トリコと小松の人間界食欲万歳   作:Leni

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温泉村の鏡開き(後編)

「ういっぷ、げっぷ、どこだここ?」

 

「しゃ、しゃべったああああ!?」

 

 二股の尻尾を持つ狐の言葉に、驚愕(きょうがく)し、叫び声を上げる小松。

 一方、トリコと鉄平は、平静を保ったままである。

 

「うわ、うるさっ。どうしたんだ、お前は」

 

「トリコさん、えらいこっちゃですよ。動物がしゃべってますよ」

 

「まあそういう生物もたまにはいるな」

 

 と、トリコ。

 

「いるいる」

 

 と、鉄平。

 

「いるんですか!?」

 

 カルチャーショックに驚きを隠せないのは、小松だ。

 

「本当に、うるさい小僧だな……」

 

 前足を上げて、小松の頭を軽く押さえに行こうとする狐。その行動に、小松は「わ゛っ」と驚き距離を取る。

 殺気も何もない行動だ。ゆえにトリコも鉄平も、小松を助けようとする動きは見せない。

 

「なあ、鉄平。この生物、なんだかわかるか」

 

「ああ、『妖食界』に生息するという又々狐だな」

 

「又々狐! 聞いたことあるぜ。焼いたら美味いっていうから、一度食ってみたかったんだよな」

 

 前足で小松にじゃれつこうとしていた狐だが、トリコの言葉にギョッとした表情を浮かべ、横たえていた身体を咄嗟(とっさ)に起こして身をかがめた。

 だが、その動きは緩慢(かんまん)で、とても数メートルある肉食の哺乳獣類のそれには見えなかった。

 

「食って……!? おそろしいことを言うな!」

 

 ふー、とトリコに向けて威嚇する巨大狐。だが、それに驚いたのは小松だけで、トリコと鉄平は脅威を一切感じていなかった。

 

「でも、お前だって人間を食ったことあるんだろう? 食って食われて、おあいこ様だぜ」

 

「人を食ったことなど、一度もないわ!」

 

 その狐の言葉に、はてと首を傾げるトリコ。

 

「ん? 聞いた話じゃ、この村の食料を食い尽くした後に人間も丸呑みにしたって……」

 

「あれはちょっと化かして驚かせただけだ! ワシは変化の能力があるからな!」

 

 二本の尻尾をぴんと立て、ふー、ふー、と威嚇を続ける又々狐。しかしやはり脅威にはならない。

 その気配から感じる戦闘能力を捕獲レベルで表わすと、レベル1と言ったところだろう。非力な小松からしてみれば、捕獲レベル1でも十分脅威となるのだが。

 

「で、どうするんだトリコ。食うなら止めないが」

 

 トリコにそうたずねるのは鉄平だ。

 

「よし、食う」

 

 その言葉に、逃げ出そうとする又々狐。だが、トリコが眼にわずかな気迫を込めると、狐はへなへなとその場に崩れ去り伏せをした。

 一瞬で圧倒的力量差を感じ取ったのだ。逃げられない。逃げることは、諦めるしかなかった。

 

「ええ、トリコさん相手は、しゃべる動物ですよ。ちょっと気が引けるというか……」

 

「いや、小松。そこらの動物だって、鳴き声くらいあげるだろ」

 

「えっ、そういうのとは違わないですか?」

 

「九官鳥は、人間の言葉をそっくり真似る発声器官を持ってるだろ? そしてテリーみたいな賢い獣は、人語を完全に理解しておる。その二つを持ち合わせた生物ってだけで、普段食っている食材たちと、なんら変わらない存在だ」

 

 むう、と小松は反論の言葉を無くした。確かに、どちらも生物としてはありえる存在だ。たまたまそれを二つ兼ね備えた存在を今まで見たことが無かっただけで。

 だが、その理屈で納得しないのは、当事者である又々狐だ。

 

「や、やめてくれ……ワシは美味くないぞ……。そうだ、尻尾! 尻尾ならすぐに生えかわるからそれで許してくれ!」

 

「…………」

 

 トリコは今まで無数の獲物を仕留めてきた。その中には屈服して腹を見せるものも存在したし、命乞いするかのように鳴き続けるものも存在した。

 今更人語で助命を求められたところで、食欲を収めるトリコではない。しかし。

 

