「師匠!」
聞きなれた声と同時に、吹雪に接近していた艦攻10機すべてが吹き飛んだ
それと同時に、吹雪自身の体が宙に浮くのがわかった
「師匠!ああ!申し訳ありません!こちらの不手際で・・・!」
「長門さん・・・!」
衝撃に備え、防御姿勢を取っていた吹雪は聞きなれた声に顔を上げる
そこにいたのは吹雪を抱きかかえる長門の姿だった
『吹雪ちゃん!長門君!吹雪ちゃんは無事?!』
「はい!耳本提督。大破してはいますが無事です!」
『よ・・・よかったぁ・・・・・・。吹雪ちゃんに代わってくれるかい・・・?』
「はい!承知しました!」
何が起こっているのかわからない吹雪をよそに、長門と提督は通信をつづけた
上空を見れば、敵の編隊は散り散りになっておりドックファイトをしていた
基地航空隊がどうやら到着したみたいだ
吹雪が上を見ている間に、長門が無線機をはずすと吹雪に渡した
「あの・・・。代わりました・・・・・・。」
『吹雪ちゃん!よかった・・・・・・。本当によかった・・・・・・。』
通信機から漏れてきたのは普段の飄々とした雰囲気ではなく、本当に緊迫した様子の声だった
「何で長門さんがここに・・・?」
『ああ・・・。30分くらい前にリンガ泊地の提督から通信があって、リランカ島の攻略作戦成功のお祝いだったんだ。その時に、今から出発するっていう話だったんだ。』
「えっ・・・?でも翔鶴さんの話だと・・・。」
『そう。何が行き違ったのかわからないけど基地航空隊の掩護も出してないって話だったから大急ぎで出してもらったんだ・・・。長門君なんて41cm砲と三式弾、あとは全部タービンと高圧缶をひっつかんで単艦抜錨してくれたんだ。』
「ええ?!」
見れば、普段積んでいるはずの41cm3連装砲が少ない
「危ないじゃないですか?!これじゃ戦艦にあった時に・・・!」
「すみません!でも心配で心配で!」
思わず吹雪が大声を出すと、長門は申し訳なさそうに謝った
しかし、謝罪の言葉を述べる長門の目の端に光が見えた時、自分がそれをとがめる資格がないことを改めて思い出した
「・・・でも、ありがとうございます。」
「さぁ・・・。帰りましょう。」
吹雪は長門にかかえられたままリンガ泊地へと入港した
「「「吹雪(ちゃん)!!!」」」
港に着くと先に着いていた川内、時雨、古鷹に降ろされた瞬間一斉に抱き着かれた
川内と時雨は中破していたが、古鷹、翔鶴は小破以上のダメージを受けずに済んだようだ
「よかった・・・・・・。本当によかった・・・・・・。」
「全くもう!心配させて!」
「・・・・・・。」
「すみません。心配をかけてしまって。」
3人とも涙を流して喜んだ
時雨に至っては何も言えず、ずっと吹雪の服を握りしめていた
吹雪は照れくさそうに謝罪の言葉を口にした
10分ほどして、何とか落ち着きを取り戻したところで無線が入った
『3人とも・・・帰着の方法を考えてくれないかな・・・・・?』
申し訳なさそうな声のトーンで、感動しているところ悪いんだけどと言った
「司令官!すみません!」
「帰着って言っても当初の予定通り二式大艇で行くんじゃないの?」
駿河諸島からリンガまでは直線距離で約5000㎞
艦娘達の船足ではとてもじゃないが時間がかかりすぎる
そのため、今回のような遠距離には二式大艇や一式陸攻などで移動する
『それが、今回は将官が多く移動する関係で時刻表がすごいシビアなんだ。』
それを聞いた吹雪が懐中時計を取り出して時間を見る
・・・が、ガラスは割れており、針も止まっている
川内に時間を聞き、納得した
作戦完遂から時間が立ちすぎてしまい、当初乗る予定だった便がすでに出てしまっていたのだ
『リンガ泊地の提督にドックを貸してもらえないかの打診も行ったんだが・・・。前線の関係上使うのは厳しいらしくてなぁ・・・・・・。』
当然のことながら、前線になればドックはフル回転となる
ドックも常に入れる状態ではなくなるため、優先順位が設けられる
そうなれば必然的に、帰るだけの吹雪達は一番低いものとなってしまう
