オッス、俺ゴールド 〜ヤンデレ娘クリスとポケモンの世界で旅をする〜 作:友親 太一
アタシはクリス……クリスはママがくれた名前、名前の由来は……パパが大事にしてたクリスタルガラスの彫刻から……
★☆★☆
アタシは五年前にワカバタウンに引越してきた。
その前はハッキリとは覚えてないけどワカバタウンよりは都会に住んでいたのは覚えてる。
当時のアタシはワカバタウンが田舎だから嫌いだった、本当は引越しするのも嫌だった。
でもパパとママの仕事が忙しくなってきた時期だった為に、ママの昔からの親友でゴールドのお母さん……コトネさんが居るワカバタウンに引越しすることを決めたと言ってた。
アタシのパパとママは有名な俳優さんでとても忙しい人達だから。
引越しする前もパパとママはあまり家には帰ってこなくて、いつもお手伝いさんがアタシの相手をしてくれた。
そのお手伝いさんが高齢で定年退職するのも引越しの理由だった。
それでもアタシはパパとママが大好き、パパはとってもカッコよくてママは凄い美人でアタシの自慢だったから。
ワカバタウンに移り住んだ後は当初の嫌悪感は大分無くなり割と楽しい生活をしてた。
ゴールドのお母さん、コトネおば様は優しくて料理が上手でアタシはすぐに好きになれたし、幼稚園の同級生達はアタシが俳優の娘だと言うとチヤホヤしてくれて気分が良かった。
ゴールドのお父さん、ヒビキおじ様は中々家には帰って来なかったけど気さくで楽しい人。
アタシはしょっちゅうゴールドの家に預けられてたけどそれが凄く楽しかったの。
アタシはだんだんとワカバタウンが好きになっていった……唯一ゴールドが気に入らない事を除けば。
当時のアタシはゴールドが嫌いだった、いつも大人ぶってて同い年のアタシを子供扱いするゴールドが嫌いだった、他の同級生みたいにアタシをチヤホヤしないゴールドが嫌いだった。
いつも「ゴールドなんか居なくなれば良いのに」と考えたのを覚えてる。
……でも、あの日からアタシとゴールドの関係は変わった。
その日はママの誕生日だった、だからパパとママが久しぶりに家に帰ってきてくれたの。
でも二人共帰って直ぐに寝ちゃった、仕事が忙しくて疲れてるのは分かってたけどアタシはそれが寂しかった。
だからアタシはママにサプライズしようと思った、そうすればパパとママが喜んでくれると思って。
町のケーキ屋さんでお小遣いで小さい誕生日ケーキを買ったのよ、それをリビングに置いてアタシはパパとママの部屋に二人を呼びにいった……リビングのケーキには火のついたローソクを刺しておいた、その方がママが喜んでくれると思って。
でもパパもママも何度声を掛けても起きなくて、その内に疲れたアタシはパパとママの横で寝ちゃった。
……次に目覚めた時には目の前は真っ赤な焔に包まれてた
あの日の事は今でも鮮明に覚えてる、あの日から
……あの日、パパとママを
後日、おば様に聞いた話だとパパとママはアタシを焔から守る為にアタシに覆いかぶさるように死んでたらしい。
おば様は言わなかったけど消防士さん達の話を盗み聞きたら、アタシが用意したケーキのロウソクが出火元だった。
アタシは……クリスは……
火事の後アタシはゴールドの家で暮らしてた、でも直ぐにアタシは出ていった、少しでもパパとママの近くにいたくて。
当時のアタシの家は大きなお屋敷だったから母屋は全焼したけど別館は無事だったのでそっちに住むことにしたの、その別館を改築したのが今のアタシの家。
その手続きはおば様とゴールドがしてくれた。
おば様とゴールドはアタシを気遣って毎日会いに来てくれた、でもアタシはいつも上の空。
幼稚園に行ってもアタシは無感情、ずっと椅子に座って何も無い壁をただ見てるだけ。
