これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の異変 その1

「酸素魚雷発射!」

 

吹雪の号令とともに、古鷹、川内、時雨が魚雷を発射する

そして、20、30秒ほどすると遠くで水柱が上がる

すかさず龍驤が、確認のために偵察機を発艦させる

 

「PT子鬼群殲滅や。しばらくは安全やな。」

 

 

 

 

 

 

 

欧州への派遣艦隊は、リンガへと一回集合し、その後西方へと進む

しかし、リンガ泊地沖にて潜水艦隊を発見

恐らくは通報がなされ、この先々で強力な艦隊があちらこちらで先回りされているのが予見させた

観艦式が終わるまでにはリンガ泊地沖の潜水艦の掃討はあらかた完了し、カレー洋、ステビア海、紅海のスエズを経由し、地中海へと向かう

 

すでにスエズ運河は深海側の手に落ちていることはわかっているため、ほかに警戒をするべきところの一つにリランカ島があった

 

以前の作戦が中途半端に終わっていることが今回の作戦に響いていた

敵の主力連合艦隊がリランカ島へ向けて出港していることが発覚した

幸いにもまだコモリン岬(インド最南端)を越してはいないが、リランカ島に入られては欧州への派遣艦隊が被害を受ける可能性が飛躍的に高くなる

そのためにもこの連合艦隊を叩くことが決定した

 

が、提督に与えられた任務はこの艦隊を叩くことではない

偵察機からもたらされたのはリランカ島の情報もあった

以前作戦を行ったときはいなかった飛行場姫が出現していたのだ

爆撃機に艦隊が襲われては元も子もない

一応、天候や上空の状態から避けるルートは存在するがそのルートは潜水艦がいる可能性が高い海域の通過となる

よって、以前の作戦の完遂もかねてリランカ島への別働の先遣隊を派遣することが決定したのだ

そして、その任務が提督に課されたというのが今回の作戦だ

 

 

 

 

 

 

「おっ!敵の艦隊をを1時の方向に発見やで!吹雪。」

「編成はどのような感じですか?」

「えっとな・・・。重巡1、軽巡2、駆逐3やな。艦載機でパーッとやろうか?」

 

龍驤は甲板を広げ、発艦させたそうにしていた

それを聞いたのか通信が入る

 

『もう少し我慢してくれ。見たところツ級がいるからここも魚雷で処理をしよう。』

「了解や。リランカ島に着いたら派手にやったるで!」

『期待してるよ。』

「司令官!魚雷の発射準備完了しました!」

『了解。照準があったら順次攻撃してかまわないよ。』

 

再び吹雪は号令をかける

 

「いやぁー・・・吹雪がいるとほんとにうちら空母はひまやなぁ?」

「そっそうですね・・・。」

 

龍驤が退屈そうにあくびをして翔鶴に話しかける

それに翔鶴はあっけにとられていたのか、うわの空で遠くの水柱を見ながら返事をした

 

「それにしてもリンガの長門に挨拶してこなくてよかったん?」

「リンガ泊地の担当は紅海方面ですし、忙しいでしょうから仕方ないですよ。」

「そうそう。それにまだ提督の視察の日取りも決まってないから仕方ないよ。」

『鎮守府建屋の建て替えが近々あるから行く日がいつになることやら・・・申し訳ないよ・・・。』

「今日は加古の医療機器の搬入でしたっけ?」

『そそ・・・。ちょうど業務も縮小してるから昨日曳家もやったし、内部の改装も半分は終わったし・・・。あとは鎮守府自体を建てれば完了だわ。』

 

 

川内と古鷹も会話に加わり、のんびりとした雰囲気で進んでいく

 

 

 

 

 

 

しばらくして偵察機を発艦させるポイントに到達し、龍驤が再度甲板を広げる

 

「さぁてお仕事お仕事っとぉ!」

 

龍驤が放った彩雲からは港湾夏姫、飛行場姫、砲台子鬼2、輸送ワ級2の報告がもたらされた

 

『港湾夏姫・・・?』

「せやね。港湾夏姫。なんか問題でもあるん?」

『・・・いや。何でもない。事前の作戦通り半分の魚雷を発射。その後は川内は弾着で砲台子鬼、古鷹は三式弾を装填して飛行場姫を、時雨、龍驤、翔鶴は港湾設備及び中核の港湾夏姫を叩け。吹雪は旗艦として対空に専念。各員の無事を祈る。』

「「「「「「了解!」」」」」」

 

「・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督!夜戦は?!やーせーんー!!」

『いやぁ・・・。まさかこんなにストレートで終わるとは思わなかったからなぁ・・・。』

 

川内からの抗議の通信が入った

それもそうだろう

魚雷はワ級をとらえあっという間に海の底へ

飛行場姫と港湾夏姫が飛ばした航空機は飛ばす前に滑走路を破壊した

実は偵察のポイントを一段階早くしていた関係で相手は気づかず、制空権争いはこちら側の一方的なワンサイドゲームとなったのだ

制空権を失った港湾や飛行場はもはやただの的でしかない

 

そして、夜戦を視野に入れて期待してた川内は猛抗議をしているというわけだ

 

 

 

 

 

『いやまさかここまでうまくいくとは思わんくて・・・。なんか埋め合わせするから勘弁して頂戴な・・・。』

「むー・・・・・・。」センダイチョイトエエカ?

