これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府と観艦式 その3

『えっと・・・さっさて!これから夜戦へと突入します!』

 

解説の放送の声が震える

それもそうだ

想定外のことが起こっているからだ

台本には打撃部隊のすごさと水雷戦隊の夜の強みをしか書いてないのだろう

 

『改めてルールの説明ですが、旗艦が大破、戦線離脱判定で落とした方の勝利。双方の旗艦が落とされた場合は引き分け。双方落ちなかった場合は残存艦と損傷の具合での判定となります。』

 

 

 

 

 

 

「川内さん。ここからは指揮の方をお願いします!」

「わかったよ!さぁ夜戦の時間だよ!」

 

場所は戻って演習会場

損傷の確認をし、吹雪から川内の指揮へと移る

と言っても旗艦は吹雪のままだが

 

 

 

 

川内の掛け声とともに、ゴーグルが暗くなる

これは夜の状況を再現するためのものだ

実際の海戦では夜まで戦闘が続いたり、とどめを刺しきれず夜を待って追撃することなどはあるがこれは公開演習

本物の夜を待つわけにはいかない

そこで、太陽光のみをカットするゴーグルが開発された

太陽光のみのカットなので、照明弾や探照灯の光は見えるようになっている優れものだ

 

 

 

 

「加古は探照灯と夜間偵察機を、時雨は照明弾をの準備を!」

「「了解!」」

 

 

 

ほどなくして、加古から発艦していった夜間偵察機より艦隊発見の報が届く

後半は距離を離すように心がけたため、7キロ近くまで離れていた

大和を先頭に武蔵、北上、飛龍と続く単縦陣だ

妖精曰く通信機を使っているところを見ないとのこと

恐らくは現場のみの判断だろう

引き分けに持ち込むのが精いっぱいだろうが最後まであきらめない姿勢は称賛に値する

 

 

 

『・・・なるほどね。提督はどうする?』

『そうだね・・・。陣形を乱したいところだから遠距離の雷撃で一発当てるか、かすめたいところだけど・・・・・・。最低限陣形をみだすか、注意をそちらに向けるだけでもいい。』

『そのあと吶喊してもいい?!』

 

川内が少し興奮気味に言う

 

『・・・・・・まぁいいだろう。ほかに意見具申があるか聞いてくれ。』

 

少しの沈黙の後ため息をつきながら許可を出した

 

『あ、うちもいい?』

 

通信を割り込むようにして入って来たのは龍驤だった

 

『ん?いいぞ。受け入れるかは別だけど。』

『ひどいこと言うなぁ。うちもあれをやってみたいんやけどダメ?』

『・・・あれとは?』

 

少し冗談を交えた会話をしていたが、あれと言った瞬間空気が変わった

 

『あれ言うたらあれしかないやろ?司令官の戦法。』

『・・・俺のではないぞ。』

『まぁそういう事にしとたるわ。』

 

提督はしばらく沈黙した

考えているのだろうが、断る文句か実践できるか果たしてどちらなのか

 

『そもそもあれは危険が伴うから許可をしたくは・・・。』

『そこを何とか!な!』

『大破するかもしれないんだぞ?』

『そんなのわからんやん!』

 

目いっぱいのため息が通信機から聞こえる

 

『・・・・・・最速で1機何秒で発艦できる?』

『1.5秒あれば1機はいけるで?』

『わかった。4機だけ許可するよ・・・。』

『!ありがとうね!』

『無茶だけはするなよ?』

『了解やで!』

 

結局提督が折れ、許可を出した

 

 

 

 

 

 

「まもなく敵の後方2キロ。全艦の最大射程に入るよ!」

「よし・・・。全体単縦陣から複縦陣に移行!私の後ろに皐月、加古の順で。吹雪の後ろには時雨、龍驤の並びで行くよ!あと吹雪と時雨は魚雷全部発射して!」

 

了解の声とともに陣形変更をしながら、吹雪と時雨は魚雷を発射した

1900、1850・・・と加古が相手艦隊までの距離を読み上げる

 

 

 

そして

 

 

 

「1600・・・・・・1500。」

「行くよ!皐月!加古!最大船速で一気に抜けるよ!」

「「おう!/うん!」」

「夜はいいよねぇ・・・!夜はさ!」

 