そんなアタシをちょっと前までチヤホヤしてた同級生達は掌を返すように貶しだした、「クリスは親殺しだ」って。
でもアタシは反論出来なかった、だって事実アタシはパパとママを殺したんだもの。
ゴールドは必死にアタシを庇ってくれたけど無駄だった、それどころか隣のクラスの子までアタシを罵りだす始末、そしてアタシは幼稚園に行かなくなった。
そんなアタシをおば様とゴールドは根気良く会いに来てくれて励ましてくれた、でもアタシはゴールドが好きになれなかった、それどころかウザったく感じていた。
アタシはゴールドが……嫌いだった、アタシの事を何も知らない癖にアタシに構ってくるゴールドが嫌いだった。
そんなアタシは町にいる事が苦痛で仕方なかった、みんなアタシを冷たい目で見てくる気がするから、だからアタシは日中はワカバタウンから出て近くの野山で過ごすようになった。
アタシは毎日町を出て野山のポケモン達と過ごすようになった、ポケモン達だけがアタシの友達だった。
そんな生活を過ごす内にアタシはポケモンとお話出来るようになった、ポケモン達はみんな優しくてこんなアタシを受け入れてくれる……ポケモン達だけがアタシの理解者だった。
そんなある日おじいちゃんとおばあちゃんから封筒が届いた。
アタシは歓喜した、これでアタシはこの地獄から抜け出せる、これでワカバタウンとはサヨナラ出来ると思って。
……でも現実はそんなに甘くはなかった。
封筒の中身は「娘を殺した悪魔の子を孫とは思えない」という内容の手紙と多額の金額が入った小切手……手切れ金だった。
この日アタシは唯一の肉親すら失った。
後で知ったことだが、おじいちゃんとおばあちゃんはパパとママの結婚に反対しててパパとママは駆け落ち同然に結婚してアタシを産んだらしい、アタシは……実の祖父母にすら嫌われてたのよ。
その日の夜……土砂降りの雨の中……アタシはワカバタウンからそれ程離れてない森に来た……ここはアタシのお気に入りの場所……いつもポケモン達と遊んでた場所。
ここにアタシは……包丁だけを持って立たずんでいる……
そしてアタシは静かに自分の手首を深く切り、近くの川に浸した。
……これで……開放される……
そこでアタシの意識は途切れた。
…
……
………
…………
「……クリス!」
……誰?
「しっかりしろクリス!」
……誰が、アタシを呼んでるの?
アタシが気がつくとそこは天国でも地獄でも無い、見慣れた森と……雨でびしょ濡れになりながらアタシの手首を止血するゴールドだった。
何故?
何故ゴールドはアタシを助けようとするの?
「……ゴール、ド?」
「そうだ俺だ、ゴールドだ!」
「……なんで……なんでアタシを助けるの?」
このままずっと眠っていたかったのに。
「なんでって、助けるに決まってるだろうが! つかなんでこんなことした!」
そう怒鳴るゴールド。
「……もう、いいの……もう生きてたくないの……もうパパとママのとこに行きたいの……」
もう生きることに疲れたんだよ。
「バカヤローッッ!!」
「……?」
「そんな事してオジサンとオバサンが喜ぶかよ、うちのオフクロだってお前のこと必死で探してるんだぞ。俺だって……俺だって……お前に……生きて欲しいんだよ」
その時のゴールドの顔は怒ってるような、泣いてるような
よく分からない表情をしてた、その表情が今でも忘られない。
アタシはいらない子、でもこんなアタシを必死に探してくれた人がいる、それだけで救われた気がする。
アタシはパパとママを殺した悪魔、
その日からアタシは恋をしました。
一生変わることの無い、最初で最後の恋。
アタシはゴールドを生涯愛し続けると誓いました。
アタシはゴールドと一緒にいる為に生き続けると心に決めました。
ゴールド、
★☆★☆
「…………あれ?」
ここは……アタシの……部屋?