「あの、トリコさん。ここまで言ってるんですから、尻尾で勘弁してあげてもいいんじゃないでしょうか」

 

 またもや小松が擁護者として立ち塞がる。

 小松は、動物の屠殺というものに忌避感(きひかん)を覚えるような料理人ではない。そもそもからして、食材が部位に解体(バラ)される前の姿を見たいと言って、トリコの仕事に同行したような男なのだ。しかし、今のトリコと小松の間には、この目の前の獲物を『食材』として見ているか否かという違いがあった。

 小松にはこの狐を食べたいという欲求が存在しない分、人語を解す存在を人間の仲間だと見ているのだ。それはペットを食材と見なさない感覚にも似ているだろうか。そもそも今回の旅は酒温泉を復活させるための旅で、獲物を捕獲するための旅ではない、という意識も、それを後押ししていた。

 そんな小松の内心を推し量ってか、トリコはとりあえず妥協を考えてみることにした。

 

「そうか……おい、尻尾はどれくらいの早さで生えるんだ」

 

「そ、そうだな、十分な餌を食って寝転んで鋭気さえ養えるなら、一時間もかからん」

 

 一時間での再生。再生能力を持つ生物としてはなかなかの早さだ。

 もっとも、捕獲レベルの高い生物の中には、瞬時に肉体の再生を行うデビル大蛇などといった者もいたりするのだが。

 

「一時間かぁー。切って生やして繰り返しても、すぐに一匹分の肉になるわけじゃないならなぁー」

 

「ええっ、トリコさんどれだけ食べたいんですか。ほら、鉄平さんもトリコさんに何か言ってあげてくださいよ」

 

「いやぁー、絶滅しそうな稀少な種ってわけじゃないから、再生屋として獲物を前にした美食屋に口を挟むようなことはないよ。焼き又々狐は美味いって耳に挟んだことあるし」

 

「ええー」

 

 又々狐はグルメ界のどこかにあるという妖食界に生息する生物だが、別に絶滅危惧種というわけではない。なので鉄平が止める理由はなかった。

 

「ワ、ワシは美味くなんてないぞ」

 

「とりあえず、尻尾だ」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「ぐえっまずっ!」

 

「ほら言っただろう、ワシは美味くなんかないって!」

 

 小松に焼いて貰った尻尾焼きを口にしたトリコは、その思わぬ味に口から肉を吐き出した。

 又々狐は今まで外敵に襲われたときも、尻尾を犠牲にして逃げてきた。毒を持つ生物が外敵に襲われないのと同じように、又々狐の肉には独自の刺激臭と突き刺さるようなえぐみがあるのだ。

 トリコの頼みで尻尾を焼いた小松も、それを感じ取っていた。久方ぶりに覚える、食材に完全にそっぽを向かれる感覚。そして、この尻尾肉を美味しく調理するための閃きは、小松には一切やってこなかった。

 

「焼いたら美味いって聞いたんだけどな……いや、焼き餅にしたら美味いだったかな」

 

「鉄平さん、それって餅に化けさせたら美味しいってやつじゃないですか。それこそ昔話にあるような……」

 

 それは、廃村の経緯のような最近の実話ではなく、民間に古くから伝わる昔話。民話というやつだ。

 昔々、恐ろしい鬼がある寺の和尚(おしょう)さんの元にやってきた。鬼と和尚さんは問答勝負をすることになり、和尚さんは鬼に「小さく化けられるか」と問い、鬼は「できるとも」と豆粒の大きさに変化した。そして和尚さんは変化した鬼を餅でくるんで食べてしまった、という話だ。

 

「又々狐さんは別の物に化けられるんですよね? それこそ人間とかに。尻尾だけ変化させるとか、できるんですか?」

 

「おお、そうだな。できるできる。これでも、故郷の群れでは変化の又三郎と――」

 

「それか! よし又々狐、尻尾を餅に化けさせろ!」

 

 又々狐の言葉も聞かず、小松の横からトリコが、そう指示を出す。

 しかし。

 

「餅? 餅とはなんだ?」

 

「そうきたかぁ……」

 

