことだった

以前吹雪と対峙した際、吹雪の対空砲火で蒼龍の航空隊は全滅、唯一帰って来た飛龍もわずか2機という悲惨な結果だったのだ

幸いにも単艦だったため勝利はできたが、内容としては負け戦も同然だった

 

「戦果報告・・・蒼龍所属の友永隊・・・戦果無し、江草隊は時雨に軽微な損傷。」

「・・・飛龍所属の友永隊、皐月に軽微な損傷、江草隊は戦果無し。」

「そんな!」

「被害報告。航空母艦蒼龍所属の友永隊全滅。江草隊は帰還4機。攻撃可能なのは2機です。」

「航空母艦飛龍所属の友永隊5機帰還、江草隊は2機帰還しました。攻撃可能機は友永2機、江草2機です。」

 

それを聞くと大和は絶望的な顔になった

武蔵も目を丸くし、信じられないといった表情をした

しかし、待てど暮らせど戻ってくる気配はない

 

「力及ばずすみません。砲撃戦に備えます。」

「了解しました・・・。」

 

さらに悪い報告が続く

 

「・・・ごめん。大和。あたしの甲標的も多分沈められた。今通信が切れた。」

「・・・・・・!」

「まだだ!敵艦隊上空の制空権はとってはいる!我々の弾着観測射撃をもってすれば・・・!」

 

おもわず二の句が継げず、黙ってしまった大和に代わり、武蔵が鼓舞した

が、艦隊全体の注意が大和に逸れたのがまずかった

 

「敵機来襲!!」

「!」

「しまった!」

 

先ほど帰ってきた部隊は全員補給中

直掩部隊も入れ替わりで半分が補給に入っている

相手はこの防御が薄くなる一瞬を待っていたのだ

 

「総員!輪陣形を取ってください!対空砲火はじめ!」

「ぐっ!なんでまた甲板に被弾なのよっ!」

「この程度ならかすり傷よっ!まだ行けるわ!」

 

直掩部隊が半数だったこともあり、被害はより一層酷くなった

体勢を立て直し、何とか艦戦を発艦させる準備ができたころには引き揚げてしまった

 

 

 

 

 

「ひっ被害・・・報告を・・・・・・。」

「航空母艦蒼龍中破・・・。攻撃部隊の発着艦不能。」

「航空母艦飛龍小破。まだ行けます!」

「重雷装艦北上無傷だよ~。」

「戦艦武蔵損傷軽微だ。」

 

大和は平静さを保とうとしたが、無理だった

無線で指揮官である須下に連絡を取るが沈黙しか返ってこない

 

「まだ私たち二人がいる!相手の最大の戦力である重巡は弾着不可!こちらは可能だ!相手の射程外からの砲撃を敢行すれば・・・。」

「はい!観測機発艦!」

 

唯一残った飛龍の艦載機を護衛につけ、向かわせる

距離にして約3キロ

そろそろ相手重巡の最大射程だ

しかしこれで大丈夫・・・

そう思ったのがさらに悲劇を生んだ

 

 

 

 

 

「くっ!どういうことだ!まるで当たらんぞ!!!」

 

弾着観測の通り斉射しても、相手艦隊は全くスピードを落とさない

むしろ正確にごくわずかな移動しかせずかわしていく

 

「そろそろ重巡の有効射程2キロ圏内・・・・・・。こうなったら接近して直接浴びせましょう!」

「・・・果たしてうまくいくかねぇ?」

 

 

 

 

しびれを切らした武蔵と大和の会話を聞いていた北上はぼそりとつぶやく

ちらりと周りを見るとすでに蒼龍は大破判定で戦線離脱寸前

飛龍も中破判定が下りるぎりぎりのところで踏ん張っているが、あと一発貰えば中破で艦載機の発艦が不可になるだろう

そう考えている北上も夾叉をもらっており、小破判定を下されている

有効射程外からの砲撃・・・・・・さらには雨あられの砲撃の嵐だというのに何という精度だろう

 

 

 

 

「全艦!とつny・・・あああああ!」

「やまt・・・ぐあっ!」

 

 

 

 

突入準備の号令をかけようとした時、大和と武蔵に砲撃が当たった

普通なら相手艦隊の火力を見ても危険視するようなところはほとんどない

 

しかし、例外がある

二人の直撃した場所は頭部だ

幸い赤く染まってないが、オレンジ色になっている

・・・つまり

 

『大和、武蔵中破!電探及び測距儀使用不可!』

 

艦隊に動揺が広がる

あの大和、武蔵の装甲を破った?

動揺を見越してだろう

脚を思わず止めてしまった蒼龍、飛龍にも直撃

蒼龍は戦線離脱判定、飛龍も当たりどころが悪く大破判定となった

 

 

その後、魚雷を放つも当たらず昼の戦闘は終了となった




戦闘描写はやっぱり苦手だなぁと思いつつ書いております(;´Д`)

イベントお疲れ様でした
自分は最後にE-2で炎の吶喊かまして海風と大淀を終了3時間前にゲットしてきました
・・・実はこの日は免許の更新で9時30分(終了が11時30分)がタイムリミットだったのですが
大淀さんは9時27分のほんとに最後の最後で来てくださいました・・・


サラトガ改二はやはりというか2隻持ちできるとすごい便利だなぁという性能ですねぇ
とりあえず改じゃないと任務関係の改修ができないのでおいおい2隻目を狙っていかなければなぁと・・・(現在黒トカ改二です・・・)
というかその前に大鳳、大和、武蔵の建造に取り掛かれという話なんですが・・・(;´Д`)

明日は自分は観艦式に行ってまいります
なぜかどちらか一方が当たればいいなぁと思って昼夜両方申し込んだら両方とも当選してきたという・・・(;´Д`)

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