War Robots=A lot of Soldiers Memories= 作:哭糖
全弾撃ち尽くし、空になった弾倉を捨てた音を最後に、辺りに静寂が訪れる。
『……やっぱり大したことない任務でしたね、隊長』
SURA-F Pinataを装備した僚機のDestrierが未だ周囲を覆う煙の中一歩を踏み出す。
その時だった。
白煙と静寂を切り裂いて火薬の音が再度鳴り響き、動きを見せたDestrierが無数の近距離ミサイルによる攻撃を受ける。
機体の全面に爆風を浴びたDestrierは、支えを無くしたように地面に倒れ込んだ。
『……っ!?ジョナサン!』
もう一機のDestrierが沈黙した僚機に近寄ろうと廃ビルの陰から飛び出してしまう。
『馬鹿野郎!今動いたら……』
小隊長の静止も既に意味を成さず、飛び出した機体には容赦なくミサイルが浴びせられる。
脚部に爆発の衝撃が届き、サスペンションを挫かれたDestrier。
動く事もままならなくなった満身創痍の機体に、そいつは煙を纏いながら飛び掛った。
深い緑色の外装を持つロボット、『Rogatka』
それは膝の装甲でDestrierを蹴り倒し、火花を上げながら地面に伏せる機体の上部を足裏で押さえ付ける。
『し、死にたくな……』
ロボットに踏み潰される恐怖など計り知れたものではないだろう。
ガッ
Destrierのコクピットを装甲の上から踏み付ける。
何度も。
何度も。
形が大きく変わるほど痛めつけられたDestrierの中がどうなっているのか、考えただけでリアムは胃の中のものを思わずぶちまけそうになった。
そして、恐怖と共に思う。
今自分が乗っているコイツは、無力な自分を守ってくれるモノじゃない。
無力な自分のまま、死へ誘う棺桶なのだと。
『准尉ィィ!!!』
小隊長からの通信でリアムはなんとか恐怖から逃れ平静を取り戻す。
だが、ほんの数秒のうちに僚機が二機も破壊されたという現実は変わることは無い。そして、次は我が身であるということも。
『ボサっとしてる場合じゃねえ!ヤツに向かって全弾ぶっ放せ!!』
そうだ
倒すべき目標は目の前にいる。そして、それを堕とすことができる武器を今手にしているのだ。
モニターに映る照準をRogatkaに合わせ、トリガーレバーを引く。
リアムのDestrierの右側に装備された機関銃「AC Molot」が勢い良く弾を撃ち出した。巨大な撃針が雷管を穿ち、その衝撃と轟音はコクピットにいるリアムの心を強く揺さぶる。
それは、仲間を討たれた激情によるものか、あるいは相手を殺すという決意を決めた事によるものなのか。
リアムのDestrierが左側のAC Molotを、小隊長のGl.Pattonが側面のGAU Punisherを、それぞれRogatkaに撃ち続ける。
Rogatkaの両側に備えられている兵器は"R4OM Orkan"
「嵐」と名付けられた箱状のそれは、SURA-F Pinata同様小型ミサイルを毎秒10発の速さで吐き出し、瞬く間に対象を破壊するものである。
SURA-F Pinataとの最大の違いは、発射中にも次弾の装填ができることだ。これによりリロードを待たずとも再装填が間に合わなくなるまで撃ち続けることができる。
ただ、R4OM Orkanにも弱点はあった。
それはリアム達の銃撃に曝されているRogatkaが、銃弾を避けようとするばかりで撃ち返さないことからも読み取ることが出来る。
R4OM Orkanの小型ミサイルは極めて射程距離が短いのだ。
SURA-F Pinataもそうだが、これに搭載している弾頭は一発の威力ではなく連射速度や装弾数、弾頭の軽量化を優先したもの。
従って一つ一つのミサイルに積める推進剤の量が少なくなり、結果として射程わずか300mという状況を選ぶ兵器となった。
この事を、リアムは諜報部にいた頃に知り得ていた。
これを伝えることができていれば僚機のDestrierは堕とされることは無かったのかもしれない……
しかし、今は後悔の念に駆られている場合ではない。
R4OM Orkanの特性を知っている自分だからこそ、やられた仲間のためにもこのRogatkaを破壊しなければ……
リアムの鼓動は、未だ激しく高鳴っていた。
リアム側の優勢。R4OM Orkanの射程圏外からの機銃による攻撃の全てを避けきることはできずに、深緑の外装が少しずつ傷付いていく。
だが、Rogatkaが一方的に撃たれ続けた時間はわずか10秒にも至らなかった。
平地で姿勢を整え、両脚部を揃えると背面のブースターを起動させ勢い良く地面を蹴り出し空中へと跳び上がる。
「ジャンプドライブ」……一部のロボットに搭載されている、文字通り機体を跳躍させる機構を持ったユニットだ。
それによって、Rogatkaはリアム達との距離を一気に詰める。
R4OM Orkanの砲口を下げ、飛びかかったのは小隊長のGl.Patton。
隊長機の性能上、この距離での回避は不可能であった。
『みすみすやられてたまるかよおおぉぉぉ!!』
側面のGAU Punisherガトリングの斉射を続けながら、機体上部に装備されたCRV Pinを前方の空から迫るRogatkaへと撃ち放つ。