 度重なる頓挫(とんざ)に、トリコは頭を抱える。

 

「こうなったら、ロビーにある三段鏡餅を鏡開きするぞ!」

 

「ええー、結局食べちゃうんですか、あれ!」

 

「土地の所有者には、事後承諾で行く! 後でめちゃくちゃ謝る!」

 

 と、そこまでトリコが意気込んだところで、鉄平が言う。

 

「ああ、ロビーの鏡餅のこと? こっち来る前に、旅館経営していた人に連絡取ったんだけどさ、ゴミとか食材とか残ってたら処分しておいてくれって言われてるから、食っても大丈夫だぞ。再生屋は掃除夫じゃないんだけどなあ」

 

 鉄平もトリコたちと同じように、村へ立ち入る許可を元村人に取っていた。有名な再生屋が旅館を再生してくれると聞いたその村人は、旅館が再開させられるなら、腐った食材が中にあってはたまらないと、その除去を鉄平にお願いしていたのだ。もっとも、鉄平自身は、除去の頼みを聞くつもりはさらさらなかったのだが。

 

「うはーっ! よーし、じゃあ、ロビーへ行くぞ!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 殺生石相手には炸裂しなかったトリコのパンチが、三段鏡餅をほどよいサイズへと砕く。

 三十年越しの鏡開き。酒温泉の源泉も無事に湧き出し、長らく止まっていた時がようやく動き出した。この『名酒温泉村』に、人は戻ってくるだろうか。

 

「美味いなあ、美味いなあ。はあー、やっぱり人間の作る食事、美味しい……」

 

 小松の焼く三段餅をほふほふ、むにむにと平らげていく又々狐。味付けは、小松が普段から持ち歩いている調味料セットから出した醤油だ。

 横幅八メートルもあった巨大鏡餅なので、小松の用意した調味料ではとてもまかないきれない、が、三段餅はそれ自体に塩気があり旨味もたっぷりなので、何も付けないでも焼くだけで美味しく食べられるのだった。

 

「んぐっ、むぐむぐ……。グルメ界にある『妖食界』の獣とは思えないこと言ってるぞ、こいつ……」

 

「この貧弱な生物がグルメ界を渡れるとは思えないから、出身は人間界じゃないかな」

 

 そんな会話を交わすトリコと鉄平だが、二人とも三段餅を食べながらの会話だ。

 小松はというと又々狐の給仕に徹していた。餅を焼くなど料理の素人でもできることなので、トリコと鉄平は自分達で焼いて食べているが、野生の獣である又々狐はそうもいかない。料理という概念がないので、素人以前の問題なのだ。

 

「んぐ……で、もう餅に変化は出来そうなのか?」

 

 口いっぱいに餅を頬張りながら狐に問いかけるトリコ。手には源泉から汲んだ酒湯の杯を携えている。

 対する又々狐はというと。

 

「いやー、もうちょっと食ってみんことにはわからんなぁー」

 

「そうか、じゃあ、もっと食え。たらふく食っていいぞ! 小松、どんどん焼いてやってくれ!」

 

「あ、はい。実はもう変化できそうです……狐変化します……」

 

 あわよくば餅を独り占めしようと考えていた狐。だが、トリコの食事を惜しみなく分け与える姿勢に、一体なにを考えているんだと、未知の恐怖から萎縮して、その目論見を捨て去った。お前を食うと言うかと思えば、飯をたらふく食えと言ってくる。なにがなんだかわからなかった。だが、逃げられそうにもないので、従うしかないのは確かだ。

 そして狐は、残り一本となっていた尻尾を尻から自切し、餅へと変化させる。

 

「お、おお……」

 

 初めて見る変化の光景に思わずトリコの食事の手が止まる。

 どるん、と奇妙な音を立てて煙が立ち上り、尻尾の姿形が餅へと変わる。その餅は、割られた鏡餅と同じ角張った形状だった。大きさは人の頭ほど。

 

「おほー、なんだこれ。硬い餅なのに、つきたてほやほやの餅みたいな良い香りがするぞぉー」

 

 匂いに驚き、そして色にも驚く。色つやが三段餅とは明確に違うのだ。三段餅は透きとおるような白さだが、この餅は初日の出の日光を浴びたかのような、太陽の輝きをまとっていた。