川内を先頭に加古、皐月が続く

それと同時に時雨が、照明弾を相手艦隊に打ち上げた

照明弾に気が付いた相手達の顔は蒼白だった

吹雪と時雨の魚雷回避中で手が回らない

 

「しまった!大和ぉ!」

 

武蔵が見たのは魚雷をすでに放り、こちらに向かって砲撃を始めている川内たちだった

電探、測距儀が使えず見張り員のみの警戒となっていたため、先手を許してしまったのだ

武蔵は慌てて近くにいた旗艦の大和を魚雷からかばう

が、3人分の魚雷をまともに片舷に食らったため、あっという間にオレンジから赤に変色

戦線離脱判定が下された

 

 

 

「うわぁ・・・だーめだこりゃ。」

 

 

 

さらには砲撃は残った北上と戦線離脱一歩手前の飛龍に向いた

あいにく飛龍には当たらなかったが、皐月の10cm高角砲が北上の魚雷発射管にあたり、誘爆判定

そのまま戦線離脱判定が出された

 

川内たちの艦隊はそのままトップスピードを維持したまま駆け抜けていったが最後尾の加古が、探照灯を旗艦の大和に向けて照射を始めた

大和は一矢報いようと必死に撃つが回避されて当たらない

 

 

そして

再度照明弾が上がる

しかし、上がったのは大和達相手艦隊の上ではなく吹雪たちの艦隊だった

 

「艦載機のみんなぁ!もうひと仕事や!」

 

照明弾はすぐに消えた

普通なら20~30秒くらいついているはずなのだが、先ほどの照明弾は時間にして6秒ほどだった

そして、再び艦隊の周りは加古の探照灯の光だけになる

相手の間違いと思い、加古へと照準を合わせた

 

「!・・・?」ヴゥゥン

 

不審な音を察知した大和が、加古への砲撃を一度やめ、振り返った

 

 

 

 

「そんな!」

 

 

 

 

目の前には艦攻2機が海面すれすれにいた

そして、頭上には艦爆2機が急降下の体制を取っている

 

「貰ったで!」

 

 

 

 

 

 

轟音があたりに轟く

同時に戦線離脱の放送が流れてきた

 

「うっし!時雨。艦載機しまうから照明弾頼むわ。」

「うっうん!」

「・・・・・・!まって時雨ちゃ・・・!」

「え?」

 

吹雪がいぶかしげに見ていたが、あることに気が付いた

そして、慌てて時雨を制止しようとした

が、すでに遅く時雨は龍驤の艦載機着艦のために照明弾を打ち上げたところだった

 

 

 

「全主砲!薙ぎ払え!」

「お願い!当たってください!」

 

 

 

刹那

龍驤と時雨、吹雪に砲弾が飛んでいく

 

 

 

 

 

「あっかーん!」

「この僕がここまでやられるなんて・・・!」

「被害報告をお願いします!」

 

吹雪は砲撃で自身と龍驤と時雨に飛んできた弾道を逸らし、かわした

急いで状況確認のため、時雨と龍驤に話しかけた

 

「うちは中破や・・・。艦載機の収容は可能な状態やけど再発艦はもう無理や・・・。」

「僕も・・・。油断しちゃった。多分飛龍にかばわれたね。吹雪が逸らしてくれなかったら僕たち二人とも直撃で大破してたよ。」

 

 

 

 

そう

唯一残っていた飛龍が大和をかばったのだ

 

夜間空襲を通常の空母が行う場合は発着艦時と攻撃時に明かりの確保がいる

恐らく飛龍はそこを狙ったのだろう

自分は明かりがないうえに、発着艦は不能

だが、相手はそれを敢行した

しかも、自分の存在には薄らいでいる

見事にスキを突かれた形となった

 

幸い、照明弾が消え再び暗闇に包まれていた

大和の主砲は3基とも測距儀こそ使用停止なものの健在

折りの悪いことに艦載機たちの燃料をそんなに積まなかったため、川内たちの艦隊が折り返し戻ってくるのを待つ余裕もない

 

 

 

「・・・。時雨ちゃん照明弾はあと何発?」

「あと1回分のみだね・・・。」

 

ここにきてさらに難しい判断を迫られた

 

 

大和の頭上に打てば艦載機の着艦は不可能になる

自分たちの頭上に打てば自分たちが打たれる

このまま待てば艦載機の子たちを見殺しにすることになる

 