いくら機動力と高火力を兼ね備えたRogatkaでも、ジャンプドライブを使用し空中にいる状態では無防備になる。
放たれたCRV Pinの弾頭は直線に続く煙の尾を描きながら、Rogatkaの機体上部に直撃した。
装甲も一部が吹き飛び、鈍く光る機部が顕になる。それでも、なおRogatkaは迫る。
爆発による煙を纏いながら、ついに小隊長のGl.Pattonとの間合いを詰めた。
2つのR4OM Orkanが、推進剤の燃焼が生み出す音と共に弾を吐き、それを隊長機に打ち付ける。
その様はまさしく嵐の如く。
『……尉……あと…………お前が……!!』
小隊長からの、最期の通信。
リアムはAC Molotのマガジンを捨て、もう片側に装備された追尾ミサイル「AT-Spiral」のロックオン画面がHUD上に映し出され、すかさずトリガーを引いた。
3発の弾頭が射出され、満身創痍のRogatkaを襲う。回避を行おうとするも避けきれず、AT-Spiralの弾頭は武器の接続部近くに着弾。運良く左側のR4OM Orkanをはじき飛ばす。
しかし、戦闘は終わってはいない。
装甲が剥がれようと、武器をもがれようと
Rogatkaは動く、戦う意思を見せる。
剥き出しの機関部からギシギシと音を鳴らし、ファイティングポーズを取るが如くリアムのDestrierへと向き直った。その姿は見えないはずのパイロットの強い思いを写しているようにリアムには感じた。
「生きたい」のだと
片側だけ残ったR4OM Orkanだけでもリアムの驚異であることに変わりはない。1歩ずつ迫るRogatkaにとどめを刺すべく、操縦桿を強く握り締める。
だが、リアムにとって予想外の出来事が起こった。
ゆっくりと接近していたRogatkaが、突如前のめりに倒れたのだ。
操縦ミスか?あるいは、既に戦える状況ではなかったのか?
しかしそのどちらでもないとリアムは即座に悟る。
それは倒れ伏せたRogatkaの背面が全て物語っていた。
ずっと真正面から撃ち合っていたはずのRogatkaの背部が見るも無残な程ボロボロになっている。恐らく熱量の非常に高い武器によるものであろう、装甲の一部が赤く溶けて歪んでいた。
リアム以外の何者かの攻撃、そう察せざるを得ない。
一体誰が……
『ステルス機能というのは、確からしいな。この機体』
突然リアム機に入った近距離通信。
至近距離でないと接続できないその回線に割り込んだ人物の機体を、Destrierの上部を動かし、そして見つける。
位置はリアムの真後ろ。
Destrierと大差ない大きさの、流線型の装甲を光らす蒼いロボット。かつて諜報部に属していたリアムですらその機体の正体がわからない。
しかし、リアムは直感的にRogatkaに止めを刺したのはこの機体だと悟った。両側にRogatkaの背中を焼いたであろう試作品と思われる銃器が備え付けられている。
だが、センサーにも掛からず、Rogatkaが倒れてからの数秒の間に機体の後ろに回り込むことができるこのロボットの性能は未知数。この距離で戦闘になったとして、勝てる方法が見出せなかった。
『怯えているのか知らないが、今はお前を殺す気は無い。とはいえ抵抗はするなよ、これ以上十字架の前で懺悔する回数が増えるのは面倒だ』
不明機から再度通信が届く、男の声だ。
『ここでの我々の任務は終わった。まだ気味の悪い存在だとしか思われていないようだが、いずれ世界と相見えることになるんだろう。お前はどうだろうな?』
「何の……話だ……?」
『……口が過ぎた。帰還する』
そう言い残し、背を向けその場を去ろうとする蒼い機体。
「ま、待て!お前は……お前らは一体何者だ……?」
『ADTWとだけ、言っておこう。世界を変える存在だ』
※章末作者あとがき※
(_・ω・)_バァン…
ついに念願の連載を開始しました「WR A lot of Soldiers Memories」。ここまで読んでくださった方本当にありがとうございます!
あ、物語はまだ始まったばかりですよ?区切りをつけて改めてご挨拶をさせていただいてます。
僕はガンダムやマクロス、アーマード・コアなどが大好きないわゆるロボオタクなのですが、今回
この作品を書くに当たって作風がそういう方へ傾いているのではないかと思ってます。
それに、「War Robots(以降WR)」にはざっくりとした世界観はあるもののシナリオ的なものが一切ありません。だから二次創作として物語を書こうと思ったのですが、同時にほぼ想像で作品を書かなければなりませんでした。
なので、本作はオリジナル要素が多いです。とても多いです。なるべく世界観をぶち壊しにしないようにはしているので、優しい優しいパイロットの皆さんなら許してくれるはずでしょう。(〃∀〃)
そして、物語の中心となる今作の主人公、「リアム・アンダーソン」
今のところの彼は階級こそ立派なものの戦場に立って間も無い非力な一兵士。彼の今後の成長にも期待していただきたいですね。
……っとつい長々と話をしてしまいました。次は第二章末でお会いしましょう!