 

戦闘が少ないうえ、演習でも夜戦をすることが少ないうちの数少ない夜戦のチャンスがつぶれたのだ

むくれるのもわかるため、ある程度の要求は目をつぶろうそう内心思った

 

「チョイとええか?」

『ん?龍驤か。なんかあった?』

「ちょっと気になることあってな?通信をうちとだけにしてもええ?」

『ん。了解。ちょっとみんな龍驤と単独通信するぞ。』

 

断りを入れ、通信機のスイッチを切り替える

 

「ありがとさん。で、や。このリランカ島何かちょっとおかしいで。」

『・・・。おかしいとは?』

「妙にうっそうとしてるというかなぁ・・・。何か隠してる・・・カムフラージュされた感じがあちらこちらにあるんや。」

『なるほど?ということは・・・・・・。』

「少しの間うちが残って調査してみたいんや。ダメか?」

 

提督は返事に悩んだ

これを上申したところで、早急な調査が行われるとは限らない

ましてや大規模作戦中だ

恐らくは作戦終了後になるだろう

リランカ島周辺は海軍の手が現状ぎりぎり伸びる限界点

これを機に調査をしておきたいところだ

が、独断の行動になり後でいちゃもんをつけられる可能性がぐんと上がる

 

しかし、提督を一番悩ませていた理由は何よりも

 

『1人でやるのか?』

「一応制圧済みやし、深海棲艦独特の悪意の気配はないからなぁ。」

『・・・1人くらい誰か護衛でも。』

 

提督は心配そうな声を出した

制海権を完全に握ってない場所での単独行動をさせたくはない

 

「あーいらんいらん!つけるったって誰をつける気や?」

『時雨あたりが適任かなぁって。』

「せや!その時雨なんやけどなんや・・・寝つきが悪かったみたいでな?ちょい寝不足やったで?」

『あらま・・・!通信の時は気づかなかったなぁ・・・。ええ・・・。じゃあ。』

「せやからうち1人でやる言うとるんやって。1人の方が何かと小回りも効くしな。」

 

提督は別の候補や手立てを考えようとした時、もっともなことを言われてしまった

確かに、1人の方がいい場合もある

そのうえ、調査を複数人で行った場合、固まった時に上空からの偵察で見つかる恐れもある

 

『いやでも・・・・・・。』

「じゃあ何かあった時のためにリンガの提督にでも頼んでおいてくれへんか?せっかくの調査のチャンス・・・・・・大本営は恐らくやけど見逃すと思うで?」

 

それを言われしばらく悩んだが、結局了承した

 

『いいか?絶対無理はするんじゃないぞ?護身の拳銃は持ったな?糧食は吹雪ちゃんから受け取るんだぞ?』

「はいはい。おかんかいな・・・。ん?なんや?・・・・・・。なるほどな。ちょいと翔鶴に代わるで。」

『はいな。』

 

何かを話しているようだが、小さくて聞こえなかった

 

「耳本提督。少しよろしいでしょうか?」

『何か要望でもあるのかい?』

「いえ。先ほどの会話の様子から龍驤さんがここから別行動になるのでしょうか?」

『そうだねぇ。』

 

具体的なことをは伏せ、やんわりとした言葉で濁した

翔鶴もそうですかと返事をしただけなので、察してくれたのだろう

 

「実は先ほどリンガ泊地の方に基地航空隊の掩護機を回していただけるか打診をして了解を得たのです。ですのでこれから掩護機が到着次第帰路につきます。」

『そっかそっか。了解です。こちらからもリンガ泊地の方に通信を・・・。』

「!いえ!リンガ泊地の司令官が前線指揮のために泊地を出発すると申しておりましたので・・・。」

『あ、そうか・・・。うちが攻略完了したから本隊も出発したのか・・・。了解したよ。吹雪ちゃんにちゃんと話を通してね。』

「了解です。では失礼します。」

 

 

 

「吹雪さん。」

「あ、翔鶴さん。何かありましたか?」

「実は・・・。」

 

翔鶴は吹雪に事情を告げた

 

「本当ですか!長門さんが便宜を図ってくれたのかな・・・?とにかく了解しました!」

 

 

 

少しして、東の空に遠く黒い点がいくつか見えた

 