さらに、ここに滞在するというのもできない
前線に出撃する艦娘や将校がこれからどんどんと来るため滞在する場所がない
「駿河諸島への直行便がなければ経由はどうでしょうか?」
古鷹が提案をするが提督の返事は芳しくない
『それが、本土からうちを経由して南方に行くやつらが多くてな・・・・・・。輸送船団の発着場になってるんだ。恐らく大本営からうちへの航空便は満杯だ。』
「・・・!八丈島は?八丈島ならすくないでしょ?」
時雨が思いついたように言う
輸送船団が寄るのは駿河諸島で、八丈島には寄らないので空きがあると考えたのだ
『確かに八丈島ならいけるかもしれない・・・。だが、吹雪は大破してるし、八丈島は今提督が不在だからドックも借りれないぞ?』
「僕が曳航していくよ!」
真っ先に手を挙げたのは時雨だった
「・・・・・・。」ウロウロ
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」ソワソワ
「・・・・・・落ち着きなって。」
時刻はマルハチマルマル
提督と加古は鎮守府正面の埠頭で帰りを待っていた
が、提督はせわしなく埠頭にあるビットの間をせわしなく行き来したり、止まったと思えばソワソワとして落ち着かない
普段の飄々さはどこにもない
加古も心配で落ち着かないが提督の様子を見るとそれどころではない
いまだに青い顔をしている提督に加古は心配になっていた
そして、余りの落ち着かなさに加古が、我慢できずに袖口を引っ張って無理やり止めた
「あたしも心配だけどさぁ・・・。落ち着こうよ・・・・・・。」
そうこうしていると、鎮守府の方からぞろぞろと出てきた
「・・・いくらなんでも5時から待ってるとは思わなかったけどね。」
「・・・・・・。」(ほんとは4時から居たけどね・・・・・・。)
実のことを言えばさらに悪態をつかれかねないため、心の中でつぶやいた
下手をすれば他の人からも怒られかねない
「あっ!あれじゃないですか?!」
目を凝らしていた榛名が声を上げる
一つの黒い点が水平線上に見えた
やがて、三つに増え、輪陣形であることがわかった
川内、古鷹、翔鶴が先に上陸し、提督に敬礼した
周りの者たちは拍手を送っている
「ご苦労様。翔鶴君と古鷹は先に入渠してきて。川内は吹雪の引き上げ手伝ってもらえる?・・・それと翔鶴君にはあとで少し聞きたいがあるからそのつもりで。」
「「はい!」」
「・・・・・・。はい。」
そう言って、提督は艤装を外して妖精さんに預けた川内を連れて、引き揚げ現場に近寄った
「司令官・・・。」
「吹雪。お疲れ様。」
「はい!司令官!」
敬礼を交わし、提督はようやく安堵の表情を浮かべた
そのさなか、妖精さんたちがやっとやっとで艤装をパージすると、疲労からか吹雪は前のめりになり提督に倒れこむ
「おっとっと・・・・・・。」
「すっすみません!」
提督が吹雪を支えた時、あることに気が付き目が泳いだ
そして、自身の上着をかけた
顔が赤くなっているところを見ればお察しだろう
それを見た妖精さんがいたずらっぽく笑い、時雨の艤装を強めに外した
が、時雨はふらつかなかった
「時雨もお疲れ様。その・・・。川内もだが・・・な?ちょっと今物がないんで・・・・・・。」
しどろもどろになりながら、入渠場へ行くように勧める
3人は顔を見合わせクスリと笑った
そして、吹雪に肩を貸しながら川内と時雨が吹雪を挟んで入渠場へとゆっくり向かい始めた
「・・・・・・。」スッ
提督がその様子を見て安心し、鎮守府に戻ろうと振り向いた時だった
「!危ない!!!」
「「「えっ?」」」
破裂音が港にこだました
ハイペース更新中です
まだまだ続きます(´・ω・`)
海防艦の改修が・・・!
まさか4n艦救済策になるとは思わなかったです・・・!
第一目標が複数の海防艦確保にシフトしました
これで気兼ねなく吹雪をラスダンに連れて行けるようになる・・・・・・!
とりあえず組み合わせ次第みたいなのでそれの情報待ちです