そっか、さっきのは夢だったの。
思い出した、アタシはお母さんの誕生日パーティーが終わった後で、ずっと放置してた家の事が少し気になったから帰ってきたんだ。
でもお母さんにスペアキーを渡してたからお母さんがマメに掃除してくれてて、すること無かったから直ぐに寝たんだっけ。
「……久しぶりに昔の夢、見たな」
昔は毎日の様に見てた夢、でもゴールドと旅をするようになってからは見なくなった夢。
「そういえば、いつの間に火が怖くなくなったんだろう」
あの火事のトラウマでアタシは一時期、火を見ると発狂するようになった。
でもゴールドとお母さんがその度に抱きしめてくれていつの間にかトラウマを克服出来てた。
ふとアタシは周りを見回す、ベイリーフがお上品にスヤスヤと眠りその横でトゲチックが仰向けで寝てる。
さらに少し離れたとこではメノクラゲが寝ぼけてスリープに『からみつく』をしてスリープがうなされてる。
「パパ、ママ。産んでくれてありがとう、今アタシは幸せです」
やっと言えた言葉、本当はもっと早く言いたかった一言。
『良かったな』
「……え?」
今一瞬、パパとママの声が聞こえた気がした……気のせい?
ううん、多分アタシを心配してパパとママが様子を見に来てくれたんだわ。
「パパ、ママ……」
アタシはちゃんと生きてるよ、だから心配しないで。
「ゴールド……」
アタシはゴールドの家の方を見て最愛の人の名前をつぶやいた。
★☆★☆
目が冴えた俺はまだ夜明け前だが家の前で一人で外を見てる。
「ゴールド、寝れないのか?」
そしたらオヤジが扉を開けて俺に声をかける。
「オヤジこそ」
「俺はコレだよ」
オヤジは手に持ったタバコを俺に見せてくる、オフクロがタバコが苦手な為に我が家は室内禁煙、だからオヤジは喫煙する時はわざわざ外に出て吸う。
そのまま俺の横に立ちオヤジはタバコを吸い始めた。
「オヤジ、俺にも一本くれ」
「……たく、お母さんにバレるなよ」
オヤジは俺が喫煙者なのを知ってる、それと同時に俺が前世の記憶を持ってることも。
俺はオヤジからタバコとライターを受け取りゆっくり火をつけてから吸う。
「……フゥーッ、久々に吸うと体に染み渡るわぁ」
「おい、発言がジジ臭いぞ」
「前世込みならオヤジより年上だよ」
「……そうだったな」
しばらく二人共黙ってタバコをふかしてるとオヤジが話しかけてきた。
「……何考えてた?」
「クリスのこと」
「そうかい……まだ後悔してるのか?」
「……まぁな」
口数少ない会話だがお互いに言いたい事はだいたい分かってる。
あの火事の日、俺はクリスがケーキを買ってたのを知ってた。
なのに俺は火事になる可能性に気付けなかった、俺があいつの一番近くに居たはずなのに。
その後もあいつが自殺未遂をするまで追い込まれてたのに手首を切る前に助けてやれなかった。
「……なぁ、そろそろ自分を許してやれよ」
「……無理だな、俺は一人の少女の不幸を止められなかった」
俺は罪人だ。
「あれは事故だよ、クリスちゃんにもお前にも罪はない。それに前世の記憶があったって人間一人に出来る事には限界がある」
「だとしても俺は自分が許せない」
あの日、両親を失った彼女の為に俺が両親の代わりになると誓った。
それがクリスへの贖罪。
「あの時の俺はゴールドの気持ちが理解しきれんかった、だが俺も年食って理解したよ……だからこそ言える。
もうお前もクリスちゃんも過去に囚われるな、そんな事は誰も望まない」
「……クソオヤジが、少しは父親らしいこと言えるようになったか」
「茶化すなよ……そらお前は中身は俺より年上かもしれんがそれでも俺の息子だ。俺にとってゴールドがたった一人の大切な息子、それはお母さんも変わらん。それにクリスちゃんのご両親も。
そしてゴールドお前もだろ、自称クリスちゃんの保護者さん?」
「オヤジこそ茶化すな、まぁその通りだな」
「別に今すぐじゃなくて良いからな」
「……善処する」
俺はタバコの火を消し、身体に付いた煙の匂いを消すために風呂場に向かう。
俺が喫煙者なのはオヤジしか知らない、その為オフクロやクリスにバレない様にしてる、まぁオヤジが帰ってきた時しか吸わんからそうそうバレようが無いが。
「……ゴールド、クリスちゃんと幸せになれよ」
扉を閉める直前に後ろから聞こえたオヤジの呟きが哀愁を感じたのは気のせいでは無いだろう。