 

 

吹雪は考えた

そして、覚悟を決めたのか深呼吸をした

 

 

 

 

「時雨ちゃん。照明弾を上に撃って。」

「でもそれじゃあ!」

「私が何とかする。」

 

そういうと先ほど大和がいた方角に砲を向ける

何をするのかわかった時雨は龍驤の方を向いた

龍驤はすでに着艦準備が完了しており、ニカッと笑った

 

 

「わかった・・・!行くよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがは見事な采配だったね。」

「・・・お褒めの言葉をいただけて光栄です。」

「大和の斉射を吹雪君の主砲で弾道を逸らしつつ大和の正確な位置の把握、そのまま早打ちで大和にヘッドショット決めてゲームセット。さらには龍驤君の迅速な収容後の回避運動。どれをとっても君の艦隊は素晴らしいの一言だ。」

 

大本営 第一軍令部長室

 

提督が一歩前におり、その後ろに吹雪達6人が並んでいた

提督と軍令部長は向き合っており、軍令部長の後ろでは今にも飛びかからんばかりの憎しみの目線を送る須下がいた

 

「いや実に惜しい才能だ。そう思うな?須下君。」

「・・・はい。」

 

軍令部長に促されると少し抵抗はしたものの返事をした

 

「そこでだ。耳本中佐。君には夏の大規模作戦の一端を担ってもらおうと思ってな。」

「・・・・・・いつものように物資の準備ではなく?」

「そうだ。なぁにちょっとそこまでくらいの場所だ。」

 

提督は訝しんだ

それもそうだろう

信頼のおけない上官からのお願いほど怪しいものはない

 

「実は欧州の方面では大変なことになっていてね。須下君。」

 

須下がヨーロッパの地図を広げる

そこにはあちらこちらに赤いバツが方々に書き込まれていた

 

「この通りバツのあたりが姫級や鬼級が確認された海域・・・。すでに欧州の力では対処が不可能なレベルまで陥った。」

「つまり我々にヨーロッパまで出向けという事ですか?」

「まぁそう焦るな。君たちが長期不在となったらとてもじゃないが日本が干上がる。」

 

そう言って、ヨーロッパの地図を下げた

すると、下からもう一枚の地図が出てきた

 

「君に行ってもらうのはここだ。」

 

 

 

 

軍令部長が指をさしたのはスリランカ島

 

提督は固まった

地図はインド洋

提督はスリランカ島の一点を見つめて動かなかった

 

「実はここから敵の艦隊が西の方に行き来をしておってな。ここを叩いておけば強力な大艦隊に遭遇する確率が低くなる。その撃破任務をやってもらいたいのだ。」

 

いつの間にか軍令部長は提督のそばまで来ていた

 

「おk・・・。」

(ここでの君の戦果を話してもいいのだが?)

「・・・・・・。」

 

提督は黙ってしまった

 

「引き受けてくれるな?」

「・・・・・・はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全くあれほど侮るなと言っただろう。」

「大変申し訳ありません・・・・・・。しかし・・・あのような采配を振るえるものがなぜ・・・?」

「それは君に知ることではない。」

 

ふんと一蹴した

 

「それよりも。例の件進んでいるだろうな?」

「抜かりなく・・・。」

「ならばいい。もう賽は投げたのだ。」

 

志垣はニヤッと笑い須下を退出させた




というわけで観艦式編はこれで終わりです
ちょっと戦闘描写に挑戦してみたわけですが・・・
因みに夜間空襲戦はもともと考えていたものですがまさか実際に登場するとは思ってなかったところがありますのでちょっと違うところもありますがご了承ください

そしてやっぱり納得いかないところがちらほらとあったり
イメージはブラウザ版とアーケードを足して2で割ったみたいな感じで書いておりました

そしてそろそろ一回日常話を挟みたい_("_´ω`)_


観艦式行ってまいりました!
昼夜ともに見れてちょっとした違いが楽しかったです(主に夜のみんなのひねくれようw)
それにしても秋イベで涼月の実装・・・
涼月は艦のエピソードてんこ盛りですからどんな子になることやら・・・

セリフが『涼月です。皆さんをいつまでもお護りできるよう、頑張ります。』
でいいつまでも・・・ね
とちょっとぐっと来たのは私だけでないはず

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