 思わずかぶりつきそうになるトリコだったが、ぐっと我慢する。この場にはトリコ一人だけがいるわけではないのだ。

 トリコは餅を小松へと渡す。

 

「四人分、切り分けてくれ」

 

「四人分ですか」

 

 トリコの言葉に、小松は周囲を見回す。

 そこにいるのは、小松(じぶん)、トリコ、鉄平、又々狐。

 

「えっ、ワシ、自分の尻尾を食うのか……」

 

「なーに、自分で自分を食うなんてオレもたまにやってることだ。自食作用(オートファジー)ってな」

 

 トリコの言葉にどん引きする又々狐。狐がトリコを見る目は、まるで異星人でも見るかのようなものになっている。

 

 一方小松は、包丁で餅を切り分けて網に載せて焼き始める。

 そんな小松の料理風景を見て、トリコがふとしたことを思う。

 

「しかし、恵方巻の材料を探しに来たというのに、すっかり正月気分だな」

 

「あー、そういえば本来は卵を調理しに来たんでしたっけ」

 

「まあ今は餅だ餅餅」

 

 卵と餅を使った料理もあるにはあるが、まずは純粋な焼き餅を味わいたかったトリコだった。

 火に炙られ、餅が膨らむ。

 丸く膨らんだ餅はうっすらと光をまとう。

 香ばしくそして柔らかそうなほっこりとした香りが周囲に漂っている。

 餅が膨らむ様子を見るのは、なぜこんなに楽しいのだろう。そんなことをトリコが思ったときだった。

 

「焼けましたよー。みなさんいただきましょう」

 

「おうっ、又々狐の尻尾焼き、今度こそいただきますだ」

 

 トリコは餅を手に取り、かじりつく。

 まず始めに感じたのは焼き餅特有の香ばしさだ。それがとてつもなく深い。一瞬で鼻の奥まで焼けた餅の良い香りが通り抜けていく。

 次は柔らかな甘味がしっとりと口全体に広がる。柔らかいのは味だけでなく、歯ごたえもだ。つきたての餅のような香りの通り、ふわふわと口の中で餅が踊る。

 そして今度はほんのりとした塩気が味を引き締めにかかる。ただ柔らかく甘いだけではない、メリハリの利いた整った味を感じる。

 ゴクリと餅を飲み込むと、胃の中がぽかぽかと温かくなってきた。その温かさはやがて全身に広がり、まるでコタツの中でうたた寝をしているかのような、心地よい暖気が身体を支配した。

 

「はぁー、美味いというかなんというか……心地の良い味だ……」

 

 温かい。まるで春の木漏れ日のような温かさを感じる餅だ。落ち着く。それでいて、しっかりと美味しいのだから何も言うことがない。

 見ればトリコ以外の二人と一匹もほっこりとした表情を浮かべていた。

 

「冬の寒い日に食べたら、格別なんでしょうねぇ」

 

「そうだな、今が正月じゃないのが惜しまれる」

 

「美味い……ワシ美味い……」

 

 小松、鉄平、又々狐が思い思いの感想を述べる。

 そしてまた、網の上の餅を各人が口にしていく。

 しばしの無言の時が続く。その味は、大きな叫び声を上げるような強烈な美味さを持っているわけではなかった。ただ、気が落ち着くしっとりとした美味さがそこにはあった。

 

「はー、この餅で雑煮を食べたいですねぇ」

 

「よし、作るか、雑煮」

 

 小松のふとした言葉に、トリコが乗った。

 雑煮。餅を具材とした汁物だ。

 

「え、今からですか」

 

「おうよ。思い立ったら吉日だ。とりあえず狐の尻尾を生やすぞ。狐、もっと餅食え食え。よし小松、黄金鶏の卵も料理に追加だ!」

 

 余韻に浸る静かな時間は終わり、トリコが騒がしく網へと三段餅を並べていく。

 狐は促される通りに、次々と餅を平らげていく。いつの間にか尻尾が一本再生していた。

 

「まずは村を出て、材料調達だな。あ、鉄平も雑煮食ってくか?」

 