「あ、あれ・・・ですかね?」

「多分そうでしょう。さぁ吹雪さん。行きましょうか。」

「え?でもまだ通信できる範囲じゃ・・・。」

 

吹雪としては通信し、どのような航路を通るかを確認したいのだろう

 

「それは海上でもできますし、提督さんもお待ちでしょうから急ぎましょう?」

「えっあー・・・。はい・・・。」

 

翔鶴に押し切られる形で急ぎ、号令をかけて出港した

 

「ほな!気ぃ付けてなぁ!」

「龍驤さんも何かあったらすぐに連絡くださいねぇ!」

 

吹雪を中心として、先頭を古鷹、左を時雨、右を川内、後ろに翔鶴という輪陣形で龍驤をリランカ島に残し、出発した

 

 

 

 

 

「えっ?!」

 

異変に気が付いたのは出港して1時間した時だった

そろそろ合流できると思ったとき、航空隊の様子が変なことに先頭の古鷹が気が付いた

 

「あれ・・・は・・・・・・友軍機じゃない!!」

「えっ?!」

 

吹雪はレーダーで確認する

映っていたのは深海棲艦の機体およそ200

 

「そんな!リンガからの基地航空隊じゃないのかい?!」

「翔鶴さん!至急直掩機を・・・翔鶴さん?!!」

「あっ!はい!了解しました!」

 

翔鶴の進言で、基地航空隊が間もなく到着するので直掩機も不要と言われ発艦指示を取り下げたことを吹雪は悔やんだ

翔鶴もショックを受けているのか反応が鈍い

 

「とにかく対空戦闘準備を!古鷹さんは三式弾の再装填、時雨ちゃんはWGを全部発射しちゃって!」

「「了解!」」

 

 

 

 

まもなく空襲戦が始まった

敵は爆撃機に艦攻、艦爆と様々な種類が織り交ざった編隊だった

爆撃、魚雷、爆撃の嵐

それでも一番致命的になる魚雷を持った攻撃機だけは何とかはじいていた

 

 

 

 

「吹雪!一回提督に!報告できる?!」

「無理です!すみません!対空砲火に手いっぱい!です!」

 

それぞれの被害報告を聞きながら対空砲火しながら返事をした

かろうじて全員至近弾で凌いでいた

しかし、このままではジリ貧もいいところ

レーダーには入れ替わりの編隊が映っていた

 

 

 

 

「とにかくリンガからの応援を待ちましょう!」

「了解だよ!ってうわ!翔鶴さん!艦攻を何で発艦させてるの?!」

「えっ!あ!すみません!一応この子も対空戦ができるのでつい・・・。」

 

 

 

 

時雨の近くに落ちたのは翔鶴から発艦した艦載機の落とした陸上攻撃用の爆弾だった

その後も、翔鶴から発艦した艦攻が捨てた爆弾が味方に振り続けた

翔鶴曰く緊急の発艦だったため降ろすのを忘れていたと言った

降ろす手順を行えば発艦作業に遅れが出るし、発艦直後に投下するとバランスを崩してしまうとのことだった

 

 

 

 

 

 

 

ちらりと吹雪は対空砲火の合間に懐中時計を見た

対空戦闘を始めてから早15分

基地航空隊が一向に来る気配がない

周りを見渡せばすでに川内と古鷹は小破レベル

時雨に至っては中破寸前だった

 

「時雨ちゃん大丈夫!?」

 

様子がおかしいことに気が付いた吹雪が時雨を鼓舞した

 

「ごめんね。ちょっと疲れが来てるみたいで・・・!くっ!」

 

対空砲火の正確さが若干欠いている

吹雪もそれをフォローするように担当する空域を多くとるようにした

 

しかし、それは同時に吹雪の処理能力の限界を超え始めた

同時並行で僚艦への指示及び損害状況の把握、対空砲火、無線の確認、魚雷と空爆の回避・・・・・・

 

 

 

 

 

「っ・・・!」(こんな時に眠気が・・・!)

 

時雨がふらついた時だった

力なく高角砲を構えた時、左の視界の端にある物が映った

見れば敵の艦攻が真横まで接近しており、ちょうど魚雷を投下したところがスローモーションで見えた

 

「っ!残念だったね!」

 

船速を一気に最大まで入れ何とか回避を行った

そして、魚雷が自身の後ろを過ぎていくのを確認すると安堵した

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!まずい!」

 

安堵したのもつかの間

時雨はあることを忘れていた

 

「吹雪!危ない!!」

「えっ!?」




ここから少しだけスピードアップして夏イベを駆け抜けていきます(=゚ω゚)ノ

秋刀魚イベントで海防艦ドロップかぁ・・・
別にそこまで血眼になって狙う必要ないなぁ

そう思ってましたが海防艦を使った新しい近代化改修が来るという事でちょっと・・・かなり気になってる今日この頃です
対潜値上昇ならうれしいなぁ・・・

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