 村で拾っておいた黄金鶏の卵を小松へと渡しながら、トリコは鉄平へと話を振る。

 

「ああ、ごちそうになるよ。この後しばらく仕事はないし、それに、この後ちょっと二人にお願いしたいことがあるからな」

 

「お願い? 鉄平がオレ達に?」

 

「ああ、再生させた食材でちょっとな。詳しくはそのとき話すよ」

 

 どこか困ったような表情で、鉄平が言う。

 彼のやらかしで、トリコと小松が世界一臭い果物の洗礼を受けることになるのは、この時まだ知るよしもなかった。

 

「雑煮の味付けはどうします? 醤油と味噌、どちらがトリコさんの好みですか?」

 

「全部だ」

 

「えっ」

 

「一種類だけしか食べちゃいけないと、決まってるわけじゃない。材料用意して、汁と具材の組み合わせ全パターンをコンプリートだ」

 

 ニカッと笑みを浮かべながら、そんなことをトリコが宣言した。地域差、そして家庭差で何かと言い争いになる雑煮の味付け。だが食いしん坊のトリコなら、そんなこと個人間の差など気にせず、全部用意して全部食べてしまえるのだ。

 そんな人間の事情を知らない狐は、ただひたすらに餅を平らげていた。

 

「はー、もっと人間の作る食事食えるのか。幸せだなぁ」

 

「おまたせしました、酒湯で茹でた黄金ゆで卵です」

 

 そんな狐の前に、さらなる料理が用意される。金色に輝く鶏卵がホクホクと湯気を立てており、ほのかな酒の匂いが食欲をそそる。

 殻は剥かれていない。殻ごと食べられるのがこの黄金卵の特徴なのだ。

 

「おっ、待ってました! うほー、これが『名酒温泉村』名物かぁ」

 

 ささっと、狐の前の大皿に載せられたゆで卵をつまんでいくトリコ。

 

「うんまあーい!」

 

「ほら、又々狐さん、ぼやっとしてたらトリコさんに全部食べられてしまいますよ」

 

「お、おう。ではいただくとしよう……ほあ! パリパリしたと思ったらホクホクで美味いぞー!」

 

 そしてトリコたちは、三日間かけて又々狐に食事を与え続けて尻尾餅を量産させ、最後に雑煮三昧の食事を繰り広げたとか……。

 ちなみに黄金鶏の卵と『名酒温泉村』の酒湯は無事、恵方巻の材料の一つとして用意された。

 

 なお、この後の又々狐だが、トリコに散々尻尾をむしられ雑煮を食べ終わった後は、特に捕獲されるということもなく解放されたようだ。

 そして、人の作る料理という娯楽に文字通り味を占めたらしく、また人里に現れ食料を食い散らし――ということはせず、好きなときに好きなだけ料理を食べるために人に化けて料理学校に通い、自分で料理を覚えて料理人の道を進むことになったのだとか。

 




黄金鶏(鳥類)
捕獲レベル:0
家畜としてごく一部の地域で飼われている、金色に光る卵を産む鶏。卵の殻は食用可能であり、ゆで卵にして丸ごと食べるのがお手軽な食し方だ。
成鳥で体高五十センチを超える大型の鶏だが肉は硬く味が悪いため、食肉としては市場に流通していない。

三段餅米(穀物)
捕獲レベル:3
黴びず腐らず割れず、と三拍子揃った特長を持つことから、餅にして長期の保存食として食されることが多い餅米。その味わいは、あまりの美味しさに正月太りで三段腹になるまで食べ続けてしまうほどだとか。
その特長にちなんで、鏡餅にするときは三段重ねにするのが縁起が良いとされている。

又々狐(哺乳獣類)
捕獲レベル:不明(生物としての強さは1)
グルメ界のどこかに存在すると言われている妖食界に住んでいる大型の狐。その身をあらゆるものへと変化させる、怪しげな術を使うらしい。
生物としての強さはさしたるものではないが、そもそも世の中に存在する大半の美食屋は、生息地である妖食界に辿り付くことすらできないため捕獲は困難を極めるだろう。
肉は食用にならないが、成長した又々狐は人語を解するので、うまく騙して餅に化けさせ炭火で焼けば非常に美味な焼き餅になるという。
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